ゲネシスドライバーは戦極ドライバーよりも高い強度を誇っている。英が戦極ドライバーの弱点の一つに強度の低さを感じていたため、ゲネシスドライバーは強度を高めている。エナジーロックシードにも耐えうる設計にする必要もあったためにそれは実現した。たとえオーバーロードであろうと破壊するのは困難であるほどに。
「ドライバーが――――」
一夏のゲネシスドライバーが破壊されて、大きな隙ができてしまう。とっさに破片を掴むが、それだけでは意味がない。
破壊されてすぐに変身が解除されるわけではないが――死がすぐ目の前まで迫っていた。
どのような武器だったのか一夏には確認もできない。次の瞬間には変身が解除されて、一夏は殺されるのだから。それは避けようのない事実で――――
(――そう簡単に、諦めてたまるかよ!!)
――いや、もう終わりなのだ。一夏は終わりだ。
死はそこに迫っている。なのに、何を抵抗している。もう無駄ではないか。無駄なあがきではないか。
(無駄なんかじゃない――俺は、明日を掴むんだ!!)
無駄なのだ――もう避けることの出来ない結果がそこにあるというのに、なぜ貴様は止まらない。
(止まってたまるかよ……俺は俺の手で未来をつかみ取る。小さくまとまる必要なんかねぇ…………お前だって助けてみせるさ、マドカ!)
――一瞬、彼女の動きが止まった。
いや、どこかでその言葉が聞こえていたのだろう……だからこそ、マドカは止まったのだ。
クロッシングアクセス。一夏がこれまでに何度も起こしてきたその現象が、今この場で発動した。その結果、一夏とマドカの意識が接続され、二人の間に共通する部分が数多かったせいなのか同時にエラーを起こし様々な情報が二人の中に入ってくる。
「あああああああああああああ!?」
「うおおおおおおおおおおおお!!」
だが、一夏はその情報の嵐の中でも前に進み続けた。
マドカはヨモツヘグリアームズの副作用により――その意識と命を喰われ続けている。自我を崩壊させ始めていたのを気力で押さえつけていたところに、今の現象。彼女の精神に多大なダメージがあったことは言うまでもない。しかし、それでも彼女は長年の戦闘経験から無意識に一夏に止めを刺すために動いていた。
ブレードを一回動かし、スカッシュの音声があたりに鳴り響く。
一夏にそれを止める術は――
「まだ、こいつがある!!」
――とっさにつかんでいた破片は、メロンエナジーロックシードをつけたままのゲネシスコア。
そして一夏が取り出したのは戦極ドライバー。それでも装着までの隙はある。
マドカの凶刃は一夏に届く――だが、マドカは一つ失念していた。ISもまた心のようなものを持っている。だったら一夏のIS、白式が彼を守ろうとしないわけが無いのだ。
「ッッ!?」
シールドビット。しかもどうやったのか、マドカの体を空間に繋ぎとめるようにエネルギーを展開している。空間に圧力をかける方法。おそらくは衝撃砲やAICといった装備のデータから再現された力。
もっとも、今のマドカにそれを分析する力はなかったが。
【ミックス! メロンアームズ! 天下御免! ジンバーメロン!! ハハーッ!!】
それにもう時は遅い。
「そんな力に振り回されたって何もいいことなんてない……もっと真正面から、自分の声で伝えたいことを伝えろよ! 簡単に世界に絶望してんじゃねぇ!! 逃げたってそれが楽になれる道なんて保証はどこにもないんだ!! 苦しいなら――今そこから助け出してやる。だから、いい加減に目を覚ましやがれ!!」
その姿は、通常起こりうるジンバーアームズとは異なっていた。
本来ならば戦極ドライバーを使用していた時のライドウェアを着ているハズが、途中でドライバーを交換した影響なのかゲネシスの時と同様。兜の形状もだ。
そしてジンバーラングは二つのメロンが組み合わさった模様に。
二つの力がきれいに混ざり合い、更に一夏の手に握られていた雪片へと流れ込んでいく――ヨモツヘグリロックシードをそのまま破壊したのでは、どのような影響が出るのかわからない。最悪、爆発で二人とも吹き飛んでしまうだろう。
だが、一夏ならば――零落白夜ならばそのようなことは起こさせない。
「ハアアアアア!!」
【メロンスパーキング! ジンバーメロンスパーキング!!】
虹色に輝く光の刀身はマドカのドライバーをロックシードごと真っ二つに切り裂いた。後に残ったのは、力が抜けて倒れた外傷のないマドカの体と、役目を終えたかのように沈黙するIS、そして金属の塊となったドライバーとロックシードだったものだ。
「…………一言小言を言おうとも考えていたけど、やめておいてやるよ……まったく、そんな顔したら何も言えないじゃねぇかよ」
意識を失って倒れた彼女は、どこかほっとしたような表情をしていた。
◇◇◇◇◇
鈴と箒の戦いはいまだに続いていた。多彩な武器を雨のように降らせたり、凶悪な威力で迫ってくるその全てを鈴はいなしていた。
本来ならば、もう倒れているハズだろう。
「なぜ倒れない――なぜ、お前は食らいついてくるのだ!!」
「あいつが、一夏が諦めていないからに決まっているでしょうが!! 惚れた男が前に進み続けているのに、おいてかれるなんてありえないわよ!!」
そのために強くなったのだ――鈴はいつだってシンプルに物事を考えてきた。
竹を割ったような性格とも言われたことはあるが、実のところうじうじと悩むこともある。それでも、あれこれ難しく考えるよりシンプルに答えを出した方がすっきりすることが多い。元来の性格より、経験則と言った方がいいだろう。
「あたしは一夏が好きだから――ずっとあいつの隣にいたいから、今まで戦ってきたのよ! そんなあたしが、こんなところで倒れるわけにはいかないのよ!!」
鈴に流れ込んでくるのは一夏の思い――クロッシングアクセスによって一夏と共有している感情が今、爆発した。一夏側はマドカと結びついているため、現在は鈴の方にのみ流れ込んでいるが、それでも今の鈴に強い後押しをしていることは間違いない。
「はあああああ!!」
「ッ!? 同時、使用だと!?」
鈴の背中に出現したのは、衝撃砲。それが空間に圧力をかけて鈴の実像をぼかしていく。
いくら人外の力を得ようと、まだなり立て。使いこなすには時間が足りなかった。
「このッ!!」
「――残念、本物は後ろよ!!」
【ホオズキエナジースカッシュ!】
刀身に集まっていく赤色の光。それが、箒の眼前に迫っていく。
思わず手に持っていた大橙丸で防ごうとしてしまい――ミスだと気づいたときにはもう遅かった。
急に折れ曲がるように動く刀。鈴がその体をひねり、ドライバーめがけて振り下ろしたのだ。
「顔を狙えば思わず防ぐのは当たり前よ――そんなことも忘れたっていうの!?」
「――――だまれえええええええええええええええええええ!!」
ドライバーには届かなかった――いや、届かせなかった。左手を犠牲にしてもその一撃だけは防いで見せたのだ。
手のひらに突き刺さっているのはさすがに痛いが――同時に、鈴も逃げ出せない。
「フハハハ――終わりだ」
【極オーレ!】
右手の大橙丸にエネルギーを濃縮し――止めを刺そうとした。
だけど、天は箒には味方しなかった。いや、そもそも箒は自ら天に背いていた。この場合は、鈴が信じ続けたからこそ起こるべくして起こったのだろう。
【ジンバートマトスパーキング!】
【マツボックリエナジースカッシュ!】
【チェリーエナジースカッシュ!】
扉の方から、三つの光が飛来した。
今まさに鈴に止めを刺そうとしていた箒の背中に当たり、箒は鈴を逃してしまう。
「ッ!? な、なぜお前たちが!?」
「つれないことを言いますわね。あの程度の雑兵でわたくしをとめられるとでも?」
「正直、俺は休んでいたかったけど……そうも言っていられないだろ」
「慢心は己を亡ぼす。私自身味わったことだ……箒、もう終わりだ。投降しろ」
百花、弾にラウラ。下の階層から駆け上って来て、ここまでたどり着いたのだ。
少なくともスコールがいたのだ……インベスたちも数えるのが億劫になるほどにいたはずなのに。
「なんだこれは……何だと言うのだ!!」
「往生際が悪いぜ箒。そんなもので強くなっても意味はないだろ……いつもひたむきで一生懸命だったのに、どこで間違えちまったんだろうな」
「……一夏」
「もうマドカも倒した――あとはマルスとお前だけなんだよ。頼むから、諦めてくれよ」
「…………いいや止まれない。私は、私の手にするはずだった幸せをこの手につかむ――だから、今この世界は嘘っぱちなんだ。私には私の生きているべき世界があったはずなんだ!」
「嘘っぱちなんかじゃねぇよ……たとえ他の可能性があったとしても、それはIFなんだよ! 今この場に生きている俺たちの世界じゃない!」
「生まれてくる場所なんか変わりようがない! たとえ変わったとしても、変わった時点で元の自分はいないのよ! 箒が言っているのは、今の自分を捨てるってことよ!」
「だとしても……もう、私は止まれないんだ…………だから、お前たちをここで壊すしかできない」
直後に、黒色の鎧が箒の体を包み込む。
体中から翼のような光が噴き出していく。まるで、内側から強大な力が飛び出ようとしているかのように。
「まったく…………何があったのかは知らないし、きっと答えは一生知ることはできないんだろうな」
「でもさ……止めるって決めたから。だから、あたしたちはあきらめないよ」
「お二人の大切な家族ですから……人ならば道に迷うのは当たり前、その時に正すのは大人の役目ですわ」
「正直、それほど詳しく知っているわけじゃないし、ここにいるのも成り行きみたいなものだけど、俺だけ下がっているわけにもいかないだろ」
「私だって、止められた身だ。今度は私が誰かを止める番だ」
最初に飛び出したのは――一夏だ。
光の奔流の中を突き進み、その全てを防ぎきって見せていた。
通常のジンバーメロンとは違い、メロンディフェンダーをその手に出現させている。
「防ぎきって、みせる!」
次に襲ってきたのは、植物のツタ。
その全てを赤色の光弾が吹き飛ばしていく。
「子供たちが頑張っているのに、わたくしが止まるわけにもいかないです!」
百花が一夏たちに攻撃を近寄らせない。
意地でも箒の下へ届かせて見せる。その気概が限界を超えた力を発現させていた。
「だったら――俺だって負けてらんねえよ!!」
弾が飛来するアームズウエポンを弾き飛ばしている。
道を切り開くために、全身全霊を持って。
「箒! 全てを拒んでいても何も解決しない――それに、私たちを見くびるな!!」
「ッ!?」
ラウラが、今まさにすべての力を注いで放とうとしていた箒の大剣を弾き飛ばした。
これで、道が開けて――
「まだだ!! まだこれがある!!」
箒はその手をカッティングブレードに伸ばした。
周囲を吹き飛ばすような攻撃をすればまたチャンスが生まれる。
絢爛舞踏のある箒ならば持久戦で負けることは無いのだから。
だが――彼女は一つ忘れていた。箒のドライバーを壊すためにエネルギーをチャージしている鈴に警戒し過ぎていたからか。もう一人、この場には仮面ライダーがいたことを。
「――ちょっとふらふらしていたんだけど、これでお膳立ては完了かな?」
「しゃ、シャルロット……だと」
倒れていたはずの彼女が、立ち上がっていた。
箒は侮っていたのだ。人間を、ではない――箒を止めるために戦う彼らの覚悟を。
そして――もはやその一撃は避けようもない。
(で、どうするのよ――おいしいところはあたしが全部持っていく?)
(バカいうなよ――俺の力も加えないと、何が起きるかわからねえし、絢爛舞踏には零落白夜をぶつけないとダメだろうが)
(それもそうね。それじゃあ――いくわよ一夏!!)
言葉は交わしていない――クロッシングアクセスによる意識共有。自覚したのは先ほどだが、今までにも兆候はあった。一夏と鈴の二人は無意識下でなんどもそれを発動させていたのだ。
時折、二人の考えていることがお互いに分かったり、言葉に出していないのに意思疎通をしていた。その結果――今二人の動きは完全にシンクロしている。
「「うおおおおおおおおおおおお!!」」
二人が鬼灯刀を握りしめ――箒のドライバーめがけて一気に振り下ろした。
最後の抵抗とばかりに箒は絢爛舞踏によるエネルギー増幅で瞬時に回復していくが――それも続かない。
「な、何故だ!? 紅椿の出力が――嫌だ、私は――――ッ!?」
光が弾けて――箒の姿が人のソレへと戻っていく。
ただ一つ変わっていたのは――彼女の髪がバッサリと、斬られていたことだ。
というわけで箒戦、マドカ戦、決着。
一夏と鈴が何度も意識を共有していたってのは、気が付いた人いたかな?
というわけで、次回からついにラスボス戦、開幕。