仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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ラストスパート。あと、乙E-3突破。資材がヤバいからE-4どうするか悩んでおります。


EP191.黄金の果実

 最初は怖くて震えていたっけ。

 傷つく人を見たくなかったから成り行きで戦い続けて、とにかく父さんたちに何があったのか知りたいってのを第一目標にしていた。

 花蓮さんに出会って、覚悟が生まれた。

 花村さんが前に進ませてくれた。

 佐々木先生には色々と助けてもらったっけ。

 楯無さんたちは巻き込んじゃったけど、本当に世話になった。

 千冬や、高校で出来た友達たちのおかげで絆っていうのを実感できたと思う。

 一夏たち、後から続いてくる奴らがいたから前を走り続けていられる。

 百花さんや、ジョニーたちがいたからここまで来れた。

 フロンやリリーたちがいるから諦めるなんて選択肢はない。

 背中を支えてくれるみんながいるから、倒れない。

 そして、束がそばにいてくれたから――戦えるんだ。

 始まりは一人だった。いや、父さんや母さんたちが残してくれたものがこの胸にある。

 一人なんかじゃない。僕たちは、ずっとつながってきたんだから。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 全世界の人々が今まさに果実を手に取ろうとしている、その瞬間だった。

 それは小さな子供だろうか。彼が果実を手に取った時、果実が突然金属質な物体に変化した。まるで、錠前の形をしたその物体の名前は――

 

「――ロックシード」

 

 誰もが果実に魅入られるように手を伸ばす。しかし、彼らが果実を手に取った瞬間にロックシードへと変化していくのだ。

 世界中で果実がロックシードへと変化していくために全人類のインベス化は防がれている。

 だが、ドライバーもなしに何故ロックシードへと変化していくのか。

 

 

 

 

 

「なぜだ! なぜ誰一人としてインベスにならない!! いったい何が起きていると――」

「…………ふふ」

「――貴様か……答えろ!! 何をした!!」

「簡単な、話だよ…………ミラクルロックシードをこの植物にぶっ刺した。元々、こいつはプログラムとかをいじくるためのデバイスとしての機能も付けてあるんだ……ドライバーのロックシード生成プログラムのアップデートデータとかね。まあ、こういう使い方ができるとは思ってもみなかったけど――奇跡ってのは信じ続けた奴に微笑むものなんだよ」

 

 計算して出来たことではない。様々な偶然が重なった結果生まれた奇跡。しかし、その奇跡の名を冠するからこそか、その手に握られているロックシードは再び奇跡を起こしたのだ。

 世界中に伸びた植物はマルスとつながっていた。それは英の体を捕えていたものも同じ。

 

「これで、お前の計画もご破算だよな」

「――――ならば、そのロックシードも破壊するまでだ!!」

 

 再び伸びる凶手。炎の斬撃がミラクルロックシードを消し去ろうと襲ってくるが、英には見えていた。

 もっとも信頼している彼女が逆転のために動いていたことを。

 

「束えええええええええええええええええ!!」

 

 炎の中に果敢に飛び込み、ミラクルロックシードを投げる。

 流石にその行動は予想外だったのか、マルスは動きを止めるが――それによりミラクルロックシードを取り逃す。

 そして、投げられた先にいたのは……

 

「キャッチ! そして、これでISはもう悪用させないよ!!」

 

 コンソールのようなものにはカリンロックシードがセットされている。ミラクルロックシードを受け取った束は、カリンロックシードの三つのボタンのうち、横の二つを押し込んで中央部の鍵穴を開く。

 これこそ、二人がISに流されたウイルスを除去するためのワクチンソフトの起動方法。ハードとソフト両方に働きかけるために二つのロックシードを使うことになったが、これでマルスとISのリンクが分断された。

 

「――――お、おのれえええええええ!!」

「人間舐めてんじゃねぇよ……人の可能性は無限なんだ。限られた世界の中で完結していても意味がない!」

「だったら――今度こそ貴様の息の根を止めてやろう!!」

 

 爆発する炎、城は崩れ去り、宙に投げ出される。

 いや、空中というよりは真っ暗な空間――生身の英では、対処のしようがない。

 

(――マズッ、ロックシードを取り出そうにも、この状況じゃ――――いや、壊れたシルバーロックシードとドライバー癒着しちゃってるな……)

 

 万事休す。

 マルスは世界をヘルヘイム化するために使っていた力を全て解放して、周囲の空間を引きずり込んでいる。しかも体に悪影響を与えているのか、まるで石化したように体が動かなくなっていく。

 必死にもがく英だが、無情にも体はどんどん闇の中へと引き込まれていってしまう。

 

「フハハハハハ――かつての因縁に決着を!」

 

 腕輪に力を籠めるように手を伸ばしても、状況が変わらない。

 まだ、まだあきらめるわけにはいかないのだ。

 こんなところで終っていいものか。

 

「終わってたまるかよ――僕は、僕たちは……明日を掴むんだッ!!」

「これで、最後だッ!!」

 

 その時、一陣の風が吹いた。

 

 

 

 

 

 世界の終りかと、世界中の人々はみな蹲っていた。

 今起こっている戦いの詳細を知らずとも、どのような戦いなのかは皆知っている。ニュースで流れ、今日が最後の戦いとなることを。

 だけど、そんな時に伸びてきた植物。悟ったのだ。彼らが負けたのだと。

 だが――そんな中、希望を捨てていなかった人もいる。まるで、英の叫びが聞こえたかのように。

 

「そうデスネ……まだ終わってませんよ。仮面ライダー」

 

 かつて、仮面ライダーの名前を付けた少女がいた。少女から女性となった彼女は、今も信じている。ヒーローがこんなところで負けるわけが無いと。

 その彼女の姿を見て人々は立ち上がる。

 

「だから! 負けないでください!!」

 

 彼らはその手に持っていたロックシードを、開錠した。

 

 

 英の最初の戦いの時の幼稚園児たちも、今じゃ高校生。

 だが、あの時の出来事はよく覚えている。

 

「あの時助けてくれたから今の俺らがあるんだ――頑張れェ!!」

「みんなを、助けて!!」

 

 一人が立ち上がり、もう一人がつられて、更に手を取り合って立ち上がっていく。皆が一斉にロックシードを開錠していくが、そこにアームズが出現することはない。

 

 

 

「まったく、アイツはいつも無茶をする……だが、負けるようなやつじゃない」

「そうですね……先輩たちが、ここで負けるはずがありません」

 

 IS学園の生徒たちも、ずっと信じていた。

 今から何ができるわけでもない――でも、これで何かが変わる気がするのだ。

 

「英……今までずっと頑張ってきたんだ――こんなところで、諦めるような奴じゃないだろ。俺たちだって待っているんだ…………絶対に、帰って来いよ」

 

 あの修学旅行の時みたいに、場をひっくり返してやれ――手に持っていたロックシードを開く。

 

 

「まったく嫌になるわねぇ……」

「ええ――でも、生きたいって思っちゃいましたから」

「そうねぇ……思えば、人のままでいたのはそれが理由なのかしらね」

 

 何度も戦った敵であっても――生きたいという思いはある。

 捕えられていた亡国機業に所属していた彼らでさえ、未来への希望はあるのだ。

 だったら、彼に託すのも一興かもしれない。

 彼らも次々にロックシードを開錠していく。

 音声が鳴り響くが、そこにクラックが開かれるわけではない。

 

 

 

「英くん、信じているわよ。みんな、あなたのことを信じているんだから――今まで頑張ってきたから、今があるんでしょう」

「あまり多くのことを手伝えなかったが、それでも信じている。こんなところでへこたれるな!」

「艦長、打ち上げパーティーの準備はできているんですから負けたら承知しませんよ!」

「参加者はまだ増えているんですからね。だから、帰ってきてください」

 

 英の最初の協力者とも言うべき教師と、その夫。そして、英たちと共に宇宙へ行った面々。

 彼らの放つ光は他の物へも伝播していき、性別も、年齢も、民族も越えて一人のヒーローへ祈る。

 

 

「みんな、信じているから」

「絶対に負けんじゃねえぞ!」

「あの時助けられたから」

「あなたが助けてくれたから」

「この場にいられるんだから――」

 

 人々は立ち上がり、その叫びをあげる。

 一人の少年がヒーローを信じるように――いや、信じているだけではない。そこにいるのだ。

 今まで彼が頑張ってきた結果、皆が彼をヒーローと呼ぶ。

 

「仮面ライダーァアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 その祈りは届く。

 海を越え、空を越え。

 

 

 

「こんなところで、終わらないでください!」

「まだ、終わりじゃないでしょうが!!」

「俺たちの信じたヒーロが、終わるわけがない!」

「助けられてきたから……この言葉も届かせて見せる!!」

「絶対に、届かせるのだ!!」

「英さん…………あなたがいなくなったら大勢の人が悲しみます。ほら、聞こえるでしょう……あなたが頑張ってきたから、こんなにも多くの人々があなたをしんじているんですよ」

 

 

 この場についてきた皆も信じている。

 上空で空間が割れるようにして現れた黒いナニカ。その中に取り込まれた英が必ず立ち上がることを。

 

 

 

「……リリー、貴女の父さんは負けないよ」

「? おねえちゃんもむすめだよ?」

「ふふ、そうだね……クロエ、料理をたくさんつくって待っていようね」

「はい……まだ言いたいこともたくさんあるのです。帰って来てくれねば困ります」

「うん――だから、私たちのお父さんを応援しよう」

 

 人々とは少し違う祈り。

 自分たちの父を信じるという祈り。必ず、帰って来てくれると。

 

 

 そして、誰よりも強く祈るのは彼の隣にい続けた彼女だろう。

 

「ねえ、英……色々なことを我慢してさ、全部終わったらやりたいことをやろうって言ったよね……約束も託差なるんだよ――言葉にすると、上手く出てこないけどさ……ここで倒れる英じゃないでしょ。だから、勝って――英ぅうううううううう!!」

 

 

 

 

 

 

 ――――声が聞こえたんだ。

 

「みんなの声が、聞こえたんだ――――負けるなって、帰って来てって、諦めるなって――――みんなの声が、聞こえたんだ!!」

「なんだ、この光は……」

 

 英の体が光輝いていく。闇に呑まれていっていた英からまばゆいばかりの閃光が弾けているのだ。

 

「だが、もう間もなく世界はヘルヘイムに呑みこまれる! 空のクラックはお前にはどうすることも――――ッ!?」

「確かに、僕だけじゃ無理だったかもな……でも、全世界の人間があきらめなかったんだ――――お前ひとりで、みんなの希望を打ち砕けると思うな!!」

 

 空に開いたクラックをふさぐように、世界中の人々が開錠したロックシードによるクラックが空を覆い尽くしていた。次々と飛び出してくるアームズが英を守るかのように流れ込んでくる。

 英に放たれていた攻撃もアームズが防いだのだろう。

 中には体当たりをしてマルスを弾き飛ばすものまでいる。

 

「なぜだ!? 声が届くはずがない――なんで声が届いているのだ!?」

「……そっか…………お前たちが」

 

 英がかがみこんで何かを拾った――それは、ISコア。何が起きたのか、詳しいことは分からないが、彼女たちが英の声を届け、皆の声を英に届けていた。

 束があの時解放したことにより、コアネットワークが完全に解放されたのだ。

 

「あ、ありえない――こんな、こんなことはあり得ない!!」

「確かにありえないことなのかもしれない――でも、実際に起こったことならそれは現実のことだ!!」

 

 癒着していたはずのシルバーロックシードが外れ、光を放出し始める。

 天高く掲げ、英は立ち上がった。

 

「みんなの想いが届いたんだ――みんなが支えてくれてるから、今の僕がある! 今までも、これからもだ!! この光が、僕たちの未来を創る!!」

 

 その叫びに応えるように、アームズが光の粒子になってロックシードへと流れ込んでいく。

 させまいとマルスも攻撃するがまるで見えない壁にぶつかったように先へ進めない。

 

「なぜだ!? なぜ、脆弱な人間にそんな奇跡を起こせるというのだ!?」

「一人だけなら弱いさ……オーバーロードみたいに一個体で完成していないからこそ助け合える。支え合える。みんなが手を取り合えるからこそ、集まれば大きな力となるんだ! 一つに合わさればなんだってできる――やって見せる!!」

 

 光が収まり、ロックシードが再生してく。傷は修復され、色も変化して――黄金のリンゴロックシードとは違い、透き通った金色。

 人の想いが生み出した黄金の果実がそこにあった。

 

「変身!!」

 

 虹色に輝きながら、ロックシードを開錠する。

 クラックは開かずに、放出された光がアームズの形へと変化していく。

 

【ファイナル!!】

 

 同時に、英の体にもライドウェアが形成されていく。

 顔だけはまだ素顔のままだが、すぐに鎧が降りる。展開される鎧はシルバーアームズの時と同じ形状。だが、リンゴの皮の部分が黄金に。果肉の部分はまるで果汁のような透き通った色をしていた。

 

【フルーツアームズ!! ファイナルステージ!!】

 

 暗い闇の中で、夜明けを迎えたかのようにまばゆい光を放つ戦士。

 今ここに、人々の想いを受けて誕生した。

 

「これで幕引きだ……マルス!!」

 

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