仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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ぱんぱかぱーん


EP58.6月の花嫁

 雨の降る季節、今日は清々しい晴れ模様で、これからの私たちの門出を祝福するかのようだった。

 教会のベルが鳴る。ああ、なんて素晴らしい日なんだろう。

 空には鳥たちが羽ばたき、会場のみんなの祝福してくれる。

 思えば、色々辛いことも多い人生だった。挫折と苦悩、理不尽なことも多い。目の前で、人の死だって見てきた。それでもめげずに私は前に進んできたんだ。

 ドレスはちょっときついけど……ようやく、夢がかなった。

 素敵な旦那さんと、これから一緒に暮らすんだって思うと胸が躍る。いい年して、って思う人もいるんだろうけど……そんなの関係ない。

 女はいつだって、恋する乙女なんだ。

 

「――さん、時間です」

「……はい」

 

 さあ、行こう……輝かしい場所へ。

 扉の前には父がたっている。ずいぶんと待たせてしまったけど、ようやく一緒にバージンロードを歩くことができる。ああ、思えばお父さんには迷惑ばかりかけてしまった。

 お母さんにもありがとうって伝えなきゃ……

 

「…………大丈夫か?」

「ええ、お父さん……今ままで」

「よせやい……柄じゃねぇ」

 

 そうだね……

 思えば、ここまで来るのはつらく、険しい道のりだった。犠牲にしたものも多いけど、私はとても大切な人と一緒にこれから先の未来を歩みだすんだ。

 そして、お父さんと共に前へと――ああ、彼がいる。彼と一緒なら……怖いものなんてない。

 ゆっくりと、だけど確実に私は彼の下へと……お父さん、今までありがとう。

 

「……おまたせ」

「大丈夫、待ってないよ」

 

 ……いつもはもう少ししゃべる彼も、寡黙と言うか……まあ、そこが良いのかな?

 よく見ると、ガチガチに緊張している……少しおかしくなって、にやけてしまう。柄じゃないなぁ……

 式は滞りなく進み、いよいよその時がやってくる。

 

「汝、この者を妻とし、病める時も健やかなる時も、共に歩み、死が二人を分かつまで、愛を誓い、寄り添うことを誓いますか?」

「誓います」

「汝、この者を夫とし、病める時も健やかなる時も、共に歩み、死が二人を分かつまで、愛を誓い、寄り添うことを誓いますか?」

「誓います」

「それでは、指輪を交換し誓いの証として――」

 

 後は、恥ずかしくて言えないけど……素晴らしい未来が待っている。そんな気がした。

 

 

 

 式の余韻も残るままに、次の部隊へ向かうことになった。

 私たちは外に出てブーケトスの準備を行う。結構人いるけど大丈夫なのかしら……何だか、殺気立っている人もいるけど。

 いや、私も昔は同じようなことしてたし、大丈夫ようん。大丈夫よね?

 

「……それっ」

 

 そして、投げられたブーケは……驚異の身体能力を持つ三人が奪い合うこととなった。

 

「放しなさいッ英さんとの結婚式を挙げるのはわたくしですわッ」

「ええいまだそんな寝言言っているのかッ良いから束さんに渡せよッ」

「お前ら……あの人が結婚して危機感を覚えた私に敵うと思うなよッ」

「「まずは相手見つけろよッ初恋まだの癖にッ」」

「お、弟ではダメか?」

「「ダメに決まっているだろッ」」

「さ、三人とも乱闘はダメですよ~!?」

「…………ハァ」

 

 ……蜂矢君、頭痛そうね…………あ、私の旦那様も頭痛そう。え? あのお嬢様があなたの会社のご令嬢?

 人は見かけによらないものねぇ……

 …………あ、篠ノ之ちゃんが勝ち取った。凄いわねぇ……あの子運動できたんだ。でも、ゼイゼイ言っているなぁ……筋肉痛にならないといいけど。

 真耶ちゃん、ボロボロ……とばっちりで苦労するわねぇ、後で何か買ってあげましょう。

 

 本日、私こと佐々木恵は我毛恵になりました。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

「それにしても先生、いきなり結婚って聞いてびっくりしましたよ……しかも相手が我毛さんって」

「あははーいつまでも行き遅れとは呼ばせないわよ」

 

 なんでも、前にクリスマス合コンしているところを見かけた際に我毛さんと知り合い、そのまま流れるようにここまで来たとかなんとか……世間は狭い。

 というか、なんで先生の友人枠僕らなんですか? 真耶ちゃんは家族枠なのはわかるけど、僕たちはなぜ?

 

「友達が、お前の結婚式に行くくらいなら婚活するってみんな逃げたのよ」

「……言ってて、悲しくなりません?」

「…………慰めて」

「あ、あはは……恵は生徒に慕われていていい先生じゃないか」

「否定はしませんけど……しかし、まさか相手が我毛さんとは……世間狭すぎですよ。なんで正体知っている人たちがくっつんですかビックリですよ」

「いや、その話を聞いたときは私もびっくりしたよ……あの事故の現場にいたとはね」

「やっぱりそれも知ってますか」

 

 神宮寺家の情報網も侮れないな……

 しかし、束たちは完全に燃え尽きているなぁ……ブーケトスに全力かけすぎだろ。

 

「まあ、今日はお招きいただきありがとうございます」

「いいんだ、しかしお嬢様まで来るとは……昔よりも明るくなられて、良かったとは思うんだが、その…………アレはやはり真正なのだろうか?」

「そりゃ、本物でしょうねー。あれ、生まれつきのものね。治すどころかあれがデフォよデフォ」

「先生諦めないでください……僕がどれだけッ」

 

 あはは……おかしいな、目が熱いや……雨が降っていないのに、目の前がぼやけてくる。

 

「あー蜂矢君? ……頑張れ!」

「もう少し気の利いたこと言ってくださいよ」

 

 6月のある日、ジューンブライドとはよくいうけど……本当に式を挙げる人を見たのは初めてである。

 というか、いまだに先生の結婚式に呼ばれたという事実を正しく認識できていないような気もする。むしろ他に呼ぶべき人はいただろうに……あ、中学の教頭だ。一応会釈すると、会釈を返して……手招きされてらっしゃる。え、僕ですか? なぜに……

 

「……久しぶりだな、蜂矢」

「教頭先生もお変わりなく……」

「お前は前より自然体だな……母親のこともあったし、心配だったのだが問題はなさそうでよかったよ」

「おかげさまで……しかし、何故僕がここに……」

「まあそう言うな。アレで佐々木先生――おっと、もう我毛先生だな――はお前たちのことを気に入っていたんだ」

「……そうですかねー」

 

 迷惑かけた思い出と、かけられた思い出ばっかりだけど。

 

「人に迷惑をかけられるってのは、それだけ親しい証拠だよ」

「……そうですね」

「ああ……ところで、聞いたときはびっくりしたが、お前篠ノ之と付き合っているそうだな」

「ぶほっ!? だ、誰から……いや佐々木だな」

「先生ぐらいつけろ。お前も、いい性格をしているよ……しかし、篠ノ之も変わったな。先ほど、私を見かけた際に挨拶してきたときは誰かと思ったぞ。織斑はまだ挨拶してこないが」

「千冬……いや、気が付いてないだけですね。アイツ案外ポンコツなところありますし」

「それは知っているよ。先生方では有名だったぞ」

「……うわぁ」

 

 千冬が知ったら、恥ずかしくて寝込みそうだなぁ……

 しかし、改めて見渡すと結構見知った顔が多い。友人席にはすっかり常連になった五反田食堂の自称看板娘である五反田蓮さんがいるし、中学校の教師も何人か見える。あとは、パンサーの人がちらほら……

 他には……なんでいるんですか、楯無さん。

 

「ああ、彼とは昔一緒に仕事をしたこともあってね。今回は君のお父さんは関係ないよ」

「そうそう父が関わっていたらびっくりしますよ」

「だが、アリサ君は私の教え子だったぞ」

「教頭!? え、そうなの!?」

 

 いや、母さんの時はやけに気にかけてくれるなぁとは思っていたけど、そういうことだったの!?

 世間は狭いって……狭すぎるだろ世界。

 とりあえず、一通りびっくりしてから席に戻る。料理は食べないと損だし、参考になる。鴨肉って結構イケるのな。

 

「……旨し」

「英、趣味に走らないでよ」

「いやぁ……数少ない癒しだし」

「癒しならこの束さんがいるでしょ」

「……言ってて、恥ずかしくならない?」

「…………言わないで」

 

 千冬も半眼で睨まないでよ。

 

「いい加減にしろよバカップル」

「もういいよ、それで」

「……ハァ」

「うらやましいですわ妬ましいですわ放置気持ちいいですわ」

「最後、オイ最後」

「じ、神宮寺さん大分雰囲気変わりましたね……」

「先生曰く、これが素なんじゃないかって言われた。しかも生まれつきの」

「……うわぁ」

「その冷たい目はなんですか? 篠ノ之さん……興奮するじゃないですか」

「…………記憶を全部部っこ抜いて人格を矯正した方が良いんじゃない?」

「いや、生まれつきってことは……程度の差こそあれ、これは百花さんの本質なんだよ」

「どこまで救いようがないんだよ」

「アアンッ」

「……こえはこれで面白いな」

「「「え゛」」」

 

 ち、千冬さん……何をおっしゃっているんですか?

 

「……い、いや違うからな!? 見ている分にはと言う話だッ! 私がどうこうするわけじゃないからなッ!?」

「…………千冬さん、貴女ではわたくしを気持ちよくすることはできません。お引き取り下さい」

「何をしたり顔で言っているんだ貴様はッ!?」

「……千冬、次があるよ」

「ちーちゃん、飲み物いる?」

「先輩! 今度何か奢ります!」

「なんで私がフラれた感じなのだ!?」

 

 そういうと、千冬はグラスに注がれた飲み物を……え?

 

「……ヒック」

「ち、千冬さん?」

「…………真耶、脱げ」

「え」

「いいから脱げ。女王の命令だ」

「な、何でですか!?」

「あっちゃぁ……酔っぱらったか」

「あれ? ちーちゃんって前にお酒飲んだ時は平気だったよ?」

「いや、こいつ落ち込んだ時に飲むと暴走するんだよ」

「なんて迷惑な体質何でしょうか」

「君が言うのはおかしいと思うんだけど、そこんところ……やべ」

「(ビクンビクンッ)……ああ、途中でやめるなんていけずな」

「もう勘弁してください」

 

 はぁ……楯無さんあたりにでも相談しよう。

 そう思って、楯無さんのところに向かうと……あれ? 顔が赤…………あちゃー

 

「英君、娘はね、可愛いんだよ」

「そうですね……」

「娘は渡さんぞッ」

「いや、いらないですから」

「なんだと!? 私の可愛い娘たちだぞ!?」

「いや、知ってますけど」

「娘は嫁に出さんからなぁああああああ!?」

「もうこの酔っ払いどうしてくれようか」

 

 とりあえず、スタッフと数人がかりでおとなしくさせる。って強ッ!? さすが暗部筆頭、腐っていてもその力は伊達じゃない。

 ちなみに、千冬は女性スタッフと束と百花さんの協力技で沈めていた。

 その間ずっと佐々木は爆笑していたけど……それでいいのか、花嫁。

 

 ◇◇◇◇◇

 

「ちーちゃんいじりがいがあるから困っちゃうよまったく」

「後でフォローして……いや、それは逆にダメージがあるか。そっとしておこう」

「そうだねー……初恋の人にいっくんを挙げようといたのはアウトだけど」

「後で矯正……いや、柳韻さんに連絡しておく」

「あちゃぁ……」

 

 束と共に家に帰る途中、僕は帰り際に我毛さんに言われたことを思い出していた。

 必要になるであろう言葉。

 

『英君……君はこれから先、私以上に戦いの場へと足を踏み入れるだろう。きっと、君の大切な人も無関係ではいられない。それでもいいのかい?』

『……それは』

『悪いことは言わない。君はおとなしくしていた方が良い。子供はそうしていた方が良いと思うんだ』

『…………でも、子供だとか大人だとかは関係ないですよ』

『なに?』

『むしろ、そんなことで分けられたくなんかないです。これから、色々大変になるのは分かっています。たぶん、大勢の人を巻き込むだろうし……全部綺麗に丸く収まるなんて思っていないです。そもそも、どうしたら終わりなのかなんてわかりませんし。それでも、僕は決めたんです。前に進むんだって』

『……それが、どんなに苦しいことだとしてもか?」

『決めたことですし……それに、僕の大切な人たちはそんなヤワじゃないですよ。むしろ、僕より強いぐらいですって』

『そうか……信じているんだな』

『だって、僕が好きになった人たちですよ? 当たり前じゃないですか……っていうか我毛さんこそ先生のこと頼みますよ。あんなんでも、僕たちかなりお世話になりましたから』

『ああ、わかっているよ。むしろ、私にはもったいないななんて思っているぐらいだ』

『いい人なのは間違いないんですけどね……あの場面で爆笑するとは』

『いいじゃないか。君たちを呼んだのは、楽しい式になるからだと思ったんだろう。実際、楽しかったよ。いや、そういう気質の人が引かれるように集まっているのかな』

『そんなものですかねー』

『……じゃあ、頑張れよ…………私の憧れたヒーロー』

 

 ……その言葉に、どれだけの重みがあったのだろうか。僕にはわからないけど……とても重いんだろう。

 ずっしりと、肩が重い。ああ、この重みが……

 

「英?」

「……束、好きだぞ」

「――ッ!?」

 

 分かりやすいくらいに、束の顔は真っ赤になった。

 僕の顔も、同じくらい赤いんだろうな。

 

「ちょっ!? いきなり何言っているの!?」

「今日ぐらいは、言ってもいいかなって」

「……そうだね、私も好きだよ」

 

 重いことは重い。でも、隣で一緒にいてくれる人がいる。

 それだけで、頑張れるんだから。

 




序盤で勘違いした人はどれだけいるのかな(ゲス顔)

佐々木先生が結婚するなんて誰も思わなかっただろッ
実はプロットの段階から結婚式の話は入れる予定だったッ

むしろ、前回の話はこのためにやったと言っても過言ではない。


そしてついに言いやがった主人公
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