仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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序盤はサクサク進めたいなぁ。


EP05.日常と非日常

 いつの間にか空は赤くなっていて、夕日が沈み始めていた。あれから一週間。特に怪物が現れたり、変わったこともなく僕はいつも通りの日常を過ごしていた。

 今日は家にある辞書だけでは資料を翻訳しにくかったので図書館に来ている。作業は結局あまりはかどらなかったのだが。

 

「そろそろ帰って夕飯の準備しないとなぁ……どうせ一人暮らしだし、無理に早く帰る必要はないけど」

「君は困らなくても、図書館はこまるんだけどなぁ」

「司書さん、お疲れさまです」

「うん、お疲れじゃなくてね、そろそろ閉館時間だからね」

 

 そういえば、そうだった。さすがに他の人に迷惑をかけるわけにもいかず、僕は家へと帰る。

 商店街によってコロッケでも買おうかと思い、歩き出したのはいいものの、手掛かりがあまり増えないこの現状に少し苛立っている自分気が付いた。そもそも、何を目的にすればいいのか自体よくわかっていない。

 父の死の真相を確かめればいいのか?

 怪物の出てくる元凶を止めればいいのか?

 それともこの腕輪のことを調べればいいのか?

 結局のところ、自分が何をすればいいのかわからないのだ。今は目の前にある問題を片付ければいいのだから考えないようにしていただけ。翻訳を進めても、戦極ドライバーやロックシードの機能、各部パーツの名称の調整などしかわからない。ドライバー内部に保存された情報を見ようにも、専用の端末を作らないといけないし、プログラミングにも詳しくない自分では手の出しようもない。

 しかもロックシードの一つが完成していなかったらしく、データ上も未完成であるスイカロックシードが使えないのだ……設計図を見た限り、強力そうだからあれば楽だったのに。

 

「おっちゃん、コロッケ二つ」

「おお! 久しぶりだね英君。お父さんは元気かね?」

「……母さんと元気にやっていると思います」

「えっと、なんか悪いこと聞いたかな」

「すいません、ちょっと調べ物が多くて」

 

 思わず、肉屋の店主に嫌味を言ってしまった。母が死んでいることは商店街の人なら大体知っている。この返しで父さんがどうなったかもわかってしまうだろう。

 誰かを守るために戦うと言っておきながら、こんな嫌味な自分が嫌になる。

 

「なんか、目の下にクマが凄いよ? ちゃんと休んでいるかい?」

「大丈夫です……睡眠時間は前と変わりませんよ」

 

 コロッケをもって家に帰る。ただそれだけなのに、今日はなぜか足が重くなる。目の前がぼやけてきた。自分でもどうすればいいのかわからない。なんかもう、疲れてきてしまった。

 そんな時だった、近くのゴミ捨て場だろうか? 見慣れたピンク頭が見える。

 篠ノ之が壊れたパソコンとか車の部品とかを漁っている……見た目が美少女なのになぜこうもやることなすことぶっ飛んでいるのだろう?

 親に対しても、親であるという認識だけで愛情は無いとも聞いたことがある。自分の知り合いに含める範囲がひどく狭い人物であるが、彼女には迷いがないようにも見える。

 きっとそれは、僕にとってうらやましいことなのだろう。何故だか、目が離せなかった。やっていることはてんでわからないがその目は希望に輝いているようにも見える。

 

「……そうだよな、がむしゃらでもいいからやってみなくちゃ」

 

 何かが変わるわけじゃないかもしれない。でも、何もしないのなら絶対に変わらない。

 何かをしたいのなら、何かを変えたいのなら自分から動かなければいけないのだ。

 きっと彼女は何かしたいことがあるのだろう。泥やオイルまみれになってまでもしたい何かが。

 

「篠ノ之ー」

「あん? ねえどっか行ってくれない? 正直話しかけられると憂鬱――「これ、お礼にやるよ」――へ?」

「じゃあまた学校でなー!」

「…………ち、ちーちゃん大変だ明日は隕石だぁああああ!?」

 

 ずいぶんと失礼な叫び声が聞こえた気もするが、おかげで目が覚めた。コロッケを篠ノ之に渡して、僕は家に向かって走り出した。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 情報ごと、資料をまとめる。翻訳は要点だけをすでに抜き出してあるため、あとはあの怪物の情報だけが足りない。どうやら、父さんたちもあの怪物については知らなかったらしい。

 しかし、気になる言葉が出てきた。

 

「……金のリンゴ、黄金の果実か」

 

 金のリンゴロックシードと銀のリンゴロックシード。黄金の果実と呼ばれる物から生み出されたロックシードの雛形。金のリンゴは黄金の果実から直接作ったらしいが、銀のリンゴは金のリンゴの研究成果から作られたものらしい。

 他のロックシードはさらに研究をしていき生まれたものらしいが……気になるのはやはり金のリンゴ。

 

「あの夢、間違いなく金のリンゴの鎧だった」

 

 黄金の騎士、銀のリンゴと同じ形状の鎧。類似点が多すぎる。僕の腕輪に科学では説明できない力があったことからも、あの夢をただの夢で断じることができなくなってきた。

 あの炎の中にいた黄金の騎士、彼に出会うことができれば何か解決するのだろうか……それとも、あの騎士が元凶なのか?

 

「本当、わからないことだらけだけど、ギアナ高地って……さすがに旅費と時間がないし、調べるなら機材もいるし、今すぐ行くってわけにもいかないよな」

 

 そもそも中学生が保護者もつけずに一人で海外まで行くこと自体無理である。

 結局のところ、日本でできることを調べるしかないのだ。

 

「って、そうだよクラックを調べればいいんじゃん」

 

 アーマーを出す時のクラックは侵入不可らしいが、怪物が出てくるときのクラックなら入れるのではないのか? となると当面の方針は……

 

「何も変わらず、かぁ……怪物が現れたら戦って、クラックに入れるか試すことか」

 

 しかし、帰ってくる方法を確立しないといけないな。そのために、ロックビークルをもう一つ欲しい。クラックの向こう側については調査段階だったらしく、行き来のためにロックビークルを使用していたらしい。しかし、僕のサクラハリケーンは特殊な改造を施されていて、その機能をオミットされたらしい。前回は助かったけど、今回はちょっと困った。

 

「一週間で手に入ったロックシードも、ヒマワリが3つ……クルミが一つ。正直心もとない」

 

 そろそろ林間学校も始まるし、遠距離攻撃に特化しているブドウロックシードが欲しいところだが……ないものねだりはできないか。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 あっという間に、林間学校である。今日まで怪物が現れることはなかったが、正直新しいロックシードも手に入らなかったし、資料もめぼしい情報はなかった。

 結局受け身になるしかないのだが……今日はまずこの状況を何とかしなければいけないだろう。

 

「フシャー!」

「束、落ち着け……アレはこいつの気の迷いなんだ。だから何も起こらない」

「織斑もひどいこと言っているからなオイ」

 

 この前コロッケを上げたことが彼女の警戒心を最大まで高めたらしい。篠ノ之にコロッケを上げたくらいでそこまで警戒しなくてもいいと思うんだけど?

 

「束は今まで人から食べ物を奪ったことはあれど、貰ったことは一度もない」

「ああうん、そこまでボッチ街道まっしぐらだとは思わなかった。さすがに小さいころに飴玉を貰ったこととかは?」

「……」

「ああうん、無いんだね」

 

 予想以上に人とのかかわりを避けている女であった。一応、学校に来るレベルまで矯正した織斑は凄いと思う。というか林間学校にこさせるとかどういう魔法を使ったのだろう……まあ、そのおかげでなぜかこの二人と一緒の班にさせられたわけだが。

 僕もコミュニケーションが取れるわけではないのだが。

 

「それよりも三人という少数だからな。食事の作業の分担を今のうちに決めておくぞ。束が話し合いに参加しなかったからまだ決まっていなかったんだ。まず、カレーならまかせろ」

「いや料理は僕がやるよ」

「……なら私は洗い物を」

「それは私がやるよちーちゃん」

「…………」

 

 この時だけは僕と篠ノ之の心が一つになった。家事、料理など教えてきた僕だが…………織斑の不器用さは予想以上だった。料理は適当すぎてカレーしか作れない。しかも、50点レベル。メシマズならヒドイものができ、普通に料理できる人なら70点は約束されているカレーでである。中途半端なカレーほど救いのないものもない。

 しかも、皿洗いなどさせたらどうなるか……生活指導の先生に怒られたくはないのだ。あの人は全世界チャンピオンだったのかというぐらいの筋肉信者である。篠ノ之の防御もぶち抜く恐ろしいお方だ。

 さすがに寿命を削りたくない篠ノ之も自分から手伝うという始末である。まあ、皿を全部割られたらたまったものではない。プラスチック製だろうと割るのが織斑という女である。誰にだって欠点はある。それを思い出させてくれる。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 バスから降りて、空気が違うなぁと思いつつ……レクリエーションは実質自由時間でみんな好き勝手に遊んでいるだけだし、どうするかなぁなんて考えるが……そうも言っていられなくなった。

 

「まさか、こんな場所に来てまでクラックを見つけるとか」

 

 しかもすぐに閉じないで開きっぱなしのクラックである。思わぬタイミングで手掛かりを見つけたものだが……今はみんながいる。この日常に戻るか、この先の非日常に足を踏み入れるか。

 

「……腕輪は熱いけど、すごく熱いわけじゃない。あの怪物に反応しているのだとしたら、クラックの先にいるのか」

 

 クラックに反応しているものかと思ったが、どうやらそうではないらしい。とりあえず、ドライバーをつける。そして、足を一歩踏み出した。

 もしクラックが閉じたらすぐに帰ってこられるかわからない。とりあえず、クラックのすぐ近くから動かないで、今調べられることを調べた方が良いだろう。

 

「なんだ、この森……」

 

 クラックの向こう側に森が広がっているのは見えていたが、どの植物も地球上のものとは思えないほど、禍々しい。なにか、見てはいけないような気分になってくる。

 そして、あたりには禍々しい色の果実がなっている。形は、僕の持っている木になるものに似ているが、なぜだろう……この実には嫌悪感を抱いてしまう。もしかして、父さんの資料にあった別の種類の木になるという実なのだろうか?

 おもむろに手に取ってみると、ロックシードに変化した。ドングリロックシードだが、この果実もロックシードの素になるのだというのが証明された。

 

「そろそろ、戻った方がいいかな?」

 

 クラックを見ると、若干不安定になってきたのか揺らぎ始めていた。すぐに元ンお場所に戻るとすぐにクラックが閉じた。

 危ないところだったが、一つ収穫があっただけでもいいだろう。

 

「ん? なんでこっち側にも果実が」

 

 クラックの開いていた場所を見ると、あの果実がこちら側に生えていた。長時間クラックが開いていて、こっち側に種が入った? でもそこまで長時間クラックが開いているのだろうか……異常な成長速度で成長したとでもいうのだろうか?

 とその時、果実に一匹のリスが向っているのが見えた。そして、リスは果実を見た瞬間何かに取りつかれるかのように果実を食べ始めて――

 

「え……うそだろ?」

 

 ――リスは怪物――インベス――へと変化した。白い色で、顔はお面のような感じだが、人型で僕と同じくらいの大きさだ。まさか、あの怪物は果実を食べることで変化した生き物ってこと?

 

「と、とにかくまずはこいつを倒す!」

 

 考えるのはあとだ、そう思ってロックシードを取り出そうとするが怪物はいきなり襲い掛かってきて、僕は吹き飛ばされてしまった。

 その時、手に持っていたドングリロックシードを落としてしまうという失態を犯して。

 

「グッ……とりあえず、これで!」

 

【シルバー!】

 

 いつもの通り、銀のリンゴ。すぐさまドライバーにセットし、ブレードを動かす。頭上に開いたクラックから鎧が下りてくる。二度目の戦いから何度も練習と検証のためにドライバーを使用していた。慣れた手つきで僕は変身を完了する。

 

【シルバーアームズ! 白銀ニューステージ!】

 

「とっとと終わらせて、みんなのところに戻らないと……でりゃぁああああああああ!」

「グギャァア!?」

 

 どうやら、この白い怪物は今まで戦った二体よりも弱いらしく、簡単に吹き飛ばされた。

 これならすぐに終わると思い、止めを刺そうとするが……その油断がいけなかった。

 

「え?」

 

 最初は信じられなかった。怪物は僕が落したドングリロックシードを食べ始めたのだ。そして、怪物はその姿を変化させていく。

 体はより大きく、スマートに。顔は肥大化し、まるで龍のようになっていく。

 色は深い緑色。だけど、その皮膚はまるで金属のような鈍い光沢を放っている。

 

「何だかわからないけど、やることは変わらない!」

【シルバー! オーレ!】

 

 ブレードを二回動かし、杖に青い炎をまとわせる。まるで、薙刀のようになったそれは強力な斬撃として敵を切り刻む……はずだった。

 

「ガァア!」

「はじ、かれたっ!?」

 

 怪物――セイリュウインベス――は今までの敵とは違い、強固な防御力を持っていた。その皮膚は本当に金属のようだ。

 そして、その口に光が集まっている。咄嗟に横によけるが先ほどまでいた場所は燃えている。まさに怪物という言葉が似合うだろう。どこの怪獣映画だというのだか、口から炎を吐き出すとは。

 

「どうする、アイツの防御を抜けるには……斬撃じゃダメだ。打撃、そうだ!」

 

 クルミロックシードを取り出し、銀のリンゴと取り換える。

 杖を相手に投げつけて攻撃を食らわないようにしておくのを忘れずに。アームズの交換に大きな隙が生まれるのを理解したとき、その対策として考えた方法だ。

 そして、ブレードを動かす。

 

【クルミアームズ! ミスターナックルマン!】

 

 クルミアームズ、専用武器はクルミボンバー……巨大なグローブだ。そう、巨大な拳という打撃武器。

 みんなのいるところにこいつを行かせてはならない。左手で怪物の爪から繰り出される斬撃をはじき、右手で腹に一発入れる。

 

「ガァ!?」

「よしっ!」

 

 効果はあった。再び左手で同じ場所に拳を叩き込む。ひるんだ隙に、もう一度、さらにもう一度、怪物が耐え切れなくなったのか膝をつき、口に光をため込む。しかし、その攻撃には若干の隙があった。

 その隙を逃さず、僕はブレードを一回動かす。

 

【クルミスカッシュ!】

 

「食らえ! 無頼キック!!」

 

 飛び上がり、右足にまとったロックシードのエネルギーをキックで叩き込む。どのロックシードでも発動できる必殺技、無頼キック。

 怪物はしばらく沈黙したかと思ったが、すぐに爆散した。

 

「……ふぅ」

 

 変身を解いて、残った果実を全部もぎ取る。戦いで燃えたのか残っていたのは一つ……パインロックシードになった一つのみだった。

 パインロックシードをしまい、みんなのいる場所に戻る。時計を見るとそろそろレクリエーションが終わる時間だ。

 急いで戻り、誰にもばれずに済んだ。その後、先生の話を聞いたのち、カレーを作り始めるのだった。

 

 その日は男女に分かれて部屋に行き、就寝するだけだった。

 眠気が強くなり、すぐに眠りについたが……あの果実と怪物の関係性に、嫌な予感が止まらなかった。

 




主人公はまだ子供、悩むときは悩むし、解決するときは意外とあっさりしている。
所有ロックシードとか書いた方が良いのか作者も悩んでいる。

ちなみに束さんは千冬の料理の毒見を以下略。
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