仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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そういえば、英たちの夏祭りの回も随分と前になりますね。
あの時にはこの話の構想を考えていたというのに、書くのに時間がここまでかかるとは……


今回もテンションの落差が激しい話となっております。


EP156.祭祀

 篠ノ之神社。新年のお参りにとかはちょくちょく来ていたのだが、夏祭りにくるのは久しぶりである。

 ちょうどセシリアも帰って来て、せっかくだからみんなで行こうという話になり、あれよあれよという間にいつものメンバーに加えて色々と追加人員がいる状態で行くことになった。

 ただ、箒がもう既に行っているらしいので、一緒には行かない。まあ箒の実家だし手伝いをしているんだろうけど……最近、話しかけてもそっけない返事ばかりで心配になる。

 

「うーん……あとで雪子さんに聞けばいいか」

「雪子さんって、箒の叔母さんだっけか?」

「そういえば鈴は会ったことあるんだよな」

 

 昔、弾と蘭に数馬で初詣行ったときに紹介したんだっけか。

 あの時鈴は不機嫌な顔していたけど……箒の話題ばかり話していたせいだろうか?

 

「箒さんのご実家ということは、篠ノ之博士の生家ということでもありますわよね?」

「そうだぞ。昔はよく遊びに……って言うほどでもないか。俺は英さんの家に預けられたこともあったし」

「蜂矢博士のご実家はどこに?」

「ない」

「ないわね」

「え?」

「それってどういうこと?」

「……いや、昔壊されたんだよ。オーバーロードに」

 

 すこし空気が重くなった……事実なんだから仕方がないじゃないか。

 いや、言わない方が良かったな。

 

「そのあと、すーちゃんはホテルを転々としたりネットカフェに泊まったりしながら過ごしていたんだよー」

「本音! 英さんだって好きでしていたわけじゃないんだよ!」

「でもふろちゃんも楽しんでいたみたいだよ」

「フロンもたくましいよなぁ……」

「あの子、元気かしらね」

「フロンというと、スレイプニルのコックのですか?」

「確か、一つ下だったか同じくらいだったな。その若さで大したものだ」

 

 いつか決着をつけたいものである。しかし、大所帯だな……

 俺、鈴、セシリア、シャル、ラウラ、簪、のほほんさん、ハミルトンさん、あとついでにリコリン。

 

「ひどい!」

「なんでいるのか逆に聞きたいんだけど……誘っていないし、今朝いなかったよな?」

「いいじゃない別に! ティナさん! さあ行こう! ここにいたら砂糖を吐くことになる!」

「なんで!? ちょ、助けて鈴――――ッ」

 

 哀れにも、ハミルトンさんはリコリンに連れさらわれてしまった。

 …………敬礼。

 

「かわいそうだけど、リコリンと一緒にいたら疲れるのよね」

「暴走でもしたら敵いませんから。むしろすでに暴走していますわね。どういたします?」

「後で回収しておこう。あのテンションならすぐにばてる」

 

 一体何が彼女をあそこまで駆り立てるのか……陰で泣いていたりするのか? いや、それはない。

 さてと、そろそろアイツも来る頃――ちょうどよく、探していた人物がやってきた。鉄拳と共に。

 

「あぶねッ!?」

「黙れこのモテスリム!」

「ちょっとお兄! なんでいきなり一夏さんを殴って――――ごめん、私が悪かった」

「蘭さん!? なんで!?」

「黙れ! 美少女を何人侍らせているのだお前は!」

「別にそんなつもりはないわッ!」

「はた目にはそうとしか見えないんだよッ!」

 

 弾、羨ましいと感じるのならばそれは違うぞ。基本的に話が合うわけではないし、肩身は狭い。

 意外と気を使うし、一歩間違えば犯罪者になるのではとストレスは結構たまる。

 

「見ろこの隈を!」

「……あの一夏がそこまでキツイって言い出すとか、そこまで辛いのか」

「鈴さん、貴女がいながらなぜこうなっているんですか!」

「いや、最初の方は割と気にしていなかったような……」

「最近になってから隈が目立つようになりましたわよね」

「鍛え方が足りないのだ!」

「そういう問題じゃないと思うよ、ラウラ」

「……ふふ、おりむーわかりやすーい」

「栄養ドリンクならあるよ」

 

 …………うん、俺が色々と気にするようになったのは……鈴の気持ちを知ったあたりからだ。

 それまでは気にならなかったことが気になるようになり、少々キツイときがある。

 そしてのほほんさん、何を分かっているというのだ――ごめんなさい。だから鈴の方をちらちら見ないでください。誰にも言わないでおねがい300円あげるから!

 

「おりむー、綿あめ買ってきて」

「御意」

「ちょ、一夏!?」

「アイツ……色々と大丈夫なのか?」

「一夏さん……お兄も行ってきて」

「なして!?」

 

 みんなそんな目で見ないでくれ。自分で言いたいことなのに他の人にかき回されたくないんだよ!

 だからこれは戦略的撤退なのだ! とりあえず全員分買ってくればいいか。弾、泣くことはないだろうが……え、俺ってここにいていいのか? 俺に聞くなよ…………

 

 ◇◇◇◇◇

 

 箒が一夏たちを騒いでいる光景を見たのは、偶然に近い。友達が来るかもしれないということを伝えていたら雪子さんが会いに行ってきなさいと送り出してくれたのだ。

 そして、見たのは――楽しそうな一夏たち。

 

「…………私がいなくても、楽しそうなのだな」

『実際楽しいんでしょうね。貴女がいなくてはいけない理由なんてあるのかしら?』

「――――ッ」

『よくごらんなさい。貴女の縋り付いていたものなんてあそこにあるの?』

「やめて、やめてくれ」

『一夏はもう――』

「やめろ!」

 

 頭に響く声を振り払うかのように、走る。

 違う違う。自分の居場所は――一夏の目が誰を見ていたかなんてわかっている。

 

「あは、あははははははははははははは」

 

 どこをどう走ったのか覚えていない。

 ただ頭に浮かぶのは今までの記憶。

 

 一夏と遊んだ記憶――だけど、そこには他の人たちもいた。一夏と二人きりだったことなどほとんどない。いや、保護者として姉や千冬さん、英さんもいた。

 そうだ――自分は心のどこかで英という男を否定している。

 姉を変えた男。姉がまっとうな世界に生きることになったのは彼がいたからだ。

 

『憎い?』

「わからない……ただ、なんで姉には助けてくれる人がいたのに、私にはいないんだ…………なんで、一夏は私を見てくれないんだ?」

『憎い?』

「わからない。なんでこうなったかなんて、わからないよ……私はどうすればいいの?」

 

 寂しい。一人は嫌だ。でも現に一人ではないか。

 なんで私は一人なんだ? なんで一人になったんだっけか……姉がISを作ったから? いやそうではない。IS学園が出来た以上、ISがあったからこそまた再会できたわけでもある。

 だったら、なぜ? なぜ一夏と自分の間に距離が――――

 

「そうか、仮面ライダーがいたからだ」

『憎い? 一夏を仮面ライダーにした男が』

 

 一夏が仮面ライダーだと知ったのは、臨海学校でのことだった。千冬さんに聞いてみたが、彼女は既に納得していた。それでいいのかと問い詰めたいが……その瞳は一夏を信じていたのだ。その時は一夏を信じてみようと思ったが――考えてみれば、一夏よりも英さんを信じたのではないだろうか?

 箒にとって判断材料になるのは自分で見たもののみ。だからこそ、知らない部分のことがどのように関わっているのかなど、わかるはずもない。

 束にしても、英という存在のこともあるが……それ以上に花村花梨という少女の死が大きな影響を与えている。

 一夏も、元々の因縁が存在するのだ。それが、仮面ライダーと絡んだだけのこと。

 されど箒がそれを知ることができなかっただけ。しかし――黒き悪意はそんなことを知ったことでないとばかりに箒の心の中の黒い部分を刺激する。

 

『憎い? 仮面ライダーが』

「ああ憎い……私からすべてを奪った仮面ライダーが」

『なら――――力をあげる』

 

 気が付けば箒の手の中には――――

 

「これ、は…………」

『一か月もすればチャンスが来るでしょう……その時まで、待ちなさい』

「ふふふ、はははははははは!!」

 

 ――そこはご神木の前だった。御神木から伸びてきたそれを手にした箒は、ただ笑っているだけだった。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 戻ってきた俺たちを待っていたのは――浴衣に着替えたみんなの姿だった。

 

「うお!?」

「……これが見れただけでも良かったと素直に思う」

「どうよ!」

「驚かせようと思いまして、こちらで着替えることとなっていたんですの」

「篠ノ之博士が頼んでおいてくれたみたいでねー」

 

 束さん何をやっているんですか……でもグッジョブ。

 正直、俺の目線は鈴にばかり向いていることだろう……弾も気が付いているし。っていうか、さっき聞かれた。いつからだって……挙動不審になってしまったが、もうバレバレらしい。

 鈴は気が付いていないみたいだから幸いだけど。

 

「絶対に違うと思う」

「一夏、ほら早く感想言いなさいよ」

「…………に、似合ってる」

「……」

 

 思わず顔が赤くなっていまう……でも正直な話、ちょっと直視できない。

 似合うのだからしかたがないじゃないか! いつもはツインテールの髪も下ろされていて、破壊力がヤバい。

 たまに下ろされるからこそ生まれるギャップだとでもいうのか!?

 

「ズルいですわ鈴さん!」

「そうですよ! ズルいです!」

「嫁、私はどうだ?」

「…………七五三?」

「なぜだ!?」

 

 だってラウラはなぁ……なんで浴衣じゃなくて着物なんだよ。暑くないのか? というか着られているって感じがものすごいんだけど。

 

「リコリン! これはどういうことだ!」

「だってぇ、その方が面白いと思ったんだもん」

「おのれぇ!!」

「だから言ったのに……岸原さんに頼んだらダメだって」

「そうよ。アイツは面白がってこういうことをする奴よ」

「でも反省も後悔もしない! それがリコリンクオリティ!」

 

 また君か。っていうかハミルトンさんはどうしたんだよ。

 一緒にいたっていうか、連れ去ったくせに。

 

「…………あの裏切り者のことなんか知りません」

「裏切り者?」

「たまたまぶつかった同じくらいの男の子と仲良くなって二人で回り始めたよコンチクショー! リコリンがその男の子引いたのが悪いんだけどね」

「自業自得ですわ」

「むしろ恋のキューピッドになってどうするのよ」

「なんだと!? なら私と嫁のキューピッドに」

「ラウラ、それするとたぶん最悪の結末になるよ」

「リコリンはおバカだなぁ」

「たぶん、本音には言われたくないと思う……試験結果どうだった?」

「……赤点は免れた」

「私は赤点あったから織斑先生にみっちりしごかれた。魔法少女仲間だと思っていたのにひどいよね!」

「師匠も相変わらずですね……だけど私だって新技を――」

「――ふふふ、君の魔法少女力でこの私に勝てるかな――――痛い!?」

「ぺいっ!? 鈴さんいきなりひどいじゃないですか!」

「黙りなさい! あえてその話題を避けていたっていうのに一夏がトラウマスイッチ入っちゃったじゃない!」

 

 魔法少女怖い魔法少女怖い魔法少女怖い……

 

「一夏!? 大丈夫か、傷は浅いぞ!」

「やめろ、なんで俺の採寸をするんだ――そのフリフリのドレスはいったい何なんだ! まってくれ千冬姉、俺にそんな趣味は――――うわあああああああ!?」

「い、一夏!」

 

 ふわっと、体が浮かせられたかと思ったら……なんか頭に柔らかいものが?

 

「ほら一夏、ここに千冬さんはいないわ。今日は出かけてるんでしょう。別のお祭りで」

「あー、そういえばあれって8月中旬……今日やっているんだっけか」

「うん。今年はいろいろあったから参加は見合わせていたんだけどね」

「私は一日目にだけ参加しました」

「蘭、初めて聞いたんだけどそれ……」

 

 そっか千冬姉はいないのか……よかった。

 そして落ち着いて来たらこの状況が恥ずかしくなってきたんだけど。鈴さん、そろそろ……

 

「ダメよ。またトラウマスイッチが入ったら困るでしょ」

「だからと言って、みんなの前でひざまくらとか恥ずかしいだろ!」

「鈴さん! そこ変わってください!」

「嫌よ」

「羨ましいなんてレベルじゃありませんわ――こんなことなら帰郷しないで置くべきでした! お二人は何をしていらっしゃったの! なんか取り返しがつかないではないですか!」

「……ちょっと個人的に思うところがありまして」

「うむ? 一夏をおつかせるための医療行為ではないのか? 私は怪我をなめて治すことができるぞ。唾液にナノマシンが含まれているからな!」

 

 ラウラ、そういう意味じゃない。

 その後は慌ただしいけど楽しい時間が過ぎて行って、箒やハミルトンさんと合流して花火を見ることになったんだけど……二人とも口を一切開かないからなんと話しかけたらいいのやら。

 ただ一つ、今日一番驚いたことは……ハミルトンさんと一緒にいた男に見覚えがある所の話ではないことだ。

 うん、この前あったばかりだけど…………またか数馬よ。

 

「いったいどうなっているんだよ」

「俺ももうわけがわかんねぇよ……しかもアイツ、本気っぽいぞ」

 

 …………マジか。

 




というわけで、箒さん闇堕ち完了スペシャルでした。

他にも色々言わなくてはいけないことがある気がしますが、リコリンがそこにいるだけでシリアスにならないんです。その周りだけは。
テロ騒ぎの時も、彼女の周りだけはボケとツッコミの応酬。その時、周りにいた生徒は学園をやめていない裏設定。

そして、これでIS4巻を終わりにします。
一夏の家にはいかないのかという人もいるでしょうが、無理に話を作るより誕生日回に回したいのでカット。
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