あと、途中ご注意ください。
前に解析できるかもと、ロックシードをセットした件についてだが、アレは成功だった。ドライバーのログにロックシードのデータが保存されるため、それを解析して内部にデータを登録することで果実から生成できるようになったのだ。
「英も面白いこと考えたねぇ」
「利用できるものは利用しないとね。結局、尋問はうまくいっていないみたいだし……そっちはどうだ?」
「ゲネシスドライバー試作一号機が一応。まあ、まだ色々と改善しないといけないことが多いし、使用はできないけどね」
「だよなぁ……出力グラフとか見たけど、使った瞬間体が吹っ飛ぶぞ」
「束さんは元々戦闘用の機械なんて作ったことないしねぇ」
「そういえばISって作業用機械のつもりで作ってたなお前……それにしては性能上げ過ぎじゃね?」
「将来的にはブラックホールに近づけたり、太陽のそばまで行けたりってのを目指しました」
「うん、どこまで行こうとしているのかな……僕も人のこと言えないか」
僕が今作っているロックシードもベクトルは違えど似たようなものだし……海中にインベスがいるからってちょっと目標が高すぎただろうか。いや、完成の見通しがある時点で……
「まあ、こいつに関しては追々ってことでな。それじゃあ衣装選びの続きをするか」
「うふふ、ちーちゃんかわいくしてあげるからね」
「約束のミスコンテスト……楽しみだねぇ」
その時、剣道場にいた千冬は悪寒が走ったという。
◇◇◇◇◇
文化祭。学生にとっては心に残るイベントであろう。僕たちは去年参加できなかったけど、今年は出てくれと頼まれたため、クラスの出し物に参加しているのだが……
「なんで女装せなあかんのか」
「英、口調口調」
「ぷぷ、に、似合っているぞ」
「オイコラ千冬、笑うんじゃねぇ」
なぜか男女逆転メイド喫茶をしている。っていうか、お前らはいいよな。千冬は普通にスーツ着ているだけだし、束もギャルソンの格好しているだけじゃないか……
なぜ、服装を男女逆にしたときって男の方がダメージ大きいんだろう。金髪のロングのウィッグをかぶせられているし……
「目も合わせて似合っているよ!」
「そうだよ! これで妄想もはかど……じゃなくて、お客も入り良いって!」
「なあ束、離してくれ。アイツらの頭かち割らないといけないんだ!」
「待って英。似合っているのは本当だしなんか人を殺しそうな眼をしているよ!?」
クラスの女子がどうしてもって頼んできて何が始まるかと思えば……ちくしょう忙しいのが裏目に出たか。当日にだけ参加してくれればいいって言われたからって任せ過ぎた。
っていうか束お前知ってただろ。
「……わ、私だって英の女装見たかったんだ!」
「開き直るんじゃねえッっていうかお前グルだったな!?」
「っていうか今回は束ちゃんプレゼンツだよー」
「人付き合いができるようになった弊害がここに!?」
むしろ被害である。
「プププ、無理だ面白すぎる……普段とのギャップが、ぷぷ」
「千冬てめぇさっきから笑いすぎだろ!? っていうか他のみんなは笑ってないのになんでお前だけ笑ってんだよ!? って言うか男子諸君もさぁ……なんで顔赤らめるんだよ、ちょ、怖いんだけど!?」
四面楚歌。ああ、世の中とは無常なり。
ちなみに鏡で見た自分の姿は完璧に異国のメイドさんだった。
「畜生、マジ無いわ。もうこれはやりすぎってくらいやり過ぎるしかないね」
「あ、やば……ちーちゃん頑張れ!」
「え? ……え?」
束に無茶なことはできないし、これは溜まったストレスをミスコンにぶつけるしかないな。
クラスメイト達は千冬に向かって敬礼しているけど、千冬が事態を理解していない。
もしや……忘れているのだろうか?
「それはそれでいいか。一夏君たちも来るんだろ? 本気でやるから……覚悟しろよお前ら」
全員放心したけど、まだ理解していないな。
「これを見ろ。クラス内人気投票をする。女子は男装の意味がない感じだし……男の僕にケンカ売ったんだから覚悟しろよ? 別に何も賭けないけど……プライドはどうだろうな」
「あ……」
「やばっ……」
二人ほど、鏡で自分の姿を見てしまい、地面に突っ伏した。そして、その他の女子はすぐさま化粧を始める。フフフ、君らがいけないんだよ……
開店準備を進めて、自分のコンディションを確認する。うむうむ。母親のおかげで無様ではない女装である。
「むしろ男だって言われても信じられないよねー」
「男女の性別差って顔には出ないらしいぞ」
「そうなの?」
「そこらへんの詳しいことは知らないけどね……それはそうと、例の企画だけど、アウトのアレもってこい」
「……え、アレはまずいよ…………ちーちゃん死んじゃうよ?」
「知るか」
最後は小声で言ってくれるけど、束……もうそんな問題じゃないんだ。
「見ろよ……千冬腹抱えて笑ってんだぞ。ぶっちゃけむかつく」
「うわぁ…………ツボに入ったんだろうね」
さすがの束もドン引きである。
そうこうしているうちに、開店した我らがクラスのイロモノ喫茶『お待ちくださりやがれご主人様』だが、予想以上の盛況であった。ちなみに、店名は寝ぼけて束が発言した一言から取ったらしい。本人覚えていないけど。
「……しかし、予想以上に繁盛しているなぁ」
「そうだねー」
「英のねーちゃ……にーちゃん、向こうで呼ばれるぞ」
「一夏君、なんでねーちゃんなんて呼ぼうとしたのか後で話し合おうか」
「仕方がないと思う……私も最初は誰だかわからなかったし」
「あっはっは。箒ちゃん、そういうことは思っていても言っちゃだめだからね。ほら英が涙目になってる」
ホントにもう今日は厄日なのか。
知り合いもちらほらきているし。真耶ちゃんと佐々木先生(結婚したから苗字変わったけど、なじみがあるほうで呼んでいる)がやって来ていて、指名されたりも。っていうか一夏君が呼んでいるって言ってたのアンタらですか。
「予想以上に可愛いわね」
「ほっといてください……」
「蜂矢先輩! 良いじゃないですか似合っているんですから!」
「……真耶ちゃんこそ、似合っているよ」
「…………私が悪かったです」
真耶ちゃんの格好は牛柄の服装……作った奴が何を思ったか手に取るようにわかる。似合っているしね。だけど本人は不本意だったのか似合っていると返したら落ち込んでしまった。まあ、僕の気持ちが理解できればそれでいいや。
「なんなんですかッ! この衣装は!? 私をいじめていいんですか!? なんで名札がやまやなんですか混ん畜生ッ……しかもこのままミスコンに登録されました」
「それはまた……」
「真耶、そう落ち込むな……ミスコン、頑張れよ」
「? 先輩も参加するって聞きましたよ」
「は? 私が? なぜだ」
「いや篠ノ之先輩に聞きましたけど」
「束、私は出るなんて一言も言ってないぞ」
「うん。知ってる」
「まったく……本人の了承もなしに――」
「でも英と戦って負けたら出るって約束だったよね」
「――あ」
やっぱ忘れてたのか……むしろ千冬が出場するのは大分前から決まっていたし、楽しみにしている人は多いから今更逃げられないんだけどね。真耶ちゃんもそれがあったから参加を了承した節もある。
いつの間にか、千冬の周りは僕、束、一夏君、箒ちゃん、真耶ちゃん、佐々木先生に囲まれていた。
「……に、逃げられない!?」
「千冬姉ごめん。英のにーちゃんに頼まれて」
「すみません千冬さん、私も見てみたいんです。千冬さんの可愛い格好」
「逃げ出すなんてみっともない真似、お前にできるのかなー?」
「……女にはな、わかっていても逃げなければいけない時があるんだッ」
それだけ言い残して、千冬は高く飛び上がり、ドアに手をかけて廊下に飛び出して――ガッという音と共に捕まった。
「は、離してくれぇええええ!?」
「あらあら? ダメよ千冬ちゃん。せっかく可愛くしてもらえるんだから」
「アイツらの可愛いは絶対違う何かだッ」
「……千冬、強く生きろよ」
「柳韻さん!? なんですかその不吉な一言は!?」
「そりゃ衣装見ているからね……束、そろそろ時間だし会場に連れていくぞ」
「アイアイさー!」
「おまっ、い、いやだぁぁぁ!!」
◇◇◇◇◇
――絶賛腹筋崩壊中――
「だ、大丈夫なの英?」
「無理。無理。おなかいたい」
頑張って千冬を連れてきて無理やりに更衣室に入れたけど……これは面白くなってきた。
往生際が悪いから束がIS使って無理やり衣装変えたのにはびっくりしたけど。
「相変わらず、無駄なところに技術を全力でつぎ込みますのねー」
「お前も神出鬼没だな」
百花さんがいつの間にか後ろに立っていた。いや、文化祭だしいても不思議じゃないとは思うけど。
「ところで束さん、英さんはどちらに?」
「……え?」
「冗談ですよ。このわたくしが女装したぐらいで英さんの見分けがつかなくなるわけがないでしょう」
「この束さんをだますとはいい度胸だね……」
「喧嘩すんなよ……とりあえず席を確保するぞ」
「ちーちゃん、ちゃんと出てくれるかなぁ」
「大体の予想はつきますが、大丈夫でしょう。彼女は逃げ出すような方ではないでしょう?」
「それがさっき逃げ出そうとしたんだよ。だから最終兵器に監視についてもらった」
「お母さん相手にちーちゃんが勝てるわけないしね!」
「どんな人ですか……」
いまだに僕もよくわからない。
とりあえず席を確保しておいたけど、座り順は束、僕、百花さんである。癖のあり過ぎる人たちだが、美人二人に挟まれるってのは周りの視線が気になる――実際には美女三人が並んで座っているように見えている――さて、そろそろ始まる……楽しみだなぁ。
「英、顔怖いよ」
「ああ、そんな顔も素敵」
◇◇◇◇◇
さて、始まったミスコンテストだが……参加者の半数がイロモノだった。
「応援部部長! 郷田! 参る!」
「ボディビル部副部長、片岡なぎさ、うっふん」
ゴリマッチョの女装に始まり、筋肉少女のダブル筋肉が会場を唖然とさせた。
その後も、着ぐるみだったり口裂け女のメイクだったりとイロモノ枠が続く。まあ、つかみと言うかここら辺はネタ枠なんだろうな……
「次真耶ちゃんみたいだな」
「まあ普通に大丈夫だよね」
本気枠一人目は真耶ちゃん。壇上に上がった途端男たちの歓声が鳴り響いた。
「耳がぁあああ!?」
「やっぱ胸か!? 胸なのか!?」
「……畜生ですわ」
いや、二人とも結構胸あるだろ。だが彼我の戦力差に二人は打ち震えていた。触らぬ神に祟りなし、これ以上はツッコまないほうがよさそうだ。
続いて壇上に上がっていくのは真面目な枠の方々。うん、普通だな。インパクトというか圧倒的な存在感を誇る部位も持つ真耶ちゃんが今のところトップかなぁ……
「英って枯れてない?」
「そんなことないって……っていか束がそれを聞くのか?」
「……」
「妬ましい羨ましい……ん?」
「百花さん、どうかした?」
「いえ……あの方どこかで見たような…………」
「あの方って……え? 篝火さん?」
「……ホントだ」
いつもはスク水を私服にしている篝火さんだったが、今日は真面目に参加しているのか、Yシャツ姿だった…………下にはスカートもズボンもない裸ワイシャツ風の格好だったけど。
そして巻き起こる野郎どもの歓声。
「こ、鼓膜ッ」
「結局おかしな格好しているじゃないか!」
「篝火ヒカルノ……あんな変態でしたのね」
「だからそれを君らが言うのか!?」
格好について束は人のこと言えないし、百花さんが人に変態って言うのもおかしいと思うんだ。
そして篝火さんは何でやり切った顔してんだよ。
「あの人もしかして自分からエントリーしたのか?」
「うわぁ……」
「……わたくしも転校してくれば良かったかしら」
「マジでやめてください」
「アアンッ」
何を言っても快楽になりそうでうかつなことを言えないなぁ……言わなければそれはそれで快楽に変えそうで逃げ場がないんだろうけど。
「あ、次ちーちゃんだよ……大丈夫かな」
「ダメだろ。後で凹られるだろうな」
「いったいどんな格好させたんですか」
「見ればわかる」
壇上に彼女が上がった瞬間、会場は静けさに包まれてしまった。
それはピンクのフリフリだった。
それは先が星の形をしているステッキを持っていた。
それは服のいたるところにリボンをつけていた。
それはピンクな衣装でスカートが大きく広がっていた。
それはくるりんとしたツインテールをしていた。
それはどこからどう見ても……魔法少女だった。
「ま、魔法少女ラブリーちーちゃん! ここに見参☆ キャハ♪」
そして会場は氷河期を迎えた。
◇◇◇◇◇
結局、優勝は真耶ちゃんだった。ドジっ子真耶たんのファンクラブが女子の中にも結構いたことが勝利の理由である。ミスコンでは男性票が割れる可能性があるため、残りの女性票をどう手に入れるかというところも案外重要なのかもしれない。
「そんな言葉でこの私のやるせない気持ちをごまかせるなと思うなよ」
「だからってアレは何だあれは。一夏君がおびえているじゃないか」
「い、一夏!? お姉ちゃんなりに可愛いを頑張ったんだぞ!?」
「千冬姉、可愛いはがんばるものじゃないと思う」
「ちーちゃん、流石の束さんもドン引きだよ……どうやったらあの発想に行きつくんだよ」
「参考にしたアニメが間違っていたのか?」
「違う、そうじゃない」
なんでアニメを参考にしているんだ……こいつ、完全にオタク化してやがる…………
会場の大多数は日本代表織斑千冬の姿を知っているだけに、アレは何かの間違いなんじゃないかという空気に包まれていて、しばらくフリーズしたままだった。仲のいい僕らだったからすぐに復活できたけど百花さんなんてこの世の終わりなんじゃないかって取り乱したんだからな。
……僕もパニックになってドライバー装着しかけたし。
「くそっ……来年のミスコンこそ優勝してやる」
「味をしめてんじゃねぇよ」
予想外過ぎて僕の方が大変な思いをした文化祭だった。
あれ? 千冬への罰ゲームだったよね?
ちなみに、クラス内人気投票だったが……工藤先生のメイクで大化けした中沢君の優勝だった。
「って言うかなんで先生メイクできるんですか」
「昔、いろいろあってね」
この人も結構謎である。後で束に聞いた話だが、女子のメイク指導もこの人がしたらしい。いったいどこで覚えたのやら。
そんなこんなで文化祭は幕を閉じたのだった。
リアルで忙しいし、少し更新スピードを緩めようか検討中。
とりあえず、二年生編は大丈夫かな。
うちの千冬さんはもう引き返せない。あと、相対的に一夏のシスコンがショック療法で治った気がする。