仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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祝50話! しかもいい感じにクリスマスの話だぜ!


EP50.ホワイトクリスマス

 雪の降る夜、僕と束は町を歩いていた。

 

「雪降ってよかったね」

「なー……ホワイトクリスマスとはベタだけど」

 

 クリスマスイブ。雪がちょうどいい具合に降っていて今年は恵まれた。

 例年より冷えるから豪雪かなと思っていたけど、このぐらいで良かったよ。

 周りを見ると……うん、何も言うまい。自分たちも同じように見えているだろうし。

 

「今年は無事に新年を迎えられそうでよかったね」

「そーだなー……目を背けたい問題もたくさんあるわけですけど」

「なんか、ごめん」

 

 ふふふ、レヴィインベスや他にも色々とキツイものがあるんだよ。量産型ソニックアローとドライバーの生産ラインは確保できそうだし、対策もとれてきたんだけど……海中にはまだ未発見のインベスがいそうなんだよな……

 いや、海中だけじゃなくてこの際UMAとかも調べた方が良いかもしれん。

 

「そういえばちーちゃんは修羅場だったね」

「年末年始は忙しくなりそうだったな……一夏君が心配してたけど」

 

 国家代表に選ばれたと言っても、まだ他の候補生が実力を伸ばしてきている現状……国内でタイトル防衛みたいなことしているんだからなぁ……

 一夏君と言えば、どうやったら自分も強くなれるか聞かれたな……姉を守れるぐらい強い人になりたい、か。

 

「……柄にもなく説教しちゃったんだよね」

「英、アレは束さんもどうかと思うよ?」

「そうなんだよな……」

 

 力だけを求めても、待っているのは自分だけじゃなく周りも含めた破滅だけ。一夏君はそうならないと思うけど、一言だけ言ってしまった。

 ――守るのに、戦う力はいるのか? って。

 

「たぶん、深層心理に何かあるんだろう……一夏君の覚えていない部分の話だろうし、僕も深くは突っ込めない。でも……一夏君みたいなタイプは望む望まないにかかわらず力を手にするだろうけどね」

「力に溺れるか、使いこなすかはわからないけどねー」

「大丈夫だろ。織斑千冬の弟だぞ」

 

 むしろ、芯の部分は千冬よりも強い。しなやかで、吸収力が高く、折れない。まあ鈍感なのが玉に瑕なんだけどね。

 少年はヒーローに憧れるものだ。今はまだ、彼の気持ちは憧れを脱していない。だけども、いつまでもそうだとは限らない。いつか、その時が来るのだろう……

 

「その時は、先輩として恥ずかしくないところ見せねーと」

「……ところで英、独り言恥ずかしくない?」

「うるさいよっ」

 

 人が決めているときに全くもってけしからん。

 

「はぁ……あと一ついい?」

「……なんだよ」

「なんで、結構砕けたしゃべり方なのに一人称僕なの?」

「――」

「え? なんでそんなに怖い顔するんだよ」

「…………変、身」

「待って待って!? なんで!?」

「それだけは聞いてはいけない」

「あ、うん……なんかごめん」

 

 それだけは言えないんだ。それだけは。

 

「ところでさぁ、あてもなく歩いているわけだけど……どこに行くか決まっているの?」

「とりあえずご飯食べに行こうかと……どの店も混んでいるっぽいからなぁ」

「そりゃクリスマスイブだからね。束さん的には、なんで日本のクリスマスはカップルのイベントなんだろうねって思うけど」

「そりゃ宗教観がごっちゃだから。宗教的な行事は網羅するくせに宗教観薄いしね。稀有な国だよやっぱ」

「……ごった煮国家」

「間違いじゃない。まあ、最近は海外も毒されている人増えたけど」

「はっはっは、劇物じゃないんだから」

 

 あながち、間違いじゃないんだけどね……っていうか、ISを使って世界を変えようとした人とは思えない発言だなオイ。

 それを言うなら、背中押した君も同じでしょって? 知ってるよ。

 

「……わかっていると思うけど、傍から見たら僕らも周りの人と同じように見えているんだからな?」

「いやん」

「…………」

「ごめん、謝るからその悲しい目はやめて」

 

 空気にのまれたか……町中ピンクだし。

 束も僕も一応は変装しているけど……僕も政府に口利きしているから知っている人に見つかると厄介だし。たとえば、何を考えたのかサンタ大作戦とか企画した総理のせいでトナカイの格好をしてサンタを乗せたソリを引いて町中を爆走している更識家の人たちとか。おい、隠密はどうした。

 

「……ねえ英?」

「言うな。僕たちは何も見なかった。手伝わされたくないのなら見て見ぬふりをしろ」

「うん……総理は未来に生きているね」

「…………さすがにレヴィインベスだけじゃなくて他にもいろいろいる可能性を知って、疲れちゃったんだろうな……」

「……ああ、そういえばあの人私が白騎士事件起こしたあたりから…………色々と混乱を止めようとしていたんだっけ」

「今度、菓子折りでも持っていこう」

「うん」

 

 思えば束ともども迷惑かけすぎたなぁ……捕まらないのは単に捕まった時点で世界が詰む可能性があるからだけど。

 色々な意味で、僕たちは綱渡りな立ち位置にいるのである。捕まえるよりも、放し飼い状態の方が利益も入るし、印象もいいからってのもあるんだろうけど……腫れ物に触りたくないだけだったりして。

 束の白騎士事件に始まり、インベスの被害とかもあったし、世界規模で色々変わるのに中心がどっちも日本。なのに以前と変わらぬほどに平和な風景が……さすがカオス国家。

 ああ、最近は色々と世界規模で滅亡の可能性あるよ? まさか冗談にならないとは誰も思ってなかったわけで……

 

「……結局さ、英って最後はどうしたいの?」

「最後か……最初はさ、父さんが残したものとか色々と知りたかったってだけだったよ」

 

 なんだかんだで、色々知ってしまって引き返せなくなってきた。いや、自分から足突っ込んだからそれ自体はいいんだ。

 でも……どんどん何とかしないといけないなって思ってきて、束や色々な人たちとの出会いが大切な者になって来て……

 

「ああ、わかった。結局さ、僕は誰かが泣いているのが嫌なんだよ」

 

 理由なんてシンプルなんだ。あの、消えていった人、助けられなかった人、手にかけた人、色々な顔が頭をよぎる。

 結局のところ……僕が戦う理由はシンプルだった。

 

「どこかの誰だか知らないけど、金のリンゴが使われてからクラックが開くようになったんだ。それで大勢の人が泣くのが嫌だから戦う。それだけだった」

「……それは自分が傷ついても?」

「それは違うぞ? 死ぬつもりとかもさらさらないって。僕がお前を泣かせたら元も子もないし、新しい繋がりとかができるのって、結構楽しいんだよ」

「それは、束さんもわかってきたよ……なんだか、世界に色がついてくるんだよね……今まで見えていなかったものがさ」

「だから、守りたいんだ」

 

 なんてくさいこと言っているのがなんだか恥ずかしくなって、とりあえず近くのパスタ屋に入ることにしたのであった。

 味的にはハズレじゃなかったから良いけど、合コンをしているグループを発見して見つからないようにしたのだけがなぁ……どうせまた失敗するんだろうに。

 

 ◇◇◇◇◇

 

「日付、もうすぐ変わるね」

「そうだな……」

 

 いつもの海岸、なんだかんだでここが一番縁があるというか……今の僕の決意とか、色々とここが始まりなんだよな。ここも広いけどね……この前のインベスと戦った場所は結構遠くに見えるけど。

 

「英……これから、どうなるのかな」

「たぶん、今までみたいに平和にってわけにはいかないよ。今までだって亡国機業とかいうのは静か過ぎたし……向こうも準備中だったんだろう」

「準備?」

「量産品はまだ試作品だとして、ドライバーそのものも性能を上げてきている……正直一人じゃキツイし、どうしたものか……」

「――――」

 

 その時、束が何を呟いたのか聞こえなかった。でも、なんとなく僕にはわかっていた。見て見ぬふりと言うわけではない。だけど、なんとなくわかってしまったのだ。

 戦う運命にある人たちを。

 

「……まあ、今はいいか」

「うん、そうだね」

「束、メリークリスマス」

「メリークリスマス」

 

 すでに日付は変わっていた。懐から、小さな箱を取り出して束に渡す。

 

「これって……」

「まあ、あっても困らないんじゃないかなぁぐらいの気持ちだけど」

「……ネックレスって、首輪って意味があるらしいよ?」

「ぶほっ!?」

「冗談だけどねー」

「まったく、何を言い出すかと思えば……それに、ペンダントだよ」

「あーほんとだ……束さん指輪が良かったなー」

「ごふっ!?」

「……今のは酷いんじゃない!?」

「あのなぁ……それは全部終わったらな」

「うん、約束だからね?」

「ああ約束だ」

「……死亡フラグみたいだね」

「オイバカヤメロ」

 

 その後、束もプレゼントを渡してきたけど……眼鏡? え、眼鏡型のディスプレイ作った? いや僕だから良いけど実用性のあるものって普通引かれるよ? 千冬とか箒ちゃんには普通の渡せよ。

 ……少し青い顔をした束のために、後でプレゼントを選び直したのは完全なる余談である。

 

「ホントお前は……今日がクリスマスで駆け込み需要があるから良かったものだけど」

「ごめん。束さんこういうのに疎いから」

「少しは考えて――」

 

 何だかんだで夜も遅いし、家に帰ろうとしたら……玄関には奴がいた。

 しばらく顔を見ていなかったけど……あれって神宮寺の…………

 

「……なんでいるし」

「英、どうするの?」

「帰りたくねぇ……でもいつまでも居座っていそうだしなぁ…………」

 

 あーうん、逃げちゃいけないんだろうけど、逃げたい。色々と気まずいし。

 束がどんどん不機嫌になっていくし……

 

「ねぇ、いっそのことハッキリ断れよ」

「わかっているんだ、でも……それはそれで厄介なことになるんじゃないかと」

「――あ、たしかに」

 

 だから、だから……ここは逃げよう。

 

「でも女の子の気持ちから逃げるのもダメだよね」

「おおう!?」

 

 まさかの味方からのキルショットだと!?

 

「さあ、頑張れ!」

「ひ、人ごとじゃないだろうに……お前も道連れだからな」

「いやそれは刺激し過ぎなんじゃ――」

 

 問答無用と、束の腕を引っ張って玄関に向かう。人の気配を察知してか、僕たちの方を向くお嬢様……だけど、今までの熱っぽい視線とは違い、真剣な表情をしている。

 

「……なるほど、元から付け入る隙はないというのも本当らしいですわね」

「ふーん、今頃わかったんだ?」

「貴女には話しておりませんわ、篠ノ之さん」

「――ッ」

 

 何だ? 何だか前よりは雰囲気が違う……

 

「蜂矢英さん、先日はご迷惑をおかけしました」

「えっと、こちらこそ叩いてしまってすいませんでした」

「いえおかげさまで目が覚めましたわ」

 

 なんだか憑き物が落ちたようで、すっきりした顔をしている。もしかして、なんかいい方向に作用したのか?

 

「先ほど織斑さんにも謝罪を入れてきました」

「ああうん……それはいいんだけど、僕の家って千冬に聞いたの?」

「いえ? 自分で調べましたわ」

「ああ家の力で――」

「最近の衛星は凄いですわね」

「怖いよッ!? この子怖いよッ!?」

「冗談です」

 

 じょ、冗談に聞こえないんですが。

 

「それで、本日は謝罪と宣戦布告に来ました」

「せ、宣戦布告?」

「ええ……わたくし、あの痛みを忘れられなくて」

「え゛」

「あのはたかれた時の甘美な痛みッ! ああ、忘れたくても忘れられませんわッ! しかも今の今まで放置されて…………ああっ!」

「あ、あはは……」

 

 ヤバいよ。目覚めさせてはいけない何かを目覚めさせちまったよ。束もものすごく黒い炎をバックに背負っているよ……これが、修羅場って奴なのか。

 

「勝ち目? そんなこと知ったことではありませんわ……必ず、あなたをわたくしのものにしてみせます」

「で、でも見た目だけの一目惚れなんて所詮――」

「いえ、わたくしあなたに本気で叱られて思ったのです。わたくしに対してへりくだった人しか接してこないうえに、身内でもあんなに厳しくしてくれた方はいなくて……だからこそ、あなたに心の底から、本気で惚れ直したのですわッ」

「――――oh」

 

 や、やり過ぎたッ……ごめん、マジでごめん束…………だからその炎しまって。え、無理? ですよねー……

 

「今日のところは引かせていただきます……ですが篠ノ之さん、うかうかしていたらわたくしが横からかっさらってしまいますから、覚悟してなさい」

「――てめぇ……勝負は無かったことにするつもりか?」

「あら? 勝負を取り付けたとき、どちらが英さんを婿にできるかしかかけていないハズですが? そもそも年齢的に結婚できないのですから無効ですわねー」

「おぐっ!? た、束さんとしたことがッ」

「それでは、また」

 

 それだけ言い残し、彼女は去って行った……嵐のような人だよな…………

 

「英、今日は泊まるから」

「……え」

「泊まるから、いいね?」

「あ、うん……」

 

 なんだか流れるままに合鍵(研究室として家の中を使うために随分前に渡した)を取り出して家の中に入っていった。

 ……なんだか、色々な意味で今日は今までの人生で一番苦労しそうな予感がした。

 

「…………あ、流れ星」

 




最終形態神宮寺百花登場!

背景に色々といましたが、あえて言うまい……
次回ようやく北欧編に突入というか、前回と今回は幕間なんで。

そして、再び数話先を間違って投稿していました(一分にも満たない時間で消した)ので、見た方はすいません。ミスってしまいました。
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