仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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ちょっとした日常回をいくつかはさむ予定。
時系列のすり合わせが大変だなぁ……


EP32.夏の始まり

 IS操縦者国家代表候補生。織斑が選ばれたというのが、この話。来年に開催予定のIS世界大会に向けて優秀な若い女性たちを選抜し、その中で一人代表を決めるというものである。もっとも、部門別に競技を設定し、複数人選ぶ計画もあるらしいが。

 

「で、織斑は格闘部門で選ばれたというわけか」

「ああ……真耶は射撃部門、他にも色々とな…………だが、延期する話もある」

「どういうこと?」

「まだ人に見せられるレベルには達していない、ということだ」

「あーそりゃそうか……」

 

 そこで、その世界大会の試験的な競技を行うことにしたとか。

 

「話に聞いているが、束はもう第二世代の理論を組み立てたのか?」

「というより最初から構想はできているんだろ。最近、失敗したかなぁなんて言っていたが……」

「そうか……ところで、お前はこんなところにいていいのか?」

「大丈夫。なんか、ISコアを徹夜で大量につくらないといけなくなったとかで昨日から部屋に引きこもってる」

「私はお前に用事がないか聞いたのだが……そこでナチュラルに束の名前が出るのか、そうかそうか」

「……ちくしょー」

 

 今日は特に用事もなかったので、ファーストフード店でゆっくりしようと思っていたら織斑に見つかったんだが……そこが運の尽きだったか。

 なんか今日は厄日かもしれない。

 

「あら? 蜂矢君に織斑ちゃんじゃないの、どうしたの?」

「……やっぱり厄日か」

「失礼ねっ!」

 

 佐々木先生、また会ったなぁ……はぁー……つーか織斑をちゃん付け……いや、束のお母さんも千冬ちゃんって呼んでたっけ?

 

「溜息ついていると幸せが逃げるわよ」

「先生こそまた合コンは失敗ですか?」

「……」

「……」

「二人とも、元教師と教え子がメンチを切りあうな」

 

 織斑にはわからないのだ。これはいわば戦い。引いた方が負けなのである。

 

「まったくお前という奴は……」

「ふぅ、いいでしょう。二人はデート?」

「「なんでですか?」」

「……なんでそこで息が合うのよ」

「いや、織斑とデートってありえないですよ」

「私もそれだけは無いと思ってます」

「えー……つまんなーい」

 

 それでいいのか、教師。

 

「それに、蜂矢は束の彼氏ですし」

「いや別に付き合っているわけじゃないって」

「……アレでか!?」

「え、篠ノ之ちゃんと付き合ってるの!?」

「いやだから付き合ってませんって」

「おまっ、冗談だろう!?」

「冗談でそんなこと言うわけないだろ……お互い、先に片付けたいことがあるから線引きしてるんだっつの」

「…………」

「いや、それにしてもだな……先生どうかしましたか?」

「ううん、本人たちがそれでいいならいいんじゃない? 片付いたら自然とどうにかなるでしょ」

「そういうものですかね……」

 

 先生は事情をある程度知っているから、察してくれてフォローしてくれて助かった。

 こればっかりは織斑も巻き込みたくないからな……

 僕は父親の死んだ理由を知りたいし、目の前で死んでしまった花蓮さんのこともある。束だって、自分だけが狙われていた時はいいけど、他の人を巻き込んだことで内面に大きな変化が生まれた。花村さんの死が彼女にかなり影響しているし、僕と同じように線引きしているのもそこにあるのだろう。

 お互い、難儀な性格だとは思うけどね。やっぱり決着はつけたいのだ。

 

「まあ、実質的には私たちと違って裏切り者なんだからお互いいい人見つけてギャフンと言わせようね織斑ちゃん!」

「待ってください。なんで私が佐々木先生と同類の扱いなんですか?」

「え、だって私の経験上長い間独り身になるタイプよ、貴女。そういうのは私自身が一番よく分かっているから。この彼氏いない歴と年齢が同じ私が! ちなみに、真耶ちゃんも同じタイプよ」

「未来がかなり不安になってきた……」

「どうせ織斑は弟が彼女作るまで自分もとか考えているだろうしね」

「まて、なぜお前がそれを知っている」

「え、マジで……冗談で言ったんだけど」

「……」

 

 織斑は机に突っ伏して、そのまま動かなくなった。大丈夫かこいつ? というか一夏君ってプレイボーイの素質あるし、今から鈍感街道まっしぐらだから彼女ができるのがいつになることやら……近くに、カップルの見本とかいないし、そういうのを教える役目の織斑がこれじゃあなぁ……

 

「あはは、でも元気そうで良かったわ。落ち込んでいるんじゃないかって心配してたの。真耶ちゃんも、射撃部門の候補ってのに選ばれたけど……それまではなんかショックを受けていてふさぎ込んじゃっていて。今は立ち直ってくれたけどね」

「そうですか……大丈夫です。いつまでも落ち込んでいたら、それこそ笑われちゃいますからね」

「うん……それじゃあ、またね二人とも。篠ノ之ちゃんにもよろしくね」

 

 きっと、誰もがこうやって辛いことを乗り越えていく。人はいつの間にか前に進んでしまうものだ。逃げていても何も始まらない。だから前に進むしかないんだ。

 さてと、そろそろ僕も前に進むとしますか。

 

「それじゃあ僕も行きますか」

「どうしたのだ? 何だか妙な雰囲気だが……」

「たまにはリフレッシュも必用だろ?」

「……?」

「もう夏だし、海も開いているころだから束を誘って行くわ」

「…………は?」

「じゃあなー」

「……はああああああ!? ちょ、線引きはどうした!?」

 

 だから言っただろう。たまにはリフレッシュも必要だって。

 それに、線引きはしても我慢する必要はないのだ。

 

 ◇◇◇◇◇

 

「いきなり連れ出されて束さんはびっくりだよ」

「硬いこと言うなって。ほら、こんなに日差しがまぶし……スマン、僕日光苦手なの忘れてた。頭痛い」

「束さんだって、熱い陽射しは苦手だよ……」

「お前ら何しに来た」

 

 そりゃもちろん二人で海へ行こうと、束を連れ出そうとしたら箒ちゃんに見つかってそのまま一夏君にも話は伝わって、一人は寂しいいちーちゃんも一緒に来て、じゃあついでだからと篠ノ之道場総出でなぜか海へ来ることになって……ああ、僕もよくわからない。

 

「大丈夫か? なんだかすごい顔しているぞ……」

「……無理、パラソルの中に引きこもる」

「束さんも……」

「……若い男女が、ある意味不健全だぞ」

「こればっかりは体質だからね。体が丈夫になったから忘れてたけど……根本的に無理っぽい」

「こうなったら、冷却ビームでも使って……」

「ヤメロ。私は一夏たちが沖までいかないか見ているから、お前らも覚悟決めて泳げ」

「へーい」

「うぇーい」

「返事はちゃんとしろよ……斬るぞ?」

「「い、イエスマム!」」

 

 怖い。マジ怖い。

 でも陽射しが痛いのもまた事実。

 

「すまん、僕も苦手なのに何考えてんだか……」

「大丈夫ー、外の空気吸うだけでもリフレッシュできるよ。それに、作業は思ったより順調だったしね」

「……夏かー」

「夏だねー」

 

 蝉の音がうるさい。なんかもう、横になっているだけでもいいかも。

 

「ねえ、英」

「なんだ?」

「今度デートしない?」

「……いいぞー」

「今の間はなんだよ」

「ああ、少し思うところがあっただけだ。あんまり意味はないけど」

「そっか……」

 

 こういう、普通の会話ができるってのも前に進んだ証拠なのかな。そんなことを考えただけだから。

 その後はいつも通り、ISやロックシードの製作具合についての話になる。最近は僕もISの製作やらを手伝っていたおかげで、大分話についていけるようになった。

 

「そうだ、英も私のアシスタントってことで来てもらいたいんだけど」

「なんだ?」

「ちーちゃんの専用機開発」

「白騎士じゃダメなのか?」

「アレはもう初期化してあるんだよ。一応、あのコアを預けてある企業がちーちゃんの機体を作ることになっているんだけど……」

「量産機じゃなくていきなり専用機かー」

「そこはどこの国も同じだよ。まずは優秀な候補を10人前後選んで、各々に専用機を与えて二次移行したり技能を編み出したりするのを競わせるって」

「さすがに量産できるほどデータもないってか」

「うん。こればっかりは私にもどうすることもできないからね」

「なるほどねぇ……まあいいけどさ。織斑の専用機ってことは近接特化か?」

「一応そうだよ。名前はね、もう決めてあるんだけど私は大っぴらにかかわれるか微妙なところ」

「そうか」

「ところで、除草剤はどうなっているの?」

「まだ未完成。やっぱり毒素がキツイし、量産も無理。専用のプラント作った方がいいかもな」

「あー……やっぱり、資金がね」

「世知辛いよな」

 

 結局のところ、学生ではどうすることもできない問題ってのがあるのだ。

 高校卒業までに理論やら、開発やらを進めて、あとは資金を得てからにしないといけない。

 

「私も、資金は入ってくるんだけど……次の開発に持ってかれて……今回の専用機だって、それが問題なのもあるんだよ。一応、私一人でやるとチートとか言われたからってのもあるけど」

「ここにきて最大の敵がそれか……」

 

 ロックシード開発は機材や、資材は入手が簡単だった分楽に進んだ。ゲネシスドライバーはかなり難航しているけど。

 束もISの開発には結構資金が飛ぶのに悩んでいるし、利益は少ないという。

 

「今ほど、副産物に助けられていると思ったことはない」

「あー……世界の技術レベルを塗り替えちゃったあれか」

 

 空間投影ディスプレイとか、医療用ナノマシンとかその他諸々。

 

「話は変わるけどさ、篠ノ之神社の夏祭りって……」

「英、さあ泳ぎに行こう!」

「……夏祭りって」

「泳ごうよ!」

「…………頑張れよ神楽舞」

「うわあああああああん!? 考えないようにしていたのに! っていうかなんで知ってるの!?」

「お前の母さん」

「お母さん!? 裏切り者―!」

 

 毎年行われる篠ノ之神社のお祭り。神楽舞って言うのがあるんだけど、今年は束がやることになった。本人は絶対に逃げるから捕まえてくれと、束の母に頼まれたわけである。

 ……正直、ものすごい見たいので全力で捕まえる所存。

 

「英も裏切ったんだね! 束さんを裏切ったんだね!」

「人聞きの悪いことを言うな」

「私がやってもつまらないだけだよ!」

「そんなことはない。美人なんだし、絶対に見応えはあるって」

「……はっ!? 騙されないよ。そんな甘い言葉で私を誘惑しようとしても――」

「見たかったのになー……めっちゃ見たかったのになー」

「……だ、ダメだからね、そんな風に言っても束さんは――」

「そっかそっか、残念だな……どうしても嫌だって言うのならあきらめないと」

「いや、どうしてもとは言ってないし……」

「でもそこまで嫌なら」

「だ、だからそこまで嫌じゃないって言っているだろッ」

「でもやらないって」

「や、やってやるよ!」

 

 数分後、やけになって新記録を出さんばかりの勢いで泳いでいる束の姿がそこにあった。

 正直、やり過ぎたかなー。

 

「やり過ぎだろ明らかに。というかお前は本当に束のことが好きなのか?」

「好きだよ。だからこういうことにも逃げないでやってほしいって思うんじゃないか」

「……お前は、こういう時にはまっすぐ返してくるのだな」

「まあ僕が見たいってのが8割だけどね」

「台無しだッ!」

 




モンドグロッソは3年に一度。まさか公式で明言されているとは……まあそこは修正効くので大丈夫なんですが。

実は一年編の大きなイベントは結構消費した感じ。
後は回収とか、閑話とか。
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