仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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駆け足すぎたかなぁ


EP163.力を合わせて

 一夏と相対した少女――Mと呼ばれていた彼女は、変身と同時に駆け出した。ただ、一夏を殺すために。

 

「ハァアアア!!」

「――危なっ!? いきなり何すんだ!」

「黙って――死ねッ!!」

 

 突きつけられた銃口から、エネルギーがドリルのように放射されており、かするだけでもマズイ。そう思わせる凶悪な何かがそこにある。

 一夏は体をひねるかのようにかわすが、空気の刃が一夏を捕えた。

 

「――アガッ!?」

【レーズンスカッシュ?】

 

 どこか、おどろおどろしい音と共にMの右足に炎が灯る。体が動かせない一夏はそのままではその一撃を喰らってしまうだろう。

 

(って、それはまずいだろ! 考えろ――この状況を好転させる一手を! 体が動かせなくてもかわすことの出来る一手――やっぱ、一つしかねぇよな!!)

 

 部分展開。ISは一部分だけを展開することができる。一夏が展開したのはスラスター。そう、もはや一夏の得意技と言ってもいい技術。瞬時加速。

 

「う、おおおおおお!!」

「――チッ、かわしたか」

 

 危なかった。体にかなりの負担がかかったが、あの攻撃は本当に危険であった。

 

(そもそもベースになっているハズのブドウアームズは遠距離型のアームズだぞ……接近してあの威力とかおかしいだろ色々と…………うかつに近づくこともできない。かといって、元が遠距離タイプだから――)

「黙っているのならさっさと死んでくれよ。私だって気が長いタイプじゃないんだ。ようやくめぐってきたチャンスをまたふいにしたくない」

 

 今度は一夏の方に銃口を向けて、そこから弾丸を放ってきた。さすがに、距離が離れている分見切る余裕はあるが……銃弾は予想以上に速い。

 

【メロンエナジースカッシュ!】

 

 拳にエネルギーを纏わせて、弾丸を弾く。

 流石にその行動は予想外だったのかMは一瞬動きを止めた。

 

【メロンエナジー!】

 

 ソニックアローにすぐさま装填されたメロンエナジーロックシード。そして、一夏もすぐさま矢を放った。Mもこれには防御をするしかない。

 それは彼女にとって自己嫌悪を起こす選択。

 

(くそっ――こんな温い環境で育ったガキ相手に防御だと!? ふざけるなよ……ふざけるなよ織斑一夏!!)

 

 その思いにこたえるかのように、彼女のドライバーに装填されたロックシードから光があふれる。それは、かつて英たちが自分の思いで強くなっていったのと同じようでもあり、どこか違う。

 放電と共にその出力が上がっていくが――そのことに気が付けたものはいない。

 

「はあああ!!」

「オイオイ……アレを弾くのかよ」

 

 一夏にとっても、負けるわけにはいかない。

 この少女は――当時は少女と知らなかったが――鈴を失うかもしれなかった事件の犯人だ。一夏が負けるということはすなわち、あの日起こるかもしれなかった最悪な結果を今この場で再現されてしまうということ。

 

(こいつが俺だけを殺してそのままとは思えない――だったら、負けるわけにはいかないだろ!!)

 

 その思いにこたえるかのように、一夏のドライバーに装填されたロックシードからも光があふれた。されど、その輝きは一夏がいつか見たことのあるものだった。

 もっと強く、もっと――大切な人を守るために。その思いは純粋だからこそ強力。

 

「うおおおお!!」

「くそっ――」

 

 ソニックアローと古龍砲がぶつかり合い、火花を散らす。ソニックアローの刃にはオレンジ色の光が。古龍砲の銃口からは赤紫色の光の刃がそれぞれ輝きを増していく。

 二人の思いにこたえるかのように。

 ロックシードは瞬くように輝く。より強く。もっと強く。

 

「「――――もっと、もっとだぁあああああああ!!」」

 

 原動力こそ違えど、その輝きはとても似ていた。

 そして――変化は唐突に起こった。カチン、と甲高い音が鳴り響いたかとおもった次の瞬間には二人の体が弾き飛ばされていたのだ。

 

「――――ぐほっ!?」

「ガッ!?」

 

 何が起きたのかはわからなかったが――強い変化が起きようとした瞬間、二つの力がまるでお互いに中和するかのように打ち消し合ってしまった。

 あたりに残されたのは果実のような見た目の小さなエネルギーの粒。それもすぐに消えてゆく。

 

「一体、何が起こったと――なっ!? ロックシードのエネルギーがなくなって――――!?」

 

 Mにとって、その事実は認めたくないことだろう。自分は戦闘続行するには厳しい。

 されど彼にとってはそうではなかったのだ。

 

 

 

【メロンエナジースパーキング!】

 

 

 

 ドライフルーツ系のロックシードはいわば、一回だけの使い捨てにする代わりに出力を大幅に強化したもの。それに対して一夏たちの使っているロックシードは体への負担を最小限にしようと模索しているが――何度も使える。その違いがここに現れた。

 

(しまった――手持ちのロックシードで今有効なものは――――どれだ? どれを使えば、こいつに――――)

 

 考えても、答えは出ない。

 負けるのか? 何かが――黒いナニカが彼女の中に入ってくるようで……

 

『M、聞こえる?』

『スコールか!?』

『すぐにそっちに向かう――全力で防御しなさい!!』

 

 言われるが早いか、スパーキングを発動させて一夏の攻撃を全力で防ぐ。ロックシードにひびが入っていくが気にせず、スコールの指示通りに防ぎきって見せた。

 されど体への負担は大きく体が思うように動かなくて――

 

「これ以上は、私としても困るのよね」

「す、こーる……」

「またオーバーロードかよ……人間体なのに炎を操るとか…………」

 

 金髪に、炎のドレスを纏った美女。スコールがそこにいた。彼女は変身が解除されたMを小脇に抱えて悠然とたたずんでいる。

 見てわかる。一夏は彼女と自分の実力差を感じ取ってしまった。

 

(やべぇ――レベルが違いすぎる……何者だよ…………)

「あまり怖い顔をしないでくれるかしら? IS学園が思った以上に手ごわいし、空の上のお馬さんがやってきそうだからね……私たちもそろそろ帰るわ」

「信じられると思っているのか?」

「別にいいのよ――戦力の分析は終わったから。IS学園じゃ、私たちを止められない

「なんだと!?」

 

 舐められている――心のどこかで、IS学園がこいつらと正面から戦うような組織ではないことも理解してはいるのだが。それでも、その言葉は認められないようなものだ。

 

「ま、まて……まだ、アイツを…………」

「ここはあきらめなさい――私だって、あきらめなくてはいけないものが多すぎて、全部ぶち壊したいけどね」

 

 一瞬、彼女の瞳の中に憎悪が見えた。

 背筋が凍るかと思ったものの――すぐにその顔は見えなくなってしまう。クラックが開くとともに、彼女たちの姿が消えたからだ。

 

「……勝ったとも、負けたともいえないよな…………そうだ! 他のみんなは!?」

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 セシリアの放った矢は確実にオータムの体を貫いていた。内部がエナジーロックシードのエネルギーで焼かれたために、いくらオーバーロードと言えどその激痛に耐えることもできない。

 

「が、ガアアアアアア!?」

「やりましたわね……」

「ホント、厄介すぎるわよ…………こんな化け物が、最低でも三体は残っているんだから」

 

 薄れゆく意識の中――オータムが聞いたのは、自分を倒したと思って自分を勘定から外した鈴の言葉。

 ふざけるな。まだ戦える。まだ、お前らを殺すことなんて――そこで、自分が地面に倒れていることに気が付いた。認めたくない現実が、そこにあることに。

 

(嘘だろ――こんな乳くせぇガキに? このオータム様が? 負けた? 死ぬ? は? 何の冗談だ――そんなの認められるわけないだろ――認めてたまるかよ――そんなの、許せるかよぉぉぉ!!!)

 

 その怒りに呼応するかのように――植物が彼女の体を包み込む。

 

「なっ――!?」

「まだ生きて――ッ」

 

 そして、彼女の口と思しき部分に――入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ヒャハ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 変化はすぐに――

 

「キャア!?」

「セシリア!? しっかりして!」

 

 ――最悪の形で、起こる。

 

「お前らが悪いんだからな――この、おおおおお、オータム? おーた? オータム様、サママママ、サマヲホンキニサセタンダカラナ!! RYAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」

 

 奇声と共にブクブクとその体が膨れ上がってゆく。

 劇的な変化。今までの人より少し大きい程度のサイズから――巨大に。

 もう人としての言葉は出せない。そこにあるのは自分を見下した者たちへの殺意。

 彼女自身――自分がしてきたことに向き合えなかった。他のオーバーロードたちが強くなったとき、それは自分と良くも悪くも向き合った時だった。されど、彼女は最後まで自分を見ることなく逃げ出してしまった。

 それが、この変化。

 

「GAAAAA!!」

「……ああもう! どうすりゃいいってのよ!!」

 

 ゲネシスドライバーですらもダメージを軽減するのには限界がある。セシリアの体がまだしびれているのがこの証拠だ。物理的な一撃――足での一撃――で体がしびれるのだ。その威力は恐ろしいものがある。

 

「セシリア、動ける?」

「…………もうしわけ、ありません……体が、思うように動かなくて」

「いいわ――あたしが、逃げ切ってやる」

 

 セシリアを抱えて、すぐにでも走り出そうとするが――どこに逃げればいいのだろうか。

 その殺意はまっすぐに自分を向いているのだ。これは、ピンチを通り越して絶体絶命と言うのだろう。

 

(あー……一夏、大丈夫かなぁ)

 

 ダメかもしれない。そう思ったときには――ただ、彼の心配だけが出てきた。

 これから死ぬかもしれないのに。それなのに、鈴にとってはそのことだけが頭に残っている。

 

 

「安心しろ。そんなに柔じゃねぇよ!」

 

 

 だから、彼の姿を見たときは我が目を疑った。自分の姿が変わっているのに気が付いた彼に。

 すぐに自分だと分かってくれた彼に。

 

「GAYYAAA!?」

「そっちの青いのはセシリアか?」

「は、はい……よく、わかりましたわね」

「鈴と一緒にいるからな」

「……ふふ、やはり鈴さんはすぐにわかりますか――鈴さん、もういいです。動けますわ」

「で、でもまだふらついて……」

「こんなところでふらついていたのでは、女がすたりますわ!」

 

 立ち上がり、眼前に迫る巨大な敵を睨む。

 足手まといなんて嫌なのだ。こんな奴に負けるようではオルコット家の当主として、死んだ両親に申し訳が立たない。

 

「状況はよくわかんないけど――カッコいいと思うぜ!!」

 

 空から、緑色の巨大な玉が降ってきた。

 変形して巨大なブレードで蜘蛛を切り裂いたかと思えば、離れた場所に弾き飛ばしてしまう。

 

「空も片付いたし、アイツら逃げ出していったみたいだぜ――あとはそいつだけだ!」

「弾! ――そうか、だったら…………みんな、最後のひと踏ん張りだ――元々、アイツは人間だし、正直倒すことが本当に正しいのかなんてわからないし、それでいいのかなんて考えちまうけど――ついてきてくれるか?」

「聞くまでもないわよ――あたしは、誰が何と言おうと一夏と一緒よ」

「ふふ、まったくくだらないことを聞かないでくださる? 例え人間だったとしても、あの下種な考えは認められるようなものではありません――せめてもの情けをかけるというのなら、もう終わらせてあげるべきです」

「そうだぞ。あれじゃもう人の心なんて残っていないだろ――むしろ、そのままの方が辛いだろうな」

「……ああ、そうだよな――それじゃあ、行くぞ!!」

 

 四人は駆け出す。

 一夏が近づいて、足を斬り行動を阻害する。

 鈴が飛び上がり、掌底を眼球が密集しているあたりを叩き込む。視界を揺らし、次の攻撃を察知させない。

 

「お二人ともナイスですわ――それでは、正直なところ立っているのも辛いですので、貴女もお坐りなさいな」

 

 弓を引き――オータムだったものに目がけて矢を放つ。

 

【レモンエナジー!】

【レモンエナジー!】

【レモンエナジー!】

 

 幾度もその体に、ロックシードのエネルギーをチャージした矢を放ってゆく。セシリアの技術があるからこそ、寸分たがわずその矢が命中している。

 その結果、巨大な蜘蛛は動きを封じられてしまった。

 

「次は――こいつだ!!」

 

 弾がスイカ双刃刀を回転させて、その足すべてを切り裂いてゆく。もう、動くことはできない。

 

「――――GA」

 

 オータムであったものは、何を思ったのか――ただ一つ見えたのは、一夏の右足に光が集まってゆくことか。

 

【メロンエナジースパーキング!】

 

 オレンジ色と白の光。白式の力が右足に充填されているのだ。肥大化したとはいえ、元はオーバーロード。普通の攻撃ではまだ倒しきれない。

 だからこそ――もう容赦はしない。

 

「お前たちが、何を奪ってきたのか――それをよく考えやがれ……」

 

 一夏も断片的にしか聞いていないが、こいつらのせいでゴーストタウンがいくつも生まれていることは知っている。町の中全部インベスにされたなどまだいい方だ。

 それ以上に凄惨な光景が――こいつらのせいで生み出されている。

 

「うおおお――――!?」

 

 油断はしていなかった。最後のトドメ――それを、かわされてしまう。

 糸。口から放出された糸によりインベスは空へと飛び上がったのだ。

 

(――マズイ、どうする? このままじゃ――――)

 

 だけど、彼は一人ではない。

 

「一夏ぁああああ!!」

「鈴!?」

「とっ、べぇえええええええ!!」

 

 鈴がソニックアローで彼を上空に叩き上げた。

 ああ、なんだかんだで支えられているんだよな――隣に飛び上ってきた大きな緑色の玉を見て、より強く思う。

 

「使え、一夏ぁああああああああああ!!」

「行ってください一夏さん!!」

 

 どうやら大玉モードのスイカアームズを弾とセシリアで打ち上げたらしい――ありがたく、使わせてもらおう。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

 

 右足にまとったエネルギーを伝播させるように蹴り――インベスめがけて叩き込んだ。

 

「――――YA、IYAAAAAAAAAAAAAAAA!?]

 

 大きな風穴を開けて――インベスは絶命した。

 こうして、IS学園文化祭の戦いは幕を閉じたのである。

 




少し精神的の辛いことがあって、うっかり予約投稿忘れるところでした。

もうすぐ次の巻かぁ……
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