仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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今回、いつもより短いです。



EP35.母と娘と

 英には悪いことをしたかもしれない。自分で線引きをすると言っておいて、ひざまくらをねだるなんて……思い出しただけでも顔が熱くなってくる。

 幸い、箒ちゃんには見られなかったから良かったけど……お母さんに見られたのは誤算だった。というか最近になって思うんだけど、さすがこの束さんの母親。どこかズレてる。

 とりあえず寝不足でふらふらになっていた英は私のベッドに寝かせたけど……これは色々とマズイんじゃないだろうか? 誰かに見られでもしたら……ヤバい。さらに顔が熱くなってきた。

 誰かに見つかる前に部屋から出ようとする……前に声がかかってきた。

 

「同じベッドで眠る仲なのねー」

「いきなり後ろに立たないでよッ、っていうか違うし!」

「恥ずかしがらなくてもいいのにー」

「というか最近どうしたのお母さん!?」

 

 昔はもう少し、普通の人だったと思う。最近、妙にはっちゃけているというかなんというか……

 

「諦めていた娘の恋愛を見れるんですものーそりゃあ元気になるわよー」

「恋愛とか違うしッそんなんじゃないしッ」

「隠そうとしても無駄よ。私は貴女の母親ですもの」

 

 なぜだッ、なぜ勝てるイメージが湧かないんだッ!?

 

「うふふ」

「ぐぬぬ……って箒ちゃんがいるでしょ!? 箒ちゃんにも期待していないってこと!?」

「だって一夏君は今の時点でもモテモテなのよ。正直、恋愛に関しては箒は……見合いも無理そうねー」

「ひどいッ」

 

 それでも親なの!? 親としてその発言はどうかと思うよ束さん。

 

「だってねぇ……照れ隠しに竹刀で叩くのならまだ可愛いのだけど、この前は包丁を持ち出そうとして――」

「聞きたくなかった! そんな話聞きたくなかった!」

「千冬ちゃんよりも心配だわぁ」

「……ことの重大さがよくわかったよ」

 

 箒ちゃん、将来はヤンデレにならないよね? そうだよね? ……いっくんには十分気を付けるように言っておこう。

 というかいっくん将来刺されたりしないよね? 束さんすごく心配。

 

「って、親なんだから自分がそういうの教えるべきでしょ!?」

「うーん……でもねぇ…………こういうのって一度痛い目みないと分からないのよねぇ……だから、正直私としては箒は一夏君にはフラれた方がいいと思っているのよ。その方が箒を成長させてくれると思うし」

「でもそしたら箒ちゃんが……」

「難しいところよね。初恋は実らないっていうけど、私はそれは失恋が人を成長させるからだと思うの。そういう苦い思い出や失敗ってのは時には必要な物よ。でも、貴女みたいに初恋しかできない子もいるの。結局、その人ごとで色々変わってきてしまうのよ」

「……それはそうかもしれないけど」

「人の心ってのは神様でもどうすることはできないの。それだけは、誰にもどうすることの出来ないものなのよ……」

「……」

 

 箒ちゃんのことを考えると、いっくんとくっ付いてほしいとも思う。でも、私自身……わかっている。人の心は簡単に分かるような物ではない。自分の心さえ、自由にはできないものなのだ。

 箒ちゃんのためにはどうすればいいのだろうか? 成長をとるのか、それとも別の何かをとるのか。

 

「……本当、最近は悩むことばっかりだよ」

「でも前よりは楽しいでしょ?」

「…………うん」

「うふふ……ところで、さっき認めたわね」

「……え?」

「貴女みたいに初恋しかできない子もいるのよー……うふふ」

「……ハッ!? は、謀ったね! 束さんを謀ったね!?」

「言ったでしょう。母に勝とうなんて10年早いと!」

「言ってないよッ! あ、お母さん逃げるなぁあああああああ!」

 

 その後、追いかけっこをすることになったのだが……なぜに追いつけないのか。というか私の行動パターンをすべて読まれているような……

 そういえば昔から、研究のし過ぎで倒れそうになったり、欲しいものが足りない時に現れて色々くれたけど……底知れないというかなんというか、今日は身近にいたのに気が付かなかった母親の凄さを思い知った。

 そういえば騒ぎ過ぎたけど、英は起きていないだろうか……大丈夫。ぐっすり眠っている。

 ……横に、まだ人が入れるスペースがあるよね…………

 

「……邪気ッ」

「うふふー。まだまだ甘いわねー」

 

 いつの間にか接近していたお母さんを手刀で一太刀入れようとするも、難なくかわされてしまう。というかこの人いったい何者なの!?

 ヤバい。本気で勝てるイメージが湧かない……

 仕方がない。ここは散歩にでも出かけよう。そして頭を冷やそう……

 

 ◇◇◇◇◇

 

 やってきたのは近くの海。英の話だと、ここでよくインベスと戦ったり、敵ライダーと戦ったり。とまぁ、色々と縁があるそうだ。

 ……変なフラグ立ててないよね?

 

「…………油断した。変なフラグ立てたね」

 

 危険じゃないけどある意味危険だよこの場所……

 佐々木が黙々と砂のお城を立てている……小さなちびっこたちがわらわら集まっているけど、彼女の表情は何というか哀愁に満ちている。また合コンに失敗したのだろうか?

 

「えっと、お久しぶりです」

「あら、篠ノ之ちゃん。久しぶりね……いいわね、リア充は」

「怖いッ怖いから子供たちもおびえていますよッ」

「丁寧な言葉使い覚えたのねー先生は嬉しいわー……恋も愛もない真っ暗な日々だけど」

「やめてッ」

 

 どうしたというのだ!? 英やちーちゃんの話ではこの人は合コンに失敗しても泣くだけのはず。

 なのにこの世全てを呪う何かになっているではないか……なんか瘴気が見える。

 

「ついに実家の母親から見合いの話を持ち掛けられたのよ……」

「束さんにはよくわからないけど、一応行ってみればいいんじゃ……」

「……あそこに見合い写真を置いてあるから、見て見なさい」

「…………うわぁ」

 

 一言でいうと、こう……ハンサム学園?

 

「なんだか人を殺せそうな顎ですね」

「……」

「なんで黙る」

「…………うふふ」

「怖いよこの人!? というか否定してッ」

 

 ヤバい。早くここから逃げないと……とりあえず急いで逃げ出そうとするも、がしっと腕をつかまれて逃げられない。どういうことだッ束さんの身体能力が追い付いていない――まさか脳のリミッターを外したとでもいうのか!?

 

「五反田食堂っていうおいしいお店があるの。奢ってあげるから愚痴に付き合ってね」

「いやぁあああああああ!?」

 

 結局、そのままズルズルと引きずられてそのお店に連れ込まれました。

 いきなりビール頼んでいるけど……昼間からそれでいいのだろうか?

 

「プハァッ! こういう時は飲んで忘れるに限るわッ」

「昼間からビール……」

「篠ノ之ちゃんも飲む?」

「未成年に進めないでください……」

「あ、厳さん業火野菜炒め一つと、ビールおかわりね」

「おうよっ」

「良いんですか……というか慣れてる?」

「まあ常連だからねー……というより、自称看板娘が私の同級生なのよ。いい年して何言っているんだか」

「悪かったわね、自称看板娘で。というか貴女もいつまで一人身なのよ」

「うるさいわよ、蓮。いいわねー若くして結婚して、今じゃ二児の母でしょ? 私なんて……私なんて」

「あちゃぁ……こりゃあしばらく戻ってこないわね」

「というか束さんは今すぐ帰りたい」

「ごめんなさいね。こいつ、教え子まで巻き込むんだから……どうせこいつのおごりなんでしょ? なんでも頼んでいいわよ。この時間は人少ないし」

「えっと、じゃあ適当に……これで」

 

 適当に頼んだ料理だったけど、味は凄くおいしかった。今度また来ようと思えるぐらいには。

 あとちびっこが二人見えたけど……箒ちゃんと同じくらいか、一つ下かな?

 

「ああ、私の息子と娘よ。二人とも小学生なんだけど……宿題は終わったのかしら?」

「この年頃は、やらない方が多いんじゃないかなぁ……あ、箒ちゃんもやっているところ見てない」

「妹さん?」

「ええ……あー、心配だし帰ってみよう」

「また来てくださいねー」

 

 とりあえず、支払は佐々木がするから良いか。ちょっと小走りで帰っていく。そういえば、そろそろ英は起きたのかな?

 家に帰ると、いっくんだけが道場で素振りをしていた。箒ちゃんは……お母さんに捕まってどこかへ連れ去られていく真っ最中だった。

 

「あら束おかえり。遅かったわね」

「途中厄介なのに捕まって……お昼奢られた」

「あらそう。英君はまだ寝ているから、今のうちよ」

「何がだよッ……ところで、どうしたの?」

「説教ついでに、宿題を終わらせようかと思ってねぇ……この子ったら読書感想文とは軟弱な物できるかっとか、ええい朝顔が軟弱なのが悪いのだとか……あとは分かるわね?」

「……頑張れ箒ちゃん!」

「そんなっ助けて、助けて姉さんッ」

 

 ごめんね。さすがに束さんもさっき思い出して心配になって帰ってきたんだけど……案の定過ぎてなにも言えないんだ。

 ちなみに、それ以外の普通の宿題は束さんが研究で引きこもっている間に終わらせたらしい。

 

「あ、そうそう束は宿題終わったの?」

「束さんが宿題ごときに余計な時間を取られるわけないでしょ。夏休み始まってすぐに英と終わらせた……あ、ちーちゃん忘れてた」

「あらあら……夏休みの終わり間近に帰ってくるだろうから…………これは新学期が楽しみねぇ」

「……南無」

 

 なんだかんだで、この人が家で一番強いんじゃないだろうか? なんだか底知れない怖さがある。

 

「女ってのは、そのぐらいが一番きれいに見えるものよ」

「ッ!?」

「うふふー」

 

 心を読まれた!? いや、まさか……そんなはずないよね?

 

 ◇◇◇◇◇

 

 自分の部屋に帰ってくると、英はまだ寝息を立てて眠っている。

 今日一日疲れたけど……なんだか色々とあったなぁ…………

 

「……なんだか束さんも眠くなってきちゃった…………」

 

 ついうっかりと、自分の欲望に負ける。いやいや、これは眠いから。眠いから自分のベッドで眠るのは自然なことなのだ。だから、束さんは誘惑に負けたんじゃない。これは眠いから。

 ……ドキドキして眠れない…………なんてこともなく、むしろその安心感が私を眠りにつかせてくれる。

 よく考えたら、私も最近は寝不足が続いていたっけ……

 

 結局、その姿をお母さんに写真に撮られて、後々後悔することになってしまったのだけど。

 




たまには束視点もいいかなと。
そして再び登場原作キャラ。
佐々木先生はここまで引っ張るつもりなかったんだ。でもあの人便利すぎるんだ。

昨日変なのを見てしまった人はすいません。ミスって数話先の話を上げてしまいました。
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