仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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夏は物が腐りやすい季節ですね。


EP59.7月の腐敗

 夏。それはこの世で最も嫌悪するべき季節である。

 

「いきなり何を言い出すんだお前は」

「いやぁ……僕日光ダメだからこの季節は特にきつくて」

「ああ、そういえばそんなのあったな」

 

 本日は快晴。まったく嫌になる季節である。最近は三者忙しくて会うことも少なかったのだが、本日は図書館で早めに夏休みの宿題を片付けることになった。

 また忙しくて宿題終わってないなんてことが無いようにするためである。まあ、ヤバいのは千冬だけだったんだけどね。

 ちなみに束はすでにグロッキーである。文系は相変わらず苦手らしい。

 

「うへぇ……なんでこの年になっても読書感想文があるんだよー」

「諦めろ。私はすでに諦めた」

「千冬別に本読むの嫌いじゃ……ああ、最近ラノベしか読んでいないんだな」

「ッ、違うからな!? ちゃんと他の本も読んでいるからなッ」

「たとえば?」

「…………こう、若い青少年たちがいい汗かきながらくんずほぐれつ」

「織斑さん、僕ら向こうでやっているから」

「千冬ちゃん、頑張ってね」

「待ってくれ私が悪かったからッ束が普通に名前で呼ぶってかなり心にダメージがあるんだぞ!? しまいには泣くからな!」

 

 さすがに騒がしくすると職員さんに迷惑なので黙ることにする。

 だけどなぁ……千冬、流石にそれは無いわぁ。なんだよ、個人の趣味だろって……迷惑かけるだろ絶対。

 

「そんなことはないッ」

「なら最近のマイブームは?」

「工藤烏龍はゆっくりとなめまわすような視線で蜂矢英を見つめる。場所は校舎裏、「さあ、恥ずかしがることはないんだよ? そのすべてをさらけ出してごらん」と工藤は英に近づいていく。頭では嫌と分かっているのに、その手が皮膚に触れた瞬間、英に得体のしれない快感が攻め立ててきた。その電流にも似た衝撃は英の体の動きを止めるのに十分だった。そして、工藤は英の青い果実に――」

「だらっしゃぁああああああああ!!」

「――じぇろにもっ!?」

「束、簀巻きにするぞ手伝え」

「合点!」

 

 問答無用で千冬を簀巻きにして転がす。腐ってる、遅すぎたんだ。

 

「まて、悪かった。私が悪かったから」

「いいや勘弁ならん。っていうか、なんで僕と先生で妄想しているんだよ!?」

「いや、またあの人が担任だったことに運命を感じてな」

「それは僕たちを制御できるのがあの人だけだからだよおバカ!」

「ちーちゃん……どこから感染したの?」

「……だって、お前ら二人だけ仲好くしてんのに私だけ仲間はずれなんだもん」

 

 な、なんだもんって……束と共に微妙な顔になる。それでBLに手をだしたの? なんという残念な女……

 というか人を使って妄想するなよ。気持ち悪い。

 

「だが、確かに工藤先生のあの視線は本物だった!」

「ヤメローもうあの人のこと正面から見れないだろッ」

「正面から見つめる!?」

「束、柳韻さんに伝えろ。また叩き直す必要があるって」

「もう連絡したー」

「グッジョブ」

「な、なんてことを……次何かやらかしたら寺で修行なんだぞ!?」

「良かったじゃないか……ちょうどISの方も伸び悩んでいるんだろ? 新しい発見があるかもしれない」

「い、いや今度こそ宿題が……」

「大丈夫だよちーちゃん。私と英で今日中に終わらせてあげる。安心して、私たちが本気を出せば……絶対に今日中に終わるからさ」

「そうだぞ……良かったな、夏休み前に宿題が配布されて。夏休みに入ったら夏休みが終わるまで休みはないと思え」

「そ、それって休みがないと言うのではないか!? そ、そうだ一夏の面倒を見ないといけないし」

「なら僕が預かるよ。たまには男同士話したいこともあるだろうし。それに、一夏君も夏休みだし色々と行きたいところとかやりたいこととかあるだろうからねぇ……箒ちゃんもつれて出かける予定だ」

「そ、そんな……そんな素敵イベントに行けないというのか!?」

「束さんからも反省してほしいなぁ……やっていいことと悪いことはキッチリとね」

「それお前が言うか!?」

 

 君がいけないんだ。君が僕のことを使って妄想するからいけないんだ。

 しかも先生まで巻き込んで……先生に男色の気があるってどう見たらそうなるんだよ……

 

「許してくれッ! 私は無実だ! 先生が舌なめずりしたのがいけないんだ!」

「それ唇が渇いていたとかそういうオチだろ」

 

 ◇◇◇◇◇

 

 結局、千冬の抵抗もむなしく宿題は終わってしまったのだった。

 最初は終わらせるため。最後は終わらせないために行動した千冬。はて、何かがおかしい。

 

「私は……無力だッ」

「いいから篠ノ之道場行くぞ。久々に稽古しようぜ」

「…………なら、一つ賭けをしようじゃないか」

「は?」

「私が負けたらおとなしく修行でもなんでもしよう。だが、私が勝ったら修行は無しだ。あと、夏のモデルになってもらう」

「オイ、お前変なイベントに参加してないだろうな?」

「……」

「目 を そ ら す な」

 

 こいつ、腐り過ぎている…………

 

「っていうか、それって英側に得るものがないじゃん」

「……バレたか」

「いやバレバレだよ」

 

 このお嬢さん、最近おかしくなり過ぎじゃないだろうか……

 さて、賭けかぁ……乗らないとこいつは梃子でも動かなそうだし……一つ上乗せするか。

 

「分かったよ、こっちが勝った場合に一つ付け加えるならいいぞ」

「なんだ? 無理難題なら」

「お前が断った場合問答無用で修行」

「……」

「まあ、難しいことじゃない。実は前に頼まれていたある案件があってな……そいつに出てもらう」

「ある案件?」

「ああ……秋の文化祭、去年はみんな忙しくて出れてないから今年は出てくれって頼まれているんだけどな……お前、ミスコンに出場な」

「はっ!? む、無理だそんな恥ずかしい真似できるかッ」

「なら勝てよ」

「……良いだろう。この私に敗北の文字は無い!」

 

 千冬は宣言した。

 だけど……簀巻きにされて、束に引きずられているその光景はとてもシュールだった。

 

 そうしてやってきたのは久しぶりの束の実家。そういえば……束は最近、僕の家にいる方が多いんじゃないか? 心配とかさせているんじゃ「全然そんなことはないわよーむしろようやく認める気になったのね!」ああうん、この人に限ってそれはないか。

 

「さあ、今こそお義母さんと」

「はいはい、向こうに行ってようねー」

「ああんっ束のいけずぅ」

 

 ……なぜだろう。どこかのお嬢様と重なって見えてしまった。

 そんな嫌なイメージを振りはらい、道場に入る……中には、精神統一をしている柳韻さんと門下生たちがいた。いや、柳韻さんの気迫が凄すぎて、門下生たち全員冷汗垂らしているぞ。

 と、そとで掃除をしていた門下生の一人――国松さんが話しかけてくる。

 

「英、一体何があったんだよ?」

「あー……千冬がまたやらかした」

「またかぁ……今度は何をやらかしたんだ?」

「腐っている。遅すぎたんだッ」

「まて、拡散するな!」

「……織斑さん、辛いと思うけどこれも修行だよ」

「見捨てるなー!?」

 

 そして、柳韻さんが精神統一を解いた……門下生のみなさん、お疲れさまです。

 僕は持ってきていた服に着替えて準備を始める。千冬はその間、女子用の更衣室に行った。

 

「すまんな、千冬もあれで寂しがりやなところがあるのだ」

「それは知っていますけど……だからってアレは無いですよアレは」

 

 なんで友達を妄想に使うんだ。しかも腐っている。

 おかげでしばらく先生見たら吐き気がしそうだ。

 

「ううむ……まさかアイツにそんな趣味があるとは思わなかったが……束は大丈夫か?」

「そこら辺はノーマルですよ。というか、束もキレてましたよ。今は外で母子の戦いをしてますけど」

 

 なぜか勝負方法が料理対決になっていた。たぶん後で苦労するのは僕だろうけど……腐った妄想されるよりははるかにマシだな。

 さてと……装備はこれで良し、後は杖を持って完了。

 

「……籠手に錫杖型の武器か、変わったものを使うようだが…………二刀流じゃなくてもいいのか?」

「ええ……僕はね、これが一番使いやすいし使い慣れているんですよ。ハッキリ言って、今の僕に手加減は無いです」

(…………そんなに嫌なのだろうか……自分でたとえるなら、あ、無理だ)

 

 柳韻さんが遠い目をしている。どうしたのだろうか?

 と思ったら肩を強くたたいて気をしっかり持てとか言ってくるし……どうしたのだろうホントに。

 

「待たせたな……どうしたのだ? 柳韻さんとそんなに近づいて今まさに老齢とも言うべき男性と若き肉体を持て余した男が寄り添うなどはしたないぞ!」

「はしたないのはお前の妄想だよッ! 見ろよ柳韻さん吐き気でグロッキーになっているじゃないかッ」

「は、はじめて師匠を倒した!?」

「ち が う だ ろ」

  

 ダメだコイツはやくなんとかしないと……

 

「いいから、構えろ。本気でやらないと後悔するぜ」

「……杖か、初めて使う武器だが良いのか?」

「さっき柳韻さんにも言ったけどな……僕はこれが一番使い慣れている。知ってるのは、束ぐらいだけどな」

「……そうか…………しかし、その恰好はなんだ? 忍者というか、特殊部隊の隊員というか……」

「あんまり気にするな。あと一つおまけだ……武器が杖だけだと思うなよ?」

「なにを……」

「それじゃあ、いくぜ」

 

 無制限一本勝負。開始だ。

 

「デリャ!」

「ッ!? な、なんだその突きの速さは!?」

「言っただろ……一番慣れているんだって」

 

 竹刀を強く押して千冬はバックステップを取る。うん、いい動きだ。でも、負けるわけにはいかない。っていうか、私怨だけど負けるわけにはいかないんだよッ!

 むしろ負けたら恐ろしいことが待っているんだ。是が非でも勝たせてもらう。

 

「ハアッ!」

「足技はもう何度も――ッ!?」

 

 とりあえず、杖を突き立てて足の代わりとして使う。そして、もう片方の足でけり上げたのだ。

 つまりは、杖だけで体重を支えて両足を使って攻撃した。

 その後はお互いの武器を打ち合う拮抗した戦いが続く。

 

「お前は雑技団か!?」

「このぐらい、練習を積めばすぐにできる!」

「それを戦いで使えるというのが異常なのだ!」

「そうおかしいものじゃない。古来から、武術とかを踊りや雑技に隠すなんてよくある方法だよ!」

「だからって実戦で実践するバカがどこにいる!」

「ここだ、よッ!」

 

 もう一度、支点を作り体を回転させて回し蹴りを放つ。そして、飛び上がって三段突きを放ってからバックステップを取って、一気に突進。

 

「なんだこの連携はッ!?」

「それをさばき切るお前も十分おかしいよ」

 

 冷静に状況を見極めよう。

 背後を取るように、ぶつけた武器をスライドさせて移動する。だけど、その度に千冬は距離をとってこちらをにらみ続ける。うーん……拮抗するなぁ……もうちょっとうまくやれるとは思ったんだけど、千冬……長物相手の戦いかたに慣れている。

 

「……なるほど、ISでの戦いは千冬が最もリーチの短い条件。だからこそ、自分よりリーチのある相手に対して慣れているってわけね」

「ふふふ、そうだ。杖を得意としているようだが……生憎私も成長し続けている。このままではジリ貧だぞ?」

「じゃあ武器変えるわ」

「は?」

 

 あっさりと武器を横に捨てる僕を見て、千冬の目が点になった。いや、観客モードだった門下生たちもか。ただ、いつの間にか復活して事態を眺めていた柳韻さんだけが冷静だった。

 そして僕は、腰のホルスターからとある武器を両手に持つ。

 

「……く、苦無?」

「ゴム製のな」

「いやいやいやいや、短すぎるだろ!?」

「大丈夫大丈夫。杖には一歩劣るけど……僕これも得意だから」

「なにを――!?」

 

 懐に一気に近づき、下から切り上げる。さすがの千冬もビビったか。

 

「武器ひとつで動きが変わった!?」

「まあ、それぞれ適切なスピードや間合いってのがあるからね。杖の時はバランスや距離を重視しているけど……これはスピードをとことん突き詰めた戦い方かな。油断すると一瞬だぞ」

「ぐっ!?」

 

 腰を落とし、低姿勢から繰り出されるラッシュ。千冬も自分より小さい相手には慣れていない。散々イチゴアームズで戦っていた経験が役に立っている。最近はジンバーチェリーも使っていたから高速移動中の視界には慣れていた。

 何度も切り上げを使い、千冬の竹刀を揺らす。

 

「だが、攻撃力は――」

「低いよ。でもね、それもこうすれば!」

 

 サマーソルト。昔はよく使ってたっけなぁ……そして、千冬の竹刀は上に飛んでいった。あとは、苦無を首筋に突き付けて……

 

「僕の勝ちってね……いまさら卑怯とか言うなよ? 元々無制限勝負なんだから」

「分かっているさ。しかし……こうして力の差を見せられるといっそ清々しい。夏休みは長いんだ……また付き合ってもらうぞ」

「……そうやってごまかしても無駄だからな」

「…………て、てへぺろ」

「確保ーッ!」

「まって、まってくれ私はまだ死にたく、死にたくないんだー! 一夏ぁあああああッ」

 

 こうして千冬は、いい笑顔の柳韻さんに連れ去られてまた修行に行くことになったのでした。

 ……あれ、マジでキレているな柳韻さん…………嫌な妄想に使われたんだし、当たり前か。

 ちなみに、料理対決の方は僕が乱入して勝利をかっさらいました。

 

「「納得いかねぇ!?」」

 




いつの間にか腐ってしまわれた千冬さんと、久しぶりの篠ノ之道場の回でした。

次回は作中に述べたように、ちびっこズの話ですね。


鎧武一年間お疲れさまでした。
ウロブチで大丈夫なのか心配でしたが、予想以上にスッキリした終わり方でした。
邪武の動く姿を見て、この話での邪武の出し方も本決まりしました。あとイナゴ怪人の使い方も。
そういえば邪武の顔って、邪の字になっているんですよね……じっくり見ないと気づかないけど。
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