仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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やばい、構想ではここがようやく半分。
第何部かは数えていませんが、ここが大きな区切りです。


EP55.そして運命は回りだした

 なんとか五体満足ではあるものの、消耗がひどくて移動ができない……時間も予定を大幅に上回っているし、ポイントどこだっけか……

 

「英、本当に大丈夫?」

「なんとか……でも、負けなかったけど勝てたわけじゃないよなぁ…………」

 

 本当、悔しい。久しく忘れていたけど、この感情……ああ、負けたくない。

 勝ちたかった。この時、僕はようやくあの男――須郷猛を認めた。ただ、勝ちたいという感情だけであそこまで強くなった男。僕とは在り様が違うが、あれも一つの答えだ。

 

「……次は、絶対に勝ってやる」

「まったく、男の子ってどうしてそうなんだろうね」

「千冬も似たようなもんだろ……っていうか、お前も人のこと言えないって」

「まあ、それはそれ」

「なんだよ……ん?」

 

 その時、地面になんか黒いものが落ちているのが見えた。あれって、たしか……ボロボロだけど……

 

「なあ、束……どうやらもう一個収穫はあったらしいぞ」

「なんの話――え? それって」

 

 僕が拾ったもの。それは壊れた戦極ドライバーだった。ああ、そういえば猛のドライバーを一つ壊したんだよな。だから、アイツが捨てたドライバーがここにある。

 これは思わぬ収穫だ。壊れているけど、こいつを解析すればもしかしたら。

 

「こっちもドライバーを量産できるかもね。まあ、無理だとしても、バラせばパーツは使えるだろ」

「たしかに、ゲネシスドライバーを作るのに足りなかったレアメタルも……」

 

 僕のドライバーの修理にも使えるかもしれないしね。とにかく、一つでも多く収穫があったのは幸いだ。

 それと、帰る前にもう一度遺跡に戻って手掛かりを探そうとしたんだけど……遺跡が崩れ落ちていて、無理だった。

 

「……派手に壊されましたね」

「あの巨大インベスさえ出なかったらなぁ」

「まあ、過ぎたことは仕方がないだろ。とりあえず帰ろうか」

 

 サクラハリケーンを展開し、乗り込む……体が、うまく動かない。

 

「私が運転するよ。英は、ドライバーだけ準備しておいて」

「すまん、思ったよりダメージがひどいみたい」

「まったく。最後のアレ、無理し過ぎだよ」

「あはは……ごめん」

 

 束が前に座り、僕が後ろに回る。そして、来た時と同じようにバイクを発進させて、僕はドライバーに取り付けたローズを作動させる。

 そして、前方に広がるクラックから地球へと帰還した。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 帰還予定を大幅に過ぎていたから、まず楯無さんたちにものすごく心配された。その後、めっさ怒られた。

 

「まったく、一体何を考えているんだい」

「すいません、帰るに帰れなかったんです」

 

 事情を説明して、納得してもらったけど……やはり、自分たちもクラックに行く方法を早く確立しないとって考えてるだろうな……

 今回の戦いで、多くの課題が見つかった。巨大インベスに対しての手札がないこと、特殊な環境での戦いは圧倒的に不利になること。

 

「まずは、水中戦を考慮した装備を考えるか……」

 

 IS技術を応用すれば、空中戦はなんとかなる。だけど、水中はそうもいかない。海中、レヴィインベスとの戦いを前提とした装備か……これは、僕も新しいロックシードを考えるか。

 まずは、今回の戦いのログを解析して、いや先に石碑か。

 

「そうだ、今回の収穫も結構あったんだ」

「収穫?」

「ええ、でもここで展開するのはまずいかな……束、どうだ?」

「たしかに、結構量あるんだよね」

 

 束が持ち帰ってくれた石碑。あとは、このドライバー。

 

「これは……ドライバー?」

「須郷が使っていた奴です。まあ、壊れているんですけどね」

「だが、たしかにこれがあればこちらも戦力として…………」

「あーそれなんですけど、たぶん無理だわ」

「え?」

「……フェイスプレートの部分が壊れている。向こうは暗くてよく見えなかったけど、これじゃあ無理だな」

 

 イニシャライズ、個人登録する機能を持っていることで僕のドライバーの解析をしても量産はできなった。そのため、量産品のフェイスプレート部分を解析して、こちらも量産できないかと考えたのだが……だめだ、肝心な部分が壊れている。

 バラしてみればわかるかもしれないが、外側から見てもこれは……ドライマンゴーロックシードも熱でくっ付いているし。

 

「……いったん持ち帰ってバラさないといけないか」

「結局、収穫って何なんだい?」

「あー……もっと広くて、人でもいりますかね?」

 

 とりあえず、今日はいったん帰ることになった。

 現地に色々と研究チームを呼んでもらって改めて調べないといけない。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 時を同じくして、ヘルヘイムの森にある亡国機業のアジトでは、須郷猛が帰還していた。

 

「まったく、ひやひやさせてくれるわね」

「ほら、頼まれたものだ」

 

 須郷はブラーボの変身者――コードネーム、デンジャーに束から奪った宝石を渡す。

 その宝石を確認し、デンジャーは満足げに頷いて猛に一枚のカードを渡す。

 

「そこに報酬を入れておいたわ。ご苦労様」

「ふん……こちらとしては、不完全燃焼だけどな」

「冠と戦って、その程度の被害で済ませた上に任務は達成したのだから上出来よ」

 

 そうは言うが、猛の内心は苛立っていた。また、勝てなかった。邪魔は入ったがあのまま戦い続けて勝てたかどうかわからない。

 それが彼の心に苛立ちを与えるのだ。

 

「おやおやぁ? ケツの青いガキが逃げ帰ってきたんだってなぁ」

「あら? オータムこんなところに何か用かしら?」

「生意気なガキの面を見にな……まったく、情けないッたら――あがっ!?」

「うるせぇよ、クレイジーサイコ」

「てめぇ……いい度胸だ、今すぐにぶっ殺してやってもいいんだぞ?」

 

 女性――オータムは右腕を振り上げて、猛をにらみつける。それを猛も睨み返し、ドライバーを装着して、今すぐにも――

 

「やめないオータム、須郷も……悪かったわね、デンジャー」

「あら? スコールじゃないの……仕事は終わったの?」

「ええ、おかげさまで……そっちは?」

「須郷君はキッチリ終わらせてくれたわ。はい、これ」

「…………これは私からマルス様に届けておくわ。あなたたちには次の任務が来ているわよ」

「あら? 人使いの荒い……須郷、シャドウと合流してから次の任務――姫の調査に向かうわ」

「姫ねぇ……あんなガキが本当に切り札になるのか?」

「まだ未知数だけど、姉よりは確実に堕ちやすいわよ」

「……そうかい」

 

 それだけ、言い残し、二人は去って行った。後に残ったのは二人の女性のみ。

 

「けっ……気持ち悪いんだよあのオカマ野郎」

「そう言わないの……気をつけなさい。彼はまだ本気を一度も見せていないのだから」

「だけど冠だっけか? あいつに負けたんだろ」

「それは彼の方がアームズについて詳しいからよ。初期ナンバーのアームズを使っていては彼には勝つことは難しい。それぞれの特性を理解しているんですもの。だから、単純な強化型でも苦戦する。須郷もカカオアームズで対応したときが一番やりやすかったらしいし」

「そうかよ……」

「ああ、それとシャーベットからの報告よ。例の子、うまく使えそうだって」

「……なあ、スコール、私じゃダメなのか?」

「こればっかりは適正がモノを言うの……貴女にはちゃんと別の役目があるからすねないの」

「ああ……そうだな」

 

 二人はそれで会話を終わらせて、それぞれの持ち場へ戻って行った。

 オータムは次の任務。スコールは、亡国機業現支配者のところへ。

 

 そして、須郷とデンジャーは帰還していたグリドンの変身者――シャドウと合流した。

 

「まったく、人使いが荒いよねぇ首領も」

「硬いこと言わないの。羽振りはいいんだから」

「なあ、前から聞きたかったんだが、その首領ってどんな奴なんだ?」

「……あまり大きな声で言えないけど、人ではないわね」

「人じゃない?」

「どちらかというと、インベスに近い……まあアタクシも数回しかあったことないし、首領になったのも最近のことよ」

「そうなのか? 亡国機業はずっと昔からあるって聞いたが」

「頭が変わった……いや、乗っ取られたって言った方が正しいかな?」

 

 須郷が来たときには、現在の体制だったためにその前に何かあったのか、そう考えるが、詳しいことは教えてくれそうもない。

 いったい、どういうことなのだろうか?

 

「簡単に言えば、前のトップたちが欲を出し過ぎて手を出してはいけないモノに手を触れてしまったってところね」

「……君もマルス様には気を付けた方がいいよ。うかつなことをすれば、自らの身を亡ぼす」

「そうかい……まあ、俺にはあんまり関係はなさそうだけどな」

 

 立場上、自分が会うこともないだろう。須郷はそう思ったが……出会いの時は近い。

 彼もまた、逃れようのない運命に選ばれたものの一人であった。それを知るのはずっと先だが。

 

「さぁて、日本へ向かうわよ」

 

 ◇◇◇◇◇

 

 あの激戦から数日が過ぎた。英と束、他の研究チームや調査隊も全員日本に帰還してとある大学を借りて石碑の解読作業を進めている。

 

「やっぱり、粉々に砕けて詳細が分からないね」

「文ごとにはくっ付いたけど……文の上下の間に幅があったから、順番がわからねぇ……」

 

 なんとか腕輪の力で解読はできそうなのだが、砕けたことで難解なことになっている。

 大学の学者とかが手伝っているけど、流石に専門とは違うし、色々手いっぱいだった。というより、ヘルヘイムのものに触れたくない人も多い……オイコラ、逃げるな。

 

「どうだい? 解読は順調かな?」

「あー……とってきた写真と照らし合わせて、解読はしているんですが……厳しいですね」

「たぶん、神話だとは思うんですけど……手掛かりが少ないのがねぇ」

 

 もうすぐ冬休みも終わるし、早いところ家に戻りたい。

 最近は近くのホテル暮らしに慣れてきてしまった。

 

「いくつかの民が存在していた、というのと支配者として黒い女王が君臨していたというのは分かっているのですが……そこらへんの解読がなぁ……」

 

 場面としては、世界が二つに分かれたところが最後なんだしあの夢での戦いが最後のあたりなんだとは思うけど……手に入ったピースによると、蒼の民が紅の民を倒している場面があるんだよな。しかもこの文面だと黄金の果実自体に意思があるような……

 

「登場人物をまとめよう。まず、黒い女王。あと、紅と蒼の民。他にも碧の民とかいるけど、本筋には関わらない」

「あとは、黄金の果実とか、ヘビかな?」

「そのヘビがよくわからないんだよな……束、そんな感じのインベスとか、壁画とか見たか?」

「さぁ? 旧約聖書のヘビのことじゃない?」

「たぶんそうだと思うんだけど……それにしては存在が唐突過ぎる。それに、このヘビの役割が裁定者と継承者を選ぶって書いてあるんだけど……ここに蛇王が呑みこまれるって一文があるんですよ」

「どういうことなんだい?」

「たぶん、黄金の果実を手に入れるものを選ぶ役割とかがあるんでしょうけど、そいつ、殺されているんじゃないかなって……もしくは取り込まれているか」

「一度、読める形に直した方がいいんじゃないかな?」

「ですよね……まあ、一度文のつながりと、壁画……あとは僕たちの見た光景から場面をつなげてみよう。大筋としては、黄金の果実は始まりの少女って人物にゆだねられて、彼女が手に入れる人を選ぶらしいんですけど……」

 

 

 武に優れるは紅き民 智に優れるは蒼き民

 生み出されるは人の手により生まれし黄金の果実

 黄金の果実は世界を創る力 食したものに全知全能の力をこの星の王とする

 力あるものを戦いに導く蛇王あり 継承者と裁定者を選び出すものなり

 裁定者となりし始まりの少女 継承者の戦いを見つめる者なり

 黄金の果実に魅入られしもの達 互いに傷つけあい殺しあう

 黄金の果実 自らの思惑通りに事を運ぶ

 されど始まりの少女それを許さず自らが王となった

 されど黒き女王その意思を目覚めさせる

 邪悪が運びり黒き民生み出す

 黒き女王その力を用い世界を支配せんとする

 

 蒼の末裔 始まりの男

 紅の末裔 始まりの女

 二人の若者 果実の力取り込みわがものとした

 二つの果実合わさりて心をやどす

 二人力を合わせ黒き女王を撃ち滅ぼす

 されど紅き王 力におぼれ果実を飲み込む

 全てを飲み込み蛇王すら飲み干した

 飲み込みしヘビの力用いて傀儡を探し出す

 使われしは光やどす腕輪

 腕輪果実を封じ願い眠りにつかせる

 黄金の果実分かれて欠片となる

 そして紅と蒼の民互いに袂を分かつ

 世界が分かれ二つとなった

 世界が濁流にのまれしとき我ら大いなる箱舟にて飛び立った

 目覚めの時は来る

 

 そして年月が経ち黒き女王の名は地獄を意味している

 かつての森は地獄の森 我らの星の生き物を拒む森

 ここに神話を我ら碧の民が記す

 

 

「こんな感じですかね? 一応今までの情報からの推察込みですけど」

「なんだか違和感があるけど……」

「束さんも、どっか違うような……」

「僕もそう思うんだけど、手掛かりとかが少ないし、どこが違うのかよくわからないんだよね……」

 

 文ごとなら解読はできているから後は順番なんだけど……ダメだ。これ以外のつながりが思い浮かばない。

 なんていうか、あと一ピース足りないんだけど、それが見つからないような感じ。

 

「確実なのは、蒼と紅の民が袂を別っていることがあるのと、始まりの少女が自ら王となったってあたりですかね?」

「前後のつながりが不明確だし、いくらでも変わるな……これ、専門機関で解読するべきだと思うよ」

「僕もそう思うんですよね……バラして各々解読した方がいいですかね?」

「そうだね……とりあえず、各国の専門機関に文のコピーを持っていくよ」

「この石碑自体はもう歴史的価値とか、そういう面でしか価値ないですし、その方が良いですね」

「ねえ、この最後の部分はあっているの?」

「ああそこだけは間違いなくね。碧の民がこれを書いて、ヘルヘイムの森の名前の由来となったって書いてあるし。この黒い女王ってのがヘルのモデル、っていうかそのものなんだろ」

 

 ヘル。ヘルの森、ヘルヘイム(地獄)の森……一つでも謎が解けたのは良かった。実際に、そういう名前の女王がいたってことがわかっただけでも収穫はあったか。

 

「で、おそらくだけど紅と蒼の末裔ってのが」

「私たちの見た……でも、力に溺れたようには見えないんだけどなぁ」

「そうなんだよね……他に誰かいたのか、それとも本人なのか……解読そのものが間違ったか」

 

 微妙なニュアンスの違いもあるし……紅の末裔と紅の王が同一人物とは思えないんだけど……王って書いてあるし、男性っぽい。紅の末裔は女性だしな。

 女性なら、女王だし……紅の末裔が黒の女王だった? いや、二人が黒の女王を倒しているんだし、それはないか。

 うーん……これはかなり時間のかかる作業になりそうだ。

 それに気になるのは、人の手によってつくられたって言う黄金の果実だ。いや、実際全知全能ってわけじゃないんだし、それでも間違っていないとは思うんだけど、どこかおかしいような気もする。

 …………うーん……ダメだ、わからない。

 

 そして、結局解読は難航してしまい、正解は見えないのであった。

 ……結局、時間は過ぎて行って新学期がやってきた。

 事態は僕たちにも予想はできない方向へ進んでいる。運命は、動き出した。僕らも知らない場所で、ゆっくりと、多くの人を巻き込みながら。

 




北欧編、高校1年編、終わった。
長かった……高校1年編予想以上に長かった。
もっと短くなると思ったけど、北欧編も結局5話使ったし。

亡国機業の内情も少しづつ出せるなぁ……

今後もロックシードとインベス大増量でお届けいたします。
感想でありましたが、オリジナルのアームズなどの設定は今後活動報告などで解説しようかと思います。

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