仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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最終章前篇後篇合わせてもそこまで長くやらないかもしれません。




EP172.作戦会議

 まだ、状況をうまく呑み込めていないだろう。僕も何といえばいいのかわからないが……それでも何もしないのはダメだ。近くで作戦会議ができる場所と言ったらIS学園しかないわけだが……色々と政府に話を通して最終作戦の決行を伝えた。まあ、案の定渋られたけど。でもそうも言っていられないんだよ。

 集めたメンバーはスレイプニル船員と関係者たち。それと、一夏たち。特に彼らは仲間がいなくなったことで口数も少なく、意気消沈だったが……

 

「ねえ、みんな……箒ちゃんのことだけど……」

「束さん、その……」

「ううん。今はいいの……束さんも、まだうまく呑み込めないし…………なんで気づいてあげられなかったんだろうって、自己嫌悪中。それでも、まだ終わったわけじゃないから」

「……はい」

 

 箒の実の姉である束がそう言うのだから、みんなは黙るしかない。

 この問題はまだ解決できそうにないか……本当、僕からも小言を言いたいってのに、アイツは何を考えて……もしかしたら、僕も気が付いていない何かがあったのかもしれない。

 IFの話をしても意味はないが……どこかで気が付けば、あるいは……

 

「今は過ぎたことを論じていても仕方がないか……とりあえず、みなさんを集めたのは他でもありません。これより最終作戦を開始します」

「ついにか……」

「まさか本当に行う日が来るとはね」

 

 すぐに事態を理解できたのは、以前よりこの作戦のことを知っている人物のみ。あとは何の話か理解できていない様子だけど……やっぱり一から説明するべきだよな。

 

「あのー……最終作戦ってなんでしょうか?」

「まあ簡単に言えば、亡国機業の本拠地に攻めるってことだよ」

「え――――本当ですか!?」

「ああ……まあ、僕と束含めて少数で本拠地を叩いて、その間他のメンバーは各地のクラックの封印作業に入ってもらう」

「封印なんてできるんですか!?」

 

 鈴ちゃんが驚くのも無理はないか。まあ、出来ていたらそもそもやっているはずだしね。しかし、以前から一時的にクラックを開かなくする技術はできていたのだ。

 まあ反作用が存在するわけだが……

 

「今回はその反作用も利用する――アイツらの本拠地をこっち側に引っ張り出すんだよ」

「引っ張り出すって……」

「それじゃあ、束さんたちが数年にわたって撮り続けたデータで再現した向こう側の地球のホログラムをみてねー。これが、ヘルヘイムだよ」

 

 束が映し出したホログラム。それは地球と大差がないように見えるが――一部が大きく異なる。大陸が一つ多い。その事実はこの場にいたものを驚愕させただろう。

 ちなみに、各国の政府にも中継しているから他の国もびっくりしている。

 

「太平洋上に大陸が……」

「あ、アトランティスやムー大陸だとでもいうのですか!?」

「……開いた口が塞がらねぇ」

「…………なるほど、ハワイ周辺にクラックが開いたという報告が少ないのは、これが理由だな」

「流石千冬。もうそこまで調べてあるんだ」

「お前たちが宇宙に行った後、私も資料を纏めたりはしていたさ。この立場だと色々ときな臭い話も聞くしな……しかし、これは…………」

 

 千冬も困り顔になるのには無理はない。ある意味特大の爆弾だからな……色々な推察から、元々世界が一つだった時はこの大陸もこっちにあったわけで……

 

「パニックになるなんてレベルじゃないよね」

「分かっているのなら対策はできているんだろう?」

「まあ、一応は……うまくいくかはわからないから、レスキュー部隊とか、災害救助用のISとか大量に用意してあるんだけどね」

「束さん頑張ったよ!」

「……まあ、当然そうしているだろうな。それで、本題に入るが…………お前たちはなぜドライバーをいじっているのだ? 自分たちのだけではなく、一夏たちのまで」

 

 ……見てわからないのだろうか?

 

「最終調整だよ。今までのデータから、オーバーロード相手にも戦えるようにね。幸い、オーバーロードとの戦闘データがかなりそろっているから、いい仕上がりになるよ」

「そういう話ではなくて……なぜ一夏たちのドライバーまで調整しているのだ?」

「…………悪いけど、一夏たちがこのまま止まると思う?」

 

 僕がそう言うと――一夏、鈴ちゃんにオルコットさん、ラウラに弾君は僕の方を見てきた。言葉には出さないが……その決意は見て取れる。

 

「少なくとも一夏君は無関係でいられないよ」

「だ、だが!」

「いいんだよ、千冬姉」

「……一夏」

「箒がいなくならなかったとしても、俺は無理にでもアイツらと戦う道を選んだと思う」

「一夏が行くのなら、あたしも当然行くわよ。それにあのバカ、一発ひっぱたかないと分からないみたいだし」

「まあ、乗り掛かった舟ですし……シャルロットさんのこともありますから」

「そうだな。シャルロットは私の大切な友人なのだ……助けに行きたいのは当然です。教官、すいませんがいくらあなたとはいえ、私は止まるつもりはありません」

「この流れで、俺だけいかないってのものな……全部終わらせりゃあいい話だし」

 

 五人の言葉を聞いて――千冬はもう何も言えなかった。いつの間にか、大きくなった彼ら。その決意に水を差すことはできない。

 空を仰ぐと、溜息を一つ。

 

「まったく……英、お前最初からこいつらを巻き込むつもりだっただろ」

「ゲネシスドライバーを扱うには色々と条件があるからね。まあ、弾君とかは予想外だったけど。それでも、僕らが便宜上ムーって呼んでいる大陸には連れて行かないよ」

「当たり前だ」

「ああ、本当にムー大陸でしたのね……」

「ちょっと行ってみたいわね」

「そんな甘い所じゃないんだけどなぁ…………」

 

 何度か潜入できないか試したり、空から撮影したりしたが……かなり危険な場所である。

 なにせ上級インベスをはるかに上回る個体がゴロゴロしているのだ。ハッキリ言って、命がいくつあっても足りない。できれば僕も二度とは行きたくないんだけどね。

 

「まあ、仕方がないか……それじゃあ、細かい作戦を伝えるよ。まず、クラックの封印のためのスタッフとその護衛。そして運搬係。現地で出現したインベス相手に戦う人物を一つのチームとする」

「みんなでばらけるんですか?」

「まあ、そうなるね。重要拠点っていうか、クラックを封印するのに的確なポイントには君たちが行ってもらうことになる……正直な話、仮にオーバーロードが現れたとしても戦えそうなのは君たちしかいないんだよ……」

「中沢もいるのではないか?」

「ああ、信二にはここに残ってもらうから――千冬もな」

「む?」

「ま、そういうわけでよろしくね」

「それはいいのだが……なぜだ?」

「あー……昔さ、ここで第一回モンドグロッソをやったのは覚えているよね」

「当たり前だろ。一夏や鈴も覚えているハズだぞ」

「まあ、そりゃあ……あんなに濃い出来事忘れたくても忘れられねぇよ」

「そうよね……なんか嫌なこと思い出したわ」

「何があったのですか……鈴さん、顔が青ざめていますわよ」

「…………インベスの群れに襲われたり、変態的なISがたくさんいたり、死者がよみがえったりかしら……そういえば、この前倒したオーバーロードもその時に襲ってきたわよね」

「そういえばそうだったな」

「え、死者がよみがえる?」

「なに? 興味があるの?」

「いえ……そう言うのは精神衛生上悪いかと…………それに、死者を自分の都合でどうこうするのは好みませんので」

 

 そういえば、オルコットさんは僕と身の上が似ているのか……あの時、母さんは自力でこっちに出てきたけど、あれは本当に例外中の例外。本来は死んだ人が生きている人の世界に現れるのはよくないことなのだ。

 まあ、母さんの場合は自力ってのもあったし……僕も自分がよみがえらせるというのは違うと思う。それでも未練とか残るのに、オルコットさんは強い子だな……あるいは、強くなるようなことがあったか。

 

「話を戻すぞ。モンドグロッソが終わった後……負の感情の塊みたいなインベスが生まれたことがあるんだよ。で、そんなことがあった場所だからな……実はここって歪みの局地みたいな場所なんだ」

「……おい」

「詳しく調査したかったところなんだけど、そううまくいかなくて……一夏は偶然IS学園に入学しちゃったけど、僕らの中でもそう言った事情からなんとか入れられないかみたいな話があったぐらいだ」

「って、俺の人生勝手に話し合わないでくださいよ!」

「まあ冗談交じりだったんだけど……実際にそうなったのは君のせいだよね」

「…………ほら、結果オーライといいますし」

「鈴ちゃん、一夏って放っておくととんでもないうっかりしそうだからちゃんと手綱握っているんだよ」

「分かってます」

「あれぇ」

 

 ちなみに、僕らはお互いにうっかり癖があるので……フロンが軌道修正したりしている。あとは周りのツッコミに期待。僕含めて、束に百花さんと暴走しやすい面子がそろっているからなぁ……

 いかんいかん。また話が……

 

「まあそんなわけで、千冬には学園の周辺の守りを頼む」

「……仕方がないな。だが、しっかりと決着をつけろよ」

「ああ……信二、頼むな」

「分かっているよ。お前らこそ、無事に帰って来いよ」

「ははは、わかってる……死ぬつもりはないさ」

「束さんもついているんだしね――それに、リリーちゃんたちを泣かせるつもりはないから」

「それならいい……それで、他のメンバーの編成は?」

「重要拠点以外は弾君の戦極ドライバーから取れたデータで作ったトルーパー部隊でどうにかなるんだけど……それ以外だと、五人の力を借りないとな…………」

 

 うーん……各地だよな。大体、大陸に一つ大きなポイントがあるから……

 

「ラウラにはアフリカ方面を頼む。それに、君なら広大な土地でも動けるはずだし――上には話を通してあるよ」

「了解した。黒ウサギ隊も動かせと言うことですね」

 

 まあその通り。

 

「オルコットさんはヨーロッパ周辺。場所は……ストーンヘンジのあたりかな」

「なるほど、いわゆるパワースポットに蜂矢さんのおっしゃるポイントがあるのですね」

「理解が速くて助かるよ……それで、あとの三人は……鈴ちゃんには中国かな」

「ま、そう来ると思ったわよ」

 

 後の二人なんだが……どうしたものか。

 

「うーん……弾君は北アメリカね」

「分かりました……えっと、他のみんなはISがあるから移動も簡単だと思うんですが、俺は?」

「ちゃんと輸送機があるから。あと、現地のIS部隊やトルーパー部隊も合流する手はずだよ」

 

 それで、あとは一夏なんだが……正直一番厄介なところを押し付けてスマンとは思っている。

 

「一夏、ギアナ高地」

「ちょっと待ってください……それって…………」

「うん。クラックが最初に開いた場所だ……ある意味一番厄介なポイントだと思うが……君の場合、ある程度妨害に出てくる相手がわかっているのが強みなんだよ」

「しゃ、釈然としない……」

「昔父さんが使っていた研究所跡地を拠点にしていいからね」

「分かりましたよ、やりますよ……」

 

 全員、バラバラになっちまうけど……物量はどうにかできても質の高いのは少ない。この五人と、僕たちを含めたメンバーぐらいしかオーバーロード相手に勝算がないのだ。

 

「そういえば、オーストラリアはなぜないんですか?」

「アジア圏とムー圏のどっちかのポイントに含まれているみたいだな。おそらくは後者だろうけど……まあ何かあったら連絡が行くよ」

 

 作戦決行は三日後。それまで各々準備を進めていてほしい。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 作戦会議も終わり、僕はIS学園の保健室の方に来ていた。なんだかんだで、挨拶も遅れたし……怪我の方も見ておかないといけないしね。

 ドアを開けると、見た限りよく似た姉妹がそこにいた。姉の方はベッドに横になっているが……

 

「簪ちゃん。改めて、久しぶり」

「うん……お久しぶりです。この前、会いましたけど」

「まあそうなんだけどね……で、そっちがお姉さんか」

「……どうも、十七代目更識楯無です」

「なんか不愛想だけど……」

「だって、せっかくの簪ちゃんの看病だってのに……」

「ま、まあお姉ちゃん落ち着いて」

「ふーんだ」

 

 うーん、僕から見るとほほえましいだけなんだが……なんか、この子のことを同年代だと勘違いしていた時が懐かしいな。

 

「そういえば、簪ちゃんが昔、お姉さんは編み物が苦手って言っていたけど……当時はまだ小さかったんだから当たり前だよね」

「なつかしいですね……そんなことも言いましたっけ」

「…………」

「お姉ちゃん? なんで目をそらすの?」

「……もしかして、まだ苦手なのか」

「そうよ! 悪い!?」

 

 いや、悪くはないけど……聞いている話と印象が違うんだよな。

 完璧超人には見えないというか……

 

「……まあ、大怪我していているのに元気そうなあたり、結構な実力者ってことか」

「ふふん、IS学園の生徒会長は伊達じゃないのよ」

「とりあえず、インベス専門の医者みたいなことをしている立場から言わせてもらうと、1カ月安静だから」

「…………え」

「やっぱり……」

「念のため、君の体に薬を投与したわけだが……それでも体の内部に浴びたヘルヘイムの力は取り除けない。筋肉や骨がちゃんと再生するまで安静にしていなよ」

「……そ、そんなぁ!? 話によるとあなただって相当無茶しているみたいじゃないですか!」

「元来、耐性があるのと度重なるロックシードの使用で更に耐性が強まっているからだよ。普通の人間じゃ無理無理。というか、君だって五体満足なのは奇跡に近いんだから安静にしていなさい」

「そ、そんなぁ……」

「大丈夫、お姉ちゃんは私が守るから」

「……なんか複雑な気持ち」

 

 そういえば、喧嘩しているみたいな話を聞いたが……そんなことないみたいな雰囲気だ。この子の怪我があったからだろうか。

 まあ、ここに長居しても仕方がないし、僕も作業に戻ろう――と、そこで一枚のプリントを落してしまう。

 

「あの、これ落としましたよ」

「あぁ……それか。いいよ、コピーは大量にあるしあげる」

「でも、大事なものなんじゃ……」

「今となっちゃ、そこまででもないのかなぁ……ヘルヘイムの神話を書き記したものなんだけど……文章のつながりがよくわからなくて、うまく解読できていないんだよ。単語単語は合っているハズだから順番だけなんだが……長い間誰も解読できていなかったんだ……解読する時間もないし、重要ってほどじゃないから、頭の体操程度に考えておいてね」

 

 とりあえず、ゴーレムの整備をしておかないと……あいつら気まぐれだし。あと、クロエが暮桜の普及をどのくらい終わらせているのかも確認しないと……

 そんなわけで、やることがいっぱいだった僕は彼女の漏らした言葉を聞くことはなかった。

 

 

 

「私なら、物語を二つに分けるかな。ここをこんな風に」

「それ、簪ちゃんの好みじゃないの……」

 




様々な伏線回収にはワンクッション。そんなお話でした。
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