EP28.ある休日の話
学校も落ち着き始めて、みんながあの事件のことを口にしなくなってきた。それでも学校の中はまだギスギスした感じは残っている。当然のことだけど、時間がかかるよなぁ……忘れちゃいけないことなんだけど、この空気は何とかしたい。
今の僕には何も方法はないから、目の前のことを片付けないといけないけど。
「……はぁ、やっぱりなんにもわからない」
「束でもそう言うか……天才じゃなかったのか?」
「たしかに束さんは天才を自分で名乗れるほどに天才だと自負してるよ? でもね……これはさすがの束さんでも厳しいものがあるよ」
前に解析をすると言っていたゲネシスコアとドライバーなのだが……束でも厳しいらしい。というか、これそこまでオーバーテクノロジーなのか?
「そもそもどういうプロセスで鎧を作ったりしてるのか謎なんだよ。果実自体が膨大なエネルギーを持っていて、こっちの世界のエネルギーを弾いたり、侵食する特性があるってところまでは分かったんだけど……たぶん、ISもそれが原因で不利になるんだろうね」
「そこは分かったのか……」
「物理兵器ならある程度戦えるから、フランスで開発されているISなら対抗できるかもね……運動エネルギーとかはある程度効果あるみたい。熱エネルギーとか電気エネルギーみたいなのは相性最悪だけどね」
束は以前とは違い、敗北を認めることで一回り大きく成長したように思う。前ならそれを認めなくて袋小路に入っただろうに……今はそこから次にどうすかを考えられるようになっていた。
僕も次に進むべきなんだろうな……具体的には思いつかないけど。
「ホオズキエナジーについては?」
「うーん……やっぱりこっちに問題があるわけじゃないね。元々エナジーロックシードは戦極ドライバーじゃ使用できないみたいなんだけど、試作品だから戦極ドライバーでも使えるようにしてあるみたいなんだよ。たぶん英のお父さんがそういう風に作ったんだと思う」
「やっぱりかぁ……」
「一応、ゲネシスコアの中にエナジーロックシードのデータが一つ見つかったけど見てみる?」
「マジで!? 十分な収穫だよ」
僕がそういうと、束は手に持ってたノートPCのモニターを見せてくる。完成品のエナジーロックシード、レモンエナジーロックシード。武装は創世弓ソニックアロー……無双セイバーとアームズウェポンを統合したような武器か……データ上の出力はかなり高いな…………でも、完全に戦極ドライバーじゃ使えないな……処理できないぞこれ。
「やっぱりゲネシスドライバーを作るしかないのかな……」
「英の場合、戦極ドライバーに蓄積された戦闘経験のデータがあるから一概にそうとは言えないかも」
「そういえばそんな話も聞いてたな……結局今ある手でなんとかするしかないのかぁ」
「でも極力ホオズキエナジーは使わないでよ。体への負担が大きすぎるから……」
「そうだな、僕もできれば使いたくないし。そういえばさ、スイカアームズじゃないとIS相手だとそこまでダメージは与えられなかったような気もするのに……なんでホオズキエナジーだと一撃で倒せたんだ?」
「ああ、エナジーロックシードは果実のエネルギー出力が高いから、インベスの時以上にエネルギーを消耗するみたい。プログラムが誤作動を起こすレベルで――――ッ」
「どうしたんだ?」
「……何でもない。ただの仮説を思いついただけ。それに実証できないから……」
それだけ言うと、束はとても悔しそうに顔をゆがませる。話してほしいとも思うけど……今はまだ無理かな。
「そっか、なら話したくなったら話してくれよ」
「……うん。それで、今日はお願いがあってきたんだ」
「なんだ?」
「一度、ヘルヘイムの森に行ってみたいんだよ。行く方法はあるんでしょ?」
「あるけど……危険だぞ」
「分かってる。ISも使えないと思うからちょっと見てみるだけでいい。一度自分の目で見ておくのも大切でしょ?」
「……そうだな、百聞は一見に如かず。でも危険だと思ったらすぐに戻るからな」
庭に出て、サクラハリケーンを展開する。束も前に渡したドライバーをすでに装着して準備は済ませた。そろそろ免許もとるべきかなぁ……よく考えたら無免許…………うん、今さらだよね。
◇◇◇◇◇
「ここがヘルヘイムの森……なんか気持ち悪い」
「だろ? 僕もできればこっちには来たくないんだよね……野良インベスがいないとも限らないし、どうする?」
「ちょっと果実のサンプルが欲しいけど……普通にもぎ取るとロックシードになるんだね――あ、スイカだ。もう一個……タンポポ?」
「お前運良すぎるだろ!? スイカは珍しいし、タンポポってどういうことだ!? 僕それ見たことないし知らないぞ!?」
「サクラと同じでバイクなのかなぁ?」
「スルーすんな目をそらすな」
「……ごめん、さすがの束さんも悪いと思った」
スイカは希少種なのだ。めったに手に入らないロックシードで、僕もめったに見つけることができないのに……というかたぶんロックビークルなんだろうけど、タンポポなんて知らないんだけど。
「あーなんかロックがかかっていたデータを外した影響かなぁ?」
「戻ろう。そしてお互いの認識の違いをただそう。僕もそこまで解析できてねぇよ!」
すぐに家に戻り、束からもう一度詳しい話を聞く。僕が思った以上に解析してるじゃないか最低ラインが高すぎるわッ!
「ええー」
「いいから説明しなさい。というか僕のドライバーもロックかかってんのか?」
一度、じっくり調べる必要がありそうだ……
「そもそも、触ったこともないものだし、どこから調べたらいいかわからないから手当たり次第に分かる場所から見ていったんだけど……途中ロックがかかっている場所がいくつかあって、リミッター以外は全部解除したんだよ。それでもわかったことは、あんまり多くないし、まだ解析できていない部分も多いんだ。ただ、ロックのかかっていたデータはだれでも使える兵器みたいなものだったり、戦極ドライバー単体じゃ意味のない……拡張パーツが必要なものばっかりだったんだよね」
「なるほどな……タンポポは前者ってことか」
「たぶんね。一応使ってみる?」
「そうだな、一度使ってみないことには何とも言えないか」
開錠すると、他のロックビークルと同じように巨大化して宙に浮いた……浮いた?
「ほぉ……空飛べるんだね。とりあえずこのケーブルとつないでー……名称、ダンデライナー、前に銃口が付いていて、単体でも初級インベス相手なら戦えるみたいだね」
「確かにこれは危険かもな……でも空を飛ぶ手段ができたのは素直にうれしいぞ」
「後で英のドライバーのロックも解除しておくね」
「頼む」
「あと一つだけ言っておくね……これを作ったの前に聞いた九頭竜って人みたいだよ」
「花蓮さんか……そっか、バックアップメンバーって言っていたけど…………爆発事故の現場にいたって言っていたし、ドライバーだってもっていたならあの人も研究者だったってことなのか」
「どういう人なのかはもうわからないけどね……」
その後は僕のドライバーもロックを解除してもらい、二人で篠ノ之道場へ向かうことにした。ちなみにスイカロックシードとダンデライナーだが、束に預かってもらうことにした。というより、束の自衛手段としてもこれらは預けた方が良いかなぁという想いからである。ダンデライナーは言わずもがなだが、どうやらスイカロックシードについても隠し機能が搭載されているようなのだ。
そっちはまだプログラミングが不完全だから頑張ると言っていたけど……無茶してほしくないなぁ。
「何当たり前のように二人で来ているのだお前らは」
「織斑、何かおかしいところあったか?」
「……自覚なしなのか、スルーしているのか判断に困ることはやめろ」
「自分で考えてくれ。ところで柳韻さんどうしたんだ?」
対人戦が増えるだろうし、なるべく強い相手と稽古をしたいんだけど……一応、篠ノ之道場って剣道だけじゃなくて合気とかも教えているから学ぶことが多い。武器無しになる状況もありそうだし。
だからこそ、なんか様子がおかしいのが気になる……というより、なんで椅子に座ってんの?
「……最近、束が素直に挨拶したり会話したりするせいで驚きのあまりぎっくり腰になってしまったんだ」
「失礼すぎるだろ!?」
「私だって柳韻さんと同じ気持ちだッ! 任せたとは言ったが、何もあそこまで素直にする必要はあったのか!?」
「僕そこまで人格変化させるようなことしてないからね!? あれは束の元々の性格だよ……視野が広がっただけで人格とか性格は変わっていないって。現に、害する奴には今までと同じか、それ以上の対応をするよ」
「……なるほど、今まで身内とそれ以外だったのが身内、他人、敵などとカテゴリーが増えたということか?」
「そういうこと。というか本人の前でやるなよ……束が怖くなってる。笑顔で怒ってるよ」
「ちーちゃん、久しぶりに稽古しようよ……束さんも思うところがあってね、体力つけることにしたから」
「…………ごめんなさい」
「なーに? きこえなーい」
「蜂矢、助けては……くれないよな」
「束がやらないなら僕がやってるよ?」
「……負けてたまるかぁああああ!」
ちなみに、束は細胞レベルで常人を超えているため本気の柳韻さん相手に善戦できるレベルで強い。ただ、あまり鍛えていないから体力と技術が低いだけで……レベル1なのにステータスがカンストしているバグキャラみたいなやつなんだよなぁ……HPと技が少ないだけっていう感じ。
織斑は逆に、最初から限界突破しているタイプのバグキャラ。しかし、普通に経験値積んでいくタイプだから最終的にはヤバいくらい強くなりそうなんだが……まだ本気の柳韻さんとは戦えないらしい。レベル上限が高いタイプの奴なんだよな……
それと、勝負の結果だけど……束は本気で挑んだため、織斑の癖や弱点をこれでもかと攻めたため完封勝利した。どんだけー。
◇◇◇◇◇
彼らが、そんな休日を過ごしているとき……彼も新たな出会いをしていた。
「あんたみたいな人がこんな不良になんのようだ?」
須郷猛。前に一度英に絡んで負けた男である。
あれ以来、他の不良にも舐められて居場所がなくなってきていて彼は荒立っていた。逆恨みだが、英への復讐を誓って体も鍛え始めて、近隣の不良をすべて倒してきた。
それでもやはり一度の惨敗が忘れられない。でも、アイツには届かない。そんな思いが彼を突き動かしてきたとき、その男が現れた。
「つーか……いや止そう。男なのに口紅って趣味もいるだろ」
「言ってるわよ……まあいいわ。あなた、力が欲しくない?」
「……何?」
「だから力が欲しくないかって聞いているの。蜂矢英……あなたを倒した男を倒せる力が」
「…………詳しく聞かせろ」
「素直な男の子は好きよ……あなたには私たちの実験台になってほしいの。この、量産型戦極ドライバーのね」
そう言って、男の手は猛に戦極ドライバーを差し出す。もう片方の手には、一つのロックシード。
「こいつは……」
「巷で噂の仮面ライダー……蜂矢英は正義の味方ってわけ。これはあの男が使っているものの量産品。試作品だけどね……どう? 正義の味方を蹂躙する力、欲しくない?」
「……悪くないな、いいぜやってやるよ。だから力をよこせ」
「いい返事ね。もしも期待以上の力を見せてくれたのならあなたを私たちの仲間に迎え入れてあげるわ…………亡国機業の仲間としてね」
ついに登場、新たなライダー……まだ変身はしていませんが。
そして束さんもサポート役として優秀すぎるけど、それでも戦極ドライバーは一人じゃ解析しきれない(無自覚に主人公よりも解析してますけど)
須郷君がどのライダーになるのか予想するのもいいかも。
まあすぐにわかるんだろうけどね。
黒のリンゴロックシードや仮面ライダー邪武とかいうのが情報公開されてましたね。
出すとしたらだいぶ先になるので、今のところ未定。