仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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大半はギャグパート。終盤のみシリアス? な構成でお送りいたします。


EP160.青い涙

 結局、グロッキー状態の俺が回復するのにしばらくの時間を要した。

 千冬姉にいったい何を吹き込まれたのやら……

 

「簪もこういうことにノリノリになるタイプじゃないと思うんだけど」

「……夏とか冬のお祭りでコスプレすることもあるから」

「ああ、そう」

 

 だからか。っていうか他のみんなもなんでそんな恰好をした。正直、俺の胃袋が今ので死んだぞ。

 

「ほら怒らないから言ってみ? なんでこんなことしたんだ? ほら言ってみろよ」

「すいません一夏さん、まさかここまでダメだとは思わず、織斑先生に騙されました」

「すべて織斑先生が悪いんだ」

「きょ、教官に諭されたことは否定しない」

「まてまてお前たち! 一夏が今までに見たこともない顔で怒っているからとあっさり裏切りおって――――まってくれ一夏、その関節はそっちにはまがらな――じぇろにもぉぉぉぉ!?」

 

 反省しろ。っていうかしてくれマジで。

 昔の俺――というかこういう光景なんて想像もできなかったがIS学園に来てから千冬姉相手にこういう風に対応することが増えてきたような……あれ? 俺の中で千冬姉のカッコイイイメージが崩れて…………ゴメン、元々家の中じゃずぼらだったな。

 

「さてと、一夏は千冬さんに対応しているし――私はあんたをシメるわ」

「あはは……ごめんね」

「問答無用」

「うごあああああ!? リコリンも流石に関節は逆にはまがらな――――ちょもらんまっ!?」

 

 悪は滅びる定めにある。とりあえず反省してくれ……たぶん会長もグルだろうな。いないっぽいけど……なんだろう、嫌な予感がする。

 とりあえず、セシリアたちに事情を聴いて――そこで、俺の視界が真っ暗になった、

 

「うおわ!?」

「一夏!?」

「ごめんねおりむー! お嬢様の命令だからさからえないのー!」

「でかしたのほほん一等兵! 体育館に連行するわよ!」

「いえっさー!」

 

 の、のほほんさーん!? なんで俺を持ち上げられるの!?

 俺は何だかわからないままに運ばれていくわけだけど――嫌な予感しかしねぇ……

 鈴も追いかけてきているみたいだけど……いかせませんわー! とか、ゴメン鈴とか知っている声が聞こえてくる。っていうかセシリアが口調ですぐわかる。

 

「なんでこうなるんだよ!」

「ほんとごめんね。でもーおりむーが答えを出さないからぁ……いや、出そうとしても妨害されたりしているみたいだけどー」

「それでも――まだまだ面白くできるのなら、本気をだす!」

「リコリンてめぇ! それが目的だろうが!」

「うん!」

「くそっ……学園祭だから通常の三倍になってやがる」

「あははははは! リコリンを止められるものは誰もいない! 鈴ちゃんのオシオキはたしかに効いたさ! それでも次のコマには復活するレベルでリコリンは甦る!」

「なんか世界観が違いすぎるッ」

 

 というか、どこかの誰かを彷彿とさせる自由さ……なんだろう、流れに身を任せた方がダメージは少なそうな気がする。うん、しばらく無心になろう……

 その後、放り込まれた場所で着替えさせられるといつの間にか体育館のステージの上にいた。正直、色々な展開をすっ飛ばしている気もするが……いったい何が始まると言うのだろうか? なんか王子様っぽい格好をさせられたけど……王冠も乗せられたし。あと、念入りに奪われないようにねって言われたのも気になる。っていうか嫌な予感がする。むしろ嫌な予感しかしない。

 俺が戸惑っていると、ブザーが鳴り響きステージの幕が開けた――――

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

『むかしむかし、あるところにシンデレラという少女がいました』

 

 これって、会長の声? そうか、魔法少女騒動の時に姿が見えなかったのはこっちの準備があったからか……だけど、会長が天の声をやっている時点で嫌な予感がさらに倍プッシュだよ。リコリンが関わっているからすでにカンストしているけど。

 でも、シンデレラって誰がやるんだろうか……ま、まさか鈴だったりして…………

 そんな俺の淡い期待は、すぐに裏切られることとなる。

 

『否、それは最早名前ではない! 数多の舞踏会を駆け抜け、群がる敵兵を蹴散らし、灰燼を纏ってでも戦い続ける地上最強の兵士たち。彼女たちを呼びたたえる称号こそ――「灰被り姫」、そうシンデレラなのだ!』

 

 ――え?

 

『今宵もまた血に飢えた乙女たちが舞う。王子の冠を手にして彼と、隣国の機密文書を手に入れるためにシンデレラたちは今――神話となるのだ!』

 

 ちょ、ちょっとまってくれ!

 え、なに? これどういう話だ!?

 

「もらったぁああああ!!」

「うおわあああ!? ほ、箒さん!?」

「王冠よこせぇえええええ!!」

「なんか妖怪首おいてけみたいな感じなんですけど――いやぁああああ!?」

 

 っていうか千冬姉、こんなイベントいいのか――いや、あの魔法少女軍団はまさか!?

 

「千冬姉買収されやがったなぁああああ!」

「問答無用だ――その王冠をよこせ!」

「こんなものくれて――――」

 

 そう思って、王冠に手を伸ばすと――嫌な予感がしたので、箒をとりあえず投げ飛ばしておく。

 

「――な!?」

「今更箒相手に負けるかぁああ!!」

「――――ッ」

 

 興奮しているからか、動きが単調だし!

 っていうか、これいったいどういう状況なのか教えてください!

 

『機密保持のために自分ではずそうとすると電流が流れるから気を付けてね』

「先に言ってください! 危うく外そうとするところでした――そして、次は誰だ!?」

「私だ――嫁よ、その王冠を渡して私と新婚生活を始めよう」

「だから嫁じゃないっての……」

 

 なんつーか、これどういう状況なんだよ……っていうか、会場に生徒が見えないんだが。

 

「客が入っていないぞ」

「うむ。当初は客を入れるつもりだったようだが、目的が達成できないからやめたそうだ。一応、カメラで撮っていて各教室で見れるらしい。今頃喫茶店では客が見ていることだろう」

「あ、そう……で、これ誰プロデュース?」

「原案は会長。そこに岸原が手を加えた」

「考えうる最悪のコンビだッ」

「そして衣装は教官が作った」

「ははは、さらに上があったよ。IS学園最凶のコラボだよ」

 

 ラウラが素直で良かった。質問したらちゃんと答えてくれるし。

 

「それでは、その王冠を渡してもらおう」

「なんか、嫌な予感がするというか、コレにどんな意味がある?」

「……さあ渡してもらおうか」

「いや無理。なんか嫌な予感しかしないから」

「ならば――無理やりにでも!」

「負けるかッ」

 

 素早い攻防。ラウラのラッシュと、それをさばく俺の手。やっぱ現役軍人相手に体術じゃ分が悪いけど――こっちだって死線を何度もくぐったんだ! 伊達に修羅場を乗り越えてきたわけじゃない!

 

「――――休符」

「ずれ――!?」

 

 こういう攻防の時は、自然とリズムというのが生まれる。そこに、一拍呼吸を置くことで相手のタイミングをずらす技術。最近、練習していたけど成功してよかった……

 そして、その次には――――決め技を放とうとして、なんか嫌な予感がしたのでバックステップをとっておく。

 案の定足元には銃弾の痕が――銃弾!?

 

「ちっ、はずしましたわ」

「セシリアさーん!? なんですかそれは!?」

「王冠を打ち抜くつもりでしたが――ここは接近戦に持ち込むべきでしたでしょうか? 一夏さんの危機察知能力は高すぎます」

「これはまずい――――後ろから忍び寄る人もいるし」

「痛い痛い! 一夏手をひねらないでぇ!」

「シャルまで……なんでそこまでこの王冠に」

 

 っていうか、三対一はキツイ。三人のシンデレラに追いかけられるのって色々と絵面的に怖いんだけど。

 壁の方から、私もいるぞぉって声が聞こえてきたけど……あの状態で動けるのだろうか? 勢いよく投げ過ぎて壁に埋まっているけど……俺が弁償するのか?

 

『お嬢様のお金で修繕しますのでご安心を』

『ちょ、虚!?』

『あたりまえでしょうが! 色々と周りに迷惑をかけ過ぎなんです! 大体あなたはいつもいつも――』

『虚さん落ち着いて! それ以上は体に障ります!』

 

 あれ? なんか増えた――っていうか弾も何をやっているんだろうか……

 とりあえず、俺が払うわけじゃないみたいだからよかった。

 

「さあ、一夏さん――その王冠を!」

「渡して!」

「もらうよ!」

「やば――――!?」

 

 万事休す、そう思った時だった――三人の魔の手から、王冠を守った者がいた。

 それは見慣れた姿だった。いや、格好は今日初めて見たけど……

 

「鈴!?」

「一夏! 助けに来たわよ! っていうかあたしもよくわかっていないけど」

『おおっと! 現れたのは王子様のメイド! 王子に付き従い、王子を手助けするメイドさんだ!』

「会長、完全に実況になっていやがる」

 

 時々それっぽい声が聞こえていたんだけど、自分のことで精いっぱいだから聞き流していたけどな。

 しかし鈴もこの状況は意味が分からないのか……あ、だから服もそのままなのか。

 

「あんたたちこれは一体どういうことなの!」

「……今日こそ決着をつけつためですわ」

「…………そう、本気なのね」

「ええ。少なくともわたくしは――どのような結果であれ今日決着をつけるつもりです」

 

 なんだろう? 先ほどまでのふざけた空気と違い――いつになく真剣な表情のセシリアがそこにいた。

 いや、先ほどまでもセシリアの気迫だけは妙に違う。

 

「あんたちは?」

「……ぼ、私は…………」

「もちろん嫁を手に入れる」

「ラウラはある意味予想通りだけど、シャルロット――ちゃんと覚悟ができていないのなら、あたしを倒せるとは思わないことね。一夏! 行って!」

「り、鈴!?」

「一人ぐらいは逃がしちゃうかもだけど――――その一人ぐらいあんたがなんとかしなさい」

「あ、ああ」

 

 なんだろうか。このセリフにそれ以上のなにかを感じたのは。

 この場を逃げるのはどうかと思うが、怪我をしないようにはしていると思うし……とりあえず、俺は体育館をでるか――――その扉から、大勢の生徒が現れなければだが。

 

「え?」

「――――ああもう! 一夏、とっとと行きなさい!」

「イエスマム!」

「あたしも後から追いかけるから!」

 

 それはいいんだけど……死亡フラグにしか聞こえないんだけど……大丈夫だよな?

 

 

 

 

 

 どれだけ逃げただろうか? なんか鬼気迫る生徒たちから逃げてどのくらいったか……とりあえず、一息つくことができる――と思っていたんだけど、俺の目の前には一番の難敵が現れていた。

 

 

「お待ちしておりましたわ。一夏さん」

「やっぱ、セシリアがくるよなぁ……」

「あら? わかっていらしたのですか?」

「いや、鈴のセリフからして――なんか、わざと通そうとしているような気がしてさ」

「……やはり、鈴さんのことならすぐにわかるんですのね」

 

 そういうと、一瞬寂しそうな表情を見せたセシリアは気を取り直したかのように、俺に向き合う。

 その瞳はただまっすぐに俺を見ていた。この王冠争奪戦のことなど頭にないかのように。

 

「一夏さん、わたくしはあなたに大事なお話があります」

「なんだよあらたまって……他の日じゃダメなのか?」

「別に今日でなければいけないというわけではありません――ですが、わたくしは今日を逃せばもう言うことはできなくなると思っています」

「……わかった、聞くよ」

「ふふ、ありがとうございます――では」

 

 その後、セシリアが言葉を出すまで実際には一瞬だったのだろう。しかし、何故だかは分からないが、とても長い時間がかかったような気がする。

 口の中が乾く。何かが変わる、そんな予感がしたんだ。

 

「一夏さん、わたくしはあなたのことが好きです――わたくしと、付き合ってください」

「――――え」

 

 俺はその時、なんて思ったんだろうか?

 予想外? 考えてもいなかった? そんなことよりも――なんで俺に?

 いや、本当は分かっていたのかもしれない。心の片隅では……たぶん、そのぐらいには。

 IS学園で過ごす中で、俺と相手とお互いに友情の関係を越えて意識していないのはのほほんさんぐらいなのだろう。いや、リコリンもか。

 それに気が付いたのはもっと後のことであろうが――今はただ、セシリアの告白に驚くばかりだった。

 

「せ、セシリア?」

「あなたをお慕いしていると申したのです。それで、お返事は?」

「それは……」

 

 答えていいのか? 今、この感情に身を任せて――だけど俺の中で答えは既に出ていた。

 今後、その答えが変わる可能性はとても低いと言えるだろう……それこそ、劇的な何かが起こりでもしない限り。いや、俺の中で何かが変わりでもしない限りは、だ。

 

「…………ごめん」

「――――いえ、わかっておりました。そうですわよね……もう、誰かがその心にいらっしゃいますものね」

「やっぱり、俺ってわかりやすいか?」

「ええ、それはもう――ですが、わたくしもこの気持ちから目を背けることはしたくないのです。だから、思いを口にしましたが……これは辛いですわね」

 

 涙。正直、心がえぐられるようだ――だけど、この痛みを受け止めなくてはいけない。

 俺は今、彼女に言葉をかけるべきではないのだろう……だから、ごめん――

 

「ま、こういうのは女の役目ってね……ホラ、ハンカチ使いなさい」

「このタイミングでなんで貴女なんですか……」

「他の誰かができるの?」

「……ふふ、そうですわね」

 

 ただ俺にできることは、二人の会話が聞こえない場所に行くことだけだった。

 ああ、痛いな……

 

 ◇◇◇◇◇

 

「初めての恋だったんです」

「……」

「最初は、気に喰わないという感情でした――ですが、正面からぶつかって、その芯の強さを見て、心でふれあって――好きになったんです……本気だったのに、遅かったんでしょうかね」

「スピードは関係ないわよ。それだったら、あたしだって箒に負けるんでしょうね」

「一夏さんを一人にするようなことがあれば、かっさらいに行きますわよ」

「上等よ……絶対に他の誰にも渡さないわ」

 

 少女たちは、互いに一人の男を好きになった。選ばれるのは一方のみ。

 

「まあ、今日ぐらいはあたしの胸をかしてやるわよ」

「貸すほどないくせに――ぐすっ」

「喧嘩を売らないの……まったく、強がりばっかり」

「恋敵に慰められるのは屈辱ですが――ありがとうございます」

「……一夏と一緒にいたいから、IS学園に入ったけど…………あんたと会えたことも、そう悪いことじゃないと思うわよ」

「…………わたくしも、最初は色々とありましたが……鈴さんと出会えたことは良かったと思いますわ」

 

 もう一方は選ばれない。

 されど、二人の間に溝ができるわけでもないのだ。

 時には、それがより強い絆を産むこともある。

 幾ほどの年月が流れても、途切れないほどに。

 




ハーレムものでない以上、失恋描写は取り扱わなければいけない。
私はラブコメは好きですが、最後にちゃんと一人を選ぶタイプのものが好きです。



界放祭ってどのくらいの人が行くんだろう……
当日は、たぶん武骨な十字架をぶら下げていきます。それ以外の特徴はあえて言わない。
友人にステルス性が高いとよく言われるので見つけられないでしょうし。
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