6巻は原作通りに進める部分は少ないです。
EP165.その日に向けて
「キャノンボールファスト?」
「まあ、ISのレースよ。ただしバトルありのね。知らなかったの?」
「あー……そういえばそんな名前だっけか」
昔、千冬姉が出ていたのは……第二回の時はいろいろあって記憶に残っていないんだよな。
唐突だが、俺と鈴がそんな話をしているのは件のキャノンボールファストが間近に迫っているからでもある。あんなことがあったばかりなのにすぐに行事をやるのかよとも言いたいが、市のアリーナで行う市の行事であり、中止するわけにもいかないそうだ。
IS学園の生徒は訓練機部門と専用機部門に分かれて戦うらしいが……一年はともかく先輩たちはどういう組み合わせなんだろうか?
「合同か、先輩たちとは分けるのか……まあそこは数日もしたら連絡があるでしょ」
「だな」
しかし、学園祭から数日が経ったが……鈴と一緒の部屋と言うのも落ち着かない――かと思っていたのだが、妙に落ち着く。もちろん気恥ずかしい時とかもあるけど、それ以上にリラックスできる。
それを口に出すのは恥ずかしいからしないが――なぜ鈴は顔を赤くしているんだろうか?
「鈴?」
「な、なによ」
「なんで慌ててるんだよ……」
「別に慌ててないッ!」
? 変な鈴だな。
あ、そうだ一つ聞くの忘れていたわ。
「鈴、キャノンボールファストっていつやるんだ?」
「たしか、27日――――あ」
「……その日ってたしか…………」
「一夏の誕生日、よね」
そう、9月27日は俺の誕生日なのだ――しかも今年は日曜日。高校生にもなれば誕生日を積極的に祝うということはしないもんだと思うが……割と憂鬱になる。
まあ気にしていても仕方がないか。
「……せっかく、誕生日祝ってあげようと思ったのに」
「…………」
鈴、リアクションに困ることを言わないでくれ頼むから。
「――そうだ、こうすればいいのよ」
「鈴?」
「一夏! 楽しみにしていなさい!」
「お、おう」
なんだかわからないけど……気合十分と言う感じだな。まあ、悪いようにはならないか。
そんなわけで、厳しいことも多いけど――いつも通りと言うわけではないが、それなりに平和な日常が過ぎていった。授業は大変だし――食堂ではアイツも頑張っていることだろう。
「それじゃ、あたしはシャワー浴びるけど――のぞかないでよ」
「だだ、誰がのぞきなんて!」
「ふふ、冗談よ」
心臓に悪いからやめてくれ……ヤバい、想像しちまって鼻が――やっぱりリラックスなんてできないじゃねぇか!! からかわれているのは分かるが、鈴も顔を赤くするぐらいならやるなよ……
◇◇◇◇◇
「結構、大変だなぁ……」
「だんだんー、おかしくれー」
「……虚さんに怒られるぞ」
「お姉ちゃん怖いからねー……でも自重しない!」
しろよ……俺もIS学園で一時的に預かられるようになって数日。食堂でバイトまがいのことをして、それ以外の時間は勉強。それなりに自由時間もあるから、それほど不自由と言うわけでもないが――
「……一夏の言った通りだな。結構キツイ」
周りは女子ばかり。天国じゃないかと最初は思ったさ。ああ、思ったさ――でもな、先に肩身が狭いと感じるから変なこと考える余裕なんてない。
一夏でもキツイって言っていたぐらいなんだ……視線だけで死ねるなコレ。
「表に出る必要がないってのが幸いだったけど……」
「おーかーしー」
「自分で買いだめしているの食べなさい。俺は餌付けする趣味はないから」
「えぇ……お姉ちゃんは餌付けするつもりなのにー」
「人聞きの悪いことを言わないでくれ!! 誰かヘルプ――そこの眼鏡っ子! ヘルプミー!」
「――――いま、リコリンのことを呼んだね?」
「すまん、人違いだった」
「そんなこと言わないで――このリコリンに全部お任せ!!」
「やめてくれ! あの文化祭で千冬さんとかここの生徒会長が暴走した原因だってのは知っているんだよッ!」
「そんなこと言わずにこのリコリンに身を任せてよ!」
「ねえだんだんーおかしーおかしくれー」
「なんだこの妖怪おかしくれ……」
切実に、誰かの助けが欲しい。できれば年上のお姉さまだといいけど――欲を言えば虚さんだが、仕事が忙しいだろうな。
そんな俺の思いが通じたのか――年上のお姉さんがやってきた。
「あら? たしか一夏君の友達の……」
「チェンジ」
「なんで!? 私、生徒会長よ! なんでそんなこと言われなくちゃならないのよッ! っていうか、最近私の扱いが悪いんだけど!!」
「それは、貴女が会長の仕事をしているとは誰も思っていないからです」
「ぐはッ!?」
「てぃなぽん、バッサリいくねー」
違う。俺の求めていた年上は違う。
そして、後からやってきた金髪の人は……たしか鈴の友達だっけか?
「鈴の友達、あと元ルームメイトのティナ・ハミルトンよ。改めてよろしく」
「そういえば夏祭りの時にあったよな」
「ええ――ところで、数馬君って元気にしている?」
……数馬、後で真剣に話をしたいんだが…………もうすぐ一夏の誕生日だし、その日には会うだろ。その時に問い詰めてやる。
しかしこの子に罪は無いから、真面目に答えるか。
「た、たぶんな……最後に見たときは――――アイツは良いやつだったよ」
「え――何があったの!?」
「…………心配しなくても27日には会えるよ」
「そ、そう……でもその日ってキャノンボールファストよね?」
「そうだねー」
「いいもん、会長権限使って色々してやるもん」
キャノンボールファスト? またなんかのイベントがあるんだろうか……一夏の誕生日なんだが、アイツは今年厄年なんじゃ…………いや、俺もだよな。鈴とか他の面子も。
しかし、この会長早く何とかしないと…………蘭はちゃんと会長に仕事……しているよな。
「――会長!」
「やば、見つかった――ごめん虚!! 私はいかねばならないのッ――――ああ!? なんで足を掴むのよリコリン!」
「ごめん会長! 私、先輩に買収されているから!」
「この裏切り者ぉおおおおおお!! それでも生徒会副会長なの!?」
――え、この人副会長なの!?
「たしかに私は副会長です――だからこそ、先輩には逆らえないッ」
「ほら、本音も帰りますわよ」
「…………おかしは?」
「仕事、わかっているわよね?」
「……はい」
「それと、五反田さん……頑張ってくださいね」
「そちらこそ――それじゃあ、また」
「ええ、また」
「え? なに? なんでここだけロマンスな空気が漂っているの?」
「会長、聞くのは野暮ってもんですぜ」
「そうだよー、ここは静かに見守るべきー」
「いいなぁ……」
「……私だけ、ついていけていないというのッ!?」
◇◇◇◇◇
IS学園屋上――そこにシャルロット・デュノアは佇んでいた。
「これから、どうしようか……」
彼女自身、記憶が曖昧なのだが……学園祭が終わる間際で誰かと会話していたような記憶があるのだ。何か大事な話だったようにも思うが……
いったい何があったのか、詳しいことは覚えていない。
「うーん、考えていても仕方がないよね……キャノンボールファストが終わったら、一度本国に戻ってみよう」
ISの改修もしたいし。そう考えているものの、帰るというのは抵抗がある。簡潔に言えば帰りたくはないのだ。今更、父になんといえばいいのか。
こうして普通に過ごせている以上――あの人が自分のために何かしてくれているのは間違いないというのに。
「…………考えていても、仕方がないか――――あれ? 箒?」
そこで、シャルロットは箒が現れたことに気が付いた。しかし――どこか様子がおかしい。それは、彼女だからこそ気が付けたことだろう――その瞳の中に宿るものが、自分と同じだったから。
「……シャルロット、か」
「…………どうしたの? そんな不満そうな顔をして」
「不満? だれがだ? ようやく願望が実現しそうでうれしいというのに――この私が不満そうだと?」
「うん。凄く不満そうだよ――一夏が鈴に盗られたのがそんなに不満?」
「――ッ!」
ガンッ! という大きな音を響かせながら、箒はシャルロットの体をフェンスに押し付ける。その顔は――憤りのような、苦悶に満ちた表情だった。
それを見たシャルロットも――ああ、やっぱり、と。
「箒――君のソレはただの執着だよ。さびしい子供が誰かに頼ろうとしているだけ。現実を直視しないで、楽な道に逃げようとしているだけだ」
「…………れ」
「僕も同じだからわかるよ。君はただ、姉が自分に向けている感情を認めたくないだけ。自分が犯した過ちを認めたくないだけ」
「……まれ」
「そうやって、自分に言い訳して逃げ続けていたら――そりゃ不満な顔にもなるよね。だって、何をしても裏目に出るんだもの。そうやって逃げている限り、箒の望みがかなうことなんて――」
「黙れ!! お前に、お前に私の何がわかるッ!! お前の様な奴に、わかってたまるかッ!!」
箒は腕の紐――紅椿の待機形態に、シャルロットは胸のペンダント――ラファールの待機形態にそれぞれ手を当てる。一触即発、今まさに事態が大きく動こうとしていた。
「ふん――私は、選ばれたのだ――――私は自分の望みを、願いをかなえてみせる」
「願い――――ッ」
何かが、シャルロットの頭の中で弾けた。願いと言う単語が、彼女の記憶を呼び覚まそうとしているのだ。
その隙を――箒が見逃さないハズもない。シャルロットにとびかかろうとして――そこで誰かが屋上にやってきた。そのため、行動を中断させられてしまう。
「誰だ!」
「む――二人とも、探したぞ」
「ら、ラウラ?」
「……何の用だ?」
「おおそうだ! 27日は嫁の誕生日だというではないか! 鈴から伝言を預かっているぞ」
「鈴から?」
「…………なんだ」
「キャノンボールファストがあるが、終わったら一夏の家で奴の誕生会を開く。確かに伝えたからな!」
それだけ言うと、ラウラは戻っていった。他の面子にも連絡をしに行ったのかもしれない。
しかし、この場の空気は思わない方向に崩れてしまった。これでは、戦おうにも戦えない。この空気のままだと色々と格好がつかないのだ。
「……仕方がない、今日はこのぐらいにして部屋に戻ろう」
「…………わかった。だが、次は――決着をつけてやる」
「怖い怖い。まったく、何があったのやら……一夏たちが仮面ライダーになっていて、自分は見ているだけなんて歯がゆいだけだし……それもあるのかな」
シャルロットは確かに箒の内面に近いものを持っていた――しかし、決定的な部分で違う。そのため、箒が仮面ライダーに向ける憎しみだけは理解できるようなものではなかったのだ。
シャルロットにとって、仮面ライダーは尊敬の対象であり、憎むなんて考えてすらいない。しかし箒にとっては――一家離散の原因の一つで、自分と一夏を隔てた壁だ。そうなるように仕組んでいる何者かがいることは――箒さえも気が付くことはなかった。
「でも、願いか…………もしも、僕が――――やめよう、せっかくできた友達を捨てるなんて……」
それでも、シャルロットの頭の中に浮かんだ考えは――こびりついて離れない。
◇◇◇◇◇
宇宙、スレイプニル船内
「いやぁ……ようやく作業が終わったなぁ」
「だねー…………結局、完成したはいいけど起動しなかったけど」
「言うな。何が足りないんだろうな?」
英と束の目の前にあるのは真っ白なロックシード。形は完成しているのだが動く様子はない。マルスやオーバーロードたちとの戦いのための切り札に用意したのだが……一向に動く気配がないのだ。
いくつかの機能が存在しており、一部の機能が使えるものの……ドライバーを使用してアームズを装着することができない。これでは、戦力増強には使えないではないか。
「ハァ……気にしていても仕方がない。百花さん、準備はできてる?」
「ええ。量産型ドライバーの製造も、配備も滞りなく。もうすぐ、この船ともお別れですわね」
「できれば壊したくはないし、お別れをするつもりもないけどな……もう、僕たちの家みたいなものだし」
「そうだね……結構長い間ここにいたよね。5年ぐらい?」
「ですわねー……フロンたちも地上に降りる準備はできましたわよ。それでは、向かいましょうか」
「ああ――とりあえず、キャノンボールファストのタイミングでアイツらが動きそうだし、IS学園に向かうぞ。スレイプニル船員、最後の大仕事までもう半月もない……絶対に、この世界を守るぞ」
「うん。たくさんの人たちに支えられているんだ――束さんも、覚悟はできている。その上で、帰ってこようね」
「いつか、思い出として語れるように――行きましょう」
最初の戦士はついに帰還する。
もうすぐ、最後の戦いの火ぶたが切って落とされるだろう。
日常と不穏な発言。
そういえば、オオカミさんシリーズ後日談が来月発売というのを見て――ふぁっ!? とリアルに言ってしまいました。待っていたけど、待っていたけど、本当に来るとは!?
あと、バトスピの新アニメが局変わるため……パラボラアンテナを取り付けようと思うのですが、料金の方がよくわからない。
BSジャパンは受信料かからないらしいですが、本当なのだろうか……詳しいことがわからないから、色々と不安です。
本気でシャイニーハーツデッキを構築してみようと思う。