仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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ある意味、スケールが大きくなっていくけど……これ大丈夫だろうか?


EP57.5月の精鋭

 あの時、百花さんに言われたのは仙道工房……正確には神宮寺グループの抱えている、私設部隊(実質的に軍隊なのだが、それでは問題があるらしい)にインベスとの戦闘のイロハを教えてほしいというものだった。

 どうやら日本政府でも対インベス用の部隊は設立しているのだけど、まだ戦闘経験も少ない上に対策がとれないし、各国にノウハウを伝えるのも対外的に問題がある。そのため、民間で技術を高め、それを各国に売ることで国同士の衝突を避ける方針に出たそうだ。

 

「そこで、神宮寺の精鋭が各地でさらに技術や知識を伝えることになったのですが、いかんせん手探りでして」

「なるほどね……それで、僕のところに来たわけか」

 

 たしかに、その提案は結構魅力的である。僕一人ではどうしても限界はあるし、束も手が回らない。誰かが伝えないといけないことも多いし……神宮寺家は公的にも評価が高いし、世界的にも有名な企業だ。

 だけどなぁ……

 

「今更、信用できるとでも?」

「……信用されないのは分かっております。ですが、必ず成果を出して見せます」

「…………」

 

 さて、どうしたものか……

 

「束さん的には、遠慮したいんだけどね」

「……でも、確かに他に有力な手もないんだよなぁ…………」

「謝礼ならいくらでもします。何なら、わたくしの体で――」

「それはいい」

「……それで良い?」

「遠慮しますから脱ぐな痴女」

「……ふぅ」

 

 やべぇ、色々な意味で終っているよこの人。

 信用しにくいんだけど……決定的な一線を越えなかったし、どうしたものか……

 

「…………焦らしプレイというのもオツですわね」

「もういいや、依頼受けるからその変態だけは治して」

「ええ!?」

「なんで一番ショック受けるんだよッ!?」

 

 ◇◇◇◇◇

 

 結局、依頼を受けることになったわけだけど……変態は治らなかった。

 束が変態を矯正するとか言って、怪しげな機械を使ったけど……ダメだった。むしろ束も対象になってしまい、変態が矯正どころか強制的に変態行動に結び付ける思考回路を形成してしまった。

 幸い、一段前に戻せたから良かったものの……束、絶望的な表情だったな――涙目可愛いとか思ってしまった自分にパンチを一発喰らわせる。

 

「す、英さんがマゾになるのですかっ!?」

「ダメだよ英! 英まで変態にならないで!」

「違うから。そういうのじゃないから」

 

 そして時は進んで5月、装備や機材の準備が出来たため、レクチャーのために仙道工房の実験施設(アリーナタイプの場所)にやってきている。

 束はサポートとして後方にいてもらうけど……お嬢様、なんで真ん中に立っているんですか?

 

「砲撃が、わたくしの上を――」

「はいはい、お嬢様は向こうで見ていようねー」

「待ちなさいかおりッわたくしは、まだ、まだ最高の――」

「ええかげんにせいやっ!」

 

 ……あれって、雷電の操縦者だよな…………ものすごい、苦労人のオーラが漂っている。

 きっと、色々苦労しているんだろうなぁ……

 

「お嬢様が迷惑をかけてすまない」

「いえ、いいんです……もう慣れてきました」

「そ、そうか……初めまして、神宮寺家私設部隊、パンサーの隊長を務めている我毛だ」

「どうも、蜂矢英……一応、インベスやヘルヘイムの専門家です」

 

 仮面ライダーというのは明かせない(百花さんは独自に突き止めたので例外)ため、僕の公的な身分はインベスやヘルヘイムの専門家。父親が一応、学者の間では有名な人物であったこともあって、研究を引き継いだとか色々と設定をつけている。まあ、半分ぐらい本当なんだけど。

 その中で、対インベス装備の開発や実戦もしているなどというのもあり、今回はそれを実演するのと彼らパンサーに各種装備の使い方や、戦い方を教えることになった。

 

「まずは、こいつですね……」

 

 僕の取り出したのは普通の銃弾に見えるもの。まあ、表面は金属メッキで塗ってあるけど中央部分は特殊強化ガラスである。

 薬剤タイプの弾丸が完成したので、試作品を持ってきたのだ。

 

「これは……見たところ普通の弾丸だが?」

「まあ、見ていればわかります……束、初級を一匹頼む」

『オーケー』

 

 管制室に行ってもらった束に通信でオーダーをする。この前回収したドライマンゴーロックシードから解析して、初級インベスの呼び出しとコントロールを可能とした。

 まだ大がかりな機材が必要だけど、今回は使えるな。

 50メートル先ぐらいに、クラックが開いて中からインベスが一匹飛び出してくる。そして、すぐにクラックは閉じた。限定クラックの形成も確認と……部隊の皆さんは驚いているようだけど、これぐらいで驚いていたらインベスとの戦いは厳しい。

 

「あれが、人類の脅威……」

「できれば互いに不干渉でいたいところですけど……そうも言ってられません。こうやってコントロールできていますが、本当ならいきなり襲い掛かりますよ」

「……肝に銘じておこう」

「あと、あれ一番弱いのですから」

「…………人間大のサイズで、それか……恐ろしいな」

「アレは文字通り怪物ですし。理性はないですし、元は地球の生き物だとしても……ためらったら終わりです。助ける術なんてないんですから」

 

 果実の成分や、肉体の性質変化……いや、細胞レベルでの変化。それらを調べていく過程で突き止めた事実だ、一度インベスと化した生物は二度と元には戻らない。

 理性が残っているのなら、助けたいと思う……でも、呑まれたら終わりだ。

 

「……それじゃあ、こいつの実演をします。規格は合わせてあるので普通の拳銃で使えますよ。いつもと同じように……撃つだけ」

 

 試しに一発。無双セイバーで慣れたからか、難なく撃ってインベスに命中させる。すると、インベスの表面に草のツルが現れて、暴れ出し……ボロボロと崩れていく。

 

「これは……」

「果実のエネルギーを暴走させました。ようは、この弾丸は内部で炸裂して自爆させるんです……一種のアポトーシスですね」

「そんな生易しいものではないようだが……」

「……今のところこいつが一番使い勝手が良いですかね。量産できますし、世界中ですぐに使えるってのが一番の魅力ですかね。今すぐに使えるものが必要ですから」

「たしかに……あんなのが侵略でもしてきて、現代兵器じゃ効果は薄いとなると……」

「時間は無いんです。何より恐ろしいのは、あれを自在に操る方法があること……それはすなわち」

「人間にとって、打つ手のない軍隊を持つ者がいるということ」

 

 そうだ。結局のところ、亡国機業が何を考えているのかわからないが……インベスを兵器として運用できるという事実が世界的な危機を招いている。

 いまや、世界各国すべてにおいて災害が起こる可能性は最大。どこへ行ってもレッドゾーンなんだ。

 

「次の武器です……量産型ソニックアロー…………オープン」

 

 右手の腕輪を展開し、黒色のソニックアローを呼び出す。ISが広まった今、この程度は驚かないか……

 

「ISみたいだが、それは?」

「一部技術を流用しましたが、根本は違うものですよ。これは汎用型武装のソニックアロー。生身でも使えるように調整した量産品のプロトタイプです。皆さんに使ってもらうのは、そちらに用意しました」

 

 カーゴに持ってきてもらった大量の武装。ソニックアローの他にも、色々と用意してある。

 まずは実戦。

 

「束、次たのむ」

『はいはーい。二体ぐらいいっとく?』

「いや三体で頼む」

『オッケー』

 

 三体の初級インベスが現れる。そして、弓を向けてまずは一体を射抜く。コントロール内とはいえ、緊張するな……罪悪感も半端ないが。

 

「……スマン」

 

 小声で、そう一言つぶやく。アレも元は……やめておこう。この先、いくらでも後悔するようなことは待っているんだ。だったら、全部終わらしてからにしよう。

 この量産品では大きなダメージは見込めないが、効果は結構ある。

 

「そして、このブレード部分で切ることもできます。また、こいつはISのエネルギーに対しても効果があります」

「ISにかい?」

「相手は、ISも併用してきますからね……ロックシードと呼ばれる機械を用いてインベスをコントロールしているんですが、そいつがISに乗っていて対処できないとなると永久にインベスが出てくるんです」

「……」

「おまけに、ISでISに対処しようとしても、インベスの持つエネルギー相手には相性が悪すぎる。そこで、こちらはどちらにも対処できる装備を用います。また、大掛かりな作戦時にはIS部隊との連携も重要になってくるでしょう」

「……たしかにな」

「…………では、みなさんで実戦してみてください」

 

 立ったままのインベスに向かって、全員が武器を構えて攻撃していく。

 ……さすがに元々の練度が高いな。全弾命中し、インベスは爆発した。

 

「ば、爆発?」

「ああ、内部に膨大なエネルギー持ってますからね。死ぬと爆発しますよ。さっきの銃弾は特殊な例です」

「なるほど……だが、それこそ大量のインベスが現れたときはどうするんだ?」

「普通にミサイルで一区画爆破。さすがのインベスも膨大な火力で叩けば倒せますよ。ただ、それでもうまくいきませんけど……あと、初級なら火炎放射器も有効です」

 

 さて、後は手りゅう弾型の武器……内部の除草剤をばらまくことで、広範囲のインベスにダメージを与えるものと、粉末状の除草剤を使った消火器のような物。

 あとインベスの攻撃から身を守る防具類などを紹介していく。防弾チョッキの内部に除草剤を混ぜて製造した対インベス用のクッション材とか、盾の表面に特殊な加工を施して、インベスの遠距離攻撃をそらすものとか。

 

「大切なのは、攻撃を直接喰らわないこと。そうなったら最後、死ぬと思ってください」

「資料で拝見したが……本当に、植物に体を侵食されるのか?」

「ええ、僕は直接その事例を二度みていますけど……どちらも死にましたよ。目の前でね」

 

 その時の僕はどんな顔をしていたのだろう。ただ一つ言えるのは、我毛さんが目を見開いていたことだろうか。

 この年の子供がする顔ではないってのは分かるけどね。

 

「……そうか」

 

 その一言を絞り出すのに、どれだけの葛藤があったんだろう。本当なら、自分が最前線に出るような立場なのに、子供の僕に知識を与えられている。

 ビジネス的な部隊と言っても、彼らは良識があるように思う。束も事前に調べてくれたけど、普段は災害救助とか、紛争地の子供を救助したりという活動がメインらしい。

 

「さて、それじゃあ後は練度を上げるだけ……隊長さん、いけますか?」

「ああ……こいッ」

 

 お互い、とびかかる。ソニックアローの出力を限界まで引き下げて行う戦い。勝つか負けるかとかよりも、どういう風に戦えば有効なのかを実践するもの。

 さすがに本職は強いけど、まだ武器に慣れていない分、僕にもやりようはあった。

 

「重い、斬撃だな……いったいどれだけの修羅場をその年で潜り抜けたッ」

「もう忘れましたよそんなことッ!」

 

 蹴り上げ、それをかわされる。しかし同時に弓を引いて狙いを定める――それは向こうも同じ。

 

「やっぱ、一筋縄じゃいかないなッ」

「子供に負けるわけにはいかないんでね」

「そりゃそうだ……なら、とっておき!」

 

 弓を引いたのち、ひねる。そうすることで弓を何本も同時装填できる。

 量産品の場合、一発の威力が下がるけど……面制圧も可能になる。

 

「なるほど……ならッ」

「ぜりゃあああ!」

 

 弓を放ち、一時的にも行動を阻害しようとした。だけど、彼はそれを潜り抜けてきた。

 ……まさか全部切り落とすとは…………元々、近接の方が得意ってことか?

 

「……なら」

 

 弓をもう一度、弱いチャージで引いて放つ。

 ただし、地面に向けてだが。

 

「なに!?」

「ハッ!」

 

 跳弾。まさかエネルギーの矢でそれが起こるとは思わなかっただろう。一応、物理的な威力も持っているって言ったんだけどなぁ……

 しかし、それも普通にかわされて狙いをつけられてしまう……まだ、大丈夫。

 

「チャージ……」

「――遅いッ」

「いや、これで良い」

 

 エネルギーをチャージして限界まで見極める……そして、矢が迫ってくる直前に、放った。

 通常なら、エネルギー同士がぶつかって爆発するのだが……ソニックアローのエネルギーには波があり、チャージして放つときに一番収縮した状態で放つと、威力が増大するのだ。

 圧縮された状態のためだと思うけど、この見極めが難しい。後で、視覚できるプログラムでも入れるか?

 そして、僕の矢はまっすぐに突き進み、我毛さんに命中した。

 

 ◇◇◇◇◇

 

「いやぁ……やはり、君に一日の長があったか」

「いえ、初めて使う武器なのにあそこまで使いこなしているんですから……僕は裏技使わないと勝てませんでしたし」

「いいんだ。ありがとう。仮面ライダー君」

「!?」

「これでも、ここ一番の古株なんだ……お嬢様のつかんでいる情報を私が知らないわけがない。まあ、他の誰にも言っていないけどね」

 

 そう言って、ウィンクをしてくるけど……正直、似合ってないなぁ……

 でも、そうと知っていながら普通に接してくれるのは、ありがたいことかな、なんて。

 

「……こちらこそ、ありがとうございます」

 

 こうして、人類の防衛線を作り上げる第一歩は達成できた。

 まだまだ課題は多いけど、この先何が起ころうとも……僕たちは立ち止まるわけにはいかないんだ。

 




相変わらずのお嬢様節。

そして、やっとまともに使われた黒弓。

次回は6月エピソード……たぶんギャグに戻ります?
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