仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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今週のBFT、いきなり笑わせにきやがった……ガンダムで勇者をやるなよ(笑)


EP179.届かない

 黒いオーラを纏った箒は、シャルルを圧倒している。

 無双セイバーと手に持った大筒――火縄大橙DJ銃を接続し、大剣の状態で軽々と振り回してシャルルの攻撃をすべてはじき返した上で少しずつ彼の武装をはがしているのだ。

 

「どうしたどうした。この程度かシャルロット!?」

「クッ――シャルロットは捨てたんだ! 今の僕は、シャルルだ!!」

 

 それでも、生来のセンスなのかシャルルは箒の動きの中でわずかな隙を見出して反撃を試みている。バナスピアーを使って攻撃を何とか受け流し、相手のドライバーへと手を伸ばして――――

 

【カチドキオーレ!】

 

 それでも、届かない。

 武器を手放し――箒は背中の旗に手を伸ばした。振り回すだけで、あたりの物が吹き飛ばされるほどの力。シャルルもその力の奔流には逆らえず、紙屑のように吹き飛ばされてしまった。

 

「アアアアアアアア!?」

「いい線だが……甘いな」

「箒! お前、いい加減にしろよ!!」

 

 一夏はその光景を黙って見ていることなどできない。他の全員がそうだ。

 友達が、友達を傷つけているのを黙って見ているなど、願い下げ。

 しかし、箒はもうその一線をとうに越えている。

 

「ふん――なあ一夏。姉さんや蜂矢さんが太古のオーバーロードの血を引いていることは知っているか?」

「話には――――まさか」

「ああ、そのまさかだ。姉さんがその血を引くと言うのなら――私も当然同じ血を引いている」

 

 むしろ、私の方が強力だがな。そう、後に続けて。

 そのままシャルルの頭を掴み――彼女の中に何かが流れ込んできた。

 

「――――ぁアアアアアアアアアアアア!?」

「箒ィ!! テメェ、何してんだよ!!」

「やめなさい箒! あんた何を考えているのよ!!」

「箒ちゃん! もうやめて!!」

 

 彼らの懇願にも箒は耳を貸さない。

 ただ、シャルルの頭を掴んで何かを行っているだけだ。幸い、インベス化させるような何かではないが……

 

「安心しろ。過去の映像を見せているだけだ――彼女が生まれる、少し前のな」

 

 

 

 

 シャルル――シャルロットの頭の中に流れ込んできたのは、とある男女の姿。

 男はとある企業の社長をしていたが、その当時はまだ大きくもなく上手くいっているとはいいがたい現状だった。結婚はしていても、先行きが不透明な状況では今後がどうなるかもわからない。

 そんな時に出会ったのが、とある女性だった。

 どちらが先にその感情を抱いたのかは知らないが――世間で言われる、不倫と言うことになるのだろうか。その関係はいけないことと知りつつも、せめて一日だけ思い出が欲しい。

 そんな、テレビドラマの中でありふれたようなセリフ。そんな風にして――シャルロットが生まれるきっかけができてしまった。

 もしも男の会社が大きくならなければ、男は妻と離婚してこの女性と再婚していたかもしれない。

 いくつものIFの世界には、そんな世界もあったのかもしれない。

 結局――今のシャルロットはボタンの掛け違いの果てに存在しているわけで――――

 

【メロンエナジースパーキング!】

【ピーチエナジースパーキング!】

 

 ――途中に挟まったノイズが、シャルロットの思考を止めた。

 しかし、彼女の意識は遠くなって消えていく……その体を、小柄だがしっかりとした誰かが受け止める。シャルロットの記憶の中に、覚えがあるが……それは誰だっただろうか?

 

(もう、どうでもいいや……なんだかよくわからなくなったよ…………お母さんが悪かったの? お父さんが悪いの? 悪い人がいるって、ちゃんと言えるの? あれ? 私って――何をしようとして……)

 

 力が抜けるようだ――結局、何がしたくてここまで来たのだか記憶がおぼろげになっていき――――しっかりしろとの声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

「シャルロット! シャルロット!!」

「どう? ラウラ……シャルロットは」

「命に別条はないようだが、意識がはっきりしていない――箒! 貴様何をした!!」

「何。その女が知りたがっていたことを教えてやったまでだ。限定的だが、オーバーロードの力と言うのも便利なものだぞ――どうだ、一夏。お前もこっちに来ないか?」

「願い下げだぜ――箒、お前こそ帰って来いよ。そんなところにいても、何にもいいことなんてない」

「……今更、私の居場所なんてあるものか」

「違うだろ! 居場所ってのは、自分で作るものだ!! 諦めてないで、前に進めよ!!」

「うるさい!! お前も、私の思い通りにならないというのなら――ここで倒して、新たな世界を、私の世界を創るまでだ!!」

 

 交渉決裂。箒はゆっくりと――その力を増大させながら前に進むが、そこで何かがやってきたのに気が付いて足を止めた。

 

「まったく、しぶといですねあなたたちも」

 

 重い足音。その気配は圧倒的で、本能的に恐怖を抱く。

 空には巨竜も飛んでおり――まるで、その者を守護するかのようだ。

 

「こっちは何年も待ったんだよ。お前みたいな新参者とは覚悟が違う。おとなしく下がっていろ」

「……そうですか。なら、私は一夏たちを貰います。蜂矢英は私も狙っていましたが――今はこちらだ」

「…………戦わなきゃ、いけないのかよ……」

「当然だろ。一夏ァ!!」

「クソッ――鈴、ラウラ! セシリアとシャルを連れて下がっていてくれ! 箒は俺がどうにかする!!」

「でも、一夏! まだ敵は残っていて――」

 

 その言葉にかぶせるように――英が声を荒げた。

 

「大丈夫だ! スレイプニルをこっちに向かわせる!! 時間をできる限り稼いでくれ。マルスの完全復活まで猶予が出来た。ここは一旦撤退する!」

 

 消耗したこの状態でマルスとの戦いも視野に入れるのは得策ではない。

 むしろ、シャルロットという少女が作ってくれた猶予をうまく使うしかないのだ。

 

「だが――お前はここで死ぬんだ!! 蜂矢英!!」

「生憎だけど――死ぬつもりなんてさらさらないよ!! それに、お前をここで倒さないとは言っていない!! 束! 空のは改めて任せるよ!!」

 

 その言葉に頷くよりもはやく、束は空に飛び上る。今度は、持てるすべてを出し尽くして。

 英もその光景を見ていたかったが――そんな暇はない。一夏も、束も目の前の敵で精いっぱい。

 

「オーバーロードって通常一人一つの能力じゃないっけ!?」

「普通はなぁ!! 俺は特別なんだよ!! 光の三原色の内に当てはまらない俺はなぁ!!」

「真っ黒のどこがいいのかわかんないけど――動きが大ぶりすぎるよ!!」

 

 手首に無双セイバーを当てて攻撃を受け流すように躱す。少なくとも、今までの経験から言ってその行動は成功するはずだった。

 しかし――もう、英の想定をはるかに上回っていたのだ。彼、須郷猛というオーバーロードは。

 

「――――ゥタ!?」

「生憎だが、そんな小細工通用しねぇよ」

 

 確かにかわしたハズだった。しかし、後から衝撃が襲ってきた。まるで、見えないパンチを食らったように。

 

(衝撃波? いや、それにしては硬すぎる。これは、一体――――)

 

 考えている暇は無いぞとばかりに、今度は炎が英の体を包み込む。変身中なら耐えられるはずだというのに――体には信じがたいほどの痛みが走るではないか。

 蹲るわけにはいかない。ブースターで高速軌道をしようとして――一筋の光が、英の体を貫いた。

 

「アアアアアアアアアアアア!?」

「ああ、ここまで差がついたのか――こうして、お前が倒れているのを見ると、悲しくなるな――――」

 

 勝手なことを言うな――その反論も、のどから出てこない。

 何とか立ち上がりよく目を凝らしてみると、いつの間にか猛の手にはブドウ龍砲のような武器が握られていた。しかし、生物的な外観を持つそれは、武器と言っていいのか……

 

「まだまだこんなものじゃない。俺たちの決着をつけるには温すぎるぞ!!」

「だったら、本気を出してみやがれよ!!」

 

【ノロシスカッシュ!】

 

 飛び上がって、ブースターも合わせた最高速度の突撃。真横ですらそのブースターでキックを放つことを可能としたノロシアームズ。さすがにこれには対応できないだろう――そう思っていたのだが、それすらも猛は軽々と上回って見せた。

 

「悪羅悪羅悪羅悪羅!!!!」

「ッ!?」

 

 ただのラッシュ――しかし、その一撃一撃が無頼キックの一撃にも匹敵している。

 何よりも恐ろしいのは――何のモーションもないただのパンチが、その威力だということだ。

 

「お前も気が付いているハズだ。お前の戦闘スタイルは器用貧乏。俺のように、純粋に力を極めたタイプと異なり相手の弱点を突くのがお前だ――だったら、もっと汎用性の高い力を手にするべきだったな」

 

 天高く振り上げられた手刀が――英の体を引き裂くように、振り下ろされた。

 

「眠れ――蜂矢英」

「あ――――――」

 

 意識は、遠くなって――――

 

 

 

 

 空では巨竜と束が激闘を続けていた。

 

「今すぐ英のサポートに行きたいっていうのに――この女ッ!!」

『わっちにも、矜持と言うものがある!! 今更引けぬよ!!』

 

 巨大な炎をかわし、的確に力を叩き込んでいるというのに――倒しきれない。

 まるで、内部から補填されるように回復してしまうのだ。

 

「中にロックシードでも仕込んでいるのかな!?」

『ご明察。しかし、種が割れたところで意味はない。君は、ここで倒される運命なのだから』

「そんなの誰が決めた!! 束さんは、束さんの決めた運命を生きているんだよ!!」

 

 英と出会う前からそうだった。

 それでもどうにもならないこととも遭遇した。だからこそ、こんな理不尽に人の生を奪う奴らにだけは屈しない。屈したくない。

 

【パンプキンエナジースパーキング!】

 

 光を足に集めて――一気に巨竜の腹部に叩き込む。

 補填されるというのなら、限界まで力を削ぐまで。必ず終わりは存在するのだから。

 

「――――ッ!?」

『その程度、屁でもないわ。わっちたちだって目的がある。願いがある。長い間の研鑽があるのだ。今更、君のような輩に奪われてたまるものか』

「だったら、なんで身内だけでやらなかったの!!」

『それを君が言うか――ISだって、似たようなものじゃないか』

「束さんの――束さんの娘を悪く言うなぁああああああ!!」

 

 確かに、褒められた方法ではない。ISの発表だってもっと穏便に進められただろう。

 それでも――こいつらみたいに、最低の行いをしたつもりはない。

 自分の都合で人の命を奪うなんてマネは、今も昔もしたつもりはないのだ。

 

「だから――ここで、終わらせる!!」

『私の命は、助けるつもりはないと? 人間を殺すことができるのか――――お前の目の前に、倒れた少女のような死体を作れるというのか?』

「――――あ」

 

 その言葉を聞いたとき――束の体から力が抜けていった。

 だめだ。その言葉に耳を貸すな。考えてはいけない。その女は彼女とは違う。自分の行動に疑いを持つな。唯我独尊。それが自分だ。だから、ここで力を緩めては――――

 

『人の心を得たがゆえに、君は弱くなった――もっとマッドだったころの君となら話が合ったであろうに、残念だよ――ここで、消えてくれ』

 

 ――気が付けば、地面に倒れていた。

 隣には、自分の愛した人がいて――――お互いに、体が動かない。

 

「……束、動けるか?」

「へへ……無理っぽいね」

「こっちもだ…………クソッ、まだ足りないってことなのかよ……人のままじゃダメってことなのかよ」

「束さんは、そんなことないと思うよ――そう、信じたいよ」

 

 何のために今まで戦ってきたんだ。

 多くの人に支えられて――今まで戦ってきた意味をここでなくしてもいいのか。

 人であることをやめるということは、今までの全てを捨てるということだ。

 

「そんなの――ダメだよ」

「ああ。そうだよな……だから、こんなところで…………こんなところで、倒れるわけには――――ッ」

「倒れてちゃ、ダメだよ……あの子が、安心して……眠れないじゃないッ」

 

 お互いに、肩を支えて立ち上がる。

 一夏は箒を押さえつけているためこちらには来れない。鈴たちは動けない二人を攻撃の余波から守るのに手が離せない。

 絶体絶命のピンチ。正直、もう勝つための手段は無い――――

 

「そういえば、コイツ、結局起動しなかったなぁ……」

「束さんのもだよ……結局、何が足りなかったんだろうね」

「さぁ……それこそ、奇跡なんてものが起きない限り無理だったってことなのかもしれない」

 

 目の前には巨大な光弾が迫ってきていた。

 思い残すことなんてたくさんあるし、やるべきことだってまだあるのだ。

 

「こんなところで、死ねるわけないだろ――ッ」

「そうだよ。まだ何も終わっていないのにあきらめられるわけ、無いだろ!!」

 

 その直後――二人は、その光に包まれて――――

 




もうすぐ最終章前篇も終わりますね。

色々と引っ張りながら、次回に続く。
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