仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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最初の方はプロットがあっても展開に悩む。
意外とすんなり描けましたけど、ISとも絡めないといけないからなぁ……

まだこの時点ではISは完成していませんので、絡めようにも無理なんですけど。


EP02.涙をぬぐうために

「…………え、どうして、どういうこと!?」

 

 絶賛混乱中! そんなテロップが頭に浮かぶほど、英は混乱していた。戦極ドライバーを使用したら自分が特撮ヒーローのような姿になっていたのだから、驚くのも無理はない。

 銀色に輝くスーツ、真っ青な色と銀色をベースとしたリンゴを模した鎧。自分のつけていた腕輪と同じ様なデザインの杖もいつの間にか出現しているのだ。顔は複眼のようなマスク、頭には腕輪や杖と同じような冠が存在している。

 

「……いや、カッコいいけども、なんでこんなことに」

 

 新型のパワードスーツか何かだろうか……結構な重量があるだろう杖を軽々と持ち上げることができる。試しに、バイクのままにしていたサクラハリケーンを持ち上げてみると、軽々とまではいかなくても片手で浮かせられる。

 

「マジでパワードスーツなのかな……でもこの杖はいったい」

 

 とりあえず、説明書を見てみるが、相変わらず外国語で書かれていて読みにくい。しかし、どうやらロックシードを切り替えることで、鎧と武装が変化するらしきことは理解できた。

 英は赤いロックシードを試しに開錠し、電子音声を鳴らす。

 

【ブラッドオレンジ!】

 

「お、おどろおどろしい……呪いのアイテムじゃないだろうな?」

 

 銀のリンゴと入れ替えて、セットする。お決まりのようにロックオンという音声とほら貝をベースにしたBGMが流れ出す。

 先ほどと同じ手順でブレードを動かすと、ソイヤッという音声と共に銀のリンゴが消え、頭上に再び謎の穴が開く。少し余裕ができたからか、よく見ることができた。チャックのような開き方をしている。空間に穴をあけるなど……まして、このような特殊なエフェクトまでかかるのだ、オーバーテクノロジーにもほどがある。

 

【ブラッドオレンジアームズ! 邪ノ道オンステージ!】

 

「まじで呪いのアイテムかなんかじゃ…………なんか、力が、ぬける……」

 

 思わずロックを解除し、赤いロックシード――ブラッドオレンジロックシードを外す。

 何もつけなかったからか、1、2秒で変身が解除された。

 

「……いったい、なんなんだよこれ? とりあえず、電話してみた方がいいのかな」

 

 詳しい話は父親に聞くべきだろう。そう思って電話をかけるが――出ない。何度電話してもつながらない。しばらくすると、現在使われていないらしきことが分かった。

 

「…………父さん、本当に大丈夫、なのか?」

 

 夢だよな、アレ……

 

 ◇◇◇◇◇

 

 結局、そのまま夜を迎えその日はすぐに寝ることにしたのだが、妙に体が重く、布団に入った瞬間に意識が遠のいていった。

 再び意識が浮上したころにはすでに時計は9時を回っていた。一瞬、すぐに目が覚めて夜の9時に起きたかと思ったが、日の光が差し込んでいるのを見て、もう遅刻確定だと悟る。

 

「はぁ……今日はもう、学校いいや」

 

 とりあえず、着替えて朝食を作ろうとするものの、やる気が出ない。しかし食欲は意外と強い。誰かに見つかったらヤバいかなと思いつつ、外で食べるために着替え始めるのだった。

 いざ外へ行こうと思ったが、日課の水やりをするためにジョウロに水をいれ、鉢植えに水をやる。ずいぶんと小さい木で時々実をつけるのだ。前にドライバーと一緒に父に渡されたものだが、英は案外この木を気に入っていた。もっとも、実に毒性があるため処分しなければいけないのが玉に瑕だが。

 水やりをしていると、机の上に置いてあったドライバーが気になった。なんとなくだが、英はドライバーを持つ。銀のリンゴロックシードも一緒にもって外へ出かけた。なんとなく、持ち出した方が良い気がして。

 

 昨日同様、外は晴れていた。少し雲が出てきて日差しはそこまできつくない。しかし、なぜか英は嫌な予感がしていた。傘を持った方が良いかと思い、折り畳みの傘をポケットに入れる。最近は小さくなりすぎてもはや別の何かにも見えるのだが、これも技術の進歩なのだろうか。

 

「どこで食べよっかなぁ……朝メニューのファーストフードでいいか、あまりうるさく言われないだろうし」

 

 家の近くにあるファーストフード店に入り朝食を食べる。店内には人はまばらで、話し声もしない。

 そもそも、こんな時間にここにいるという人自体少ないものなのだろう。

 

「……いつの間にか、食べ終わるんだよな」

 

 独り言を言ってもツッコミはない。学校に行けば誰かツッコミを入れることはあるだろう。くだらない会話でもなくなると寂しいものがある。

 

「サボらなきゃ良かったかなぁ……いまさら言っても仕方がないけど、保健室大丈夫かなぁ、また占領されてそうだ」

 

 食事を終えたので、家に帰ろうと思ったが……なんだか左手が熱い。いや、左の手首が熱い。

 左手を見ると、腕輪がすこし光っていた。いままで、こんな現象は一度もなかったのに。

 

「なんだか変なことばかり起きる……というかこれって光るようなものだったか?」

 

 動力なんかあるわけがない。ずっと昔から母方の家に伝わってきた、そう聞かされて育った。母が死んだときに直接渡されたのだ、彼女がずっと肌身離さずつけていたそれを。父はレプリカを作って同じものをつけていたから知らないが、自分のものは母から渡されたもの、なにかおかしな機能などないはずなのに。

 

「なんか、向こうを指している? あっちに行けってことかな?」

 

 特にやることもなし、おもむろに歩き出す。嫌な予感はするが、好奇心が勝り英は光が指す方角へと歩き出した。

 ファーストフードやコンビニがある少し大きい道路。それでもこの時間は閉まっている店も多いため人は少ない。

 そんな中、目の前に見えるのは……幼稚園のバスだろうか、親が子供をつれてバスに乗せている。

 

「昔、よく母さんが無理してバス乗り場まで送ってくれたっけ……体弱いのに、頑張って車イス動かして」

 

 昔を懐かしんでいると、一瞬腕輪の光が強くなった気がした。

 そして、ソレは現れた。空にチャックが開く。青い色の、人型のようなもの……のちにこの物体――否、怪物はこう呼ばれた。

 

 

 ――インベス、と

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 思わず、最初は逃げようとした。だって、怪物がいきなり現れたんだから。誰だって逃げるだろう。でもこの時の僕は身が竦んだのか、それとも別の理由なのかは知らないが、体が動かなかった。

 青い色で、角をはやした怪物――この時の僕は知らないが、シカインベスと呼ばれるソレ――は町に降り立った瞬間、あたりのものを壊し始めた。道路は当然崩れ、近くの歩道橋は倒れた。

 

「って、ヤバい早く逃げないと……え」

 

 頭は逃げろと叫び続ける。でも、僕は見てしまった。逃げ遅れた人々を。さっきみた、幼稚園児たち、その親、先生と思しき人。

 助ける――無茶を言うな。ただの中学生に何ができる。

 見捨てる――そして、自分は悠遊と暮らすのか。そんなこと、僕にはできない。

 ならあの怪物を倒す? どうやって?

 早くしろ、決断を迫られている。バスは倒れた歩道橋と崩れた道路のせいで動かない。走って逃げようにも子供たちが多すぎてそんな時間はない。

 その時、僕は見た。子供たちが泣いているのを。ただひたすらに、お母さんと叫ぶ声を。ただただ、誰かを……ヒーローを待つ子供を。

 そんな子供たちを泣かせていいのだろうか。叶わないかもしれない。それでも、ヒーローを待っている子供たちの涙を……

 ならどうする? 助けるしかないだろう。

 見捨てて逃げれば自分は助かるかもしれない? 彼らの涙と血を流してまで手に入れた命……それはどんな呪いのアイテムよりも恐ろしいものだろう。

 ならば戦うのか? その力はないはずだ……いや、もしかしたら時間を稼ぐことはできるかもしれない。

 

「……ホント、人生何が起こるかわからないね、父さん、母さん」

 

 今はいないあの人たち。昔は色々あったらしく口を酸っぱくしてそのセリフを何回も言っていた。こっちは耳にタコができるかと思った。

 

「なんのために父さんがこれを預けたのかはわからない。でも、今はあの人たちを助けることができるのなら、それでいい! 【シルバー! ロックオン!】――変身!」

 

 倒すことはできないと思ってる。それでも、彼らが逃げる時間だけでも稼いでみせる。

 

【シルバーアームズ! 白銀ニューステージ!】

 

 再び、僕の頭上に現れる銀のリンゴ。今度は慌てることなくそれを受け入れる。体に装着されるスーツ、展開される鎧。まるで果汁が飛び散るような音と共に現れるそれは、銀色のヒーロー。

 

「いくぞ、化け物」

「――グルゥ?」

 

 怪物は人の言葉などわからないようで、唸り声を上げるだけだった。それでも注意はこちらに引き付けた。どうやら、僕を脅威として見ているらしく、他のものには目もくれない。……もしかしたら獲物ぐらいにしか見えていないかもしれないが。

 

「みなさんは早く逃げてください!」

「は、はいッ」

 

 その声と同時に、怪物が襲ってきた。見た目よりも筋力はあるらしく、踏ん張っても弾き飛ばされてしまう。

 

「うぐっ!?」

「――ガァ!」

 

 突進。言葉にすれば単純な攻撃だがその角と筋力が合わさったソレはもはや兵器だ。さすがに受け止めるのはまずいと思って、前転のように横へ転がってよける。

 どうやら筋力があり過ぎて、一定の距離はまっすぐにしか動けないらしく攻撃をかわすことができた。

 ふと、冷静な自分がいることに気が付く。いや、常識外れなことが立て続けに起きているせいで感覚がマヒしているだけだ。あまり考えない方が良い。しかし、そうは思っても頭は考え続けてしまう。打開の策を、アイツを倒す術を……ヒントが欲しい。昨日読んだ説明書を必死に思い出そうとしていた。だが、奴にとっては隙に見えたのであろう、再び、突進を繰り出してきた。

 

「マズッ、これでぇ!」

「グガァ!?」

 

 思わず杖を突きだしたが、見た目以上の強度があったらしい。火花を散らして怪物の攻撃を横へそらせた。だが、体への負担も結構大きい。なにか、こちらから攻撃を仕掛けたいが、遠距離から……

 

「そうだ、この刀でも投げつけて気をそらせば……銃?」

 

 腰についていた刀のような武器、よく見れば銃も内蔵されているように見える。引き金を引いてみるが、ピクリともしない。

 

「た、弾切れ!? えっと、あ、これか?」

 

 あいつが攻撃を仕掛ける前に何とかしようと思い、バーのようなものがあるので引いてみると、刀の側面にライトが点灯した。

 

「……もしかして、とりあえず撃つべし!」

「ガッ、ガッ!?」

「二発、ライトも二つ消えた……エネルギー銃とか今更驚かないけど、もうちょっと易しい説明書が欲しいよ!」

 

 斬! 左手に持った刀で横なぎに切り裂く。思いのほか威力があり、怪物は足をすくませる。

 そのまま、銃弾をすべて怪物へとぶつける。

 

「ガァ!?」

「とどめだ!」

 

 そういえば、と英は説明書に書かれていたことを少し思い出していた。英語ばかりでわかりにくかったが、動作中にブレードを1~3回倒すことでエネルギーを解放するだとかどうとか……

 

「とりあえず、試してみる!」

 

 一番強いのは、三回だろうか……オーバーキルだとしても、やり過ぎて困ることはないとブレードを三回倒す。

 

【シルバースパーキング!】

 

「いくぞぉおおおおおおおおお!」

 

 青い炎が全身から噴き出し、杖の先端に集まる。なんとなく、使い方が分かった。要はこの炎を相手にぶつければいいのだ。ひるんでいる今がチャンスだが、距離が少しある。ならば、こうすればいい。

 杖をやり投げのように怪物めがけて投げつけた。なにかのアシストがあったのか、寸分たがわず怪物の腹へ突き刺さり、爆発した。

 爆風が強かったものの、体の機能が大幅に強化された今の自分にはそよ風程度にしか感じられなかった。煙が晴れると、杖だけを残して怪物は消えていた。

 

「倒した、のか…………こ、怖かったぁ」

 

 さすがに、気分が落ち着いてきて忘れていた恐怖が込み上げてきた。足が震えそうだが、杖を回収して変身を解く。

 

「ど、どうしようこの惨状……パトカーの音も聞こえるし、逃げた方が良いよね」

 

 結局この日も疲れがたまっていたからか、家に着いた途端眠ってしまい、起きたのは夕日が沈むころだった。

 

 

 こうして、僕の二度目の変身……最初の戦いは幕を閉じた。

 だけど、この時の僕は気が付いていなかった。これが、始まりだったなんて。




特撮ものにつきものというイメージのある幼稚園バス。いったいいつからできたイメージなのだろうか。
主人公はまだ中学生。当然、精神は弱め。
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