もうそろそろ鎧武も終わりですねー
織斑の暴走の翌日、僕は束と共にヘルヘイムの森へ来ていた。束の用意したロボットアームだが……見事に成功。あらかじめ用意してくれていたカプセルに果実を入れて帰ろうと思った矢先、ちょっとまずいことになった……
「まさか野良インベス……しかもあんなでかいのがいるとはなぁ」
見た目は、前に戦ったライオンインベスに似ているだろうか? だけど人型じゃなくて四足歩行だ。
しかも周りに初級インベスがたくさんいるし……うかつに手を出すとこっちが危険になるんだけど…………どうする? 束もいるし、できれば穏便に済ませたいところだけど。
「……大丈夫、私も色々と持ってきているから何とかなるよ。それに最近はまたクラックが開くことも増えたんでしょ?」
「確かに……こんなのが向こうに出てきたらヤバいな。座標も市街地だし」
仕方がない……最初からジンバーでいくか。
「ホオズキエナジーは試作品だから、ブラッドオレンジ以外だと相性が悪いから気を付けて!」
「オーケー……変身!」
【ミックス! ジンバーホオズキ! ハハーッ!】
変身の音を聞いて、インベスたちがこちらへ向く。さすがにあのでかいのはちょっと厳しい……せめて周りのインベスがいなければなぁ……
と、そこで束がダンデライナーで浮き上がりながら、もう一つ何かロックシードを開錠する。
【スイカ!】
なんと、スイカアームズの鎧が出現した。いや、それだけだと意味がないはずだったのが勝手に展開されてヨロイモードとなりひとりでに動き出したではないか。
「なっ!?」
「ザコは遠隔操作のスイカアームズで何とかするから英はさっさとデカいの倒して!」
「……任せろ!」
巨大な獅子の足元に入り込み、鬼灯刀と大橙丸で切り付ける。武器そのものも強化されているらしく、切れ味が増している。
これならいける。いったん離れて攻撃をかわす。束がスイカアームズとダンデライナーで他のを引き付けてくれているおかげで戦いやすい。
獅子の口に鬼灯刀をぶっさしてスライディングで後ろへ回り込んでいく。その際に、後ろ脚を切り付けてから離れる。タイミングを間違えると下敷きになっていただろうけど、今更そんなへまもすることなく成功する。
「ガアアアア!?」
「そういや、インベスの咆哮って久しぶりに聞いたな……さあ、フィニッシュだ!」
【ブラッドオレンジスカッシュ! ジンバーホオズキスカッシュ!】
右足にエネルギーが充填される。そして、大橙丸を地面に突き刺し、それを踏み台にして飛び上がる。大橙丸に内蔵されたエネルギーを爆発させていつもより高く。
インベスめがけて、赤いオレンジの輪切りを模したエネルギープレートがいくつも展開される。そして、右足に充填されたエネルギーはホオズキのような形へと変わる。プレートを通るたびにエネルギーが置籍されて威力が高まっていき、激突した。
「――ッ!?」
「まだだ!」
さらに、ホオズキが剥けて中の果実が現れてさらに加速し、もう一度激突する。連続ヒットする新しい無頼キックの完成だった。
大型のインベスであろうとそれは耐えきれるものではないらしく、爆散してしまった。
「――束ッ!」
「大丈夫!」
初級インベス相手なら十分に鎧だけで対処できていたらしく、インベスたちはいくつか数が減っている。僕も落ちていた鬼灯刀を回収し、残ったインベスを倒していく。
ほどなくしてすべてのインベスを倒し終えて、変身を解除した。
「ふぅ……これがジンバーアームズの力…………前は土壇場だからわからなかったけど予想以上に強いぞコレ」
「元が出力の高いブラッドオレンジロックシードだからね。ISのシールドエネルギーを破れるかのシミュレーターを作って調べたんだけど、やっぱりシルバーとブラッドは強力なんだよ。リミッターかなんかがかけてあるんだとは思うけど……」
「たしかに、普通のロックシードとはなんか違うんだよな……」
父さんも何のためにこれを作ったんだか……
とりあえず、今日はもう戻ろう。果実の採取はできたし。
◇◇◇◇◇
「どこで調べようか……これ」
「やっぱり僕の家だよなぁ……」
束の家だと箒ちゃんとかがいじったら危ないし。それこそ誰かが食べてインベスになるとか笑えないだろうし。
とりあえず、父さんの書斎なら機材も残っているし使いやすいように改造しても大丈夫かな?
「っていうか勝手に改造して大丈夫なの?」
「もう死んでいる人だし、それにこんな大変なことを任せたっきりでいなくなったんだ。これぐらいで怒られないよ。むしろ書斎って言っても研究室みたいなもんだしね」
機材を準備して色々と接続を手伝う。なんかもう自作の領域を超えたパソコンだよな……
「ISを作っているときの副産物だよ。これぐらいのスペックがないと作業できなかったからね」
「まあそのぐらいは必要だよな」
「これぐらいなら、どこの国も隠し持ってるんじゃない? じゃなきゃISの機体を開発なんてできてないよ」
「……たしかにな」
最近世間の裏に触れることが多くなって、なんか嫌だなぁ。
「で、いけそうか?」
「うん。白騎士製作でもこういう生物の知識は必要だったからね……二つの果実の違いぐらいならすぐに調べられるよ…………うーん、なんだろう似ているしほとんど同じなんだけど…………なんか逆?」
「逆?」
「うん……亜種っていうか、世界樹の苗木って呼んでいる物はこっちの植物って感じなんだよね。ヘルヘイムの果実と比べても……光学異性体って言うのかな? あれに近いと思う」
「そこら辺は詳しくないんだけど……」
「私も知っている言葉から近いものをニュアンスで言っているだけだからね……結論から言えば、苗木の方は地球のモノだから侵食はしないんだ。だからインベスにならないし食欲もわかない」
「……なるほど、除草剤として使うことができたのは…………」
「苗木の方は逆にヘルヘイムの森を侵食する性質でもあったのか、それとも中和するだけなのかはしらないけど……お互いに打ち消しあうからだね」
「どっちにしても食べると危険だけどな」
「ロックシードに加工したらあまり変わりは無いと思うけど……ただ、銀のリンゴのデータを見せてもらって思ったんだけどさ、さっきも言ったけどあれだけはなんか違うんだよ」
「確かにそう思うけど、なんだか嫌な言い方だな」
「……なんだか普通の果実から作った気がしないんだよね…………色々見比べているんだけど、これエナジーロックシード以上に負担がかかりそうなのに。ブラッドオレンジは改造品だから出力が高い理由もわかるんだけど、銀のリンゴは何か根本が違う」
「…………正直、何かあるとは思っているんだけど……わからない以上はなぁ」
「ロックシードとの相性があるのかもね。束さんの作ったISみたいに、固有の適正が」
「コアごとに性格があって、操縦者を選ぶんだっけか?」
「うん。意識に似たものがある以上はね……ロックシードに意識はないだろうけど、肉体に作用する以上は相性はあると思うよ」
「あー確かに使いやすいアームズってのがあるな。和風音楽が流れるのは結構使いやすかった印象がある」
一番使いにくいのは……ドングリかな。
あれは威力はそれなりにあるんだけどリーチが短いのが……投擲武器として使った方が強いし、なんかこう、一人で使うような武器じゃない気がする。
「さてと……で、あとはどうする?」
「……今日は泊めて」
「…………反応に困るんだけど」
「レモンエナジーの製作に取り掛かるよ。ホオズキエナジーを使い続けるのは負担が大きいと思うからね。負担のかかり方からして英はシルバーアームズが一番疲労感少ないんでしょ?」
「まあ……本当なら負担は大きいのにな」
「たぶんロックシードの中でも一番相性がいいんじゃないかな? もしくは、相性がいいように作られているのか」
「……その線もあるか」
父さんだし。とりあえず作業を始めた束の邪魔をしちゃ悪いとご飯の準備を始める。今日は徹夜だろうしな……束はちゃんと家に連絡を入れたのだろうか?
「束、一つ聞きたいんだけど家に連絡は?」
「んー、今日はイニシャルG殲滅しているからみんな避難しているよー」
「……マジで?」
「箒ちゃんはちーちゃんに預かってもらってるし、お父さんはいい機会だからって友達と遠くまで釣りに行って、お母さんは……業者を率いて殲滅していると思う」
「そこーおかしいことに気づいてー」
なんで業者を率いているんだよ。任せないのか……まあ束の母親だし、どこかズレてるんだろう。そもそも一般的な思考の人物からこんな娘が生まれるわけがないのだ。
「なんか失礼なこと考えただろ」
「いつものことだろ」
「……フンっ!」
「オグッ!? わ、わき腹はやめて……」
ごめん、さすがに今のは言いすぎました。
◇◇◇◇◇
気が付けば時間はもう夜中。作業を手伝ったり、ご飯作ったり、時折バグチェックしたり。色々やっていたと思うけど結構作業が進むの早いなぁ。
果実は多めに採取していたようで、足りなくなることはなかったけど。
「設計図はあったからね。ただ、取り置いてある果実を消費しちゃうのがねぇ」
「なるべく高ランクのロックシードを生成できる素材じゃないといけなかったしなぁ」
「……でも、これでようやく完成だよ」
「レモンエナジーロックシード……試運転してみるか」
「もしも危険だと感じたらすぐに解除してね」
「わかってるよ……大丈夫、束の腕なら」
「……そういうのをさらっと言わないでよ」
まあ、とにかくドライバーを装着して銀のリンゴとレモンエナジーをセットする。
いつもの和風の音楽が流れ出して準備が整った……いくぞ。
【ミックス! シルバーアームズ! 白銀ニューステージ! ジンバーレモン! ハハーッ!】
二つのクラックから飛び出した鎧は空中で混ざり合い、黒い鎧へと変化する。装着自体の動きはそれほど変わりないが、体に流れるエネルギーはシルバーアームズの時よりも強力だ。
そして、手には新たな武器ソニックアロー……どうやらアームズウエポンは使用できなくなったらしく、手に握られていない……呼び出すのかと思い、力を込めて出てくるのは無双セイバー……
「思っていたよりかは、出力低め……シルバーアームズよりは強そうだけど」
「ジンバーホオズキが攻撃特化過ぎるんだよ。素で白騎士の荷電粒子砲を切れるぐらいに強いんだよ、アレ」
「そこまでパワーあるのかよ……というかいつの間に計測したんだ?」
「束さんですから、ぶいぶい!」
「そうですか……それで、なんで無双セイバー?」
「うーん、ジンバーアームズ本来の仕様はこっちみたいだね。ソニックアローを標準装備として、遠近両方で戦えるようにしたのかな……あとは、エナジーロックシードの換装でそれぞれ特化した能力を付与しようとしたんじゃないかな……でも、そっちは未完成みたいだけどね。作るにしても、こっちは時間かかりそう」
「なるほどなぁ……ジンバーレモンに特殊能力は?」
「無い。能力を引き上げるだけ。一号機ってそういうものだよ」
「……まあ、そうだよな」
「…………束さんは白騎士にこれでもかと技術をぶち込んだんですけどね」
「オイコラ」
一度、どんな機能をぶち込んだのか聞き出してみたいものだ……なんかヤバいものまで作っているんじゃないだろうか?
「じゃあ、お休み……」
「おーい……本当に眠ったよこの子…………お疲れ様。あと、本当にありがとうな」
戦いは激化する。これからが大変だろうけど……束のおかげで前に進めそうだ。
タオルケットを持ってきて束にかけてやる。風邪をひくといけないしね。
明日は学校あるし、僕も早く寝るか。
翌日、二人で家から出てきたところを織斑に見られて思いっきりからかわれたんだけど、それは別の話。
できれば次の劇場版までには完結させたい。
そして登場レモンエナジー。元々設計図やデータはあったので完成は早かった。
他の三つはまだ先だけどね!
ジンバーメロンって結局どうなったのか。