原作での時系列がよくわからない箇所なので色々と捏造だと思う。
目がさえた。時刻は夜中だろう……日付が変わっているかはわからないが、どうも枕が変わると変な時間に起きてしまう。
少し、散歩でもしようかと思って外に出ると、空には一面の星が輝いていた。
「……」
思わず、手を伸ばす。まるで手に届きそうなほどの星の輝き、これを見るだけでも戦った価値はあるのかもしれない。
……ふと、あの怪物のことを思い出す。最初はただのリスだった。それがあの果実を食べた途端に白い色の怪物に変化した。前に戦った二体よりは弱かったが、そのあとロックシードを食べることでさらに変化して、強力な力を身に着けた。
僕の知らないところで、何かとんでもないことが起こっている気がする……通常、あんな奇怪な色の植物というのは毒を持っていることが多い。そんな植物に生き物が飛びついて食べるなんてありえないことだと思うのだが……普通の生き物が怪物に変化したのなら、他の動物は? 人間では?
「止めなくちゃいけない。何が起こっているのかはわからない。どうすればいいのかなんて見当もつかない。それでもアレを止めないと大変なことが起こるってのだけは分かってる」
一人の中学生には荷が重いと思う。何年もかけなければ解決できないような問題かもしれない。それでも、自分が逃げて誰かが傷つくことの方が自分にとっては耐えられなかった。
戦う理由なんて簡単でいいんだ。
「……水でも飲むか」
自分で恥ずかしがっているのは、ご愛嬌というやつで。
◇◇◇◇◇
水も飲み終わったが、眠る気にはなれずにブラブラと出歩いている。誰かに見つかったらマズイとは思うが、さすがに先生たちもこの時間は寝ているらしい。
広場に座っていると、誰かの話し声が聞こえてきた。見つかったかな、と思って顔を向けると、班員二人が何か話しているのが見えた。
「――ッ」
「――」
なにか、揉めているような気もするが……見つかって面倒事になるのと、喧嘩なら仲裁した方が良いかなと考える自分で揺れる。
とりあえず、近づいてから考えよう。
「束! いくらなんでも早すぎるのではないか?」
「ちーちゃん、この大天才の束さんの発明に失敗なんてあると思う?」
「いや、そういう意味ではなくてだな」
「大丈夫大丈夫! 万事オッケーなんだよ!」
なにかまた作ったのだろうか……篠ノ之はたまに変な発明をして周囲を困らせているが、見た限り発明自体は織斑も賛同しているっぽい。
篠ノ之の発明は、オーバーテクノロジー気味なところもあるし、出すところに出せば評価されるだろうし……どうも話の内容も学会に行くとかどうとか……
織斑が賛同しているのなら、悪いものではないと思うのだが……なぜ止めるのだろう? 年齢? さすがに年齢が若すぎるとかそういう理由なら止めるべきではないと思うんだ個人的に。
「お前の文章じゃ論文になっていないって何度言えばわかるんだ!」
「大丈夫! この束さんが作ったものだよ! むしろ理解できない方が悪い!」
「結局国語が赤点なのが原因じゃないか!」
スパーンといい音を立てて僕のハリセンがうなる。篠ノ之は思いっきり地面にファーストキスをささげることとなり、つぶれた蛙のようにぴくぴくしている。ちょっとやり過ぎただろうか?
「蜂矢、聞いていたのか?」
「最後の方がちょっとだけな。たまたま寝付けなくて歩いていたら……心配ならお前が文章書いてやればいいじゃねぇかよ」
「……それもそうなんだが、何か嫌な予感がしてな」
「そもそもこいつが文章力つけるなんて一回死んでも治らないって。六道輪廻一周してようやく読書感想文が書けるようになると思うぞ」
「それもそうか」
「ちーちゃんひどい!? っていうか青色はまた束さんの邪魔をするつもりなんだな!」
「いいや? 別にどうとでもすればいいんじゃないか?」
「――ふぇ?」
「やりたいことがあるってのはいいことだと思うぞ。少なくとも、やりたいことから目を背けて逃げるよりかはずっといい。間違っていても、失敗しても、自分のやりたいことをやれなかった後悔はもっとつらいんだからな」
「……なんか、最近は調子が狂う。前はザマスメガネみたいにつっかってきたくせに!」
だれだよ、ザマスメガネって?
「篠ノ之神社の近くに住んでいる教育ママのことだ。逆三角の眼鏡に、その口調。嫌味な性格と絵にかいたような奴だ。奇行を繰り返す癖に頭のいい束をねたんでいる」
「解説ありがとうよ。つーか別につっかかっていたわけじゃないしなぁ……」
本当のところ、いつも自分のやりたいことをしている篠ノ之がうらやましかったのだろう。自分は何をやりたいのかわからず、母さんもいなくなって父さんも遠くに行っていて、自分が誰なのかよくわからなくなっていた。
ぶっ飛んだことをやらかす人物だが、篠ノ之束はいつも正直に生きていた。まあ、それで人に迷惑をかけまくっているからつっかかるようになってしまったんだ。
でも、もう僕は迷わない。やりたいこと、やるべきことはわかった。クラックの向こう側にあるものを調べて、必要なら止めなくちゃいけない。今もあの怪物がどこかで出てきているかもしれない以上、誰かがやらなくちゃいけない。別に僕でなくてもいいのかもしれないが、この腕輪、父さんの死、きっと何か関係があるんだ。だったら、僕がやらなくちゃいけない。いや、僕がやりたいんだ。
「だからさ、それを何があってもやりたいならやってみればいいんじゃないかな。もっとも、やり過ぎたら止めるつもりだけどね。織斑も覚悟しておけよ、お前が思っているよりも僕は強いかもね」
そんな一言を残して僕は部屋に戻った。柄にもないことを言っているなぁと思ってはいるんだけど、最近は調子が狂う。あの怪物だけでも大変なのにあの二人がやり過ぎたら僕が止めることになるのかなぁなんて思ってしまう。どうも、周りの人には僕はその担当だと思われているし。
◇◇◇◇◇
英が去った後、二人はしばらく空を見上げていた。
「本当、何があったのやら……最近のあいつはどこかおかしいな」
「なんか鳥肌が立ったんだよ、この束さんに鳥肌を立たせるなんてちょっと興味レベルを上げてもいいかな」
「まったくお前も素直じゃない」
「なんか言ったかな?」
「いや、何も」
だが、千冬は彼が自然体に見えていた。まるで、今までの蜂矢英が偽りで今の彼が本来の彼であるかのように。きっと、彼は成長したのだろう……いや、変身したと言ってもいいかもしれない。
今までとは変わって、未来を見ている。隣にいる束は最初から未来を見ていたが、なにか遠すぎるような気もして、心配になっていたのだ。
束と出会って自分にできたのは他人を風景としてしか見ていなかったことを直すだけ、あとはどうすればいいのかわからない。そんなことを考えていたころ中学に入学し、彼と出会った。
今でこそ色々と付き合いがあって、結構ひょうきんなところのある真面目な奴という印象だが、最初はそうでもなかった……少し暗いクラスメイトという印象であまり目立たなかった。一か月ほどで世界のすべてを恨んでいるかのような暗さになった。もっとも、彼の母が死んだばかりということが関係していたのだろう。父も仕事で忙しく、いつも家で一人。私も束も一人ではないからこそ生きていられる。他人にたいして興味のない束も大切な者はちゃんといることこそが、人は一人ではダメだと思い出させてくれる。
それから少しして、彼が家事や料理が得意だと知って、少し教えてもらおうとした。愚かにも、彼を救ってやろうなどという上から目線な思考で近づいたんだと思う。自分自身、そうやって自尊心などを満たしたかっただけだろうが、私は彼に近づいた。一人では生きられない。だからこそ私は彼を救えるだろうなどと考えて。結局は必要なかった。直接触れ合えずとも、父とはつながりがある。左手には母の形見だという腕輪をつけていた。口には出さないが大事なものだというのが伝わってきた。彼はそれだけで生きていくこと自体は問題なかったのだ。
いつの間にか、彼に相談していたのは私だった。彼は学校で友人と語らうだけで、本を読んで楽しむだけで、自分で暗さを払拭させていった。結局、私は彼に過去の自分を投影して、彼を救うことで私自身を慰めようとしていたと気が付いたのはいつだったか。
そのあとは、剣へ力を注ぐようになった。私自身が恥ずかしくなり、こうやって何かに打ち込みたくなったのだ。
しかし、私と多く会話していたせいだろうか……束がアイツにちょっかいを出すようになった。最初は、殺すような目で、私に近づくなとでも言ったのだろうが……普通にスルーされてちょっとおかしかった。
さすがの束もスルーされるのは嫌だったらしく、その後もちょっかいを出すうちに蜂矢のハリセンの餌食になるようになった。いつも男子でふざけているときに使うのは見たが、女相手に使ったのは初めてだろう。
そんなこんなで、進級したときには喧嘩友達、そう呼べるような間柄にも見える。もっともお互いに認めるようなことはないだろうが。
「……ふふっ」
「ちょ、ちーちゃんなに笑ってるの!? なんか怖いんだけど!? 束さん何か悪いことした!?」
「…………ああ、たった今な」
「ひょえ?」
束にお礼を言ったことと言い、蜂矢はいつの間にか束に救われていたのかもしれない。憑き物が晴れたようになったのはいいが、それができなかった私としては、無自覚にやらかした束がうらやましいのと同時に、ちょっと恨めしい。
蜂矢もやりたいことはやるべきと言っていたことだし、殺るか。
「なんかこわ……えっと、足をつかんでどうするの?」
「なに、ジャイアントスイングをしたくなってな。お前、魚雷な」
「ちーちゃん謝るから許し、てぇええええ!?」
「私だって普通に笑う時ぐらいあるわこの愚か者ぉおおおおおおおおお!!」
◇◇◇◇◇
朝、篠ノ之がお前のせいだと呟いてものすごい暗い目で見てきて、ちょっとビビった。そして隣で織斑が晴れやかな顔をしているのが気になった。
僕がいなくなった後、何があったんだろうか……
林間学校はその後何事もなく進行して、帰りのバスに乗った。ふと、織斑と篠ノ之を見てみると、織斑は熟睡しているが篠ノ之は外……というより空を見ている。ずっと遠く、どこかここではない場所を見ているような、そんな気がした。
そして後日、パソコンで調べものをしていた際に見つけたんだ。
天才? それとも冷やかし? 中学生少女が考えたパワードスーツ。そんな、見出しと共に書かれていたニュースを。
パワードスーツの名前は、インフィニット・ストラトス。
束さんも最初は学会かなんかで発表したらしいですし、今回はその話の裏話ってイメージで書きました。
人間嫌いを通り越している彼女ですが、大勢の他人の前で発表した以上、何かあったんだろうなぁって思っていたので。
しかし、半分千冬と主人公の知り合った経緯だなこれ。千冬と英の関係は部活仲間とか、そういうイメージ。