「全員対ショック防御! 城に突っ込むぞ!!」
「こういうのって一旦陸地に降りませんか!?」
「そんな時間ないって――見ろ! 日食が起きている!」
英の言う通り、外を見ると日食が起きているのが見える。一夏の記憶では月が出ているような時間ではなかったはずだが……本当に日食が起きているではないか。
一夏だけでなく、彼ら高校生組は全員驚いている。何故、このような現象が起きているのかわけがわからない。
「簡単に言うと、アイツらの最終的な目標は世界中をヘルヘイムの森と同化させるってことなの。あれは、そのための準備だよ……あの日食の正体はバカでかいクラック」
「あんな大きさの!? ――でも確かになんかファスナーみたいな形の光が……」
よく目を凝らしてみればわかるのだが、たしかに光輪がファスナーのような形状になっている。しかし、あれほど大きなクラックをそう簡単に作れるものなのだろうか。
「実際、あれを安定させてから使用するにはかなりの時間が必要になる。アイツらも宇宙に出てきたがっていたのはあの準備を確実に実行するためだったみたいだし……まあ、そっちは潰したから別の方法に切り替えたんだろうけど」
「別の方法って? もう突っ込むまで時間ありませんよ!」
「簡単な話だ。マルスが全力でクラックを開いているんだよ! おそらくはロックシードの限定クラックとかの応用だろうな! なにせロックシードの開発者の一人なんだからよ!」
そのぐらいの応用はして見せるってことなのだろう。しかし、無茶な方法には変わりない。ゆらゆらとクラックが動いているところを見ると安定性がかなり悪いらしい。
それも時間の問題だろうが……
「あと10秒で突っ込む! 目標はマルスが最優先だけど――あんまり無茶するなよ!」
「そりゃ無理ですよ――すでに無茶やってるじゃないですかぁあああ!!」
直後に、轟音と共に瓦礫が崩れる音が聞こえた。
スレイプニルがマルスの居城に突っ込んだのである。
◇◇◇◇◇
とっさに中に入ったのはいいが……あたりが暗くてよく見えない。
全員がドライバーを使用して突入したのはいいけど……
「なんつーか、はぐれたなこりゃ」
「弾よ、向こうの方から上に行けそうだぞ」
「流石軍人……ボーデヴィッヒさんは冷静だな」
「そうでもないさ。これでも冷汗が止まらない」
「まあ……そりゃそうだけどな」
おそらくは城の中でも下層に位置していると思う。
見た目はいかにもな城だったが、内部は結構機械とかも多い……形から入るタイプなのだろうか?
それでもそこらじゅうに生えたヘルヘイム植物が嫌な雰囲気を増幅させているが。
「そういや、神宮寺さんは大丈夫なのか? ドライバーをつけていないと食べかねないと思うけど」
「それは安心していい。量産型ドライバーを装着していたのを見た」
「ならいいけど……あの人、裏方なんだろ?」
「だとしても、待っているだけなのは嫌なのだろうさ。それは私の部下たちにも言えることだが……」
「なんか嫌なこと思い出させたか?」
「いや、私たちも連れて行ってくれと頼まれたことを思い出してな」
「…………後悔、しているか?」
「むしろ、アイツらは私の帰る場所を守っていてほしい。私の帰るべき場所にいるアイツらに」
「そっか――なら、負けられないよな」
「ああ…………まったく、この肌が焼けつくような感じ、嫌になる」
気が付くと大広間のような場所に出ていた。円形の部屋はまるで中世のダンスホールにも見える。
その中心にただ一人――炎をドレスのように纏った女性がこの部屋の主だと主張するように佇んでいた。
「……この時をどれほど待っていたことか。あの子を殺したお前たちを殺せるこの日を、どれだけ待ったことか」
「…………オーバーロード」
「あの子とは、オータムと言う奴のことか?」
「ええ――私の可愛いオータムを殺したあなたたちを、私の炎で焼き尽くしてあげる……この、スコールが」
「名前負けしてんじゃねぇか……スコールっていう割には水要素全くないだろ」
「気をつけろよ、この女――オーバーロードの中でも別格だと見た方が良い」
「本当なら一層一層一人ずつ守護して、四天王とか言っておくべきなのでしょうけど……シャーベットも消えた今、オーバーロードの四強は私だけになってしまったわ。直接戦闘タイプじゃないアンバーも油断して殺されちゃったみたいだし――全員、道連れにするぐらいのつもりだったのに、まさかそのまま突っ込んでくるなんて予想外もいい所よ。誰の発案かしらね?」
「そりゃ、一番の大先輩だよ」
「――――まったく、首領も見通しが甘いのよ。同じ科学者だから理論的に来るとでも思っていたのかしらね。彼は考えるより先に行動するタイプ。考えるのは事前準備の時。まあ今更言っても仕方がないのでしょうけど――せめて、あなたたちだけはここで燃やし尽くす。私もすぐに上に向かわなければならないけど、どうせあの二人には勝てないわよ」
「ごちゃごちゃうるせえよ! 俺たちだって帰るべきところがあるんだ……帰りを待っている人たちがいるんだ!」
「うむ。黒ウサギ隊の皆とやりたいこともやっていないのにここで死ねるわけが無いだろう――それに、死ぬのはお前だッ! 私の姉妹たちにしたこと、忘れたとは言わせないぞ」
「……ドイツのアドヴァンスド風情が、私に勝てると思わないでちょうだい。偶然が重なっただけの坊やが、粋がらないでちょうだい――私は、ずっと世界の闇に浸かっていたのよ――まだ16年程度しか生きていないくせに粋がるんじゃないわよ」
その言葉と共に、炎が津波のように押し寄せてくる。
体が硬直するかとも思ったが、ボーデヴィッヒさんが前に飛び出して炎を切り裂いてくれた――男が、女の子に守られっぱなしってのもいけねえよな。
【マツボックリエナジースカッシュ!】
やり投げのように、武器を投擲し――同時に炎の隙間から俺も突撃していく。
「なっ!? 武器を捨てるなんて正気なの!?」
「生憎、こちとら無茶でもしないと勝てそうにないってのは嫌ってほど理解しているんだよ!! ボーデヴィッヒさん!!」
「任せろ――それに、長いならラウラと呼べ!!」
一夏じゃないんだし、女の子の名前を呼ぶのはあまり慣れているわけではないのだが――そう言うのならお言葉に甘えよう。
「ラウラ! ぶちかませ!!」
【チェリーエナジースパーキング!】
俺がタックルをかましたことで体勢の崩れたスコールに、必殺の一撃が叩き込まれようとしていた。
赤く光る足をあと一瞬で届かせる、まさにその瞬間――空間が、爆ぜた。
「言ったでしょう――舐めるなと!!」
「――――ガァ!?」
「な――嘘だろ!? 炎の塊になっちまった!?」
スコールは自爆したのかとも思ったが――違う。奴は、体を炎そのものへと変化させていっている。
それが自分の本当の姿だとでもいうかのように。
「うふふ――今のは油断したわ。でも、ここからは違う――圧倒的な力でいたぶってあげる」
指が伸び――炎の槍となって、俺の体に突き刺さってくる。
激痛と肉が焼けるような臭い。変身していても、体に貫通して――
「アアアアアアアアアアアアアアアア!?」
「だ、弾!」
「まだよ――まだこんなものではないわ。冷静でいようとしていた分だけ、一度動き出してしまえば止まることはできないのよ!! 少しずつ、じっくりとたっぷりといたぶってあげる」
その次はよくわからなかった。体が何度も打ち上げられたのだけは覚えているのだが……意識が遠のいて行ってしまっている。
ラウラの声が聞こえてくるが――
(やべえ……俺、まだ変身しているのかさえよくわかんなくなっちまった)
「アハハハハ!」
「クソッ――この!!」
二人が戦っている。
音からして、ラウラが劣勢なのはわかるのだが――炎の波が、ラウラを捕えている。
彼女には何か特殊な能力があるらしく、炎の波を見きっているものの、躱しきれていない。
一度捉えられてしまえば、後はアリジゴクにはまるかの如く抜け出せなくなってしまう。
それでも果敢にスカッシュやスパーキングを組み合わせて地道に攻撃を続けているみたいだが――
「これで、トドメよ」
「――――サソリの尻尾?」
炎で出来たサソリの尻尾。いや、炎は纏っているだけで甲殻に包まれている。
もしもそれで一突きされればひとたまりもない。
(どうにかして助けに行かないと――――あれ? なんで、俺今の状況が見えているんだ?)
意識が遠のいているハズなのに、俺は今の状況を冷静に分析できている。
いやそもそも――どうやってこの状況を見ているんだ?
不思議な力に目覚めた――そんなわけないだろ。
ISが何かしている――男に反応するのは一夏という例外のみ。
じゃあどうしてだ? どうして俺は――――
(って、簡単な話だよな…………まったく、情けないだろ。倒れたままでいいのかよ五反田弾。男なら――立ち上がれよ……胸張って帰りたいだろ。まだやりたいことなんてそれほど山ほどあるだろうがッ!)
――俺は、意識が遠のきそうになっても見続けていたんだ。どれだけぼろぼろになろうとも、目を離さずに。
流石に目がくらんだのには自力で道央することはできなかったようだが――視線はずっと放していなかった。
だったらできるだろ。そのぐらいやってみせたんだから、もっと先へ。もっと頑張れよ、五反田弾。
「無茶ってのは、不可能な状況をひっくり返してこそだろうがッ!!」
「――――嘘!? 確実に神経を焼き尽くしたのにまだ立ち上がれるというの!?」
「弾――――まったく、私だってまだまだ無茶をし足りないというのになっ!!」
俺の拳が、サソリの尻尾を弾く。だが、すぐにその凶刃が俺を狙ってしまった。まあ、それも当然だよな――普通ならすぐに俺の体は貫かれてしまうだろう。
だけど、今の俺は一人じゃないぜ。
光の筋が俺の真上を通り、奴の尻尾を打ち抜いてくれた。本当、無茶を通してくれやがって……
「――――ISと、ドライバーの同時使用……ありえない、コアナンバー001の白式や、篠ノ之束ならともかく、貴女がそれを使うなどありえないわ!」
「出来たのだから仕方がないだろう――ドライバーとISの同時使用が、ここまで体に負担をかけるとはな……重いなんてものではないが、気力さえ続けばどうということはない!」
「その気力がおかしいと言っているのよ! やはり、普通の人間とは異なるということなのかしらね」
「…………生憎だが、私は人間だよ。たしかに、普通の人間よりかは頑丈にできているだろう。だが、それだけだ。私だって普通に生きている。朝起きてご飯を食べて、夜には眠くなる。喜びも不安も、様々な感情があって、普通に恋もする――それだけの、ただの人間。ラウラ・ボーデヴィッヒだ。だがな――人間というのは無限の可能性があるのだ。一つの完結した個ではないからこそ、何者にもなれる。そうは思わないか? なあ、弾よ」
「――――本当、その通りだぜ」
「ッ!? いつの間にッ!!」
俺の振りかぶった拳は――当たることはなかった。直前で回避されてしまったからには、当たりようがないのだ。
だが、それで終わりじゃない。
ぐっと地面を踏みしめ、その足を軸に体を回転させて――後ろを向き直る。
「この往生際が悪いわよ――――ッ!? 体が、動かない」
「往生際が悪いのは、お前だよオーバーロード。先の可能性を捨ててしまったことこそがお前の敗因だ。お前に止めを刺すのは私じゃない。咄嗟とはいえ、お前が一番警戒するのは私だと判断したからこその連携だ」
「――――この一瞬で、なんでそこまで」
「それが人間の可能性だ。やってやれないことはなかったよ――同時使用によってたとえオーバーロードであろうともAICが使えるようになったのは嬉しい誤算だ。弾、決めろ!!」
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
【マツボックリエナジースパーキング!】
右足に充填されるエネルギー。限界を超えて、輝きがどんどん増していく。
そして――その力は足先から右手まで一気に流れていく。
踏み込みと同時に流れ出した力は俺の中でブーストされていき、破壊力を増大させているのだ。
「――――そんなことしても、私の体は炎で」
「尻尾を見せたのは失敗だったな。お前は炎でコーティングしていることで炎そのものが体だと誤認させているだけに過ぎない。蜃気楼も使っているのだろう? だが――すでにAICでとらえた以上、逃げ場はない!!」
「――――――――ッガアアアアアアアア!?」
炎のドレスははがれ、後に残ったのは全身を殻で覆ったオーバーロード。しかし、その姿もすぐに見えなくなってしまう。
今度は、自らが炎に焼かれて灰となったからだ。
俺の一撃か、それとも自分の力を抑えきれなくなったのか。それは分からないが……オーバーロード・スコールはこの世界から消えた。
「――――やった、ぜ」
「弾!」
流石に……無茶し過ぎたかな。
負けるなよ、みんな。
スコールさんとの決着。
ということは、次回は……
提督のみなさん、本日は冬イベントの開始ですよ。
資材その他の備蓄は十分かッ
うちはもうすぐRJが改二。ぽいぬ、ビス子に続いてようやく。