ついに登場、新アームズ。
あと、いつもより長いです。
季節はもう梅雨、ここしばらくは野良インベスも時々見られるようになって、前ほどの不気味さはなくりつつある。
そしてその日は、雨が降っていた。視界が悪くなるほどじゃないけど、外には出たくない。そんな具合の雨量だった。だけどうっかり食材を切らしていて仕方がないなぁと傘を持って近くのコンビニに今日の分だけでも買いに行こうと思ったわけなんだけど……
「電気トラブルで休みとか……ないわー」
どうするかなー……なんて考えていると、束からメールが電話がかかってきた。
「もしもしー、なんか用か?」
『今日ヒマー?』
「まあヒマだけど……」
『なんか気になるプログラムをサルベージしたからさー、ちょっと来てほしいんだ』
「分かった。今すぐ行く」
篠ノ之道場までちょっと小走りで行こうと、駆け出していく。雨が降っている日は憂鬱というイメージがあったけど、たまには悪くないかな、なんて考えていたのだけど……それがいけなかったんだろうか?
突然、「待て」とどこかで聞いたような、そうじゃないような、そんな声が聞こえた。
「……えっと、どちら様?」
傘も差さないで、昔の番長風の格好をした人がいた……こ、コスプレ?
顔は帽子をかぶっていて分かり難いけど、体はがっしりしていて結構鍛えられているのがわかる。
「この後用事があって急いでいるんだけど……」
「…………なーに、時間は取らせねぇし、どこかへ行く必要もないぜ……ここでお前は死ぬんだからな」
「――お前、何者だ?」
男の雰囲気が変わる。まるで、今にも爆発しそうなダイナマイト。危険な雰囲気だ……ここから離れた方がいい、頭の奥で警報が鳴っている。
だけど、それ以上に嫌な予感がする……男が懐に手を伸ばし、そこから引き出したのは――
「戦極、ドライバー!?」
「ご名答!」
その時、風が吹いて帽子が外れた……その顔は、一度だけだけど見たことがある。前に僕に喧嘩を売ってきた不良だ……名前はたしか――
「須郷猛、地獄の底からお前を倒すためにやってきたぜ!」
「自己紹介どうも……そんなくだらないもののために、なんつーもんに手を出してんだよ」
「へっ……その減らず口、ここでつぶしてやるよ」
須郷はドライバーを装着するけど、フェイスプレートに変化はない。おかしい、アレは最初の装着車しか使えないようにセーフティが……まさかとは思うけど……
「量産型か?」
「勘が鋭いな、こいつをくれたオカマは確かにそう言っていたぜ」
「……ブラーボか」
やっぱり組織的なものがあるのか……町の不良に接触して、僕を狙うとか何考えているんだか……でも戦いは避けられそうもない。
僕もドライバーを取り出し、腰につける。雨に濡れて気持ち悪い……向こうは多くても数か月程度の練度だろうし、こっちは二年。不良程度がドライバーを手に入れてもそこまで経験を積めるとは思えない。
【シルバー!】
【クルミ!】
「しかもクルミとか……ランクは低い方だけど、良いのか?」
「そんなの関係ねぇよ。お前はここで俺に倒される。それだけだ」
その自信はどこから来るのか……とりあえず、用心するに越したことはないか。
そして、お互いがブレードを弾いた。
「変身!」
【シルバーアームズ! 白銀ニューステージ!】
「変身!」
【クルミアームズ! ミスターナックルマン!】
宙から降ってくる、リンゴとクルミ。お互いの頭に装着されて、果汁が弾けたと同時に僕らは飛び出した。
体重を乗せて、杖をまっすぐに突きさす――ことはできずに、拳でいなされる。
「なっ!?」
「そらっ!」
すぐに、振りかぶった拳が迫ってくる。咄嗟に防御するも、とても重い一撃に、僕は顔をしかめる。おかしい、クルミアームズがここまでのパワーを発揮できるわけがない。確かに肉弾戦に特化してはいるけど、この重さは尋常じゃないッ
「――ラアアアアア!!」
「グァ!?」
防いだだけじゃダメだった、より力を込めて須郷は僕を殴り飛ばした。手がしびれている。シルバーアームズのポテンシャルでも防ぎきれていないのか!?
というか、つばぜり合いからさらに力を籠められるってどんな怪力だよ……
「どうだ、この力は……これが、俺の、仮面ライダーナックルの力だ!」
「たしかにこれはまずいな……」
これは他のアームズに切り替えるべきかな。もう一度殴りかかってくるナックルをかわし、前に使った瞬動の要領でバックステップをしてロックシードを取り換える。
パワーにはパワー、こいつでどうだ!
【マンゴーアームズ! ファイトオブハンマー!】
「でりゃあああ!!」
殴りかかるが、大ぶりのため難なくかわされてしまう。もっとも、それは狙い通りだけど。こっちの最大の武器は戦闘経験とアームズの特性を理解していること。
クルミアームズは攻撃の届く距離が圧倒的にに短いアームズ。それ故に、インファイトでは強いのだが、遠距離からの攻撃手段は少ない、と思いがち。実はどのアームズにも一応遠距離を狙えるような攻撃方法がある。と言っても、捨身だったり武器を使い捨てる技が多いから思いついても実行するバカはいないだろうけど。
「今回はバカになってやらぁ!」
「なっ!?」
ハンマー投げの要領で体を回転させて、遠心力を加えたマンゴパニッシャーを投げつける。驚異のスピードで放たれたそれは、さすがにかわせなかったようで、拳をぶつけて受け止めている。
……受け止めている?
「どりゃぁ! ……さすがに今のはビビったぜ」
「ま、マジかよ」
なんと、受け止めたと思ったら、アッパーみたいに上に吹っ飛ばしてしまった……そのまま、地面に落ちて突き刺さってしまい……手が届かない場所で取りに行くのも危険だな。
これはおかしい……やっぱりクルミロックシードのエネルギー出力じゃない。いったい、あのロックシードはなんなんだ? エナジーロックシードに迫る勢いだ……こいつはこっちも気合入れないと……
「ならこいつで!」
【キウイアームズ! 撃輪セイヤッハッ!】
輪切りのキウイを模したチャクラム、キウイ撃輪を二つ手に持つキウイアームズ。攻撃特化アームズの中でも投擲武器としても使えるキウイ撃輪のおかげで距離を選ばずに戦える。あのパンチを食らったら危険そうだし……ここはドライバーを狙ってみるしかないか?
「ハッ!」
「小賢しい……男ならもっと正々堂々と戦え!」
「無茶言うなッ!」
だったら普通に喧嘩を挑めとか思わなくもない……けど、そんなこと言う余裕もなく、あっという間に距離を詰められてしまう。
一か八かブレードを叩いてスカッシュを発動させる。
【キウイスカッシュ!】
「でりゃああ!」
キウイ撃輪に充填されるエネルギー。それが薄く、鋭くなっていき相手を狙う。
首に、ヒット。やり過ぎたか――なんて思ったけど、むしろやり過ぎるぐらいでやっと届くレベルだった。
「痛いな……次は、こっちの番だ!」
【クルミスカッシュ!】
「マズッ」
とっさに、撃輪を二枚重ねてガードする。しかし、撃輪は砕け散って、僕も吹き飛ばされてしまった。
「――アガァ、なんつーパワーだ……これは、マジでヤバいかも」
遠距離からブドウで……ダメだ、マンゴパニッシャーがはじかれた以上、それは効き目があるかどうか……いっそのこと、イチゴアームズのスピードで……ないな、一撃でも食らったらアウトだ。インファイト特化のクルミ相手じゃ相性が悪い。
なら……残りは三択。万が一を考えてホオズキエナジーは使えない。スイカならとも思ったけど……でかすぎて周りに被害が出そうだし、小回り効かないうえに装着の隙がでかすぎる。ならあとは一つ。
【ブラッドオレンジアームズ! 邪ノ道オンステージ!】
アームズが装着されると同時に、再び前へ飛び出す。すでに両手には刀が握られていて、相手を狙っている。何も本気で倒す必要はない。相手のドライバーを破壊すればそれだけで変身は解除される。
「はあああ!」
「あぶねッ」
だけど、一歩届かずにかわされる。大丈夫、まだいける。体を回転させてナギナタモードへ変形させる。ブレードを一回倒し、スカッシュを発動。右足にエネルギーが充填される。
いつもなら無頼キックを放つのだけど、今回は違う。一撃を当てるだけでいいんだ。だから、これは加速に使う!
「りゃあああああああああ!」
「な、何だと!?」
右足で、地面を蹴り飛ばして一気に突っ込む。まるで弾丸。想定外の加速方法だからか、体のあちこちから嫌な音が響いてくる。それでも、これで――――一瞬、わけがわからなかった。
突然、視界が黒くなったかと思ったら地面にたたきつけられていた。
その直後、体中に痛みが走る。
「あああああああああああああああああああああああああ!?」
「あぶねーな……壊れたらどうすんだよ」
そこで、僕が殴り飛ばされたことに気が付いた。スピードも、段違い……あのドライバーはいったいなんなんだ!?
「このロックシードだっけか、そいつも特別性だけどよ、そもそもドライバーの性能からして、こっちの方が上なんだよ……舐めてんじゃねぇぞ三下」
「そうか……そうだよ、ドライバーを製作できるんだから性能が向上していてもおかしくはないのか」
悔しい……そんな程度のことで、僕の二年間を覆されるのか…………最後の手段を使うか、そう思って手を伸ばすも、その手を踏みつけられてしまう。
ああ、立つことさえも忘れるなんて、かなり動揺しているな。武器も手放しているし、まずい状況だよなぁ……そんな風に、どこか他人のように考えてしまう。
「オラッ! まだだ、まだ俺の屈辱の半分も味あわせていないんだ。徹底的に痛みつけてやる」
「アガッ!?」
「お前を殺した後は、あの女たちだ。徹底的に、圧倒的に、念入りにだ!」
……頭のどこかで、相手が人間だから手加減していたのかもしれないことに気が付いた。まだ、覚悟は決まっていなかったってことかな……プッツンと、何かが切れた気がした。
「……けんなよ」
「は?」
「ふざけんなよ!」
【ブラッドオレンジスカッシュ!】
左手が、赤く輝いていた。燃えるように、赤く。紅く。血のように。
「でりゃあああああああああああああああああ!」
「あ、あがあああ!?」
腕輪が今までとは違い、赤く輝いている。今までとは違い、何かを知らせるための光じゃない。外へ向かって、今にも弾けそうなイメージが湧いてくる。
ロックシードも、輝きを増していき、力が増大する。そして、少し間をおいて光は収まった。
「――ふぅ」
少し、頭が冷えた。よくわからないけど、一瞬だけ出力が上がったみたいだ。ブラッドオレンジロックシードは束でも解析できない何かがあった。ロックがかかっているというより、外部からは干渉できない何かが入っているらしい。それが作用したのか?
とにかく、一度体勢を戻す。武器はどっかに飛んでいったままだから無手だけど……今の感触を思い出して、肉弾戦で挑むしかない。ホオズキエナジーに取り換えている暇はなさそうだ……逆上して、かなり荒い息で唸っているし、これは長期戦も覚悟するべきか?
◇◇◇◇◇
遅い。英ならすぐに来ると思ったら、連絡してからずっと待っているのに全然来ない。でも心配して見に行くのは束さんのキャラじゃないし、どうするかなぁなんて考える。せっかくいい知らせがあるのになぁ。
「……束、傘持っていきなさい」
「なんで勝手に入ってくるかなぁ……お母さん」
「お母さんだからよ。それと、今日はご飯5人分作ったからね」
「…………わかったよ」
そこまで言われたら仕方がない。私は雨の降る中外へ出ていき、この束さんを待たせるアイツを迎えに行く。
何だか、雨が強くなってきているような……晴れそうな感じだったけど、まったく嫌になる。
……しばらく歩くと、なんだか変な音が聞こえるのに気が付いた。これは……金属音? いや、なにかがぶつかり合う音……嫌な予感がする。走っていくと、ちょっとした広場にたどり着いた。そこで、二人の人影がぶつかり合っているのが見えた。
片方はよく知っている。もう片方は初めて見るけど……見たことある鎧をつけていた。
「また、新しいライダー!? 英っ!」
おかしい、クルミアームズはデータでもみたけど弱い部類のアームズだ。ブラッドオレンジアームズ相手にあそこまで拮抗、どころか有利になるはずがない。
そもそもなんで英は武器を……近くの木の上に引っかかっている。弾き飛ばされたのか? アームズチェンジの暇もないのか……どうする? どうしたらいい……そうだ、あれを使えば……
私は何かあった時のために持ち歩いていたダンデライナーを展開し、乗り込む。一応、防御策としてISを手足のプロテクターとヘッドギアだけ展開する。
「いっけぇ!」
「――なっ!?」
「た、束!?」
先端の銃口から乱射、うまく二人を引き離すことができた。私はすぐに英のそばに近寄り、ゲネシスコアを手渡す。
「これとホオズキエナジーを使って。今は説明している時間はないみたいだし」
「っていうか危ないことするなよッ」
「話は後! 良いから言うとおりにして。ちょうどいい具合にブラッドオレンジを使っているみたいだし!」
私は、先ほど見つけたばかりの戦極ドライバーの隠し機能について簡単に説明する。時間がないのが悔しけど、これならあの仮面ライダーにも対抗できるはず。
「……マジでそんな機能が…………ありがとうな束!」
「お礼はアイツを倒した後でね!」
「分かった!」
一瞬だけ、雨が強くなってみんなの視界を遮った。それが、謎のライダーにとってもうかつに動けない要因となって、こっちの準備ができる。
英はフェイスプレートを取り外し、ゲネシスコアを取り付ける。そして、手にはホオズキエナジーロックシード。
「いくぜ」
【ホオズキエナジー!】
すると、勝手にブラッドオレンジロックシードが閉じていき、開錠状態になる。そこで、ゲネシスコアの方にホオズキエナジーロックシードを取り付ける。
二つともロックをし、いつものようにブレードを叩くと――
【ソイヤッ! ミックス! ブラッドオレンジアームズ! 邪ノ道オンステージ!】
――まず最初に少し変わっているブラッドオレンジの音声。だけど、鎧は空中に浮きあがり、空から出てきていたホオズキエナジーの鎧とぶつかり合う。
そして、二つが混ざり合って、別の鎧へと姿を変える。赤と黒の二色で彩られた鎧に。
その鎧が降りてきて装着されると、新たな音声が鳴り響いた。
【ジンバーホオズキ! ハハーッ!】
これが、冠の新しい力――ジンバーアームズ。通常のロックシードとエナジーロックシード二つのロックシードで作るアームズ。
手には大橙丸と鬼灯刀の二刀流。
「すげぇ……これならいける」
雨は止んで、空から光が指している――大丈夫、英ならいける。
「いっけぇ!」
◇◇◇◇◇
ここまでお膳立てしてもらったんだ。負けられねぇ……負けるわけにはいかねぇ!
「悪いけど、ここからは僕のライブだッ!」
「ぐっ……なんだこのパワーは……データには無いぞ!?」
「なるほど、ただ性能が上だったわけじゃなくて、あらかじめ予習していたってことか……よくも正々堂々なんて言えるもんだよっ!」
「だが、それでもまだ互角!」
「それはどうかな?」
この二刀流は、思った以上に使いやすい。篠ノ之道場での稽古でよく使っていた長い竹刀と、短い竹刀の二刀流に似ている。これなら十分慣れている。
拳を何度もたたきつけてくるが、今更ナックルの攻撃はかすりもしない。性能の差は覆り、あとは経験の差だ。相手は僕の戦闘パターンも調べてあるみたいだけど、この二刀流はインベス相手にもまだ使っていない。
それに、こいつの練度は織斑にだって通用するって自負しているんだ。それに背中に守りたい人がいる。なら負けるなんてありえない!
【ブラッドオレンジスパーキング! ジンバーホオズキスパーキング!】
「いっけぇええええ!」
「あ、あがあああああああ!?」
両手の刀に充填され、爆発するかのように弾けながら放たれるエネルギー。それを強化されたライドウェアとによる運動性能で目にもとまらぬ速さで何度も切り付ける。
そして、二つを一つに束ねて最後の一撃を放った――名付けて、究極乱舞。
「でりゃああああああああああああ!」
「――――ッアアアアア!?」
限界を超えたのか、ナックルは変身が解除されて元の須郷猛の姿に戻った。僕も、どっと疲れて変身を解除する。
「――ふぅ」
「お疲れ様。それにしても……アイツって、前に見た自称先輩だっけか?」
「よく覚えたな……僕も名前は忘れかけてたけど」
「……ふざけやがって、結局女の手を借りただけじゃねぇか、恥ずかしくないのか!」
「お前こそ、誰かの手を借りてその力を貰ったのに、その言いぐさか……恥ずかしいのはどっちだ」
「…………チッ、覚えてやがれ!」
そして、須郷は見たこともないロックビークル――足を持った乗り物で、モチーフはチューリップの様な花だった――を展開すると、突然開かれたクラックへと入っていき、姿を消した……どうやら、思ったよりも敵は厄介な存在らしい。
「あれって……」
「今はどうこう言っても仕方がない。それは後にしよう」
「……うん。あ、今日はもうご飯食べた?」
「いいや……そういえば何か買おうと思っていたの忘れたわ」
「お母さんがご飯作ってくれているから、いこう?」
「そうだな、さすがに疲れたしすっげぇ腹減った」
まずは腹ごしらえ。考えるのはそれからにしよう。
まずはオリジナルのジンバーアームズです。
元々がソニックアローではないので、アームズウエポンの二刀流。
ちなみに、究極乱舞は元々フィフティーンの鎧武アームズの技。ガンバライジングのものをものすごいスピードで放っていると思ってください。
ようやくジンバーが使えるようになった主人公。そして、新たな仮面ライダーも登場。
須郷が一発キャラじゃないことに気づいた人はいただろうか?