仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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更新がつらい。
斬月、冬の映画出演確定おめでとう。


EP47.キレる十代

 模擬戦はつつがなく進行していた。織斑はさすがと言うか、一瞬で加速して叩き切って一気にエネルギーを削る戦法を続けているのに負ける気配がない。束の話だと、最近編み出されたという瞬時加速、イグニッションブーストという技術らしい。エネルギーの放出と取り込みを一瞬のうちに行うことで一瞬で最大速度まで加速する技能。ただ、問題点も数多いみたいだな。

 

「あれ、直線的にしか動けないんじゃないか?」

「まあまだ発展途上の技術だし。ちーちゃんだからあそこまで使いこなしているけど、まだモノにできている人は他にいないと思うよ」

「だよなぁ……」

 

 ただ、仮に織斑と冠に変身して戦ったとしても、あの技能が厄介すぎるなとは思うぐらいには脅威を感じている。当たらなければどうということはないとはよく言ったものだ。正直、攻撃を当てる前に斬られるのは間違いない。

 

「……よくあんな機動ができるな」

「まあちーちゃんだからねー、適正もSだし」

「チート過ぎるだろ……というかなんでISには適正とか、男は動かせないとかあるんだよ。束ってそういう欠点っぽいの残すの嫌いだろ――あれ?」

「やっぱり気がついちゃう?」

「……よく考えたら、お前がそういう弱点と言うか欠点にとらえられるようなポイント残すわけないよな。適正は何事にもあるし、そこはまだいいとして……」

 

 そうだ、なんで男にはコアを起動できないんだ? いや、束のことだし男でも動かす方法ぐらいは考えていそうだけど……

 

「……そういえばISについては自分もわかっていない風なこと言ってなかったか?」

「むふふー大正解」

「なるほど……元ネタ、いや原材料のレアメタルだな」

「正直恥ずかしい話だし、オフレコでね」

 

 コア自体は束が考えて作っているし、いろいろ研究もしたんだろう。でも、ISコアに自分でもわからないことがあるとするのなら――原因は元ネタがあるか、原材料からくる何かか。

 束の性格上、元ネタありなら自分の発明だって言わないし、おそらく原材料の方。

 

「ISに宿る意思みたいなのも、そこからくるんだけどね」

「単なる機械じゃ無理だとは思っていたけど……何を使ったんだよ…………まあ、いくつか予想はつくけど、インベス以外にも脅威がいるとか言わないよな?」

「それはまだわからないけど、たぶん大丈夫だよ」

「……確かに、同じ力を持つ脅威がいたとしても、ヘルヘイム由来のものに弱い可能性が高いか」

 

 そして、何の偶然かそれとも必然なのか織斑は適正が高いと。

 というか束はISをなんで作ったのか――いや、箒ちゃんが空飛びたいとかそういうこと言っただけって感じかもしれないからなぁ……

 コアもある数までしか作らないのは、原材料の都合もあるかも……

 

「……ん? 織斑は異常っていうぐらい適性が高いなら、その弟の一夏君は男でも動かせたりして……なんて冗談だけど――オイ、なんで目をそらす」

「た、束さんは何も知らないよー」

「ウソをつくな……さすがにまずいだろソレ。おい、なんでだ? なんでなんだ?」

「いやいや、束さんだっていっくんが動かすとか思ってもみなかったよ!? なんで動いているん!? というかどういうことなのか説明してほしいよ。頭に入ってくる情報量にびっくりして気絶したからその時のことを覚えていないのが幸いだったけどさぁ!?」

 

 束の話だと、ISを発表した後、白騎士事件の間の三カ月で慌ただしかった時に偶然一夏君が製作中の白騎士を動かしたことがあるらしい。幸い、織斑は見ていなかったが、色々と白騎士にも影響は残っているわ、織斑にばれないようにするが大変だわで、かなりの修羅場だったらしい。

 

「倉持技研に預けてある白騎士のコアだけどさ、アレもちーちゃんかいっくんじゃないとまともに機能してくれない頑固者になっちゃったし……ホントどうしよう。幸い、コアネットワークに接続できる時のことだったからいっくんの情報は残ってないけど……というか頑固過ぎてちーちゃんに対してもへそ曲げちゃったんだよね」

「意思持ちすぎだろ」

「心血注いだからね!」

 

 胸張って言うな。仮に一夏君のことが世間に知られたら大変だぞ……

 

「頑張って、ばれないようにしよう」

「……そうだな」

 

 そっちも対策を考えないとなぁ……

 とりあえず、試合の方に再度集中しよう。今は、知らない人ばっかり……あ、次真耶ちゃんだ。

 

「あーあの子かぁ……射撃型みたいだね」

「その道じゃ有名な選手らしいからね。クレー射撃とか」

「データを見たけど、たしかに射撃技能は凄いよ。射撃技能は」

「……なんだか含みがあるな」

「見ていればわかるよ」

 

 現れたのは、射撃型試作IS、千里に乗った真耶ちゃんと、対戦相手の――あれは、仙道工房の雷電だ。千里は射撃特化のISで、重装甲でスナイパータイプの機体。対する雷電は万能機か……突出してはいないけど、高い運動性能を持つ機体。コイルガンを装備していて、射撃戦にも強いのか……

 しかし、それにしても――あのISスーツはどうにかならないのだろうか。

 

「どこみてんの英」

「……ごめんなさい」

 

 弁解させてほしいけど、隣から聞こえる底冷えした声に反論はできなかった。

 というかスーツも元は束が……やめておこう。下手に刺激するとなにが起こるかわからない。

 

「あ、始まった」

 

 そして、真耶ちゃんはこけた――え?

 会場も一瞬の間をあけてしまい、対戦相手も唖然としている……ええ?

 

「やっぱり……緊張に弱くて、ドジっ子だって情報があったから」

「いやダメだろそれ」

 

 ええぇ……あ、撃たれた。

 ひゃうぅとかいう声が聞こえて、慌てて真耶ちゃんは飛び上がるけど、完全に相手のペースに飲まれている。

 色々と、危ない軌道を描きながら旋回しているけど、持ち直せるか微妙だ。ただ、そんな調子でも自分の撃った弾は命中しているから凄い。

 

「射撃は凄いのになぁ」

「それをもってしても余りある、ドジっ子なんだって」

「どこのノビータだよ」

 

 眼鏡も合わせてピッタリだな。

 その後も、なんとか防御力の高さで勝負は長くなっていくが、雷電の機動力が千里を上回り、接近してクロータイプの武器で切り付けることで勝利した。

 

「あちゃぁ……負けちゃったか」

「あのバカ女の会社が勝っちゃったかぁ……はぁ」

「……あーそれもあったか」

 

 正直、忘れていたかったんだが、この模擬戦は総当たり戦。シールドエネルギーなどは低く設定して、ある程度のダメージで敗北が決まる。

 そのため、長引く勝負の方が少なく、どんどん試合が消化されていく。

 

「一応、優勝候補は織斑……対抗は雷電だな」

「ちーちゃんと暮桜なら大丈夫だよ」

「それは僕もわかっている。真剣勝負なら、負けないって……でも、なんか気になるんだよなぁ……」

 

 あのお嬢様の言葉がなぁ……

 

 ◇◇◇◇◇

 

 試合はつつがなく進行した。だけど、暮桜は思った以上に苦戦を強いられている。

 試合のサイクルが短いということは、整備に時間をかけられないということだ。それだけならまだよかった。だけど、織斑は試合の時に使った瞬時加速の際、砂を取り込んでしまい、それを除去しきれずに次の試合、そのまた次の試合と連続で戦っている。

 

「流石に、これはおかしいんじゃないのかな?」

「ああ……これは裏でなんか起きているな」

 

 いくらなんでもおかしい。砂を巻き込む頻度が高い。いや、対戦相手が砂を巻き上げる行動を多く使っているのだ。地面は学校などのグラウンドに近く、砂が巻き上がりやすいのが……もしかして、狙ってやっている?

 いや、考え過ぎ――でも、やはり気になる。

 

「ちょっと、見てくる」

「あ、私も行った方が……」

「いや束が整備に参加すると物言いが入るかもしれないし、なんかあった時に困るからここで待機していてくれ」

 

 とりあえず、織斑が使っている整備室へと向かう。通路は事前に見ていたけど……少し分かり難いな。

 IDを持っているし、織斑の関係者名簿に登録されているから、警備員には怪訝な顔をされたけど問題なく目的地近くまで到着する。

 ……そこで、ある人物たちの会話を聞いた。

 

「いいんですかね……さすがに私もそれはどうかと思いますけど」

「あら? このわたくしの言うことが聞けないの? それに言う通りにすれば貴女は国家代表間違いなしよ」

「ですけどねぇ……」

 

 雷電の操縦者と、例のお嬢様――神宮寺百花だ。

 

「ですけど、賄賂までつかうことですかね」

「人聞きの悪いことを言わないでくださる? 少しお願いしただけです。それに、この戦い負けてもらっては困るんですのよ」

「男のためにここまでするかねぇ……」

「何とでもおっしゃい。勝った方が正義なのですから」

 

 ……ああ、なるほど。うん、予想はしていたけど…………さすがに、これはねぇ……

 

「――いいや、勝っても正義にはならないよ、神宮寺のお嬢様」

「ッ!? す、英様!?」

「悪いことはできないって本当なんですねー」

 

 自分でもびっくりするくらい底冷えしている声が出ている。

 なんだかんだで、こういう不正は大嫌いらしい。八百長とは……まったく、さすがに見逃せないな。

 

「先日のハッキングまでなら、まだ見逃そうとは思っていたけど、ここまでしたんだ……言い訳は聞かないよ」

「……」

 

 泣きそうで、今にも崩れ落ちそうな表情をしている。だけど、僕にはそんなことしても意味はない。

 

「えっと、肩を持つわけじゃないですけど、神宮寺家にあんまり突っかかると後が怖いですよ?」

「ああ、大丈夫……戦車だろうが、戦闘機だろうが、ISだろうが……真正面から叩き潰すよ。たとえ、軍隊だとしても」

「――もしかして、怒ってます?」

「何を当たり前のことを……結局、こういうのは誰かかが説教しないといけないんだろうね」

「あ、あはは……篠ノ之博士のお気に入りって噂は聞きましたけど――温和な人って言ったの誰だよ」

 

 雷電の操縦者は後ずさり、ちょっと涙目になっている。正々堂々戦いたがっていたし、彼女に対しては何も言うことはない。真耶ちゃんとの戦いでも、それは分かっていたし。だからこそ、賄賂とか汚い手を使っているのか核心は持てなかったから、調べるつもりはなかった。

 でも……疑惑はあったからこそ、こうして見に来てみれば――思わず、足で大きな音を鳴らしてしまう。

 

「ふぇっ!?」

「神宮寺百花、約束ってのは守らないといけない。束も今回はちゃんとルールや、過度な干渉はしないことを守って行動していた。なのに、お前はとってはいけない手段をとった」

「――――ならば、聞きます……なぜ、なぜ篠ノ之束博士と一緒にいるのですか!? あの方は――」

「白騎士事件のことを言っているのなら、無駄だよ」

「――ッ」

「証拠がないとか、そういうことを言っているんじゃない。とことんまでやるのなら、僕も怒ったりはしないし、追究したりしない。でも、君がやったのは自分ではどうにもならないから、他人に賄賂を贈り、他人の手を汚させ、自分は高みの見物をする。そういう行為だ……だから、歯ぁくいしばれ」

「――――え?」

 

 ◇◇◇◇◇

 

「えっと、英? なんかすごい不機嫌だけど?」

「ああ……大丈夫。織斑は一度ちゃんと点検するってことで試合は先送りだし、残っていた試合も仙道工房との一戦だけだったから。向こうも了承したよ」

「うん、それはいいんだけど何をしたの!?」

 

 何って……まあ女の子だし、ビンタにとどめておいた。それだけだ。

 その後、織斑の出番があるまで僕たちは客席で見ていたけど……何だか束が怖がっていたのはなんでだろうなーあっはっは。

 

 

 

 一方その頃、仙道工房控室では――

 

「……」

「えっと、お嬢様……大丈夫ですか?」

「…………ですわね」

「え?」

「人に、あそこまで本気で怒られたことは初めてですわね」

 

 顔を赤くし、目はうるんでいて……何だか表情が緩んでいる。

 雷電の操縦者がビビって腰を抜かすぐらいには恐ろしかったはずなのに、これはどういうことだ? 操縦者である彼女は首をかしげる。少なくとも、自分なら立ち直れなくなる。

 

「……あんなに、激しいの、初めて」

「いやその表現は誤解を招きますからねッ!?」

「…………ああ、英様!」

「いや何で!?」

「思えば今までわたくしに媚びへつらう輩ばかりで、ここまで本気でわたくしを叱ってくださったのはあの方が初めてッ! ああやはり、あの方がわたくしの運命のお方!」

「いや、叱ったって言うより怒っていたんですよアレ! というか間違いなく篠ノ之博士とできていますから! お嬢様がアタックしても向こうの気持ちが――」

「そんなもの、既成事実さえ作ってしまえばこっちのものですわッ!」

「ダメだッ、私にはどうすることもできないッ」

 

 こういて、英は神宮寺百花の何かを目覚めさせてしまったのである。

 雷電の操縦者が解放されるのは、自分と千冬の戦いが始まるころになってからだった。

 




サクサク行こうと思います。
そのため、大幅にIS戦闘のシーンはカット。

千冬さんがいけないんや。ほとんど一撃で倒しているんや。苦戦するイメージが浮かばないんや。

次回はガッツリ書きたいなぁ……
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