仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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ついに190話だ。


EP190.マルス

【魁スパーキング!】

【ゴールデンオーレ!】

 

 巨大な炎の剣と、虹色に輝くパインアイアンがぶつかり合う。

 魁アームズは今までに英が使用したすべてのアームズの武器を扱えるアームズ。様々なアームズを切り替えて戦ってきたがゆえに、アームズウエポンの力が底上げされただけで全力のマルスとも渡り合っている。

 

「――――束!」

「うん!!」

 

 今までの分身とは違い、本体は底知れない何かがある。おそらくは今までの分身体は一面のみを切り取った存在だったのだ。本体のマルスに対して油断した時点で命とり。

 だからこそ束との連携も手を抜かない。

 

【雅スカッシュ!】

 

 背中に装着された加速用ブースターにより、束は一気に加速する。

 その手握られていた武器は――影松・真。

 エナジーアームズの武装を三つだけにとどめて汎用性を捨てているが、雅アームズはそれだけで十分であった。マルスは盾で防いで受け流そうとしているようだが――それは想定内。

 

「ここから、ひねってッ!!」

「――」

 

 一瞬だけだが、マルスの盾に刃が食い込む。その都度束が演算していくことで的確な振動やエネルギー出力を割り出して敵武装を逆に利用する束にのみ使える奥義。

 それでもマルスは盾を捨てて、剣のみで斬りかかってくる。

 

「束さんだって頭で考えるタイプだよ――ドライバーの製作者って聞いていたからどんなものかなと思っていたけど、正直拍子抜けだよね!」

 

 それでも束には届かない。

 束は本来、直接戦闘するよりも頭で考える後方タイプ。肉体的なスペックが常人を凌駕していようともそれは変わらない。だが、何もしていなかったわけではない。

 この5年――いや、英が倒れてから束はあることをしていた。

 

「……無拍子、これでも家の流派は一通りやっているし、本気で覚えたよ」

 

 いくらマルスが規格外な存在であろうとも、動きの波というものはある。その隙間に挟み込むように束は動いているのだ。

 認識外からの攻撃。強固な防御力を持っていようとも、そう何度も喰らっていたのではいつか限界が来る。

 

「でもって――」

「僕の番だ!!」

 

 入れ替わるように英が前に出て、鎧をはぎ落そうとドリノコを振り下ろした。

 マルスもただやられるだけでなく、英に剣を突き刺そうとするが――それは虚空から出てきた盾に防がれる。

 メロンディフェンダー。アームズウエポンの中でも防御に特化させたものだが、以前英はこれを使用して負けている。だが、今回はそうはならなかった。

 

「おおおおおおおお!!」

「――――ッ」

 

 完全に防ぎきった。その上で、さらなる一撃を加える。

 

「予想以上の性能……人でありながらそこまでの力を手に入れたか」

「余裕そうな声だな伯父さん……こうしてちゃんと話すのは初めましてか?」

「そうだな……あいつに似ているようで、やはりアリサの子か…………愚直で、考えるよりも先に動き出す」

「それがどうしたよ――そっちこそなんでこんなことをしているんだ!! 世界をヘルヘイム化して何の意味がある!!」

「わからないか? 死者の国であるヘルヘイム。地球とひとつになった時、この世界から理不尽な死がなくなるのだぞ?」

「――本末転倒だろうが。今までにお前らが理不尽に奪った命がどれほどあると思っているんだ!」

「その命も帰ってくる。それこそが、私の作る世界だ。この黄金の果実の力で――この私の力で!!」

「狂ってる……そんなことしても、誰も喜びやしない!!」

「黙れ……黄金の果実は絶対――アリサを取り戻すのだ――黄金の果実はこの世界を手に入れる――あの頃の日々をこの手に――絶対に覆らない事実! 貴様たちは、ここで死ぬ運命!!」

「……伯父さんなのか、黄金の果実なのか……はたまた、人造的に生み出された方の黄金の果実なのか。それは分からないけど……こりゃぶっ壊すしかないな」

「…………いいの? もしかしたらこんなはずじゃなかったこともやり直せるかもよ?」

「そんなの意味がないだろ。それに、束は使いたいのか?」

「冗談……死んでも使わないよ」

 

 上等。それだけつぶやき、英はアカコテツを呼び出す。束は鬼灯刀を――目の前の存在は既に自我を失っているようだ。そこにあるのはただ世界を呑みこむという目的のみ。

 だからこそ終わらせなければいけない。

 

(正直、伯父さんしか肉親は残っていなかった……だから、もうちょっと話してみたい気もしていたんだ。だけど、それももう無理なんだろう……たとえ話せたとしても、彼は母さんを生き返らせるという目的に憑りつかれている)

 

 実際、あの人は自力で現世に出現したりもしたけど……それはこちらから呼び出したわけではない。

 やはり生者と死者はそう簡単に交わってはならないのだ。

 

「死んだ人に会いたければ、墓参りでもすればいいんだ。何をしたところで、昔の時間が帰ってくるなんてありえない! 今この現在までに積み上げるからこそ、時は尊いものなんだよ!」

「命ってのはそう簡単に覆らないものだよ……覆ったとしても、そんなの永遠に続いちゃいけないよ。どこかで線引きは必要なんだ。だから、それを壊すあなたを止めるよ」

 

 二人は駆け出していく。それに合わせて、マルスも動く。

 炎と植物が津波のように押し寄せてくるが――二人はその全てを蹴散らしている。

 英はいくつものアームズウエポンを召喚して薙ぎ払い、束は自分を中心にエネルギーの波動で弾き飛ばして。

 

「――どれほどの負担がかかっているのかわかっているのか――――この感覚は――――人の身では持て余すほどの力をなぜ、制御しているのだ――――かつての記憶からデータを参照。個体名アダム、個体名イブのモノと同一。迎撃態勢に入る――」

 

 一瞬、英は彼の言っていることを理解できなかった。

 機械的な声と、伯父であるカウラ・ゲインクロイム・戦極本来の声が混ざって聞こえてくるのだ。

 それにいくつか気にかかることが聞こえてきたが――

 

「英!!」

「分かってる!! 合わせろ束!!」

 

 それでももう彼らは止まらなかった。

 おそらくは人造的に生み出された方の黄金の果実の機能か何かだとあたりをつけて、今するべきことに集中する。英と束がロックシードのエネルギーの解放を行い、今まさに止めを刺そうとその力をそれぞれの刀に集中させる。

 

【極スパーキング!】

【雅スパーキング!】

 

 二つの刀は虹色に輝き――束は英に刀を投げ渡す。

 

「いっちゃえええええええええ!!!」

「おおおおおおおおおお!!!!!!」

 

 二刀流。元々、英は刀一本よりもその方を得意としていた。

 マルスの盾にはばれても、次の一撃が捉える。敵の攻撃は二つの刀で受け流し、反撃に転ずる。

 束と違って直接教わったわけではないので、無拍子こそ見様見真似の模倣だが――それでも、本来ならば隙ともならない隙を突いていく。

 

【極スカッシュ!】

 

 さらに、その力を解放。右足と両手の刀から放たれる光があたりを真っ白に染め上げるほどに強まった。

 

「これで、終わりだぁアアアアアアアアア!!」

 

 もうマルスの鎧はボロボロ、反撃のための力も残されていない――その最後の一撃で勝負はつくだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本当に、最後の一撃となったならば。

 

 

 

「ッ?」

「か、体が……動かない!?」

 

 

 何か、見えない圧力をかけられたかのように体が動かなくなる。

 これは、どこかで覚えがある現象だと英と束が記憶から探し出して――見つけた。

 

「AIC!? いや、空間に圧力を働きかける方式は衝撃砲に近いけど……間違いなく、ISの力だよ」

「なんで、こんな時に――いや、マルスは男だからISを使えるハズは――――ッ!?」

「……うそ、でしょ」

 

 そこで、英と束は見た。植物に覆われていた壁から何か気味の悪い肉塊が現れてくる――いや、肉塊と言うにはハッキリし過ぎている。

 体と植物のツタを融合させ、四肢の無い少女たちが、その体にISコアのようなものを埋め込んでいたのだ。

 

「ひどい……こんな、こんなものっ!!」

「研究の成果だ……篠ノ之束、君の作ったISは実に素晴らしい。男は使えないという馬鹿げた欠点もあるようだが――こうして、間接的に接続すればその限りではない」

「…………ふざけんじゃねぇ……どこまで命を粗末に扱えば気が済むんだ!!」

「粗末? 何を言う――彼女たちは、このために生み出したただのパーツだよ」

 

 その言葉を聞いた瞬間、英と束の中で何かがキレた。

 圧力を無理やりに押しのけ、マルスへと突撃していく。何か強大な力で押さえつけられそうになるが、その全てを突破して。

 

「――――流石に、これはまずいな……ならば」

【ゴールデンスパーキング!】

 

 ただの一振り――炎が巻き上がるだけに見えたその一撃は、かつてないほどの威力を誇っていた。

 あと一歩、あと一歩でマルスに到達したはずなのに――いや、マルスはとてつもないエネルギーを内包している。それこそ地球全土をヘルヘイム化するほどの。

 それなのに人型を保ち続けている理由は何か。アームズという先入観が英たちにある可能性に気が付かせなかったのだ。

 

「オオオオオオオオオオオ!!」

 

 マルスの体が炎に包まれ、ケンタウロスのような足に変化する。

 今までの姿は、先の計画のために力を温存していた姿――だが、それ以上に二人は脅威となったのだ。

 

「まずは貴様らの力を奪おう――――ハア!!」

「――――あああああああああ!?」

「た、束!!」

 

 弾き飛ばされた篠ノ之束は、ロックシードこそ壊れはしなかったものの……ゲネシスドライバーは粉々に砕け散ってしまった。

 たったの一撃で、堅牢なはずのゲネシスドライバーが破壊された。その事実は英の動きを止めるには十分。

 

「……うそ、だろ」

「だがこれこそが事実だ――貴様たちに勝ち目はない。もう、終わりだ」

「…………まだ、僕が残っているだろうが………………まだ、終わりじゃない」

 

 刀を握り直し、マルスを睨む。

 まだ力が膨れ上がっている彼は正直、化け物もいいところだとは思う。

 

(それでも、逃げるわけにはいかないよな……こんなところで、負けるわけにはいかねえよ!!)

 

 飛び出したのはどちらだったか――斬撃がぶつかり合う音が何度も聞こえる。

 しかし、機動力もマルスが上回り、英の攻撃は彼に届かない。

 

「存外、脆いな――人間というのは」

「ッ!?」

 

 蹴り。英が認識したのはそこまでだった。

 気が付けば、無様に地面を転がっていて――体が動かなくなってしまう。

 

「ま、まだだ……まだ終わっては――――」

「往生際の悪い――――ならば、そのすがっている物を破壊するとしよう」

 

 炎の弾丸が英に襲い掛かる。咄嗟にかわそうとするものの、全てをかわしきれずに腹部に強い一撃を感じた。

 くの字に体が折れ、ドサリと体が落ちる。

 そして、火花を散らせながらドライバーから何かがおちてしまった――それは、英が多くの人に支えられているという証でもあったもの。

 

「ノロシ、ロックシードが……」

「あいつの想定を超えて進化したロックシード……まったく嫌なものを作ったものだ――――だがこれで危険因子の排除は完了した」

 

 鍵であるミラクルロックシードは破壊できなかったが、それでも英の戦う力を奪ったのには変わりない。

 だが――

 

「まだ、戦える!!」

【シルバーアームズ! 白銀ニューステージ!】

 

 ――英は諦めていなかった。

 他のアームズを取り出す暇は無かった。ノーマルのシルバーアームズだが、ゴールデンアームズ相手ならば何か期待できるかもしれない。

 

「忌々しい銀のリンゴ――――しかし、それだけで勝てると思うなよ」

「やってみなくちゃわからないだろうが!」

 

 再びぶつかり合う二人――英が杖でマルスの懐に一撃入れようとするも、炎の壁がそれを阻む。

 ブレードを何回も動かしてエネルギーを放出し続けているからこそ、拮抗してはいるが――それも長くは続かない。徐々に、英がその膝をつけようとしているのだ。

 

「ハァ――――ハァ――――ま、だだ……まだ負けてなんか――――」

「いい加減、諦めろよ――なら、その希望も打ち砕く。その次も、その次も――――何度もだ」

 

 再び何かが砕けるような音――いや、粉々というわけではなかったが、銀のリンゴに銃痕ができていた。

 同時に、解かれてしまう変身。

 

「あ――――ッがアアアアア!?」

「そこでおとなしくしていろ――今まさに、世界はヘルヘイムに包まれるのだ!!」

 

 マルスが高らかに笑い、城から世界に向けて植物が伸びていく。

 瞬く間に世界を覆い尽くしたそれは、滅びへの始まりなのか、彼の言う新世界の始まりなのか。

 ただ一つ言えることは――全世界の人間の目の前にツタが伸び、その先に果実をつけたということだけ。

 今、全人類をインベスにするための儀式が始まる。

 




誰も考えていなかっただろうな……魁アームズがすぐに退場するなんて。
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