仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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展開を早めた分、番外編でやってみたい話も結構ありますね。
まずは完結ですが。


EP167.戦闘領域

 キャノンボールファスト当日。案外、訓練や普段の授業で日々が過ぎていくためにその日がやってくるのはすぐのことであった。

 テロ騒ぎのことは知っているだろうに、客入りは案外悪くないよな。

 

「いいのか、これ?」

「まあいいんじゃないのかしら。気にし過ぎるよりは」

「平和ボケともいいますが……出来ることなら、平和ボケし続けていたいものですね。平和とはそういうもの何ですし」

「有事の際に動けないというのもどうかと思うが……いや、そもそも有事が無いのが平和ということか」

 

 しかし、それは不可能。

 だからこそ誰かが――俺たちみたいな奴が――立ち上がらなきゃならない。

 

「とにかく、何かあった時はその限りじゃないけど……とりあえず、競技中は全力で頼むな」

「もちろんですわ――わたくしたち、勝ちに行きますわよ」

「あたりまえでしょ。それに、人数の関係で一年専用機持ちグループでレースするんだから……白黒はっきりつけられるしね」

 

 そうだな。防犯というか保険の意味もかねて、先輩たちとは別グループなんだろうけど……それでも俺たちだけで決着をつけたいというのもまた事実だ。

 最近の模擬戦はあまり戦績が大きく広がらなかったし……ここで白星を取りたいと思うのが普通か。

 個人的に一番警戒しているのはシャルだな。機体の性能差を自分の技能で埋めてきている――ハッキリ言って、俺たちの中で一番巧いのはシャルだろう。

 

(それだけに……最近はなんか上の空なのが気になるって言うか……もっと落ち着けば強いだろうに)

「一夏? どうしたのこっちを見て……」

「いや、何でもないよ。みんなは機体の調整は済んでいるのか?」

「うん。レース用パッケージも装着済み……そろそろ始まるけど、準備はいい? 箒は特に見た目が変わっているわけじゃないみたいだけど」

「……問題ない。展開装甲をその都度組み替えている」

 

 なんか、かなり高度な技術を習得していやがる……本人に言ったら怒られるが、やっぱり束さんの妹ということなのだろうか。ISを自分の手足のように操っている。

 しかし――以前とは違い不安定さはそこにない。これは強敵になるな。

 

「まあ箒は黒星一番多いんだから、気迫も違うんでしょ」

「……」

「な、なによ」

「なんでもない…………確かに、今までとは違って――私は全力で勝つつもりだ」

「へぇ……まるで今までが全力じゃなかったみたいな言い方ね」

「そこは――見てからのお楽しみと言う奴だよ」

 

 ふふふ、そんな風に不敵に笑う箒だったが――俺は、そこに何か違和感を感じていた。

 たしかに入学当初よりだいぶ落ち着いた感じがするのだが……どこか、浮世離れしている。

 

「気のせい、だよな?」

 

 ◇◇◇◇◇

 

 英たちは千冬に連絡を取り――貴賓席でレースを観戦していた。

 

「いやぁ、ありがとうな千冬。いい席用意して貰って」

「気にするな。有事の際はお偉いさん方を守ってもらうからな」

「自分の身ぐらい自分で守れっていうんだよ……のんきに脂ぎった汗を垂らしやがって」

「……なあ、英。束はなにか嫌なことでもあったのか?」

「あー……聞いてやるな。ちょっと、エロ親父が現れただけだから。まあ、そいつはちょっとお話させてもらったけどね」

「お前も大概だな。しかし、予想以上に賑わっているな……今回は人も集まらないかと思ったんだが」

「危険かもしれない――だけどそれはかもしれないだけだ。実際に起こるとは思っていないんだろ。僕としては……二度あることは三度あるってね。しかも、IS学園は今年、行事があるごとに騒動が起きている。今回も何かあると思っているわけだが」

「束さんもその線が濃厚だと思っているよ…………くーちゃんに仕事を頼んでおいて良かったと思う」

「……本当に、暮桜が動くようになるのか?」

「そのための黒鍵だよ。くーちゃんがいれば、なんとかなる。今もまやたんと一緒に作業中のハズ」

「真耶には苦労をかけているな……ところで、お前ら二人しか来ていないのか?」

 

 まあここには僕らしか来ていないからね。そう思うのも仕方がないけど……

 

「信二が外の警備。あと、協力者たちが色々と見回っているよ」

「なるほど……となると、攻めてくるとするならば――上だな」

「まあそうなるか……一応、準備はしておくよ。いざというときは指揮系統の統括は千冬になるわけだから、気を抜くなよ」

「誰に言っている――これでも気合を入れるべき時にはしっかりやるさ」

 

 …………ある意味、一番心配なんだけどなぁ……いや、真面目に戦うんだろうけど、変な格好しないか不安なんだよ。原因はある意味僕にあるとはいえ。

 あの時ミスコンに出場させなければ今みたいな残念なことには……

 

「信二ももの好きだよな……」

「何か言ったか?」

「何も」

「ちーちゃんもいい加減に気がつきなよ……弟の方が先に結婚式あげちゃうんじゃないの?」

「…………今さらだが、一夏と鈴を相部屋にしなければ良かったと思う」

「「もう遅かったか」」

「まて! それはどういう意味だ!!」

 

 自分の行動の結果だろ――シスコンだった一夏君がだんだん姉離れしていっているんだぞ。醜態をさらし過ぎたな。というか、ファンクラブも内部分裂起こしているんじゃないか? お姉さま派と魔法少女派で。

 その実態は――残念なわけだが。

 

「現実って、悲惨だよね」

「そこに直れ。叩き切ってやる」

「ちーちゃん落ち着いて――ほら、始まるみたいだよ」

「……わかった。しかし、お前らこそいいのか? 箒がまた暴走する可能性もあるぞ」

「そうなんだけど、下手に抑えつけてもダメだろ。だったらこういう時にガス抜きしないと……たしかに、見ていて不安にはなる」

「箒ちゃん……紅椿が付いているから、ある程度は大丈夫だと思うんだけど…………あの子、箒ちゃん第一に動いているから」

 

 ISコアにはそれぞれ性格があり――紅椿のコアは、箒のために動くコアだ。

 その経緯を考えれば当然ともいえるのだが…………箒が使うことの出来るコアというとあれしかないわけで、色々と歯がゆい気持ちである。

 本来ならばもっと、防衛に向いたコアを使用するつもりだったのだが、量産機は問題なくとも専用機として箒のデータを受け取ることをISコアたちが拒否した――いや、紅椿のコア以外が辞退したとでも言えばいいのか。

 

「コアネットワークは使えないんじゃなかったのか……」

「完全に使えなったら、ISの機能の結構な部分が使えなくなっているよ」

「それもそうか」

 

 通信とか、他にも色々と特殊な機能があったな。一夏が何度も起こした現象とかな。

 

「さて、始まるぞ……お前らの勝者予想は?」

「一夏と言いたいところだが…………レース勝負なら、どうなるか。オルコットや鈴も速いからな」

「レースに向いていない機体のらうちゃんと、かんちゃんは厳しいんじゃないかな……そうなると、形態移行している三人が有利とみているよ」

「僕としては、フランスのデュノアさんが侮れないと思っている。技能だけなら突出しているから……ただ、レース向き技能は一夏の方が数多く持っているからな」

 

 ブースト系の技だけでいつくあるんだよって話。

 最近、リボルバーイグニッションブーストの精度も上がっているみたいだし……

 

「ま、番狂わせもあるかもしれないからな」

 

 そして――とんでもない方向にレースは動きだした。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 スタートと同時に、瞬時加速を行って距離を離すことには成功した。成功したのだが……

 

(やっぱ、鈴とセシリアはついてくるか!)

 

 鈴は衝撃砲をレース用にカスタマイズしている。セシリアはビットをすべてスカートに装着してまるで走るかのように食らいついてきている。

 その後ろに続くのはシャル。大型ブースターを接続して器用に操っている……パージしているあたり限界はあるようにも見えるが、新しいのを呼び出せるんだろうなー

 

「そして何よりも――箒が速いッ」

 

 箒がいるのは――俺たちよりも前なのだ。しかも、特殊なブーストを用いずに通常の状態で。

 あんなスピードで進めばエネルギーが尽きるとも思うのだが……うまく配分しているのか?

 

「思った以上に速いわね……」

「番狂わせもいいところ――いえ、侮っていたということでしょうか。これはもっと全力を出さねば失礼と言うものですわ――それではお二人とも、お先に失礼いたします!」

 

 さらに加速――セシリアはどうやらパッケージをインストールしてきているようで、かなりのスピードが出ている。話には聞いていたが……形態移行したブルーティアーズに合わせて開発したものらしい。

 これは厄介だな……

 

「よ、嫁! ようやく追いついたぞ!」

「一夏、鈴もはやい…………」

「あれ? 私は?」

「おおシャルロットだったのか! シルエットが大きすぎて体が見えなかったぞ」

「……このブースター、大きすぎるのかな?」

「そんなことないと思うが……っていうか、このレースって妨害アリじゃなかったか?」

 

 事前説明だと、バトルレースだったと記憶しているんだが。

 

「そうなんだけど、ある程度余力は残しておかないと何かあった時に対処できないからね。まあ、あたしも先に行くから!」

「ちょ――――わりぃ! 俺も行く!!」

 

 イメージはリボルバー。拳銃を連射する光景を思い浮かべろ。

 その通りに、ブーストを行っていくんだ!

 

「――――ッ! やっぱこの加速感にはなれないなッ」

「流石一夏……このスピードでも余裕そうね!」

「結構キツイものがあるよッ」

 

 だけど、見えた――前に出いていた二人。しかし、予想以上に近いところでもつれて――いや、アレは箒がセシリアを斬ろうとしている?

 

「――――ハァ!!」

「この――箒さん! どうしたというのですか!」

「言ったであろう――勝ちにいくと!! スピードで追いつくというのなら、お前たちを脱落させるまで!!」

 

 戦術的には正しいことなんだろうけど……お前の性格ならまっすぐ突き進むと思っていた。

 

(いや、俺の知っている箒ももう5年も前のことだ。今の箒にそれが当てはまるわけじゃ……)

 

 だけど、何か箒らしくもないと感じている。

 

「………………」

「箒?」

「いや、なんでもないさ――さあ、始めようか」

 

 振り下ろされる刀――そこから放出されたのは、散弾の様なエネルギー弾。だけどな、俺相手にそれは効かないぜ。すべて、シールドビットで防ぎきり、箒に肉薄するものの――その攻撃は空を切ることとなる。

 

「――え」

「見えているぞ、一夏」

 

 うそ、だろ? 今のは避けられないようなコースだった。無意識に手加減した? そんなはずはない。今のは確実に攻撃がヒットしていたはずだ。

 今までの感覚からしても――確実にとらえるような場所だった。だけど、外れた?

 

「何が…………」

 

 どういうことなのか考えていたら――――そいつは、振ってきた。

 轟音と何かが割れるような音。悲鳴。多くの音が聞こえてきたと思ったら……そこにいたのは、黒い蝶のようなIS。再び現れたそいつは……

 

「お前は……」

「悪いが、乱入させてもらうよ」

 

 これは…………大分厳しいことになったかなぁ……

 

「箒! お前は――ってアイツ、どこ行った?」

「よそ見している場合かッ!!」

「くそッ――朧月加速みたいに実際にはそこにいたなったってことなのか? まあ、箒を俺の個人的な戦いに巻き込まなくてよかったけど」

「……くくく」

「何がおかしい」

「いいや。そうだな、お前はそうやって平和ボケしている方がお似合いだろうよ――潰しがいがある」

「勝手に言いやがれ…………こっちだって、いい加減に決着つけたいからな」

 

 あたりから聞こえる爆発音。悲鳴もたくさん聞こえるが――みんなを信じるしかない。

 教師たちも警備に着ているし、鈴たちだっている。

 

「焦るなよ、相手はセシリアのブルーティアーズの同型機。二次移行はしていないみたいだし…………ビームで俺の白式に勝てると思うなよ」

「……確かに、ISでは分が悪いか」

 

 言うが早いか――彼女はロックシードを取り出して――――空からインベスを降らせてきた。

 

「なっ!?」

「変、身ッ!」

「くそ――変身!!」

 

 地上に降りる――いや、落ちていく間に俺たちはその姿を変える。衆人環視の中で変身するのは正直、やめておきたかったのだが……

 

(そんなこと言っている場合じゃないよなッ――今は、こいつらを食い止める!!)

 

 メロンエナジーアームズを展開完了し、俺たちはお互いに向き合う――彼女はと言うと、その姿を今まで見たことのないものに変えていた。

 

【マスカダインアームズ! 鏡月! 挽歌!】

 

「…………頼むからもう死んでくれ。見るに堪えない」

「バカなこと言ってんじゃねぇよ、この駄々っ子」

「やはり――殺す」

 




と言うわけで、戦闘開始。

最終章も近いですから、気合入れていきたいです。
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