仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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これにて、最終章前篇は終了いたします。
次回からちょっと幕間みたいな話を挟んで、後篇に移ります。


EP181.フルオーケストラ

 仮面ライダー冠・魁アームズ。

 ノロシアームズの鎧をパージし、素体であるライドウェアに鎧を装着するための骨組みのみが装着されている状態に上から別の鎧をまとった姿。

 8つの小型の果実がそれぞれ変形し、体の各部に装着されることでその姿を現す。

 背中には家紋のように描かれた銀のリンゴ。腕や足の各部には様々なフルーツの紋様が描かれている。

 他に特徴的な部分と言えば、黒色のギザギザとした模様。法被のように纏っている鎧の裾あたりなどに描かれていた。

 

「……ここまで来て、またパワーアップか…………本当に、お前はムカつくな」

「今この場にくるまで過ごした時間があるんだ。10年、その時間が僕の中に流れている。ここで決着をつけよう。須郷猛」

「――――消えろッ!!」

 

 空間が歪み、炎と雷撃が混ざり合って英へと押し寄せる。オーバーロードとしても規格外。おそらくは通常のオーバーロードとはまた異なった存在が彼なのだろう。

 インベスの色に関係する何かがあるのだろうが……

 

【メロンディフェンダー!】

 

 今この場においては、英はそれを知るつもりはない。謎を解くのは後にすればいい。今は、この男との決着をつける。そのために再び立ち上がったのだから。

 ミラクルロックシードをひねり、虚空からメロンディフェンダーを呼び出すことでその攻撃を防ぎきって見せる。昔、英が使った時よりも、一夏が使っていたものよりも圧倒的な防御力。

 

「あ、ありえねぇだろ!? なんだよ、その力はッ」

「……正直なところ、僕にだってわからないさ――それこそ、奇跡って奴だろ」

「ッ――」

 

 黒い鎧に覆われた猛は、その表情を歪める。人間にはわからないハズなのに、感じ取れるほどにその怒りを発露させて。大気が震え、悲鳴を上げる。

 その姿をみていまだ戦いを続けていた箒と一夏も手を止めてしまうほどの高まり。

 

「ハハハ……ふざけるなよ。俺は、この強さまでひたすら自分を鍛えて、鍛えて、鍛え抜いてきた。血反吐を吐こうが何を失おうが――お前を倒す。そのために強くなった俺をあっさりと超えるだと!? そんなこと、認めてたまるかよッ!!」

「だったら……お前は強くなるために、一体何人もの人を殺してきた! いくつのものを奪ってきた!! お前のやっていることはただ気に入らないものがあったから壊したいっていう自己満足の考えだ。その強さを得るために鍛えたことは評価できても、そのためにしてきた行動は許されるようなことじゃないッ!!」

「うるせえよ、人間のままでいたいなんて言う甘ちゃんがッ」

「甘くても構わない。僕が目指しているのは、人のままでも前に進めるっていう可能性の未来だ!」

 

 幾たびの衝突を経て、いまここに二人はまたぶつかった。

 猛の能力は一つに固定されたものではなく、ほとんど何でもありと言ってもいい力。地面に手を突き刺して引き抜けば――巨大な大剣をそこに形成して見せる。

 それに対して、英の得た力は元々の彼のスタイルであるアームズを変えることによって臨機応変に戦う万能性が更に高まったもの。

 

【スイカ双刃刀!】

 

 手に持ったのは巨大な刃。本来ならばスイカアームズを使用しなければ使えない武器をやすやすと使って見せる。見た目を上回る、パワー。

 

「ハアアア!!」

「――――ッ!? ミランダ!!」

『分かっているッ!! 後ろの奴らを狙ってしまえばこいつらも――――』

 

 猛がミランダの名前を呼んだ理由はただ一つ、動けない鈴たちを狙うことで英たちの動きを阻害するということ。現に、一夏が箒を押しのけて鈴たちの下へと向かっている。

 その様子を箒は、一夏も終わったと思って冷めた目を向けているが――この場には、無視できない力を持った人物がもう一人いる。

 

「束さんのこと、忘れないでよね」

 

 いつの間にか束はその手に弓を握っていた。

 

【創世弓!】

 

 カリンロックシードに備えられているボタンのうちの一つを押し込んでおり、それが武器を呼び出したものなのは明白。さらに、呼び出した武器に別のロックシードを装填するではないか。

 それは、束が作り上げた対インベス用のロックシード。

 

【ペアエナジー! 梓弓モード!】

 

 空中に現れたヴォ―パルソードが真ん中から二つに分かれ、ソニックアローと合体する。

 チャージされていくエネルギーはその輝きを増して、周囲の空間すらも歪めている――いや、これは周囲のヘルヘイムの力を押しのけているのだ。そのせいで、空間が歪んだように見えているだけ。

 その事実は、同じ科学者であるミランダを驚愕させるには十分どころかおつりもでるほど。

 

『ありえない。そこまで強力なエネルギーなら自分も危ないはずなのに、何故ッ!?』

「……お前たちが奪った命――たとえ、命を失っても意思は受け継がれているんだよ。それが、回り巡って束さんまで届いたんだ」

 

 目に見えるところにはそれほど多くは見えない。だが、目を凝らせばそのつながりはもっとたくさんある。

 天国から見守ってくれている彼女がいたからこそ、今の自分がある。

 

「今の私は、自分だけの命じゃない。背中を押してくれた人たちがいるから、今の私がいるんだッ!!」

 

 矢を放ち――空に浮かぶ光球を消し去ってしまう。ただの一撃で、巨大なインベスを沈黙させてしまう。

 その光景は、一人の少女の憎悪を膨らませるには十分だった――敵うかは、別だが。

 

「ふざけるなぁあああああ!!」

「ッ、箒ちゃん……やっぱり、もう止まれないの?」

「何を悲しそうな声をしているんだッ! 貴女が、貴女のせいでこうなったんじゃないかッ!!」

「かもしれないね――でも、束さんだって自分の願いのために戦っちゃダメなの? 嫌なことも受け入れて、前に進んじゃいけないっていうの?」

「――――」

「箒ちゃんは、嫌なことから逃げ出しているだけだよ――だから、絶対に止めてみせるよ」

 

 別のボタンを押すことで、次は違う武器を呼び出す。

 その武器は、受け継がれ続けてきたもの。英の父から英へ、そして束へと。

 

【鬼灯刀!】

 

 刀と大剣がぶつかり合う。火花も飛び散るというのに、押されているのは箒。

 ありえない。そんな思いが頭の中に浮かんでいくものの――束が使っているのは、篠ノ之流。しかも、箒よりも高い完成度の。

 

「なんで、姉さんが…………」

「これでもお父さんには基礎は全部叩きこまれている。それに、宇宙って案外暇でね…………自分でも鍛えたんだよ。束さんの弱点の一つは、体力の無さだったから――――それを克服しようとしないわけが無いでしょ」

「ふざけないでください……私の拠り所さえも奪って、貴女はあああああああ!!」

「初めてかどうかは忘れたけど――姉妹喧嘩、やろうよ」

 

 二人は火花を散らせて再び戦いを始める。

 しかし、どちらが優位なのかは明白だった。

 

 

「アアアアア!!」

【影松!】

 

 英と猛の戦いも激化していく。二人のぶつかり合いは周囲の地形を変化させるほどに強烈だが、猛はいまだに英に一撃も入れることができていない。

 それどころか、英の攻撃はその体に入ってしまう。

 

【クルミボンバー!】

「――ッア!?」

「これはお前が得意にしていた武器だよな――でも、こういう使い方もあるってな!!」

【ドンカチ!】

 

 空中に浮いたドンカチ――それが、4つ。

 一つ一つを殴り飛ばして猛にぶつけていく。魁アームズの力で、本来のアームズで呼び出している時よりも強化されたそれらは猛の装甲のような皮膚をはがしてしまう。

 

「なんだ、この力は……ありえない。人の身で、それはありえない……」

「ありえないことを起こすから、奇跡なんだよ。諦めないからこそその奇跡をつかみ取ることができる。それは、人間の特権だ!」

 

 今度はもう手加減もしない――魁アームズは何も他のアームズの力を使うためだけのものではない。魁アームズ専用の装備もまた存在する。

 

【アカコテツ!】

 

 見た目は赤色の刀。鬼灯刀とは違って、刀と言われて予想の出来るもの、そのものだ。

 しかし、ただの刀であるはずもない。

 

「来いよ、三流野郎」

「――――舐めてんじゃねぇえええええええ!!」

 

 空間の圧縮。発火。雷撃。土砂の圧縮。一点に集中したその力を、一気に破裂させることで消し飛ばす大技。猛の今持てる力すべてを解放して英を殺すためだけの一撃を完成させた。

 ノロシアームズまでの英であったのならば、それで死んでいただろう――しかし、ここにいるのはその時の英ではない。更に前に進んだのだ。

 ゆっくりと、歩を進めて――ただ一振りすることでその一撃を消し去った。

 

「――――は」

「今度は、こっちの番だぜ」

 

 ブレードを二回。各部に刻まれたフルーツの紋様が輝き、周囲に光の塊が生まれる。

 

【魁オーレ!】

 

 光が形を作り――複数のアームズの冠がそこに現れる。

 幻影ではない。確かに、そこに複数の冠がいるのだ。

 

「あ、ありえないだろ……それは、なんだよ――なんなんだよ!?」

「言っただろ。10年という時間が、僕の中にあるんだって――この魁アームズは僕の10年という時間が形になった力だ。今まで積み重ねたものが、僕の力だ!!」

 

 複数の冠が突撃し――防御をパインアイアンとマンゴパニッシャーの力で突破され、一気にその体にいくつものヒビを入れられていく。

 ここで負けるのか? 頭では思いつつ、認めることはできない。だが、抵抗もできない。

 

「ハアアアアア!!!」

 

 声すらあげることができずに、須郷猛は、体を動かすことができなくなった。

 ドシャリと、嫌な音が響くが――意識はもうなくなっていっている。

 

 

 

「しぶとい奴だけど……これで………ふぅ。束、そっちは?」

「箒ちゃんは気絶させておいた。上にもスレイプニルが来てるし、いったん撤収しよう」

 

 それもそうだなと、怪我している奴らから乗せていく。箒は暴れられると困るので、最後にと言うことになったのだが――――その判断が悪かったのだろうか。

 いきなり、周囲に突風が吹き荒れる。

 

 

「なんだ!?」

「これは――――ッ!?」

「束!?」

 

 束の体から煙が上がっている。

 駆け寄ってみると――箒が空へと飛び上がって、憎々しげにこちらを見ているではないか。

 

「紅椿のことを……忘れていますよ」

「操縦者の保護かッ!? だけど、箒ちゃんが危険なことにならないように、紅椿には防衛プログラムが仕込まれているのに何でこんな危険なことをしているんだ!?」

「私の、思いをくみ取ったからじゃないですか、ね……ふふふ、姉さんを撃った――あはは、ははははは!」

 

 狂ったように笑い――その笑いに同調するかの如く、紅椿が黒く染まっていく。

 二次移行――その言葉が、ここに来て嫌な意味を持つとは……

 

「今は私も退かせてもらいます。それに、あっちをどうにかした方が良いですよ――――では」

 

 それだけ言い残すと、箒はどこかへと飛び去ってしまった。

 もう、追いかけることはできない。

 束が仮面の下で唇をかみしめるように、英も一歩届かなかったのが歯がゆい。

 

「…………わかって、くれなかった……私じゃ、箒ちゃんには届かないのかな」

「……それは僕にもわからない。他にもやることは多い。だったら……次は」

「うん。花梨ちゃんにも言われたから。一人じゃ無理なら、頼らなくちゃだね……でも、その前に……あいつだよ」

 

 地面から、空へと雷撃が登る。

 肉が膨れ上がるように、ボコボコと嫌な塊が飛び出して――弾けた。

 中から現れたのは、黄金の鎧のような皮膚と、背中から飛び出した巨大な翼をもつオーバーロード。

 

「『アアアアアアアアアアアアアアア!! ここで終らせる!! この力で!! 終わらせる!!』」

 

 体から飛び出したクリスタル。そして、胸の部分に存在する人の顔のようなもの。

 オーバーロードの肉体的特徴から言って……

 

「あれは、猛とミランダって奴が融合した姿ってことなのかね」

「たぶんね……人とインベスの融合に関しては、色々と研究していたみたいだけど……最後にこれか。本当、馬鹿げているよ」

「ああ――でも、もう終わらせてやらないといけない。たとえ地獄に落ちるような奴らだったとしても、あんな苦しそうな声で叫んでいるのは……違うだろ」

 

 どこまで行っても、英は人を憎みきることができない。

 許せないと思っていても、どこかでやり直すチャンスはあるんじゃないか? もしかしたら、改心するのではないかと期待を抱いている。

 それでも手遅れであることも存在しているのは理解しているし、あのような姿ではただ苦しいだけだというのもわかっている。

 

「強固な防御フィールドがあるから、束さんが崩すよ……トドメは、お願い」

「分かった」

 

 ヤエザクラタイフーンを起動させ――空中にホバリングさせた。バイク形態からそのままタイヤを横倒しにすることで、飛行能力を獲得しているのだ。

 座るのではなく、サーフボードのように乗り、暴走を始めたオーバーロードへと向かって飛んでいく。

 その後ろから――梓弓モードの一撃で防御フィールドを崩す一撃が放たれた。ガラスの割れるような音と共に敵が無防備になる。

 

「本当、どうしてこうなったんだろうな……違う会い方をしていたら、友達になれたのかもしれない。でも、それはこの世界じゃない――だからさ、こんなことはやめてもう眠っていてくれ…………」

 

【無双セイバー! ハーモニクスカノン! 大橙丸!】

 

 三つの武器が接続される。

 二つつなげるだけで強力な力を発揮する武器が、三つ。そこに、銀のリンゴをセットすることで準備は完了した。この一撃が、彼らへの最後の一撃。

 

【ゼロ! ゼロ!! ムゲンダイ!!!】

 

 ただの一撃で、彼らの持っているヘルヘイムの力を消し飛ばしていく。

 光の奔流がオーバーロードを塵も残さずに消し飛ばす。

 光が収まると、そこには何もいなかった……須郷猛との戦いは、こうして幕を閉じた――ただ、最後の一瞬…………何も抵抗をしなかったような気がしたのは、気のせいだったのだろうか……

 

 

 

 

 

 

 スレイプニルに戻れば、みんな言葉数は少ないし、暗い雰囲気が残ったままだった。ムーも虹色の嵐のような防壁が展開されて突入は困難になってしまったし……暗くもなるだろう。

 だけど、とりあえずIS学園に戻ってみれば――大勢の人がそこにいた。IS学園の生徒はもちろん、高校の時のクラスメイト達、今までお世話になった先生たちや、昔いっていた商店街の人たちまで……大勢の人が、出迎えてくれたのだ。

 それだけで、力が戻る。

 まだ終わったわけじゃない――これはただの小休止。

 今は、彼らの日常を守ることができた。その結果があればまた戦うことができる。

 みんなの笑顔が力になる――だって、それがヒーローってものだろう?

 




私事っていうか、アルバイトが決まって少し忙しくなるかなー、でも書く時間は今まで通りに作れそうだなぁと思っていた矢先、母が怪我った。
なんか嫌な予感がバリバリ……

完結させられるように頑張りますので、不定期になったらすいません……いつも外部から何かしらの要因で大変なことになるので……

それとは別に、明日は更新しません。月初めと月末の話数調整なんで。
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