仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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ついに、ついにこの時が来た。


EP20.凶兆

 変な先輩に絡まれてから数日。あまり変わり映えのしない日々が続いている。ニュースを見ても、これと言って変わったことはない。精々、テロの件数が例年より増えている程度。いや、それだって変ったことなんだけど……

 インベスは不気味なほど姿を見せない。最近はクラックが開く様子も見られないし、こっちから調査に出かけてもみたのだけど……向こうでも初級をたまに見かけるぐらいで変わったことはなかった。

 

「どうすっかなぁ……」

 

 手掛かりも調べつくしたし……これは世界中を回ってみるしかないのか? いやでも、それは最後の最後の手段。というか旅費は……ヘルヘイムの森を伝えば行けるか? いやでも食費……ヒマワリロックシードで足りるな。

 

「……いけるよなぁ…………あ、向こうにも海が広がっていたらさすがに移動手段がなくなるか」

 

 結局、国内を回るしかないようだ。それでも時間がかかるし、色々と面倒なことも多い。

 

「はぁ……まあ、今はこっちを片付けるか」

 

 掃除当番、篠ノ之と二人で屋上の掃除である。ちなみに、篠ノ之はサボって帰りやがりました。織斑に通報しておいたから後で叩かれることだろう。まあ、引き返すのは無理だろうけど……さすがに僕が掃除を終わらせている。織斑も部活だし。ちなみに、うちの学校は掃除は当番制で、放課後に掃除をする。部活に入っているものは当番が少なくなるので、織斑は当番ではなかった。僕たちは帰宅部だけどね。

 結局、掃除が終わるのに時間が結構かかってしまった。気が付けば、日は落ちて暗くなってきている……あとでねちねち小言でも言ってやるか……妹に告げ口ってのもいいけど、最終手段に取っておきたい。

 

「……なんだか最近、僕も黒いよなぁ…………」

 

 ちょっと小走りで町を駆けていく。インベスも出てこないし、こんな平和が続けば文句はないんだろう……もっとも、それがいつまでも続くわけがないことも僕は知っているんだけど。

 それに気が付いたのは、僕がその音に聞きなれているからだった。まるで、ファスナーが開くような音。その後に響く果汁が弾ける音。聞き間違えるハズもない。ギター調の音が鳴っていたようにも聞こえたけど……そっちはよくわからなかったが、音源は同じ方角。

 こういうのを虫の知らせと言うのだろうか、僕はシルバーアームズへと変身し、音が鳴り響いた近くまでやってきてた。左手が、いつもと違った反応を示している。まるで、警告――

 

 ◇◇◇◇◇

 

「さてさて、アタクシに生身で挑もうとは……高々剣道が強いってレベルで思い上がらないことネ」

「グッ……」

「ち、ちーちゃん早く手当しないと!」

「大丈夫だ……いいから、お前は逃げろ!」

「何ってんだよちーちゃんを見捨てて逃げられるわけないだろッ」

 

 ――アレは何だ? まるで、仮面ライダー……そんな馬鹿な。戦極ドライバーは黄金の騎士と僕の二つしかないのに、三つ目が存在していたのか? 花蓮さんの使っていた研究者用の簡易版だって僕が回収したから僕が持っているし、他の予備は研究所になかったはずだ。

 使っているのはドリアンアームズ。それでなくとも体中はトゲトゲ。体は緑色で所々ピンク色で、目に痛い。口調も女っぽいけど声が野太い。オカマだろうか……だけど、僕はその謎のライダーの前に倒れている人物に目が行った。織斑が、体中アザだらけで倒れている。どうやら、篠ノ之をかばっているようだけど……

 

「なんで、仮面ライダーがこんなことするんだよ……お前はいったい何がしたいんだよッ」

「アラ? 何か勘違いしていない? アタクシはあんな都市伝説の偽善者とは違うの。まあ、アタクシの上司の命令であんたを連れてくるように言われているだけ。さて、おとなしく来てもらうわよ」

 

 空から何かが降りてきた……最近は、よく目にするようになったもの……ISだ。

 

「さて、アンタはこのお嬢ちゃんを連れていきなさい」

「分かってるわよ……さあ、篠ノ之博士、こちらへ」

「させ、な、い……」

「やめて、やめてちーちゃん!」

「いいから、逃げろ……」

 

 ……さすがに、見て見ぬふりなんかできない、か…………というかその選択肢は最初からないけど。できるだけ観察してアイツのことを探りたかったが、織斑もヤバそうだしここは一気にかたをつける!

 

「はあああああ!」

「なッ――!?」

「これは、噂の仮面ライダー?」

 

 謎のライダーに蒼銀杖で殴りかかる。さすがに対応が遅れたのか、謎のライダーは弾き飛ばされて壁に激突する。

 

「お前たちは逃げろ!」

「仮面ライダー……冠?」

「二人いる……どういうこと?」

 

 篠ノ之はどうやら、僕とあのライダーの区別がついていないらしい……人の見分けがつかないってマジで見分けられないんかい……よく僕のこと見分け付いたな……ああ、最初青色って呼んでいたのはそこで見分けていたからか……ちょっと悲しくなった。

 

「おいこら、いいからとっとと逃げろ。アイツらは僕が何とかする」

「で、でもちーちゃんの怪我が……」

「意識があるならまだ大丈夫だ。ISの方は飛ばれると厄介だから急いでくれ!」

「それなら緊急停止信号で――なんで!? なんで束さんの言うことを聞いてくれないの!?」

 

 なっ!? どういうことだ!? 篠ノ之のことだからIS相手なら奥の手でもあるかと思ったんだが、無効化されているだと!?

 

「そんなもの、とっくに把握してたわよ……さあ、おとなしく――【スイカアームズ! 大玉ビッグバン!】――あら?」

「あいにくと、こっちも暇じゃないんでね……なんで戦極ドライバーを使っているのかとか、お前らが何者かとか……他にも聞きたいことは山ほどあるんだけど、一気にぶっ倒してから聞き出してやる!」

 

 スイカ双刃刀でISに切りかかるが、相手はよけるそぶりも見せない……舐められたものだ。どうやら、ISに対しては絶対的な信頼を寄せているらしい。もっとも、そんな自信はすぐに打ち破られたのだろうけど。

 

「なっ!? シールドエネルギーが一気に減少してレッドゾーン近くに!?」

「一時退却よ! ここはアタクシが戦うわ! その隙に逃げなさい!」

 

 ISはさすがに分が悪いと思ったのかすぐに引き返した。さすがにあそこまでのスピードにはジャイロモードでも対応できないけど……ここはエネルギーの温存もかねてスイカからバナナへと入れ替える。

 

【バナナアームズ! ナイトオブスピアー!】

 

「あら? アタクシを舐め過ぎじゃなくて?」

「こっちのほうが対人戦に向いているんだよ……特に、ドリノコみたいな武器にはな」

「……さすがに、詳しいわね」

「ありがとう、よ!」

 

 ぶつかり合う、武器と武器。バナスピアーはリーチが長いし、ドリノコみたいな武器でも受け流すことができる。織斑や、柳韻さんたちとの稽古で学んだことだ。相手の武器の習熟度が高いならば、こっちは長い武器、それも防御をしやすいものだと戦いを有利に運びやすい。

 それに、こいつ僕よりアームズを使い慣れていない。僕はすべてのアームズの特性を理解しているから、どういった攻撃が有効かもわかる。こいつは、実戦経験は多く積んでいるし、アームズの特性も理解しているようだけど……まだ、そこから先へは行っていない。

 

「なんで、こうもっ……攻撃が当たらないのよ!」

「そりゃそうだ。ドリノコは当てて引き裂く武器。バナスピアーみたいな武器で受け流されると次の攻撃に移りにくくなる。もっと、奇策を使った方がいいよ!」

 

 腰の無双セイバーを取り出し、相手へと投げつける。さすがに予想外だったのか謎のライダーは一瞬ひるむものの、すぐに体勢を立て直した。

 もっとも、僕にとっては十分だったが。

 

【バナナオーレ!】

 

「ぜやああああああ!」

「がああああああああああああ!?」

 

 バナスピアーが巨大なバナナのオーラを纏い、相手へとたたきつけられた。さすがにインベスより硬いな……まだ動けるようだ……でも、あと一撃決めれば勝てる……そんなことを思った時だった、アイツはヒマワリロックシードを取り出し、なにか僕のしらない動かし方をした。

 変化は突然だった、ライダーの隣にクラックが開き……中から初級インベスが飛び出してきたのだ。

 

「さすがにここでやられるのはマズイのよね……勝負はお預けよ!」

「あ、待て!」

「待てと言われて待つ人がいるわけないでしょう!」

 

 ライダーはインベスにロックシードを投げつけると、どこかへと走り去っていった……追いかければよかったのだろうけど、さすがにそれはできない。ロックシードを食べたインベスがどうなるかなんてわかっている。

 インベスは大きな変化こそしないが、背中からは羽が生えて、今にも空へと飛びたちそうだ……クラックはすぐに閉じちゃったし、これはこのアームズの出番かな。

 

【ブドウアームズ! 龍砲ハッハッハ!】

 

 数少ない遠距離のアームズウェポン。ブドウ龍砲を使うブドウアームズ。相手が飛行するならこっちの方が有効。それに、あの飛行タイプの初級インベスは体の強度はそれほどでもない。

 

「ハァッハァッ!」

 

 引き金を引き、インベスへと連射する。突然撃たれたインベスは、すぐに落ちてきてもがき苦しんでいる。

 

「君に恨みはないけど、ごめんね……ゼリャ!」

【ブドウスカッシュ!】

 

 ブドウロックシードのエネルギーが右足に充填され、一番使い慣れた技――無頼キックを発動させる。空中に飛び上り、相手めがけて一気に落ちていく。

  

「――ガッ!?」

 

 そのまま、インベスは爆散して消えていった……謎のライダー……少なくともそんな使い方はできなかったロックシードの使い方。ISに起きた異変。なんだかいろいろなことがいっぺんに起きていて面倒なことになってしまった。やっぱり、平和はつかの間だったか……だからこそ、僕は戦う。そう決めたんだから……

 

 ◇◇◇◇◇

 

「ちーちゃん、なんで無茶したんだよ……」

「お前こそ、あれほど逃げろと言っただろうが……」

 

 時刻はちょうど、冠が敵ライダー――のちにブラーボと呼称される――を撃退したあたり。彼女らは織斑家にいた。一夏は傷だらけの千冬を心配していたが、千冬の意識がはっきりしていることに安心して、包帯を巻いたのち、まだ受け付けている病院がないか探すために電話をかけている。

 そのため、部屋には千冬と束だけだ。

 

「あの仮面ライダーとかいうのが助けてくれなかったらちーちゃんはどうなっていたかわからないんだよ!? 私は少なくともさらわれるだけで、ちーちゃんは怪我なんかすることもなかったのに!」

「だからって、お前がさらわれるのを黙って見てろっていうのか? それこそ冗談じゃない!」

「ちーちゃんの分からず屋!」

「なんだと!? この――ッ」

「やめろって! 千冬姉も束さんも! 三丁目のお医者さんが見に来てくれるって言ってたから! 大丈夫だから喧嘩はやめろって!」

「今日という今日こそは黙ってられないんだ! いい加減にこいつの目を覚まさせないといけない!」

「うるさい! なんだよ、なんでちーちゃんこそわかってくれないんだよ!」

 

 そういうと、束はいきなり飛び出して走り去っていった……後に残ったのは、重い空気の中、うなだれる千冬と、彼女を心配そうに見つめる一夏だけだった。

 

「千冬姉……あのさ、何があったのか知らないけど……千冬姉も束さんも友達が大切なんだってだけだと思うんだ、だからさ」

「わかってるよ。わかっているよ一夏……それでも…………いや、すまない。私もまだ子供だなぁ……」

 

 ◇◇◇◇◇

 

 心配になって様子を見に来たのはいいけど……織斑と篠ノ之が大喧嘩するとは……これはどうしたものだろうか……一応、篠ノ之を追いかけてきたのはいいんだが……公園でブランコに座ったままうつむいている。

 ……仕方がない。

 

「ほれ、どうしたんだ? いつもみたいにウザいくらい笑ってた方がお前らしいぞ」

「……何の用だよ」

「掃除、サボったから文句言いに来たんだけどそれどころじゃないっぽいから、これ」

「……束さんはキンキンに冷えたコーラがいいです」

「…………ハァ、じゃあこのスポーツドリンクは僕が飲むからこっち飲め」

「……あるならそっちを先に出せよ」

「文句を言うな」

 

 僕も隣のブランコに乗って、なんとなーく空を見上げる。結局、お互いなにも話すことなく、篠ノ之は家に帰るとだけ言い残し、去って行った。

 ただ、公園を出る前にコーラありがと、って声が聞こえたのは空耳じゃないと思う。

 




新たな敵登場。
みんな大好きブラーボさんです。もっとも、変身している人は原作と大分違うのですが。
だけどオカマ設定は外せなかった!

今作では敵と味方のライダーというのは大きく変動しているかもしれません。
すでに原作に登場する分のライダーの配置はすべて決めてあるのですが、数足りないし、何人かオリジナル追加するか……それでも使うアームズはほとんど原作のものですので、見た目や名称が違うってレベル。
そこらへんのタグはどうするか追々考えます。

ようやく、ヒロインがヒロインする時が来た。かもしれない。
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