仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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千冬さんメインの話です。
ある意味、ここまで来るのに長かったなぁ……


EP48.剣客小町

 不自然な連戦だとは感じていた。だが、確証はないし負けるつもりもなかった。全力を出し切り、たとえ不利な状況になろうと勝つ。それだけだ。

 だが、いつの間にかしばらく休憩と整備をする時間を貰えた。

 

「まったく、どうなっているのか……」

 

 案外、あのバカップルが裏でなにかしたのかもな――そんなことを考えながら、織斑千冬は精神を統一させる。暮桜は予想以上の性能を見せてくれた。

 武装は雪片だけだと聞いたときは、バカなんじゃないかと思ったが、なるほど自分にとってはこっちの方が使いやすい。物理剣としての機能だけでなく、内蔵されたエネルギーケーブルにより、ビーム刀を伸ばすことができる機能があるため、見た目以上のリーチと攻撃力を持つ。そして、装備を一つに絞ることで容量を雪片に回せるので一撃必殺の攻撃力を持たせられる。

 スラスターを新規製造し、格闘戦特化としたことで今までにない機動性がある。加速力だけなら白騎士をも上回ることができた。

 

「まったく、やり過ぎじゃないのか……いや、遠距離武装を一切積んでいないからそうでもないのか」

 

 むしろ、雪片の処理のために積めないのだ。こんな際立った機体、物言いもできないか。

 あの二人がここまで読んでいたかはわからないが、自分の努力にいちゃもんをつけられるのは嫌だったから、助かったかな。

 

「さて、次は仙道工房か……まったく、束も厄介な約束をしてくれたものだ」

 

 男を取り合うのなら、自分で戦えとも思うが……技術者、後方での立ち位置である束と神宮寺百花では戦い方は私のように表に出るというものではないのだろう。だからこそ代理戦争のようになったわけだろうが……

 

「まったくいい迷惑だ……」

 

 そうは言いつつも、束が信頼しているからこそというのがわかっているため、思わず頬が緩む。

 いかんな、試合の前に気を緩めては。

 

「――ふふ」

 

 まあ、緊張するよりはマシか。真耶のようにはなりたくないしな。

 そんな感じで、しばらく瞑想しているとスタッフがかけてきた。時間か……

 

「織斑さん、準備は大丈夫ですか?」

「まってください――」

 

 端末で、整備班に連絡を取ると問題はないと伝えてきた。ならば――行こう。

 

「さあ、最後まで全力で行くぞ」

 

 暮桜に乗り込みゲートをくぐる。再起動をかけたからか、処理に時間が勝っているな……私とこいつが一つになっていくのがわかる、もう大丈夫だ。

 敵影……堂々と立っている仙道工房のIS、雷電。

 

「……疲れた様子だが大丈夫か?」

「いえ、大丈夫です……それに、こちらこそすいませんでした」

 

 なんだか疲弊しているが……気疲れのようだし、体力的なものではないのか。

 後半はプライベートチャンネルで話しかけてくる。ふむ、予想はつくが……今はいいだろう。

 

「それはもう解決したことか?」

「……はい」

「ならばいい。今は全力でこい……謝罪や、手心などいらぬ。全力でかかってきてくれ……お前が、少しでも悪いと思っているのならな」

「……いきます」

 

 空気が変わる。今までの、気を抜いたものではなく――戦いのソレへ。

 カウントが開始され、戦いの火ぶたは――切られた。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 千冬は、一瞬で間合いを詰めた。瞬時加速。最近になって編み出された技術であるそれは、使用された際の対策がまだ少ない。しかし、訓練を積んだものならば、その特性を十分に理解している。

 

「――やはり、かわすかッ」

「当然! こっちだって負けるつもりはありませんよ!」

 

 雷電の特徴は万能性。暮桜が一本に際立った機体だというのなら、雷電は際立ったものはないが、できないことはない機体。人格に難はあるが、神宮寺百花も天才に近しい存在。彼女は効率よくあらゆる手段を搭載するために、機体に特殊な光ファイバーを貼り巡らせた。それにより、今までのISにはない複数の装備を待機させ、展開させることに成功した。

 

「行きますッ!」

 

 さらに操縦者である笹原かおりは雷電の性能をカタログスペック以上に引き出している。本来なら、展開するのに一瞬の間があるのだが、笹原はそれを覆した。

 かわしたのと同時に両腕にマシンガンを展開し、照準を合わせている。千冬も、さすがにまずいと思い旋回してかわした。

 

「やぁああ!」

「――ッ」

 

 ブーストをかけ、接近する雷電。暮桜の防御力は高いが……真耶も止めをさされたクロー型の武器、それをすでにかまえていた。

 一瞬で、武装が切り替わることがここまで厄介だとは思わなかった。千冬は、状況を冷静に判断する。PICを使い、足場をイメージして歩法にてかわす。雪片を当て、受け流し、相手の後ろへと。

 

「武道系はこれだから厄介なのよねッ」

 

 今までの篠ノ之道場での修業が活きている。自分とISが一体である感覚があるからこそ、こうやって今までの積み重ねが活きている。

 刀を構えて、相手の呼吸をはかる。空中だろうと、地上だろうと関係ない……相手の隙を見つけ、斬る。単純明快。ただ、それだけだ。

 

「――ちょっと、本気でいこうかな」

「――ならば、私も全力で応えよう……」

 

 居合のように、雪片を腰に当てる……目を瞑り、センサーを聴覚にのみ集中させる。

 

「――――いくわよ」

 

 対するかおりも、武装をしまいブースターに集中する。発動準備状態に止めて、武装を展開直前状態で待機させる。頭の中で、どの順番で発動すればいいのかシミュレートしていき――勝利への方程式をくみ上げていく。

 そして、動いた。

 

「ハアアアアアアアアアアアア!」

 

 瞬時加速は使えないが、それ故に直線的ではなく三日月の様な、曲がった軌道を描いた雷電。えぐるように斜め下からクローを突きつける。

 

「遅いッ!」

 

 しかし、千冬も体を回転させて受け流しながら、蹴りを放つ――それも、盾で受け止められ、蹴り飛ばしたところに雷電はいない。

 すでに両手にマシンガンを展開し、狙いをつけている。

 

「ハアッ!」

 

 放たれた銃弾は――すべて切り伏せられた。

 

「――ッ、なら!」

 

 再びブーストをかけて、爆弾を投下して上へと飛んでいく。だが、千冬は食らいついてきた。勝負は攻撃を狙っていく形から、お互いにスピードを出したレースの様相にかわる。実際は、シールドエネルギーを削りあうことで勝敗を決めるため、お互いに隙を伺うが――ドッグファイトは続いた。

 時折ぶつかり合うものの、決定打には至らない。

 

「――ッ」

 

 その時、急に止まった雷電は――巨大なバズーカを展開していた。通常、武装が大きいほど展開には時間がかかるのにそんなことをみじんも感じさせないほど、一瞬の出来事であった。

 そして砲弾が放たれた。

 

「雪片――ゆくぞ」

 

 しかし千冬は慌てなかった。会場が騒然となる中、彼女は真正面から飛び込んだのだ。

 皆、言葉を失う。それでも千冬は止まらない。そして――

 

「なっ!? 嘘でしょう!?」

 

 ――砲弾を叩き切った。きれいに真っ二つに分かれた砲弾は、千冬のはるか後方で爆発した――いや、千冬が切った場所で爆発したのだ。千冬は切ったと同時に瞬時加速で間合いを詰めてきたのだ。

 それはすなわち、自分の懐に入られたということ。すぐさまクローを右手に展開するが、手の甲の部分を雪片の柄で叩かれてしまい、腕がはじかれた。

 マズイと思ったときには遅かった。雪片の刀身が光を帯び、その一撃のもとに叩き伏せられた。何とかよけようと、体をよじったおかげでまだ動けたが、動揺したことで次の行動を頭に浮かべることができなかった。

 

「まさか、二撃必要になるとは――だが、この勝負、私の勝ちだッ!」

 

 続いて放たれたのは、横なぎの一閃。今度こそ、勝敗は決した。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 ピットに戻り、暮桜から降りる。あまりダメージは食らっていないが……ここまで苦戦するとは。一撃で決めるつもりだったが、慢心はいけないな。反省せねば。

 速度とエネルギー刃の威力ブーストがあってこその一撃必殺。まだISの性能が低いから一撃で決めれていたが、今度からはこううまくはいかない……

 

「課題も多いな……さて、まだ先は長い…………」

 

 気合を入れなければな。

 その後、閉会式を行いそれぞれが帰路についた。端末を見ると、束から家で祝杯を挙げるとメールが入っていたが……もう帰ったのか? 少し寂しい気もするが……

 

「英様ー! 英様はどこですかー!」

 

 ああ、アレか。

 とりあえず帰る準備をし、ついでに真耶も引っ張って家に向かうことにする。

 

「せ、先輩力強すぎですー……というか無様に負けた私が一緒に行ってもいいんでしょうか?」

「構いやしないさ、パーティーというのは人が多い方が楽しいものだ」

 

 束が昔のままだったら、こういうこともできなかったかもしれないがな。

 暮桜は再調整をするために倉持に預け、私と真耶は共にタクシーに乗り込み、家へと向かう。

 そういえば……あの二人はどうやって帰ったのだ?

 二輪の免許を取得したのは知っているが、二人とも持っていなかったように思うし……束がまた何か作ったのだろうか。いや、それが一番ありうるな。

 家に到着し、玄関を開けると――

 

「千冬姉! 優勝おめでとう!」

「――ああ、ありがとう一夏」

 

 ――こういうのも、悪くない。

 

 

 柳韻さんと奥さんがねぎらってくれて、一夏が笑いかけてきてくれて、束も笑いかけてくれる。最近じゃ、面白い後輩もできた。それに、一番のライバルが料理を作っているところを見ると、気が抜けるがなんだか安心もするのだ。

 

「お疲れ様」

「ふむ、将来は主夫か?」

「……今日は見逃す。あとで覚えてろ」

「今度は私が勝さ」

 

 こういう日常が、いつまでも続けばいいなと柄にもなく思ってしまう。

 その後は色々と大変だった。まだ正式に決まったわけでもないというのに、門下生たちが国家代表おめでとうと言ってくるし、真耶も感極まって泣き出す始末……一夏、たしかに女性が泣いていたら助けろとは言ったが、これは違うからな。だから真耶も顔を赤らめるな。

 

「せ、先輩怖すぎます……というかさすがに小学生に手を出したりしませんってッ」

「言ったな? 言質とったからな」

「……は、蜂矢さん助けてください」

「…………ネットでは騒がれているんだよ、ドジっ子真耶たんって」

「ウソだッ!?」

「いやマジで……頑張れ」

「うわああああああん!?」

 

 まったく、しょうがない奴だ……と、唐揚げをテーブルに置く束が目に入った。まて、まさかとは思うが……

 

「束、それお前が作ったのか?」

「そうだけど……どうしたのちーちゃん、目を見ひらいたりして」

「……」

 

 おもむろに、一つとって口に入れる――う、うまい。

 

「……負けたッ」

「流石にちーちゃんにだけは負けないからねッ!? っていうかちーちゃんが料理で他人に勝てるわけが右腕がねじれるように痛いっていうかねじれてるよッ!?」

 

 おっと、いかんいかん。思わず雑巾を絞ってしまった。気をつけねば。

 束がひどいやとか言っているが、そんなことは私には関係ない。……ふんだ、どうせ私は家事全般苦手だ。

 

「お前はすぐいじけて……」

「うるさいリア充。いつも三人一緒に遊んだあの頃を忘れたのかッ」

「いやそんな頃一切なかっただろ。というか三人一緒にいるってのも稀だろうが」

「……そういえば、そうだったな」

 

 二人一緒のパターンはあれど、三人が一緒にいることはあまりなかったように思う。三人一緒に遊ぶなど一度もなかったような……あれ?

 必死に思い出そうとするが……そもそも、私は普通に遊びにいった記憶がない。

 

「一夏君、ヘルプ」

「どうしたんだ、英のにーちゃん」

「……織斑にプレゼントあるんだろ?」

「あ、そうだった!」

 

 ……そ、そんな話聞いても元気になんてならないんだからなッ!

 

「言っておくけど、ここにいる人全員お前がラノベ愛読者だって知っているからな」

「え?」

 

 真耶にはばれていないと思って……なんで目をそらす。

 

「すいません、先輩。恵さんが教えてくれて……」

「さ、佐々木先生ー!?」

「呼んだー?」

「いたんですか!?」

 

 いや、なんでいるのだ!?

 

「だって、真耶ちゃんの保護者一応私だしー。いないわけないじゃない!」

「アルコール臭いですよッ! どれだけ飲んだんですか!」

「まだまだ序の口よーそれに、将来千冬ちゃんだって飲むって絶対!」

「そんなわけないですッ」

 

 しかし、この時の私は知らなかった。まさか数年後本当にそうなるとは……

 そして楽しかったパーティーもいつの間にかお開きになった。

 先生が飲み過ぎて大変だったり、真耶が飲まされて泣き出したり、一夏と箒は小さいからすぐに眠ったが……柳韻さんたちは後片付けをして、すでに帰った。先生と真耶は家がわからないため泊めることになったが……明日、どうするか……

 それはまた明日考えるとして、まだあと二人ここに残っている。

 

「ちーちゃん、本当お疲れ様」

「ああ……しかし気の早いものだな」

「まあ優勝したし、確定でしょ」

「……そうだと、いいな」

「大丈夫だろ。織斑無双だったし」

「ふふ、どうだ? いまから一戦」

「勘弁してくれ」

「……一つ聞きたい。自分の気持ちに気づいていながら、何故前に進まないんだ?」

 

 どうしても、そこだけがわからない。この二人は分かっていながら足踏みしているように思う。

 はたして、それは正しいことなのか、私にはわからない。野暮だとは思うが、この二人に関しては私もどうしても聞きたかった。

 

「……けじめをつけないといけないから、かな」

「ちーちゃんにだって、いっくんに言っていないことはあるんでしょ。たとえば……」

 

 言われなくてもわかっている。ああ、一夏には両親のことを言っていないし、言うつもりもない。

 踏ん切りがつかないというのもあるし、言うべきではないとも思う。

 

「なるほど、私に対しても言えないことか」

「うん。でも心配しないで。ただのけじめだし……今作っている物が完成したころにはちゃんとしようかなって思うんだ」

「まだ何か作っているのか……ISに関わることか?」

「うーん、間接的というか、直接的ではないというか……とりあえずIS関連の技術ではないね」

「そうか……蜂矢は知っているんだな」

「というか、僕から頼んだみたいなもんだし。僕も色々やっているんだけどね……これから、世界は劇的に変化を続ける。織斑は、ここを守れよ」

 

 蜂矢の言うこことは、この家……一夏や大切な人たちのことを言っているのだろう。この二人が何を考えているのかわからないが、そう悪いことではないはずだ。だからこそ、こう言わせてもらう。

 

「何を言っているんだ。お前たちも、ここに入っているだろ」

「――はは、一本取られたわ……ありがとうな、千冬」

「当然だろ、英」

 

 どんなに親しい人でも言えないことはあるし、だからこそ巻き込めないこともある。

 それでも、何のために戦うのとか、誰を守りたいとかは自分で決めることなのさ。

 空を見上げると、星が輝いている。なんだか、一つ大きくなれた。そんな気がした。

 




ってことで、ついに名前を呼ぶ。
長かったよ。甘い雰囲気ではなく、なおかつ良い感じで呼ばせるのに色々考えさせられたけど……もうここしかないなって感じで。
ここで出来なかったら、作中で数年後になっていた。

ついに暮桜誕生編も終わり、ようやく北欧編に突入だ!

……そろそろ、回収していない小ネタとかが心配になってきたので自分でも読み直し作業中。
あのネタ、このネタ、どんどん回収しないと……
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