仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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三者三様の戦いを描くことができたかな?
この話は書いていて結構楽しかったです。


EP41.それぞれの戦い

 三人とも、余計な言葉は出さなかった。ただ、自分が戦う相手を見定めてそこへ向かうだけ。冠はゲネシスコアを接続し、レモンエナジーロックシードを取り出す。

 

【レモンエナジー!】

 

 千冬は雪片を展開し、ブーストをかけて一度離れていたシャーベットへ切りかかる。

 

「暮桜の初陣……参る!」

 

 束は暴走しかけていたカラットに向けて、構えていたキャノン砲を放つ。

 

「頭に血が上っていちゃ、この束さんには勝てないぜい!」

 

 三者三様の戦いが、今始まった。

 

 ◇◇◇◇◇

 

【ジンバーレモン! ハハーッ!】

 

 英はトルーパー部隊の五人へと駆け出していく、各々が熟練の兵士ではあったが、アームズの扱いに関しては英の右に出るものは存在しない。

 イチゴアームズの特性は見た目通り、忍者の様な身のこなしと、切り返しの速さ。弱点は軽さと、威力の低さ。

 

「こいつ、的確にもろい部分を突いてきやがるッ」

「陣形を乱すな! 所詮は一人、五人で連携攻撃をするんだ!」

 

 イチゴ苦無によるけん制と、無双セイバーによる斬撃。しかし、冠はそのすべてをソニックアローでいなす。まるで、周りのすべてを見ているかのようにかわす。

 時折、ソニックアローの弓を引いて相手の動きを乱すものの、相手もその連携を崩すことはない。

 

(……連携はしっかりしている。感情に身を任せないあたり訓練されている…………ナックルやカラットが例外だよなぁ……なら、各個撃破よりも――)

 

 イチゴ苦無の雨ともいうべき攻撃。それをかわし、弾き、防ぐ。

 さすがにトルーパー部隊にもいら立ちは募っていくが、慌てない。彼らもプロ。元一般人のナックル――須郷猛や元々はただの試験的なIS操縦者だったカラットとは違い、軍事訓練を受けている。

 相手の防御の崩れた瞬間を待ち続ける――そして、ついに動いた。

 

「いくぞッ!」

 

【イチゴスカッシュ!】

【イチゴオーレ!】

【イチゴスパーキング!】

【イチ! ジュウ! ヒャク! イチゴチャージ!】

 

 複数の必殺技による同時攻撃。大量のイチゴ苦無が冠に襲い掛かる。正に全方位攻撃、あらゆる軌道から迫ってくる攻撃に冠も動くことができずにそのすべてを浴びる。

 そして、その隙に後ろの下がった一人がブレードを叩く。

 

【イチゴスカッシュ!】

 

 無頼キック。どのロックシードであっても発動できるそれは、たとえジンバーアームズといえどまともに食らえば危険な技である。

 そして、冠にその一撃が迫る、その時だった。

 いや、正確にいえば無頼キックのために飛び上った時だっただろうか。

 

 

 

【シルバースパーキング!】

 

 

 

 そんな音声が流れたのは。

 

「なっ!?」

 

 トルーパーの一人は無頼キックをヒットさせることができず、腹をけられている。冠の足には青い色のオーラが凝縮されており、それはトルーパーを包み込んで大きなリンゴの形へと変化した。

 そして、そのままエネルギーを解放したことにより一時的に動けなかったトルーパーたちへ蹴り飛ばす。

 

「あぐっ!?」

「な、なぜあれだけの攻撃を喰らって――!?」

 

 トルーパーたちは見た。冠の足元に転がっている黒ずんだイチゴ苦無の数々を。

 冠は初めから避けるつもりはなかった。ダメージ覚悟で相手が攻撃をすることで生まれる隙を待っていたのだ。正にそれは肉を切らせて骨を断つ。

 

「しょ、正気か!?」

「たとえ私たちを倒しても、あとの二人が――」

「生憎だけど、僕は信じているんだよ……あの二人が絶対勝つってな。だからこれぐらいの無茶したって平気だよ」

「く、クソッ」

「それに、お前らみたいに連携がしっかりしている奴らは――一網打尽の方が良いってね!」

 

 そして、レモンエナジーロックシードをセットしたソニックアローを構える。矢にはエネルギーが充填されていき、青いリンゴに拘束されたトルーパーたちを狙っている。

 

「さぁて、ウィリアム・テルのリンゴの気持ち、味わってみるかい?」

 

 返答は待たずに、矢は放たれた。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 千冬が戦う相手にシャーベットを選んだのは勘ともいうべきものだ。

 おそらく、この場で一番の曲者はこいつだろうという野生の勘。

 

「……近接武器だけで、ここまでッ」

「まだ調子が悪い。さすがに初操縦の機体だからな、なかなかいうことを聞いてくれない」

「ッ……これが織斑千冬――日本代表第一候補にして、白騎士の操縦者か」

「流石にそれは知られているか。案外有名なのか?」

「……一般人は知らないだろう」

「まあそれはそうだな。しかし、何故こんなことをする?」

 

 シャーベットは答えない。冷徹に、何も通さない氷の瞳で千冬を睨むだけだ。

 それに対して千冬も、特に期待したわけでもなくただ剣を構えるだけだった。

 

「ふむ……まだ本調子とはいかないが、勝たせてもらおう」

「それはこっちのセリフだ……織斑千冬、単一仕様能力の力はお前も知っているはずだ」

「……何?」

 

 シャーベットのISの腰のあたりから白いガスのようなものが噴出される。そして、パキパキという嫌な音が鳴り響き始める。

 

「……私のIS、ホワイトアウトは二次移行を済ませた機体だ。素の性能は貴女のISよりも低いだろうが……これがある限り、私に負けはない」

「…………なるほど、厄介そうな力だ。だがな――私は相手が強い方が燃える」

 

 千冬の眼には闘志が宿る。千冬の心には強い叫びが生まれる。千冬の魂は今、燃え上がった。

 

「ハァアアアアアア…………」

 

 そしてそのすべてを刀へと集中させる。今、自分とISは一つだ。

 ハイパーセンサーを使用し、周囲の情報を高速で収拾する。あたりの白いのは二酸化炭素のガス――つまりドライアイスだ。パキパキという異音は周囲のものが凍る音。

 ISに対して何かジャミングでも行えるのか、相手の位置は分かり難くなっていく。そして、周囲が完全に真っ白になって見えなくなる。

 

「……」

 

 だけども千冬はうろたえない。

 信じているからだ。自分の力以上に、一番の親友と、一番のライバルが製作に協力したこの機体を。

 最初は近接武器ひとつという馬鹿げた設計だと思ったが……なるほど、こいつは私らしい機体だ。

 やるべきことは一つ。一瞬で間合いを詰め、切り伏せる。ただ一撃にそのすべてを集約する。なんだ、いつもやっていることではないか。

 まるで居合のように雪片を構えて、全神経を集中させてあたりを探る。ISのセンサーに頼れないなら、自分の勘と感覚だけで見つければいい。あとは、すべてを信じて斬り抜くだけだ。

 

「――――ッ!」

 

 一瞬、その一瞬に一気にブーストを使って距離を詰める。そして、その斬撃は空気までをも切り裂いた。

 

「あ、あがああ!?」

「……だから言っただろう。相手が強い方が燃えるのだ私は……そうなったら、手加減はできない」

 

 ◇◇◇◇◇

 

「邪魔だどけぇええええ!」

「ああもう、ウザい!」

 

 束はカラットと交戦していた。カラットのISは全距離対応型の高スペックな代物だが、器用貧乏でもある。しかし、手数だけなら随一のIS……だが束はそのすべてを防ぎきる。まるで、どんな攻撃が来るのかわかっているかのように。

 

「なんで武装しているだけのこんな女にかすり傷ひとつ負わせられないのよッ」

「そりゃ束さんは天才だからねーっていうか、ISは私が作ったのにISで勝てるわけないでしょ」

 

 束の使っているタタラはISが飛行するために使用するPICは使用できないうえに、最低限のアーマーしか展開しない代物だ。ほとんど自分の筋力しか使えないISとしては実用性皆無な代物。しかし、束はそれでもカラットを圧倒している。

 

「束さんはね、細胞レベルでオーバースペックなの。だから本当は生身でも勝てるんだけど……さすがに疲れるからね。それに、英を殺すとか言い出す奴を許せるわけないだろ」

 

 篠ノ之束は英との出会いで価値観が変化した。しかし、根元である部分は変わらない。その冷ややかな視線は以前、他人に対してしていたものだ。いや、それ以上か。

 銃弾の雨にはトリモチ弾で応戦し、剣で切られそうになれば対IS用バットでたたく。

 

「真面目にやれぇええ!」

「じゃあ、遠慮なくいくよー」

 

 束は、タンポポのロックシードを取り出し、キャノン砲に取り付ける。そして、キャノン砲はその形を変えていく。

 まるで、ダンデライナーがそのまま巨大なキャノン砲に変化したような形状に。

 

「な、なんだそれは!?」

「新開発のダンデカノン! お前らがISとロックシードを同時に使うのは分かっていたからね……対策をしないわけないだろ。おバカさん」

 

 懐からさらにヒマワリロックシードを取り出し、セットする。

 この武器はロックシードのエネルギーをISコアを使用することで任意の形、弾頭にして放つことの出来るものだ。威力自体はライダーの武装よりも劣るが、ISとインベス複数同時に相手にできる利点がある。

 

「しかもヒマワリロックシードのエネルギーで動くから、低燃費! それじゃあぶっ飛べ!」

「あ、アガアアアアアア!?」

 

 カラットは限界を超えたダメージを受け、地に落ちる。さらに、ロックシードのエネルギーを使用した武装の影響で絶対防御が乱されて、体もボロボロだった。

 ……ISも沈黙し、機能停止した。

 

「……束さんの娘を自分で撃つってのは、堪えるね……あとで治してあげるから、我慢してね」

 

 束はカラットに目を向けたまま、落ちているISに近づいていき――コアを抜き取る。丸く、淡い色をしているコアがそこにあった。

 

「……さてと、殺しはしないよ。知っていること洗いざらい吐いてもらうから」

「…………くひっ」

「?」

「くひひ、ひひ、ヒヤァアアハッハッハ!」

「な、何がおかしいの!?」

「もう、後戻りできないんだよぉ……力だ、力が欲しいんだ。そうだよ力だよ。この私に屈辱を味あわせたあの男! お前みたいなバカ女! 全部全部、力でねじ伏せてやるッ! そのためなら――この命、惜しくはない!」

 

 カラットは懐に手を入れ――カプセルのようなものを取り出した。

 その中には、禍々しい色の果実――ヘルヘイムの果実が入っていた。

 

「な、それをどうするつもり!?」

「……こうするんだよぉ…………これで私はもう人じゃなくなるし、意識なんてなくなるだろうけど――お前らを殺せるなら本望だ!」

 

 そしてカラットはその果実を口にした。

 変化は劇的だった。

 

「あ、ああ、あああああああああ!?」

 

 体中を植物が覆ったと思ったら次の瞬間には、その姿は異形の者へと変化していた。

 緑色の体に、右手は大きな爪の生えている。下半身は鈍い白色……顔はまさに獣と言うべきものに。そう、カラットはヘキジャインベスへと変貌を遂げたのだった。

 

「ガアアアア!」

「う、うそ……きゃあ!?」

 

 束はキャノン砲の腹で防御することで、致命傷はさけたものの、後ろへと吹き飛ばされてしまった。

 再び構えようとするも動揺でうまくねらえない。

 

「な、なんでこんな……あわてるなッ、アレはもう…………」

 

 その様子を離れたところから、戦っていたすべての人間が目撃した。

 当然、全員が動揺して戦いの手を休めるのだった。

 

「ウソだろ? 自分で喰いやがったのか!?」

「……撤退だ、全員散開!」

「――やべっ」

 

 気が付いたときにはもう遅かった。すでにアームズも解除されて生身の姿をさらしていたトルーパーたちは全員が脱走を開始して、姿が見えなくなっていた。

 彼らのいた場所には、強制解除の影響で外れたイチゴロックシードが複数転がっているのみである。

 

「リアルに忍者みたいな奴らだな……それよりも、今はアイツだ!」

 

 冠は駆け出す。異形の者の下へと。

 

 その一方、千冬は思わぬ事態に陥っていた。

 

「スラスターがうまく機能しない……な、何故!?」

「……どうやら、私の放出したドライアイスを吸い込んだせいみたいだね」

「な、なに!?」

「あの一瞬の加速……見事だったけど、どうやら周りの空気も急速に取り込んでしまうらしい。まあ、おかげで私は逃げられるけど――あれ、放っておくと周りの人を襲うよ?」

「ぐっ……仲間じゃないのか!?」

「仲間、だった。アレはもうインベス。ただの怪物よ」

 

 もう助からない。あのバカは。そう呟いてシャーベットは飛んで行ってしまった。

 千冬はもう追い付けないだろう。

 

「クソッ……」

 

 ここに来て思わぬ不具合が出てしまった。行動不能……こんなに悔しいことはない。

 ISを解除して怪物の方へと走り出そうと――踏みとどまった。

 視線の先には、束と冠が必死に食い止めている。そうだ、まだ終わっていない。だけど私の戦う場所はあそこじゃない。

 あの怪物相手には対抗手段がない。ISではダメなのは知っている。だからと言って、生身で戦う術は持ち合わせていない。ならばどうするか?

 

「逃げ遅れた人を探し、避難させる。今私にできることはそれだけか」

 

 千冬は次の戦いへ向かう。

 少しだけ、歯がゆい思いを胸に抱いて。

 




というわけで、さらに次回に続く。
長いなぁ……思った以上に。
50話前後とは何だったのか。

そしてついに人間のインベス化を明確に描きました。
原作鎧武の初瀬と違って、自らインベスになりましたけど……
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