なんか、起きたら束の部屋で束のベッドで寝ていた。何が起こったのかわからない。というか記憶がないのがものすごく不安。え、どういうこと!?
混乱いしているとものすごくいい笑顔の篠ノ之母が横に立っていた。それで大体わかった。
「とりあえず、僕で遊ぼうとしても無駄ですよ」
「残念ねぇ……やっぱり同じタイプじゃ考えていることもわかっちゃう?」
「……束を再起不能にしてないですよね?」
「大丈夫よぉ」
色々と底知れないんだよなぁ……なんというか怖いというか、敵に回すと恐ろしいというか……
束は……部屋の隅で縮こまっている。正直何が起こったのかわからなくなってきた……いじられまくっただけだとは思うけど……
「うふふぅ」
「……」
「今日はもう帰るわ」
「あらあら」
「……」
笑い続ける母と、無言で蹲る娘。うん、カオス過ぎる。
◇◇◇◇◇
翌日、研究成果とかの確認のため再び篠ノ之家にやってくると……あれ? なんだかいつもより静かだなぁ……門下生の声も聞こえないし、一際大きい声を出している織斑がいない。
…………なんか忘れているような……ああ、修行に連れ出されてしばらく帰ってこないんだっけ。
いかんな。疲れがたまって記憶があやふやになっている……しばらくゆっくり休もうかなぁ。
「こんにちは……何しているんですか?」
「久しぶりに、燃え上がったわよ……色々と、ね」
パタリ、と篠ノ之母は倒れた……何してたんだ?
すると束が奥から出てくる……ものすごい疲労感を背負って。
「マジで何があった」
「……親子の絆を深める、赤裸々トーク」
「むしろ親子の仲が気まずくなるだろ」
「おなかすいた―……おいしいお店見つけたから奢ってー」
「僕が奢るんかい。まあいいけど……お母さんはいいのか?」
「しばらく反省すればいいんだよ。知り合いの警察官が様子見にくるって言っていたから大丈夫大丈夫」
「警察官?」
「お父さんの友達らしいよ? 修業とかで家を空けるときは来てた」
「ふーん」
まあ僕にはあまり関係は無いか…………あ。
「できれば見つかりたくないなぁ」
「なんで? 別に人を困らせていないし、英はみんなの助けて――」
「無免許運転、器物破損、その他諸々」
「……そ、それ言ったら私なんて白騎士事件起こしているから国家反逆罪…………」
「……そう。一歩間違えれば僕ら指名手配ですから」
「…………と、とりあえずお昼食べに行こう?」
「おう」
色々と自分たちが危ない橋わたっていることに気づかされたけど、もう今更だよね……
そのまま束の案内でやってきたのは……五反田食堂?
「……お前のイメージじゃないな。誰の紹介だ?」
「佐々木」
「うわぁ納得……あの人のことだし、どうせ合コンに失敗して愚痴に付き合わされたんだろ」
「うん……もしかして経験者?」
「ああ……僕の時は屋台のラーメンに連れられた。しかも委員会の仕事とかで遅くなった時だよ」
「それはまた……」
「奢ってくれるのはいいし、紹介してくれた店もハズレが無いのは凄いんだけど……それと引き換えに愚痴に付き合わされるのがねぇ」
「一般的に見ても美人なのに焦るからいけないんだよ……ここの自称看板娘さんと同い年らしいけど。しかも箒ちゃんと同い年くらいの子が二人の子持ち。その人と同級生で友達なんだって」
「そりゃ焦るわ」
だれか知り合いでも紹介しようか……知り合いいねぇじゃん。
とりあえず店の中に入ろう。
「おじゃましまーす」
「あら昨日の……あらあら」
「なんだか居心地悪い視線が……」
今頃篠ノ之家で倒れている人と同じ匂いがする。
変にいじられる前に何か頼もう……
「束はどうするんだ?」
「うーん……チャーハンだけで良いや。あまりおなかすいていない」
「そっか。なら……業火野菜炒め定食一つ」
名前に惹かれた。なんだろう。ワクワクする。
おうよっといい声が響いてきたと思ったら、屈強な男が厨房で鍋を扱っている。ものすごい火力だ。
というか筋骨隆々だけど……結構な年のお方だよね? すごい元気そうな……世界は広い。案外いるところにはいるけど。
「昨日はアイツが迷惑かけてごめんなさいね」
「いえ大丈夫です……というかたぶん常習犯ですし」
「今度きっちり言っておくわ。教え子を巻き込むなって」
「なあ束……うなずいているところ悪いけど、僕も束もむしろ先生に迷惑かけていた側だからな?」
「…………言わないでよ」
束、保健室占領の常習犯。しかも個人的な理由で。僕、ライダー関連に巻き込んだ。
あの人はトラブルに巻き込まれる星の下に生まれたのか?
「それで……ゲネシスの完成度は?」
「あー……ごめん一、二年はかかると思う」
「いやいいよ。むしろ完成の目処が立っただけでもすごくありがたいんだ。と言うか、完成したとしても僕が使って意味があるのかな?」
「うーん……ゲネシスドライバーだと現行のロックシードとの互換性がないからねぇ」
「だよなぁ……一応、ジンバーは使えるし今のままでもいいかな?」
「ゲネシスコア自体は複製できるんだけどね」
「まあ現品があるし……なら戦極ドライバーは?」
「そっちは微妙。英に合わせて内部のデータが色々と進化しちゃっているんだよ……束さんもISには自己進化できるように色々組み込んだんだけど、それとはまた違った感じ」
「というと?」
「学習というより……植物みたいって言えばいいのかな? 英の情報とロックシードっていう栄養を吸ってどんどん成長している感じ。といっても性能が上がるというよりは……英の体の一部になろうとしているみたいな」
「…………やっぱり、危険な代物ってことなのか?」
「どうだろう? 量産型のオミット品とのデータと比べても、そういう機能は搭載されていないっぽいし……戦極ドライバーの機能じゃないんじゃない?」
「……となると、怪しいのはこれか」
左腕をさする。そこにある腕輪。元々、これがすべての始まりのようなものだ。おそらく、ゲインクロイム家にまつわるものだし、戦極博士もこの腕輪のことは知っていた。そこから黄金の果実について知ったのだろう。
なんだか知らなければいけないことが多すぎる。……いい加減、これも詳しく調べるべきか。
「言っておくけど、機械じゃないから束さんでも調べられないからね。むしろ生物系は英の方が詳しいでしょ」
「たしかに。ゲインクロイム家の本家みたいなのが残っていればなぁ……」
「やっぱり色々と綱渡りだったの?」
「最初の一年はとにかくインベスを相手に戦っただけ。ヒントとか調べることがなくなって来て手詰まりになると、次のヒントがくるってパターンだったからなぁ……本当綱渡りだわな。で、黄金の騎士の影に出会って死にかけたりもしたなぁ……」
「ちょ、それ私聞いてないッ」
「言ってなかったっけ?」
「言ってないよ……まったく」
「スマン。で、その時にホオズキエナジーを使えるようになったんだ。最初は沈黙してたし……なんで動かなかったんだろう? エネルギーがないというよりは、仮死状態みたいな感じで……」
「調べてみたけど、どこもおかしいところはないよ? 試作品だから戦極ドライバーでも使えるってだけで、エナジーロックシードそのものだし……」
「うーん……なんなんだろう? 何か違和感があるような……走馬灯っていうか父さんたちの姿を見たことだけは覚えているんだけど、あの時のことは記憶があやふやなんだよなぁ……なんていうか血を流し過ぎて現実味がなくなっていたというか」
「……わかんない。フレッシュアームズについては一つのロックシードにエネルギーをどうやってか充填したりして発動したってのは分かっているんだけど、それだけじゃ無理なんだよね」
「だよなぁ……やっぱりこの腕輪に何かあるのか…………」
なにか大事なことを一つ忘れているような気がする。
なんだろうか……この違和感。
「で、その後は?」
「後は大体お前も知っているとおりだよ。特に何かあるわけじゃないし、しいて言うのならあの変な組織が現れたことくらいか……調べはつかないけど」
「いくつか候補は見つかったけど……都市伝説レベル。束さんもこういうのには情報網がないし、コアネットワークから干渉しようとしても無駄っぽい。やっぱりブロックされちゃう」
「そっちは分かったのか?」
「うーん……たぶんロックシードを使ったんだと思う。少し実験してみたけど、ISのエネルギーはヘルヘイムの森の侵食する力の影響で色々と不都合がでちゃうというか……そもそもISのエネルギーってのは色々なものに変換できる万能エネルギーとして開発したんだけど、果実のエネルギーとぶつかるとうまく働かなくなるんだ」
「なるほどねぇ……こっちを侵食する以上、どんなエネルギーにでも変換できるって言うのが仇になったわけか。どんな形であっても侵食されてしまうと」
たとえるなら好き勝手に出口の形を変えられるのがIS。形は特定かもしれないが、出口から入って来てしまうヘルヘイムの力。入ってくるときに、無理やりにでも入りやすい形に変えられてしまうからISは他のものよりもヘルヘイムの森の力に侵食されやすいと。
「って大丈夫なのか?」
「意識みたなのはあるし、ISにとってはかなり苦しいかもしれない……それでもやっぱり機械なんだよ。決定的なダメージにはならない。人間でいうならインフルエンザレベル。苦しいし、酷いときは大変だけど……絶対に治らないわけじゃない」
「……辛いなら、胸貸すぞ」
「大丈夫。それにコアの意識までは塗り替えられないみたいだし。機械だからこそだね、IS自体がインベスみたいに変化しちゃうってことはないみたい…………ただ、コアネットワークに接続できなくなったのは……ロックシードを使用して、変なプログラムを流しているからだと思う」
「……侵食する力を利用した奴がいるのか…………あーもう、どっから手を付けるべきかなぁ。束も巻き込んで悪いな」
「大丈夫。私も自分で選んだことだし。それに、もう逃げたくはないんだ」
「……わかった。となると当面の目標は……」
「資金面と情報面の改善。戦力は何とかなると思う。むしろ資金さえ何とかなればあとはどうにでもなるかも」
「…………やっぱり金、なのか」
「世知辛いね」
世の中そんなもんである。ヒーローだって慈善だけでやっているわけじゃない。
バイトでもしようか……免許取ったら。
「そういえばさ、英」
「なんだ?」
「なんでヘルヘイムの森って言うの?」
「それは……なんでだ?」
インベスの名づけの理由は聞いたけど、ヘルヘイムの森はなんでそんな名前になったんだ?
というか世界樹の果実といい、黄金の果実……金のリンゴといい北欧神話から名付けているの多いな。
「……もしかして何か重要なところを見落としているのかも」
「重要なところ?」
「…………一度、行く必要があるな……北欧に」
「えーマジでー旅費とかどうするのー」
「……織斑の専用機開発に協力して、バイト代貰う?」
「…………それしかないか」
束は接客業とか無理だし、時間がない。僕、バイトできなくはないけど……変にしがらみができると色々あとが面倒。
「英は操縦者にかかわる、生体的な部分お願いね。私より詳しくなっているでしょ?」
「あいよ……となると今度その開発企業に行くしかないか」
「だねぇ……たしか、倉持ってところだったと思う」
やっぱりそこからどうにかしないといけないわけね……はぁ。あとはドライバーの輸送手段とか考えておかないと……
金属検査マジ怖い。
「はい、業火野菜炒め定食と炒飯です。伝票置いておきますね」
「はーい……見た目はうまそう」
「実際おいしいよ」
「どれ、一口……旨い」
なんだか食堂で会話することじゃなかったけど、とりあえずは昼ご飯を食べよう。
さすが佐々木先生の紹介。ハズレどころか大当たりである。
昼食的には大満足であった。
本作一番の敵かもしれない。資金問題。
飛行機ってかなりのお金が飛ぶのよ……距離が遠いほど、ね。
というわけで今までの簡単なおさらいと、謎の違和感。
今までの話の中で出ていることなので、主人公が言っていることの違和感に気づいた人も多いかも。