仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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あと十数話で半年たちますね。
とりあえず、6巻ももうすぐ終わりそうということで、頑張って進めていきます。


EP169.弾けたもの

 弾は会場に来て観戦していた。していたのだが……当然、彼もインベスの大群を目撃したわけで、そのまま逃げるなどするわけがない。

 

「ったく、やっぱり騒動が起きるわけかよッ」

 

 人の流れに逆らい、おそらく二年生以上の専用機持ち達がインベスを食い止めている場所まで駆けて行った。

 思えば偶然ドライバーを手に入れて、そのままズルズルと戦っていく道を選ぶことになったような気もするが――今思えば、ここで何もできずに歯がゆい思いをするより、ずっとマシだ。

 

「変身!」

 

 装着したのは英に貰った新たなドライバー。不思議と、これを託してくれたことが自分を認めてくれたような気がして力が入る。

 新たなロックシードも今までの物の上位互換。普段通りでいい――いや、普段とは違って背中には守るべき人たちがいるのだ。だったら、気張らないでどうするっていうんだよ。

 

【リキッド! マツボックリエナジーアームズ!】

 

 鎧は今までの物とほぼ同一。武器は以前よりも強化されていて、より強そうな印象を受ける。

 そのまま、ハンドルを一回動かしてインベスの群れへと突っ込んでいった。

 

【マツボックリエナジースカッシュ!】

 

 すぐに、インベスたちは爆散してゆく。今までならこの数、苦戦したであろうが……今の弾の敵ではない。

 

「すげぇ……性能が段違いだぞ」

「か、仮面ライダー?」

「…………たしか、織斑君の……」

「あー、俺も説明とか苦手ですし、気の利いたこと言えないんですけど――みんなの避難、お願いします!」

「……わかった。君も気を付けるんだぞ」

「正直、厳しい感じだったから助かったよ――無茶しないでねー」

 

 それだけ言うと、二人は後方に下がって避難誘導を手伝いに行った。

 これで、ある程度は安心して戦える。目の前の大群に目線を向けて――弾は再び土び出す。

 

「うおおおおお!!」

 

 槍をうまく使い、複数のインベスを弾いて一対一の構図を作っていく。

 この状況、どう考えても不利なのは弾なのだ。だったら、確実に勝てる状況へと持ち込むしかない。

 槍さばきで徒党を組んでいるインベスを弾きながら、群れから外れた個体を狙っているのだ。

 

「セイッ!」

 

 そして、ここぞというときには一突きして撃破――今のは、ライオンインベス。その後ろから、セイリュウインベスがと出してくるが、首筋に槍を当てて横へと受け流していく。

 そうして、後ろに回り込んでいたインベスにぶつける。

 

【マツボックリエナジースパーキング!】

 

 足に纏ったエネルギーで二体の絡み合ったインベスを蹴り抜く。隙は逃さず、確実に撃破しなければならない。

 そうする中、光弾が迫ってくるものの――地面に槍を突き立てて上へと飛び上がっていくではないか。

 この光景を見ている者がいたのならば、まるで曲芸ではないかと言うだろう。

 

「続いて、まとめておねんねしな!」

 

 そのまま落下のエネルギーを使い、一体のインベスを蹴り飛ばす。その地帯は、空白の隙となるのだ。

 その場に着地してインベスの動きを見極める。マスクの下でにやりと笑った彼は――勝利の算段をつけた。

 

【マツボックリエナジースカッシュ!】

 

 再び槍にエネルギーを籠めて――体を回転させて周囲のインベスすべてを薙ぎ払う。槍は何度も回転させてまるで竜巻のようにインベスすべてを巻き上げていく。

 

「でりゃああああああああ!!」

 

 そして、両断。短時間での撃破に成功した彼は――膝をついてしまった。

 

「クソッ……流石に、連続使用はきついか」

 

 だけどまだ倒れるわけにはいかない。まだインベスが大量に残っているのだ……もしかしたら、大型もいるかもしれないこの状況で、弱音なんて吐いていられない。

 

「とりあえず、逃げ遅れた人がいないか見に行かないとな」

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 一夏とMの戦いは熾烈を極めていた。

 

「オオオオオ!!」

「アアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 気迫と言うのなら、Mの方が上だ。しかし、一夏はその攻撃をさばききっている。

 

「クソッ――ザクロロックシードのデータを基に開発したコイツでもダメだと言うのかッ」

「そんな思いじゃ俺には勝てない。背負っているものが違うんだよ!」

「そんな生ぬるいものに負けるだと……ふざけるなよ織斑一夏ァアアアア!!!」

 

 マスカダインロックシード。ブドウロックシードをザクロロックシードのデータで改修したロックシード。本来の性能とは打って変わり、巨大な可変武器を生成している。

 見た目はライフルの様なものなのだが、ビーム刀を銃口から発生させることができるのだ。

 

「なぜ止められる! いくらエナジーロックシードだとしてもここまでの性能は出ないはずだ!」

「思いが違うって言っているだろ! そんな迷いまくっている攻撃、俺に通用すると思うな!」

「!?」

 

 見抜かれた――いや違う。私はそんな甘い存在ではない。こんな奴に負けるような存在ではない。

 そう思っていても、心の中に湧き上がった感情は止まらない。Mは、今自身の感情に潰されようとしていた。

 

「違う――違う違う違う違う違う――――わかってたまるか。この私の絶望も、苦しみも、人生も――――お前のようなガキにわかって貰っちゃ困るんだよぉオオオオ!!!」

「分かるわけないだろ。俺はお前じゃない――だけどな、だからって俺の思いもお前が否定していい理由なんてないんだ! お前がどんなに苦しんだとしても、それを他人に押し付けていい理由なんてこれっぽちもない!」

「――ッ」

 

 その時、Mはどんな顔をしたのだろうか。一夏の言葉のどこかに無意識に反応した彼女は――その拳を止めることができなかった。

 殴り飛ばされるマスク。ゴロゴロと、転がり――そのまま一夏の胸に凶弾を当てたのだ。

 

「なっ――」

「ただでは転ばんぞ――――お前も道連れに……ごふッ」

 

 わけがわからなかった。新たな衝撃が、彼女の体を襲った。

 どこからか狙撃された? いや、それにしてはやけに強い衝撃だったが――そこで、一夏が倒れているハズの場所を見てしまった。そこには、誰もいない。

 

「――――なに」

「生憎だけど――俺はISも同時使用できるんだよッ! もっとも今のでエネルギーは本当にすっからかんだけど――――お前に最後の一撃を決める時間ぐらいはあるさ!」

 

 いた。しかし、その声は――予想外の場所から聞こえてきたではないか。

 

「――――空、だと」

 

 光り輝く脚が、自分を狙っている。漠然と、これで終わりなのだと思ってしまったその時であった――炎が、彼女の体を包み込んだのは。

 そして、その炎が一夏を撃退する。

 

「がああああ!?」

「――――一夏ぁああ!!」

 

 間一髪。一夏が決定的なダメージを受ける前に鈴が救出したことで事なきを得たが――先ほどまで彼が転がっていた場所に炎の鉄槌が振り下ろされている――それを行ったのは、炎を纏った美女。

 

「……スコール」

「M、よくやったわ……私としても、オータムの敵を討ちたいところだし、今ここで燃やし尽くしたいところなのだけど……」

 

 一夏も鈴も、かなり消耗している。このまま戦い続けるのは危険であるし――二人だけで、このオーバーロードに勝つ方法が見えない。

 それほどまでに彼我の力の差が大きいのだ。

 

(何だよコイツ……この前の奴とはけた違いだぞ)

(どうする……一夏とあたしなら、一体だけ相手なら足止めまでならいけそうだとは思うけど……だめ、この状況じゃどうやっても――)

 

 そこまで考えたとき、スコールはMを抱えてクラックを開いたではないか。

 

「なっ!?」

「生憎、時間切れなのよ――よく持ったわね、IS学園…………まあ、今回は本気になって戦う必用は無いし――ここまでにしておいてあげるわ……また会いましょう。その時は、覚悟しなさい」

 

 それだけ言い残すと、彼女はクラックの向こう側に行ってしまう――Mと呼ばれた少女はこちらを一瞥すると、ただ一言。

 

「次は殺す」

 

 そう言い残し、去って行った。

 しばらく、その場に立ち尽くしていた二人だったが……

 

「助かった、のか?」

「だといいんだけど……ああ! インベスがまだ残っているかもしれないんだった!」

「なに――それじゃあいかないと――でも、体が…………」

「ったく、肩貸してあげるからつかまりなさい。行くわよ」

「スマン……みんなは、大丈夫だろうか」

 

 気にはなるが、あのオーバーロードは時間切れと言っていた。どうも自分たちがというニュアンスだし、他の場所の戦闘も終わっているとは思うのだが……念のため無事を確認しないことには安心できない。

 とりあえず、どこかに消えた箒を探しに行くことが最優先だろうか?

 

 ◇◇◇◇◇

 

 彼らを見つけたのは、偶然に近かった。

 

「テメェラ……そうか、インベスを操っていたのは…………」

 

 トルーパー部隊を発見。英は、彼らをすぐに捕まえようと奮闘するも――物量が多すぎる。

 まるでインベスの壁だ。いくらノロシアームズだと言っても、キツイ。

 

「このッ――束はまだ空中の対処だし、さっさと――――グホッ!?」

 

 まるで横からトラックが突っ込んできたかのような衝撃。そのまま、英の体はグルグルと飛び回って木にぶつかってしまった。

 本来なら、彼がそのようなことにならない――怪我による弱体化と、敵が予想以上の強さを手に入れていたのだ。

 

「よう……久しぶりだなぁ、英」

「猛か、本当……久しぶりと言いたいところだけど、どうしたんだよその見た目」

 

 黒い鎧は見覚えがあるが――その禍々しさと強大な力は、今までの比じゃない。インベスとして成長を捨てたと思っていたのにこれでは……いや、むしろ進化と言っていいだろう。

 初めて戦ったときの弱さは既にそこにはない――厄介になって帰ってきたなと悪態をつくものの……マズイ状況には変わりない。

 

「で、今日はどんなご用件で――大方、後ろの奴を逃がすためだろうけど」

「それと、お前が他の場所に行かないようにする足止めだ」

「なるほどね……やっぱ足止めか。この大騒ぎ、僕らを足止めするための物だろ。そこまでして、何がしたいのか……マルスの復活が近いのか?」

「お前には関係は無い――と言いたいところだが、お前のことだからすでに答えは頭の中にあるのだろう。だったら、自分のその頭に聞いてみろ!」

「そうか――一応、答え合わせはしたいからとっ捕まえて聞き出してあげるよ!」

 

 幾たびの激突、もう何度目になるのか自分たちでもわからないが――二人はぶつかり合う。

 

「このッ――重い!?」

「弱くなったわけではない――むしろ、怪我から復活したことで体の動かし方を改めて覚えたのか。いい動きをする、しかし――――俺の強さには及ばない!」

 

 衝撃波。見えない壁の様なものが英の体を吹き飛ばしてしまった。

 

(何だこれ――オーバーロードだからって力が強すぎる!? しかもコイツ、一体いくつの能力を持っているんだ!?)

 

 今まで見たオーバーロードは基本的に、一個体につき一個の特殊能力。されど、猛にはそれがない。電撃を出す。衝撃波で攻撃する。重力を増加させる。空間を割ることすら可能だ。

 思い出してみれば――このオーバーロードは最初からどこか異質な存在であった。

 

「人もままで俺に勝とうなど……片腹痛いわッ!」

「くっ!?」

 

 それは気にしていたことだ――本当に人のままで勝てるのか。自分もさらに先へ進まなければ勝てないのではないか。その不安が常に付きまとっていた。

 だからこそ――その迷いが、命運を分けてしまう。

 

「つまらない――弱さなど俺が消し去る。そうだ、弱いままじゃ何も変わらない。何も変えられない――世界は、俺が変える!!」

 

 ガラスが割れるかのような音と共に――英の体は宙を舞う。

 

「あ――――」

「これで、トドメだ」

 

 マズイ、これで終るのか? そんな思いが自分の頭の中を占めるが――思い出すのは、なんでオーバーロードになることを拒んだんだろうかという、その思い。

 

(そういえば……なんでだっけ? 人をやめるのが怖かった? いや、そうじゃない――――そうだ、僕は)

 

 今まで多くのものを背負ってきた――同時に、多くの人々に背中を押された。だからこそ自分も人でありたいのだ。人間として、彼らと歩みたいから――自分は人のまま強くなりたい。

 最初の理由なんて、父が託したものを知りたいから――だけど多くの人々が戦う理由を与えてくれた。だから、その人たちに報いたい。

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 

【――――アームズ!!】

 

 

 

 猛から放たれた力の渦は――英の体から放出された光が消し飛ばした――いや、その鎧さえもまるではじけ飛ぶかのように飛び出し、力の渦を吹き飛ばしていく。

 しかし、鎧が飛び出していったことで変身が解除されてしまい――英はその場に座り込んでしまった。

 

「やべ――って、いないし…………」

 

 結局、最後のは目くらましだったのか――いや、殺すつもりで撃っていた。なのにロクに確認もしていない。

 他にも色々と疑問はあるのだが……

 

「とりあえず、他の場所身に行かないと……あー負けた。今回は完全に負けた」

 

 生きているだけでも助かったとは思うが――アイツらが帰らなければ結果はどうなっていたのか。

 悔しい気持ちでいっぱいだが、また一つ成長できたということで良しにしておこう。

 




乱戦は下手に長くしてもダメだから、結構難しい……

物語的にも、そろそろ風呂敷をたたみだす頃合い。
親知らずが痛いですが、頑張っていきます。
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