さあ、色々と予想外の展開を盛り込んでいきますぜ……
結局、何が一番大変だったかと言うと……事後処理である。大量のインベスが出現したわけで、被害者とかも出ている――英さんの持ってきてくれていた薬のおかげで死者はいなかったけど、それでも凄惨な光景がそこにあった――そのため、それらの対処に俺たちや英さんたち、教師たちが奔走することになってしまい……気が付けば日が傾き始めていた。
「あぁ……疲れた」
「そうよね。本当、なんでこんな日に……」
「鈴?」
「別に。とりあえず、今日は実家に帰るんでしょ」
「千冬姉にそう言われたけどみんなは?」
「それぞれ、ホテルを借りたり近くに泊まれる場所を探すって。後は、英さんたちが場所を用意してくれるからとりあえずそこでもいいって」
そうか……なぜみんなが学園に帰らないかと言うと、マスコミが学園の方に押し寄せているからだ。現場はそれほどでもなかったのだが……仕方がないので、みんなとりあえず別の場所に行ったわけである。
俺の場合、実家が近いから良いんだが……あとは、弾も一旦帰るみたいだ。
「そういや、鈴はどうするんだ?」
「あんたの家に泊めてもらうわよ」
「……え」
「千冬さんには許可とったわよ」
「……え」
……え、え?
いやいやいや、若い男女が一つ屋根の下って――いや、今までとあんまり変わらない。しかも鈴も結構泊まったことはあるし勝手は知っている……
「…………あれ? 問題はない?」
「でしょー。じゃあ、一夏の家に行くわよー」
「…………いやいやいやいやいや」
やっぱりおかしいんじゃないだろうか。そう思ったのだが……結局、一度俺の家に行くことになってしまった。
しかし、こうして帰る家があるってのはいいものだな……帰る道すがら、鈴と一緒に家に帰る――か。
「うん、いいな」
「どうしたの?」
「なんでもねぇよ」
今日のような事件がまだ起こるのかと思うと、浮かれてもいられないけど……少しの幸せを味わうぐらいいいんじゃないかと思う。
また明日から頑張れるから――そう思って、玄関のドアを開けると、パンッ、パンッと銃声のような音が響いた。
「な、なんだ!? 敵襲!?」
「まったく、落ち着きなさいよ――ほら」
「え――みんな?」
どこかに泊まりに行ったはずのみんなが、そこにいた。セシリアにラウラ、シャルに奥の方には箒の姿も見える。包帯を巻いて車イスに座らされているが会長もいるし、簪、ハミルトンさんやのほほんさん。あとリコリンも。なんかいつものメンバーが勢ぞろい……
「一夏、誕生日おめでとう」
「…………そういや、今日は俺の誕生日だったな」
「忘れてたの!?」
そりゃ、今日はいろいろあったから……そうか、俺――16歳になったんだ。
呆けているといきなり背中を叩かれて中に入れられるって――誰だよ!?
「ほらほら早く入れ」
「何とか、駆けつけたんだから……ハァ、疲れた」
「弾に数馬!? っていうか数馬、どうしたんだよ……汗だくで」
「気にするな。世の中には知らない方が良いこともある」
「お、おう」
なんだろう、聞いたら脱力しそうな予感がするが……聞かなければいい話か。
「色々持ってきたんだから――打ち上げもかねて騒ぐぞ」
「なんか大変だったみたいだな……詳しいことは聞いていないけど、テレビで色々やっているぞ」
「ま、マジか……明日から外歩けないぞ」
「そんなことは明日にして――今は騒ぎましょ」
中に入ると、千冬姉たちまでいてその後色々と大変だった。この年にもなって誕生日プレゼントを渡されまくるって色々ときついんだが……
バーベキューや、みんなで料理したり。フロンとクロニクルさんとみんなが自己紹介していたり、大変だったけど楽しいと思える一日だったと思う。
途中から料理勝負になって――千冬姉の酒のつまみとかしていったりな。驚いたのは、中華だと鈴に勝てそうにないということだ。個人的には他の料理でも鈴に勝てるとは思えなくなってきた――というより、鈴に勝つ必然性を感じなくなっている。
(そっか、俺……そもそも料理は誰かに食べてもらうものって考えているけど、それでお金を取るって考えていなかったんだな)
俺にとって料理とは笑顔の象徴。食べて笑顔になるものなのだ。
だから――自分が作る必要というのは無かったわけである。まあ、作るのは楽しいし趣味みたいなところもあるけど……千冬姉が俺を育てるために頑張っている中、最初に手を出したのが料理。
「そりゃ、思い入れもあるわけだよな」
「どうしたのよ、一人で納得して」
「うーん…………卒業式の時に話すよ」
「何よ卒業しきって……」
「予約、かな」
「…………まあ、多くは聞かないし、あたしも今はそれでいいわよ。でも卒業式までは待てない。次のクリスマスにしなさい。ちょうど2年。それでいいわね」
「疑問形ですらない……まったく、相変わらずだな」
「あら? 変わってほしいのかしら?」
「いいや、鈴らしいな。そうだな……次のクリスマス、それまでにな」
「ええ、それまでにね」
しっかりと心の整理をしないとな。後、覚悟とか……いや、別に今でもいいわけだが、今は色々と大変だし他にやることも山ほどある。
全ての決着がいつになるのかはわからないのだが……このタイミングで英さんたちがここにいることを考えると……おそらくもうすぐなのだ。
「嫁よ、どうしたのだ? むこうで岸原が腹踊りをしているというのに」
「止めろよ。一応女の子だろ!?」
「一夏、一応って酷いと思う――ゴメン。あの光景はひどいわ。なんであんなことしているのよ」
「ラブ臭がどうのこうの言っていたが……」
「もう好きにしてくれよ……あと、嫁じゃないって…………日本は一夫一妻なんだぞ。将来俺が結婚したらどうするんだよ……」
「何を言う。お前に嫁ができようが、お前の婿は私なのだ。問題あるまい」
「問題だらけだよ!」
「ラウラ……流石にそれは無茶があるわよ」
「そうか? ふむ…………告白とは難しい」
「「告白だったのかよ!?」」
「となると、私はフラれたわけか……」
「あーその……」
「いいさ。結果は分かっていた――だが、私はそう簡単にあきらめるような女ではない。それを忘れるなよ」
それだけ言い残すと、ラウラは下がっていった――そして、セシリアがわかりますわー! って抱き着いているけど…………ええぇ……
「コレ、どういう状況?」
「ラウラが告白してあんたがふった……のよね?」
だと思うのだが……何だろう、一般的に言うそんな場面じゃない。
それなりにラウラとの付き合いもあるが……あいつの考えていることは時々理解ができないな。
と、そこで飲み物が足りなくなっていることに気が付いた俺は買い出しに行くことに。みんなが主賓が行く必要はないだろと言ってくれたのだが、俺も何かしていないと落ち着かないということで外へ。
◇◇◇◇◇
空はすっかり、日が落ちてきていてオレンジ色になっている。
大変な一日だったけど、きれいにまとまるかなぁ…………なんて考えていたのだが、最後の戦いが近いのにそんなわけにはいかなかった。
「一夏」
「ん――箒か?」
後をついてきたのだろうか? しかし、それにしては……なんか雰囲気がおかしい。
そういえば、彼女はあの騒動の時にどこにいたのだろうか? 無事でよかったと思っていたが――何か重大なことを身をとしている気がする。
「すこし少し話がある……そこの公園でいいか?」
「別にいいけど……箒、なんだかおかしいぞ? 悪いものでも食べたか?」
「そういうわけじゃないさ――悪い食べ物なら持っているがな」
なんだ? この重苦しい感じは。
この場には箒と二人――されど、何か違和感を感じる。
(そうだ、公園に誰もいないんだ……あんな騒動があったんだし、子供を出歩かせていないとも考えられるが、それでも人っ子一人いないというのはおかしい――これは)
考えはまとまらなかった。箒が動いたからだ。思わず身構えてしまったが――箒はただ俺に言葉を放っただけ。
「一夏、お前が好きだ――私と付き合ってくれ」
「え――――」
何を言っているのだ? 付き合ってくれ? だけど、その顔は……
しかし、告白されたことは事実――その言葉には答えなくてはいけない。
「すまん、箒とは付き合えない」
「そうか――なら、力ずくでも私のものにするまでだ」
「え――――ッ!?」
ヤバいと思ったのは間違いじゃなかった。黒い力の塊が、俺の立っていた場所で弾けている。後ろに跳んでよかった……っていうか、これっていったい?
「箒、いきなり――――それ、なんだよ」
「これか? 綺麗だろ――――なあ、一夏」
箒の持っていたのは……黒いオレンジロックシードと、同じく黒いレモンエナジーロックシード。そこから、黒色の波動を放ったのだ。
箒がロックシードを持っていることにも驚くが――それ以上に、ロックシード単体で攻撃したっていうのか!?
「なんだよそれ――なんだっていうんだよ、箒ィィィ!!」
「ははは、対したことはないさ――これで私は私の世界を手に入れる。だから、全てのライダーは私が倒す。それだけだよ一夏――私は、全てが憎いんだッ!!」
その腰に装着されたのは――戦極ドライバー。しかも、イニシャライズされている……それは英さんや束さんも作れていないもの。それなのに、彼女が持っているということはすなわち……
「嘘だろ箒……それは、それは」
「お前の目で見たものが真実だ――さあ、始めようか――――変身」
「クソッ――変身!!」
空から降ってくるのは――俺がいつものメロンエナジーに対して箒の方はジンバーアームズらしきもの。それもそのはずだ。すでに、箒のドライバーはゲネシスコアが取り付けられている。
いつの間にとも思うが――やるべきことは変わらない。相手がジンバーアームズであろうとスペックは互角。だったら、一日の長がある俺の方が有利のはずだ。
【ソーダ! メロンエナジーアームズ!】
【ミックス! ジンバーレモン! ハハーッ!】
黒色のジンバーレモンアームズ……そこにいるだけで、思わず尻込みしそうになるほどの嫌な雰囲気がそこにあった。だけど、逃げるわけにはいかない……箒を連れ戻さないといけないんだ。
「お前に何があったのかは知らない――でもそのロックシードは危険すぎる!」
「黙れ――仮面ライダーなど、私が叩き潰す。そのために、大嫌いなこの力にも手を出したのだ!」
箒が取り出したのは無双セイバー。対して、俺はソニックアローで挑むが――つばぜり合いにすらならない。
「ガッ――!?」
「迷いのある太刀筋だ――それでは私を斬ることなどできない。殺すつもりでこい……出なければ、死ぬのはお前だァ!!」
「――ッ、やるしか、ないのかよ……」
受け流すように箒の攻撃をさばいていくが――数か月前までの迷いのある太刀筋じゃない。しかし、これはあまりにもひどい――迷いからは解放されている。だが、そこに籠められているのはただ敵を打ち負かすことだけ。
「そんなの、篠ノ之流の剣じゃないだろ!」
「黙れ!! お前に何がわかると言うのだ! この5年、苦しかった――心の支えはお前だけだったのだ、それなのに、それなのにお前の隣にはあの女がいた――お前は、お前は…………アアアアアアアア!!」
「そんなの、箒の勝手な都合だろ!! それに、もっと視野を広げろよ! 束さんがどんな気持ちで保護プログラムを適用したのかわからないのか!? また家族で暮らすためにどれだけ頑張ったのかもわからないのか!?」
「黙れ! 黙れ黙れ黙れ黙れ!! 私は――――失うはずじゃなかったすべてを取り戻すのだ! 黄金の果実の力で! あれならばそれができる!」
黄金の、果実? だけどそれはそんあ高尚なものじゃない。そういう話だったはずだが――今の箒には聞こえないだろう。だったら、力づくでも止めるまでだ!
【メロンエナジースカッシュ!】
ブレード部分に充填されていく力。それと同時に――一気に箒の懐まで駆け抜ける!
「おおおおおお!!」
「お前はいつもまっすぐだな――それが眩しくて、見るのが辛くて――――私の闇で染めたくなる」
その時、黒い瘴気があたりを包み込んだ。力が抜ける、立っていることが、辛い……
「なん、だ……これ」
「ほう……まだ耐えるか。だが、それでこそ一夏だ――この一撃で、終わりにしよう」
そうして、振り上げられた刀が光を反射し――――俺に振り下ろされようとしている。
ああ、負けちまうのか……約束したばっかで、鈴を泣かせちまうのか? 体に力が入らない。悔しい。鈴との約束を守れなかった。箒がこんなになるまで気が付けなかった。みんなが悲しむのが、とても辛かった。
「――――ッ!?」
だけど、天は俺を見捨てていなかったらしい。
離れたところからだけど、その桃色は覚えている…………射撃は俺ほどではないにしろ苦手な癖に、矢を放っているその姿は――俺のもっとも信頼している奴だった。
「……何のつもりよ、あんた」
「鈴か……ちょうどいい。お前もここで倒すとしよう」
「その声……箒!? あんた、なんでこんなことをッ」
「理由などいくらでもあるさ――ただ、もう遅いんだよ」
ダメだ。このままじゃ、どちらかが倒れてしまう――止めようとするものの、体に力が入らない……
だけど、そこで箒は何かに気が付いたのか、すぐに踵を返して去ろうとしてしまう。
「箒ッ!」
「流石に、お前たち全員は分が悪い――また会おう。今度は、容赦しない」
それだけ言い残すと、箒は去って行った。
後から到着した束さんはただ涙を流すだけで、その背中を英さんがさすっていたのが印象的だった――家に戻ると、千冬姉が学園から連絡があったとだけ言い――シャルが学園を去ったということを告げて……俺たちは何がなんだかわからなくなってしまう。
ISを返還のため学園に預けて、どこかに行ってしまったらしい……騒動のこともあり、その後どうなったかは不明。俺の誕生日は一転して――最悪の日になってしまったんだ。
と言うわけで、箒さん……鎧武・闇に変身。
私が頑なに闇堕ちと言っていたのは……鎧武・闇の闇だからです。
誰か気が付くと思っていたのですが…………
シャルロット離脱については、次回かな。
と言うわけで、次回より最終章前篇の開始。