おそらくすぐにキャノンボールファスト当日に入ります。
キャノンボールファストまであまり日にちもない。俺たちはそれぞれ訓練にいそしんだり、機体の調整や追加パッケージをインストールしたりといった作業で日々を過ごしていた。
そんな中、弾が背景に徹しようとしていてリコリンとかが迷惑かけたり、会長が唐突に変なことをしようとして先輩に折檻されたり、いつも通りの日常が過ぎている。
「それをいつも通りの日常にするなよ」
「いや、見ていて面白いなって」
「うるせぇよ! 大体お前だって同棲生活はどうなんだよッ!」
「……」
「照れるな。男が照れているのを見ても何も面白くねぇから」
「自分から言ってきたんじゃないか…………」
正直な話、いつうっかり変なことしてしまうんじゃないかと不安になっているんだ。
だから一人部屋に戻りたいなと思うわけだが……
「しばらくはこのままだろうなぁ」
「不満なのか?」
「そういうわけじゃねぇけど……まだ早いって感じかな」
「まだ、ねぇ……」
「な、なんだよ」
「一夏も言うようになったなって」
「なんか嫌な言い方だな」
「別に貶しているわけじゃねぇよ。むしろ成長したと思ってるぞ」
「それにしては棘があるんだが」
「気が付かないお前が悪い。今までのことを思い出せ」
「……?」
「ま、死んでも治んないか」
「ひでぇ!?」
いったい俺が何をしたっていうんだ……え? むしろ何もしていないからダメ? どういうことなのか……
「それよりも、何か話があって俺のところに来たんじゃないか? こんな夜に」
「おお、そうだった」
そう――今はもう既に夜。弾も元俺の部屋であるここで寝る時間だったろうが、無理に話を聞いてもらおうとしたのにはわけがある。
正直、この手の話は鈴たちにはしたくないからな……
「なあ、亡国機業ってどういう漢字で書くかわかるか?」
「? 企業だろ」
「違う違う――機業。機織りの方だ」
「機織りの企業――あれ? この字面って……」
「アイツらの仲間のライダーにさ、なんか千冬姉みたいな顔をしている奴がいたんだよ……チラッとしか見えなかったけど」
「気のせいじゃないのか?」
「でも、俺に関しては色々と無関係でいられない事情があるって前に英さんが言っていたんだ……織斑って織物に出来た斑って意味だし、なんか無関係に思えなくて……」
「それが相談かよ……別に気にする必要はないんじゃないか? それこそ鈴に抱き着いてまぎらわせろよ」
「いきなり何を言い出してんだよッ!!」
「だったら千冬さんに聞け。核心的な部分も知っているだろ」
「……知っているからこそ、はぐらかすだろ」
「はぐらかすのがわかっているのなら、もう確定だろ」
「…………あー」
そうだった。千冬姉がはぐらかすってのがわかっている時点で――おそらく、俺の両親が関わっている可能性がかなり高いのだ。物心ついたときには記憶にない両親、小学校入学以前の写真が無いこと。色々と気になる点が多いのも事実。
「結局、気合を入れるしかないんだな」
「そりゃそうだろうな。なんでまたそんなことを?」
「…………ちょっと、思うところがあってな」
この前、鈴に耳掃除をされたとき――なにか懐かしい気分になったのが妙に気になっている。
そんな経験は無いはずなのに、俺の体は何かを覚えていた。
「でも、何かかわりがあるとしたら――」
――亡国機業は、マルスに乗っ取られた。その事実が、何を意味しているのか……はっきりとしたことは言えないが……なんとなく、俺の過去について知ることはできないんじゃないか、そう思うのだ。
「無理に昔のことを知る必要なんてないんじゃないか? 今に不満でもあるのかよ」
「そんなわけないだろ。たださ、IS学園つーか、専用機持ちって家族関係で色々あった奴が多いだろ」
「たしかに」
「だから、俺も向き合ってみたくなったってところかな……あとは、色々ときっかけもあったわけだけど――考えてみると、色々とマズイことが発覚するんじゃないかって」
「……ま、なるようになるだろ」
「そうなんだよなぁ……結局のところそうなるんだよ」
今後何があってもいいように、トレーニングのメニューを強化するしかないか。
◇◇◇◇◇
地上に降りてきた僕たちはまず、地上での活動拠点を準備することとなった。
しかし、一時的に降りてきたことは結構あるけど、本格的にこっちに来るのは久しぶりだよなぁ……
「久々に連絡をくれたかと思えば、色々と無茶を言うよね」
「あはは、すみません楯無さん」
「今は娘に譲ったけどね」
「じゃあ、先代さん」
「……呼び方は何でもいいけど」
とりあえず、腹ごしらえをかねてファミレスで作戦会議。我毛さんもきていて、今後の予定を煮詰めることになった。対してスレイプニルのメンバーだが、束、ジョニーと僕でこの作戦会議に出席。あと、フロンとクロエとリリーもついてきているが、普通に食事中。
他のメンバーはパトロールや、各地に伝令に行ってもらっている。かおりさんにはスレイプニルを格納庫に運んでもらっているけど。
「しかし、怪我はもういいのかい?」
「ええ、蜂矢英――完全復活です。新兵器も作りましたしね。全然動きませんが」
僕が取り出したのは、今までのロックシードとは違い、鍵の形をしたもの。ノロシロックシードと連動させるために作ったんだが……設計は上手くいっているのに、何かが足りない。
「それじゃあ意味がないんじゃ……」
「内部にISコアに流されたウイルスを除去するためのプログラムが入っています。束の持っているもう一つのロックシードと組み合わせることで、その機能を使えるんですけど……」
あいつらの流したウイルスは、ヘルヘイム由来のもの。ヘルヘイムの力を機械化しているということは、おそらくロックシードを応用した何かだと推察される。そこで、ロックシードを接続するスロットがあるのではないかと考えたわけだ。そこに束の持っているロックシードをセットし、鍵穴を空ける。そこから僕のロックシードを使うことでウイルスを除去する。二つ合わせて使うことで相手のプロテクトを打ち破るのだが……
「そっちしか使えそうにないんですよね」
「見事に真っ白なロックシード……」
「オーバーロード相手には厳しいのではないか?」
「一夏たちがオーバーロードの中でも弱い部類とはいえ、倒していますから無理ではないと思いますよ。各個撃破する必要がありますけど。とりあえず、もうすぐ事は起こると思うので――根回しの方、よろしくお願いします」
「ああ……しかし、本当なのかね? 亡国機業の最終的な目的が…………全世界のヘルヘイム化というのは」
「間違いないと思います。元々、次元が割れて出来た、本来は一つの世界ですから。一つに戻ろうとしているのは自然の摂理なんです。ただ、それが――あちら側なのか、こちら側なのかは違いますが」
「両立はできないと?」
「いつか、ほころびが生まれると思います……いや、すでに生まれているのかもしれません。束、データはあるか?」
「うん。これが最近のクラックの展開率や展開したときの形状のデータ。10年前と比べても……」
頻度も大きいし、より大きく開いている。中には歪に開いたものも多い。
「見ての通り、ヤバい感じなんだよね」
「これは……」
「見ただけでわかるほどにか……そういえば、インベスの方は?」
「変異種なんてざら。こっちもできる限り対処しているけど――巨大型も増えている。ダイダラボッチインベスみたいな規格外もいるしな。アレは二度と戦いたくない」
おそらくは、オーバーロードのなりそこないかなんかだと思うけど。
あいつら性懲りもなく人体実験しているみたいだし……早く決着つけたいところなのだが、そういうわけにもいかない。こっちの仕掛けるタイミングは、マルスが完全復活する直前。
そしてそれはもう間もなくだ……あいつらが一番警戒しているものの、もっとも油断する時を待たねばならない。
「歯がゆいことだけど、こっちも戦力をそろえないといけない。少なくとも、アイツらの侵攻を食い止められるほどには。その間に、僕たちが頭を叩く。金のリンゴさえ破壊すれば解決とまではいかなくても――状況を好転させることは可能なはずだから」
ヘルヘイムの森が活性化したのは、金のリンゴの事件が起こった時。そう、10年前だ。
手に持った銀のリンゴが重く感じる……おそらくは、こいつは一種のセーフティ。今までいろいろ調べていたが……このロックシードだけは他のものと何かが違う。
「そのデータを基に、新しいロックシードを作ったっていうのにな……やっぱコピーみたいなことはできないってわけなんだろうな」
「と言うことは、束君のもか?」
「うん。束さんも最終ロットのつもりで作ったんだけど……やっぱ何かが足りないんだよねー…………技術的なものじゃない、何かが」
いくら束でも、科学以外の何かがそこに存在しているのならば――それを解析することはできない。意思と言うものを機械に宿す方法を理解できるが、意思そのものは理解できない。そんな風に、現象としては理解できるのだが――科学以外の法則はいくら頭をひねってもわからないらしい。
「これでも、科学者だからねー……オカルトチックなのは英の方が詳しいでしょうが」
「HAHAHA! そうですよ、それがユーの分野!」
「ジョニー、ファミレスでは静かにな……そうは言われても、考えてもわからないし…………」
結局のところ、何が足りないのかはわからない。
こりゃ、厳しい戦いになる――いや、たとえこのロックシードが使えたとしても厳しい戦いになるのは変わりないのだ。この二つのロックシードは極ロックシードのデータを使っているが、人のままでアイツらに対抗するために作り上げたモノ。しかし、それは虫が良すぎるというのだろうか。
何かを失わなければ願いは叶わないのか?
「…………そんなの、認められるわけないだろ」
無茶だろうと、不可能だろうと――奇跡をつかみ取ってこそだろ。
今までだってそうやって前に進んできたんだ……今更、諦めたりしない。
「とりあえず、キャノンボールファスト当日は学園の方に行けるようにしないとな」
「だね。それじゃあ、束さんたちは次の仕事にいきますね」
「ああ……政府の方には私が何とか言っておこう」
「こっちは、活きのいい連中を用意しておく」
「デハ、ミーは帰って準備を進めておくネー! ミシェルと合流して準備しておく」
「ああ任せた……それじゃあ、みなさんお気をつけて」
ファミレスをでて、5人でとりあえずの宿に向かう。まあ、篠ノ之神社なのだが……そういえば久々だな。
境内には見知った顔が見えるが――たしか、雪子さんだっけか?
「おばちゃんおひさー」
「あら――――まあまあまあまあ、束ちゃん!? 大きくなったわねぇ」
束と箒ちゃんの叔母、篠ノ之家が一時的に保護プログラムで他のところに行っているから管理を任せたんだよな。いや、懐かしい……
「英君だっけ? 君も大きくなったわねぇ……なに? 帰ってきたの?」
「一時的にですけど。もうすぐ、みんなも帰ってこれると思います」
「今度の大仕事が無事成功したらだけど」
「束ちゃんなら大丈夫よー、それにしても、いつの間に子だくさんに……」
「まだ結婚してないんですけど」
言っても無駄だろうけどな。
「見ればわかるわよー……そっちの二人は大きいわねー」
「フロンです」
「クロエ・クロニクルと申します。事情があって目をあけられないことを許しください」
「別に気にしてない気にしてない。むしろ堂々としてなさい」
「は、はい」
「それと、そっちのお嬢ちゃんは?」
「……リリー」
「あら、自分のお名前ちゃんと言えるのねー……今何歳?」
「んー……5さい?」
そういえば、リリーももうそのぐらいになるのか……あの時、グリフォノイドに乗せられていた子だが、ここまで元気に育ってくれて良かったよ。
「幼稚園とかはどうするの?」
「今は、色々と忙しいし、そんな暇があるかどうか……リリーもちょっと特殊な事情があるから、経過観察も必要ですし」
「わけありと……ねえ、二人が忙しい時ってこの子どうしているの?」
「大体はこっちの二人が面倒見ていますよー」
「じゃあ、私が預かるわ」
「でも、迷惑なんじゃ……」
「気にしない気にしない。思えば、束ちゃんは昔はある意味やんちゃだったけど、私たちに頼るってことはしてくれなかったから寂しかったのよねー」
「うぐっ、束さんの黒歴史を……」
「そりゃ昔の束は……なぁ」
「言わないでよ、気にしてるんだから」
そりゃ黒歴史だからな。
「そっちの二人も、預かっておくわよ」
「ですが、私は束さまの手伝いがあるのですが」
「……束、さま」
「叔母さん、本当ゴメン。そんな目で見ないで……くーちゃんにもママで良いよって言っているんだけど…………メイドさん的な立ち位置が良いらしくて」
「と言うわけですので、お気持ちは嬉しいのですが、私にもやることはありますので」
「それじゃあ、フロンちゃんは?」
「うーん、特にない…………私はみんなの料理作っていたぐらいだから」
一番助かっていたと思うけど。案外、普段の生活を手助けしてくれるってのはかなり負担が楽になるんだよ。
「そうだな、何かあった時にリリーのことを頼めるか?」
「うん」
「それじゃあ、大仕事が始まるころになったら預けに行きますね」
「まかせなさい――ちゃんと、家族みんなで帰ってきなさいよ」
「うん、わかってる。終わったら、改めてみんなでお礼を言うね――私たちの家のこと」
「ふふ、本当に大きくなったわね、束ちゃん」
そういえば、今週のビルドファイターズトライ……勇気で補えとか書いてありましたね。どこの勇者王なのか……
あの作品は他のサンライズ作品のネタまで盛り込むのか……チャレンジャーだな。
ようやく主人公が本格的に帰還しました。
これで、書きたかった最終章がついに……
あ、ガンダムブレイカー2、全てのミッションクリアしました。チャレンジ含めて。
やっぱ最後は機体のフル強化が必要ですね……
あとは全ミッションでSランクを目指すぐらいかな。それか、全パーツゲット。