仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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迷走? いえ予定通りです。


EP22.アリスは眠い

 あれから、数週間が過ぎた。インベスは出現しないから僕も篠ノ之道場に通うことで篠ノ之が狙われないか見ていられるんだけど……恐ろしいほどに何もない。

 かえって不気味な日々が続いている。そもそも、研究チームは全員死亡しているしドライバーの出所が不明なんだよなぁ……研究データは極秘だったし、完成していない段階だと信憑性も薄いからって出費者も一部の副産物だけ受け取っていたっぽいし……いや結果的に失敗だったからその出費者の判断もある意味では正しいんだけど。そんなわけだから、研究の詳細を知っている人なんていないんだ。付け加えて言うなら、ドライバーは僕が常に持ち歩いているからデータを盗まれたってこともない。というかそれなら真っ先に篠ノ之がやるから最初に気が付くとしたらアイツだし……

 

「まぁ、今は待つことしかできないってのがなぁ……」

「どうしたんだい蜂矢君、作業が遅れているよ」

「スマン。田中はこういう作業得意なのか? ……この、しおりづくり」

 

 新入生交流会のしおりづくり。先生が数人の生徒に色々と仕事を割り振っているんだけど……どういうわけかこういう地味な作業をさせられている。いやまぁ、いいんだけどね。

 ちなみに、田中君はこういうの得意なのか僕の二倍のスピードで作業をしている。

 

「まあこういう単純な作業は効率が良ければ良いほど早くなるものだからね」

「そうだよなぁ……こういうのはあまりやったことなくて。包帯まいたり怪我の手当てなら早いんだけど」

「むしろなんでそっちの方が得意なんだい」

 

 自分の怪我を治療してたら嫌でも覚えます。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 まさかこの束さんがこんな作業をさせられるなんて……

 

「頑張ろうね束ちゃんー!」

「しかもこの女も一緒とかッ」

 

 最近思い通りにいかなすぎる。私の計算の及ぶ範囲を逸脱しているなど認めない。だが、これはどういうことだ。あの先生は生徒に対して平等すぎるし、この女はだれに対してもポヤポヤしてるし……ここまでわけのわからないことなんて今までなかった。失敗してもあとで修正ができたことは多かったのに、ここまで何もできないなんてことはなかった。いいや、認めない。断じて認めない。

 

「一緒にケーキ作ろうー!」

「そしてなんでケーキ担当なのッ」

 

 どうやらあの先生は苦手な者と得意な者を仕事ごとに均等に割り振ったらしい。ちーちゃんも苦手な裁縫作業をさせられている……まあ、雑巾縫いだが。それでもちーちゃんにはキツイだろうけど。

 す――アイツは何でもそつなくこなしていたけど、単純作業を避けている傾向にあったからそれ系の仕事をさせられていた。というか、どうやら成績や評価などが高い人物は苦手なものを。平均的だったり、低い評価だったり、社交的な人物は得意なものを割り振られているらしい。そうやってクラス内の関係性を円滑にしゆというのか? だがこの束さんはそんな思惑には乗らない。だから脱走を試みたものの……すでにこの女は私の脱走ルートを予測しているらしい。こんな屈辱初めてだっ!

 

「というか念入りに準備したのになんで捕まえられるの!?」

「だって、ずっと束ちゃんのこと見ていたからー」

「怖いよッ!? ストーカー!?」

「えへへー」

 

 そこは否定してほしい。ごめんねちーちゃん、レズ疑惑立てちゃって……本物はもっと怖い。

 

「冗談だよー。本当はすっごく目立つからだよー」

「……え?」

「だって、そんなピンク色の髪の毛しているの束ちゃんだけだよー」

「……あ」

 

 すっかり忘れていた。というか自分でもこの髪の色が目立つのを自覚したのはいつだっただろうか……っていうかこれピンクじゃないって!

 

「どこで染色してるのー?」

「これは地毛! 束さんは細胞レベルでオーバースペックだからその影響!」

「ふぇー。すごいねー」

「それだけ!?」

 

 ああもう疲れた……というか、最近はISコアの製作もあったからこんな漫才していたら眠くなってきたんだけど…………どうしよう、こいつの目的が分からない以上、無防備に眠るわけにも……

 でもやっぱり、眠気には勝てなかったよ……

 

 ◇◇◇◇◇

 

 どれくらい寝ていたんだろう? 起きてみると周囲は赤く染まっている。一瞬、炎に包まれているかなんて馬鹿なことを考えてしまったが、日が落ちてきているだけだった。

 なんだか、良い感じの枕に頭を当てているけど……枕?

 

「すー、すー」

「……なんでひざまくらされているの私」

 

 この女はよくわからない。いったい何が目的なんだ……というか、なんて邪気のない…………そういえば、こんな無邪気な顔を見たのはいつ以来だろう……そうだ、まだ赤ちゃんだった箒ちゃんをだっこしたとき。私の手を握って、笑いかけてきた。

 それから、なんだか世界が少し色づいた。そんな気がしたんだ……それからちーちゃんに出会って、世界が広がって……アイツと出会って、世界が色づいて……そもそも、なんで私は世界の色が分からなかったんだろう?

 何かを忘れているような、そんな気がした。

 

「……もう、ケーキどうすればいいんだよ」

 

 覚えていないものは仕方がない。あの先生の言いなりってのは嫌だけど、こんな問題一つ片付けられなくて何が天才か。

 幸い、レシピと手順を間違えなければうまくいく菓子系統の調理は私向きだった。面倒な生地を寝かせる段階までは終わらせているようで、次の作業まで待っているうちにこの女は寝てしまったのだろう。

 

「まったく、今回だけだからね」

 

 その時の私はどんな顔をしていたのだろうか?

 少し四苦八苦しながらだったが、作ったケーキはなかなかうまくできている。まあ、有象無象に食べさせるってのは何だか気に喰わないが、ちーちゃんたちにも食べてもらいたい……いやたちとかじゃないし。ちーちゃんだけだし。

 

「……これで仲直りできるといいな」

 

 そういえば、こんなに長く喧嘩したことなんてなかった。いやしていると言った方が良いか。

 ISコアの製造やら、学会の発表。バカな奴らが私目当てに近づいて来たり、挙句の果てには怪しいやつに狙われたり。それにあのインベスとかいう邪魔くさいISの敵。このところストレスがたまっていて、目の下には大きな隈ができている。そういえばこの顔アイツに見られたんだよね……なんだか屈辱的である。

 

「んんー、もう朝ー?」

「なんでお前まで眠ってるんだよ」

「いい匂い―。あとー花梨だってばー」

「……はぁ。もういいやどうでも。何だかまともに相手したらこっちが疲れそう」

 

 この女は悪意とか、邪気とかそういうのを母親のおなかの中に置いて来てしまったのではないだろうか?

 もうこの女について無駄に考えるのはよそう。それこそ考えるだけ無駄というものだ。

 

「えへへー、束ちゃんが笑ったよー」

「誰がいつ笑った」

「だってー、眠っているときにはち――」

「今すぐ黙れ。アイツの名前を出すな」

「私まだ名前全言ってないよー」

「……アァァ」

 

 思わず頭を抱えてしまう。なんだかアイツと出会ってからうまくいかないことばかりだ。それなのに、そのうまくいかないことも全てではないが、楽しんでいる自分がいるのが腹立たしい。

 今までは何でもうまくいかないと気が済まなかった。だから、白騎士事件だって起こしたし、他にもいろいろ……なのに、なのにっ……

 

「なんでこうなるのー!?」

「ねぇねぇ今日は徹夜で恋バナしようよー」

「そういう普通の女の子がやることは私のキャラじゃないの! もうやめてー!!」

 

 なんとかその日はそのまま帰ることができたけど、これから花梨ちゃんと呼ばなくてはいけなくなってしまった。これも全てアイツのせいだ!

 

 ◇◇◇◇◇

 

 なんだか、すごい濡れ衣を着せられた気がする。

 

「ふぅ……今日もいい汗かいた」

「英さんお疲れさまです」

「おう、一夏君もお疲れー」

 

 篠ノ之と織斑は作業が長引いているようで今日は帰りが遅いらしく、一夏君の送り迎えを頼まれた。といってもどうせ道場に行くから言われなくても一緒に行くつもりではあった。ついでに箒ちゃんも。

 

「私はついでですかっ」

「篠ノ之に連絡入れるとうるさいからねー……なんか今気まずいし」

「喧嘩ですか?」

「篠ノ之と織斑がね」

 

 珍しいこともあるもんだと、箒ちゃんは驚いている。一夏君は知っていたのか、あまり驚いていないが。

 というか二人ともちびっこたちに心配させておいて色々迷走しているからなぁ……織斑は素直になれないし、篠ノ之に至っては経験が足りなすぎる。というか彼女はおそらく、内面はまだこの子たちとどっこいなのだろう。言葉の端々に知識だけ持ってる子供の様な印象を受けた。成長を促すことはできても、僕たちには直接解決できる問題ではない。なんだか、柳韻さんに頼まれているんだけど……

 

「どうしたもんかなぁ……」

「……? そういえば一夏、最近は町でぶらついているようだが何をしているのだ?」

「ああ仮面ライダーを探していたんだ!」

「ぶほっ」

「? ど、どうしたのだ蜂矢さん」

「いや何でもないよ箒ちゃん」

 

 まさか一夏君が仮面ライダーを探して町を歩いていたとは……いやまあ目撃例はこの町中心だから探そうとするのもわからなくはないけど。

 

「でもいったいどうしたのだ?」

「だって凄いんだぜ! でっかいイノシシを、こう……パイナップルみたいなのでふっとばしてたんだから」

 

 あ、あの時か!? あのフレッシュ事件の時に目撃されていたのか!?

 

「ぱ、パイナップル?」

「おう! 俺もあんなヒーローになりたいなー」

「あ、アハハハハ」

 

 ヤバい。織斑に知られたら殺される。弟に尊敬されることが結構好きらしいから、弟がこんなこと言っていると知って、僕の正体がばれたら間違いなく殺される。

 これは一夏君の認識を変えるか、絶対に正体をばらさないようにしないと……

 

「い、一夏君? ヒーローってのも大変なんだよ?」

「そうなのか?」

「ヒーローに給料は出ていると思う?」

「普通ボランティアなんじゃないのか?」

 

 そ、そこまで考えているのかッ!?

 

「でも最近は給料出ているヒーローも増えてないか?」

「そういえばそうだな」

 

 箒ちゃーん!? 余計なことを言わないで―……確かに最近の特撮はそういう部分も描写するけどさぁ……まだ小学二年生なんだからもうちょっと夢を見てよ……

 色々と軌道修正を図るも、結局一夏君の強くなってお姉さんやみんなを守りたいという純粋な気持ちを同行することは僕にはできなかった。

 ただ、箒ちゃんが一夏君をみて顔を赤らめるのを見て、この男の子は末恐ろしいなとは思ったが。

 

「全部お前のせいだ―!」

「何事っ!?」

 

 いきなり奇襲をかけられた。というか篠ノ之はいったいなんの話をしているんだ?

 

「うるさいばかぁあああ!」

「え、ちょ、あべしっ!?」

 

 そのまま部屋にこもってしまって、出てこなくなった……僕、何かした?

 

「……蜂矢さん、あなたもですか」

「えっと、何が?」

「いいえ……いつかは気づくと信じています」

「……?」

 

 その後、織斑が一夏君を迎えに来たことでその日はお開きとなった。

 篠ノ之は花村さんと何かあったんだろうか?

 




原作束さんは唯我独尊なキャラの割に他人の評価を気にしている気がする。
なんというか、やっていることと言動に矛盾があるように見える。

ちなみにこの小説ではまだあの段階へは覚醒していません。
体力面も、オーバースペックだけどスタミナだけないから使えていない状態。
毒には強いからそういう方面でさらわれたりはしませんが。

幕間シリーズは英以外の人物にスポットを当てていくつもりです。
メインは束さんですが。
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