仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

64 / 193
ようやくあのタグを生かせる日が来た。
マジで長かった。初期段階から考えてあった話なのに何話かかってんだよって話ですね。


EP64.12月の変身

 季節は巡りて、もう12月である。例の石碑を見つけてからもう一年近いのか……

 最近は更識家や神宮寺家と協力して国内の亡国機業のアジトをつぶして回っていた。

 

「ここもハズレか……時間は後どれだけ残っているのかわからないのに」

「英……あまり苛立たない方が良いよ」

「分かってる、でも苛立たずにはいられないって」

 

 先日、ようやく捕えたやつらが口を割った。

 下っ端らしいから情報は少なかったけど、奴らの目的の一端が判明したんだ……結果は、最悪って言っていいけど。

 どうやら黄金の果実は砕かれてもその力を失っていないようで、各地にバラバラに散っているらしい。おそらくは束が見つけた宝石のようなものがそれなんだろう。

 彼らはそれを集めてマルスと呼ばれる黄金の騎士の力を取り戻すのと同時に、インベスやトルーパーを使った世界征服でもたくらんでいるようだ。

 

「……まったくベタ過ぎて笑えねぇっての」

「ホントだね……それで、小学校近くにいた理由はしゃべらなかったし、本当ムカつく」

「たぶん、その情報だけは隠し通すつもりなんだろ。だから重要度の低い情報を渡して自分の身の安全を確保した」

 

 なかなか考えてやがる……強制的に自白させる手段も思いつかないわけじゃないけど、できればそんな方法は取りたくない。

 

「……次の目的地はどこだ?」

「えっと…………廃工場みたいだね」

 

 他の作戦メンバーは出払っているし……束と僕だけか、一抹の不安があるけど……

 

「反応は?」

「うーん……熱源はほとんどない。たぶん人が一人ぐらいじゃないかな?」

「よほどの自信があるのか……それとも、罠か」

「どうする? 応援呼ぶ?」

「いや、罠だったときに大勢いたらそれこそマズイ。僕だけで行くよ」

「でも……」

「束は待機してくれ。何かあったら通信する」

「……無理はしないでね」

「ああ……わかってる」

 

 そして、僕は目的地に足を踏み出した。

 そこで待っていたのは……もう、何度目の邂逅だろうか。彼はふてぶてしく、されど静かに立っていた。

 一年近くでその逞しさは見違えるほどになった。最初はただの不良だったのに、人って変わるものだなとつくづく思う。

 

「…………久しぶりだな、須郷猛」

『また、アイツ?」

「ああ……雰囲気は重くなってるけどな」

 

 通信をオンにしていたから束にも聞こえているけど……

 

「それで、今日はどうしたんだよ猛」

「ふん……決着をつけに来ただけだ。お前なら俺一人で立っていれば来ると思ってな」

「なるほど……初めから僕をおびき寄せるつもりだったってわけか」

「捕まった時のマニュアルらしくてな、俺の役目はお前をひきつけることだ」

「……で、別働隊があの三人を助けに行くってか…………いや、そんな穏やかじゃないか?」

「さぁな……」

 

 束に通信をして楯無さんたちに伝えてもらうとも思ったが、向こう側があわただしい。それに、これはインベスの声か?

 

「……なるほど、対策済みかよ」

「足止め目的だがな…………だが、早くした方が良いぞ。いつまで持つかわからない」

「ホント、変わったな……容赦しねぇぞ!」

「ほざけッ!」

 

【ジンバーレモン! ハハーッ!】

【ザクロアームズ! 血飛沫フィーバータイム!】

 

 見たこともないアームズ。また新しいのか……だけど、目に見えるほどに噴き出ているエネルギー…………直感的にあのロックシードはマズイと感じた。

 だけど止まることはできない。二人の力がぶつかり合う。そして――――

 

 ◇◇◇◇◇

 

 私はインベスたちに追われていた。ダンデカノンで反撃するも、数が多すぎる。しかも上級インベスが厄介すぎるし……

 

「もうッいい加減にしろぉぉぉ!!」

 

 吹き飛ばし、とりあえず考える時間を作る。どうする? いや、方法はあるんだけどまだ未完成だし……ロックシードの方はできているけど、失敗したときの可能性が頭をよぎる。

 正直、怖い。自分でもどうにもできない恐怖、私の体は凍ったように動かなくなる。

 

「……どうすれば」

 

 その時だった、通信機に英の悲鳴が聞こえたのは。

 

『アガッ!? アガアアアアアアアアアアアア!?』

「英!? ねぇ!? 大丈夫なの!?」

 

 声はたどたどしく、何を言っているのかわからない。でも、一言だけ聞こえた。ごめん、無茶するって…………

 その言葉を聞いて、覚悟ができた。そうだ何を迷っているんだ。アイツは言っても無茶するんだから私だって無茶してやる。そんな子供染みた考えが出てきたけど、それが私だった。そうだ、何を忘れているんだ。

 

「無茶? そんなの知るか……無理やりにでも通せよ。別に失敗するって決まったわけじゃないんだ。成功する可能性だってあるんだから後は、度胸だろ……」

 

 ついつい口調が悪くなるけど、それでもいいか。

 頭は不思議なほどクールになっている。群がっているインベス共を見て、あんな奴らに時間をかけてられないと反省。今度は、私が英を助ける番だから。

 

「……変身!」

 

 腰に当てたのは、ゲネシスドライバー試作1号機。まだ調整が不十分で負荷が恐ろしいほど高い。

 それでも今使わないでいつ使うんだ。

 

【ペアーエナジー!】

 

 英のシルバーロックシードとちーちゃんの零落白夜のデータを基に作り上げた束さん専用のロックシード。梨型のエナジーロックシードである。

 それをドライバーにセットすると、空中に巨大な梨がクラックより降りてくる。

 そして、横のハンドルを握り果汁を絞るように動かす。

 

【ソーダ! ペアーエナジーアームズ!】

 

 ピアノの様な音楽が流れ出し、体に強化型ライドウェアであるゲネティックライドウェアが装着される。しかし、それは通常のライドウェアとは大きく異なるように見えた。さすがの束さんも、こうなるとは予想外だった。

 ペアーエナジーアームズが装着され、鎧が展開される。形は英のシルバーアームズを参考にしたけどそれより少し小ぶりだ。

 そしてその下の服装だが……そう、服装なのだ。まるで普段と同じ不思議の国のアリス。

 

「……いや、束さんらしいのかな」

 

 武器である剣、ヴォ―パルソード……いつか聞いた鏡の国のアリスから名前をとったソレは対インベスに特化した武器である。ヘルヘイムの力を相殺するためだけに調整を重ねたものだ。そのかわりに、ペアーエナジーロックシードはジンバーアームズに使えなくなったのだが。

 

「…………じゃあ、悪いんだけど君らはさ、ここで幕引きだよッ!」

 

 予想以上に身体能力が強化されている。一跳びでインベスたちを追い抜いて、後ろに回り込んでいた。

 ここまでとは思っていなかったけど……チャンスかな?

 

「ヤァッ!」

「――アガッ!?」

 

 誤解している人も多いんだけど、これでも私は剣道場の娘。基本の足さばきや武器の扱いはそれなりに心得があるし、時折練習もしている。まあ、英と箒ちゃんには恥ずかしくて言っていないんだけどね。

 

「時間もないから、とっとと終わらせるよッ!」

 

 剣を二振り。それだけで溶けるようにインベスは消えていった。いや……消えていたのは初級だけで上級はまだ残っている……それに、一匹何かを食べているのが見える――次の瞬間には巨大化して、でっかいゴリラみたいになった……シカインベスがでかくなったのか。

 だけど、止まっていられないんだ……だからッ!

 

【ペアーエナジースカッシュ!】

 

「邪魔だぁああああああああああああああああああ!!」

 

 剣に収束していくエネルギー。それを解き放ち、全てのインベスを切り裂く。

 さすがに、体が痛いけど……英のところに行かないと…………倒れていくインベスには目も向けずに私は走り出した。その直後、インベスたちは爆発して消えた。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 ――――ぶつかり合った。だけど僕は何が起きたのか理解するのに時間がかかった。

 自分でもよくわからない叫びが口から飛び出し、地面を転がっているのに気が付いたのは少ししてからだった。

 

「オイオイ……拍子抜けだぞ」

「……」

 

 なんだあのロックシードは……あんなのどうやったら? エナジーロックシードを上回るパワーなんて……どうする? あれだけのパワーなら負担も大きそうだが、猛は倒れる様子もなく静かに佇んでいる。

 止まっていたら、負けるのは僕だ……なら、やるしかない。無茶だけど最後の手段を使うしかないのか。

 

「……束、ごめん、無茶する」

 

 シルバーロックシードを外し、新たなロックシードと取り換える。そのロックシードとは……

 

【ホオズキエナジー!】

 

 これは賭けだ。ものすごく危険だし、下手したら死ぬかもしれない。

 でも……僕だって負けるわけにはいかないんだ。

 

【ミックス! ホオズキエナジー! レモンエナジー! ピガガガ、ガガガ、ガガガッ】

 

「あ、アガガガっがガアアアアアアアアアア!?」

 

 アームズは形成された。装着もされた。だけど体中に痛みが走る。

 骨がきしむ。血管が熱い。武器は形成されずに、赤い光が体中を駆け巡るだけ。

 

「オイオイ……自爆なんてつまんねぇマネで終らせるつもりか?」

「――なめんな、こちとら何度も修羅場くぐってんだよ……これぐらいでな、僕が倒れるわけないだろ……お前こそ、僕に奥の手を使わせたこと後悔すんなよ」

「そうかよ……なら、こっちも行くぞッ!」

 

 飛び出した猛と僕の拳がぶつかる。いや、猛の拳には武器が付いていた。クロー型のナックルウエポン…………でもその武器にはひびが入っていく。

 

「何ッ!?」

「さっきは見えなかったけど、今度は捕えたッ!」

 

 掌底を叩き込み、相手のアームズにひびが入る。想定外の事態に須郷は驚くばかりだった。だけどまだだ! まだ畳みかけろッ!

 

「オオオオ――ッ!?」

「武器が、一つだと思うなよッ」

 

 いつの間にか猛の手には巨大な斧が握られていた。

 まさか……マルスのように武器を二つ持っているのか!?

 

「アガッ!?」

「食らえッ!」

 

 何が来るのわからないのは対処が――そうか、僕は今ままでアームズの知識頼り過ぎたんだ。だから、知らないアームズ相手だと苦戦する。

 だけど今回はそれ以上に性能が高すぎる。

 

【ザクロスカッシュ!】

 

 斧に集まるエネルギーの粒の数々……そして、強力な一撃が――

 

【ペアーエナジースカッシュ!】

 

 ――白い光で叩き消された。

 

「何ッ!?」

「……英に何してんだテメェ」

 

 束……なのか? だけどその恰好は……

 

「ごめん、束さんも無茶しちゃった……だけど、お相子だよね」

「――そうだな、話は後にして……やるぞ」

「うんっ」

 

 そうだ。僕はもう一人で戦っているわけじゃないんだ。勝てないと思ったら、誰かの手を借りろ。元々誰かに勝ちたいとか、強くなりたいとかで戦っているわけじゃないんだ。

 

「……何人、こようと、同じこと」

「そうかよッ……正直体中痛いからさっさと終わらせるぞ!」

「英! ちゃんと合わせてね!」

「そっちこそ!」

「ほざけッ!」

 

 そして、三つの光がぶつかり合った。

 僕の発動しているジンバーレモン・カオスは武器が形成できない。元々規格にない無茶なアームズなのだ。いつ爆発してもおかしくない危険なアームズだが、身体能力のスペックだけなら今まで使用したどのアームズよりも強い。

 

「うぐっ!?」

「どうしたどうしたッ! さっきから動きが鈍くなってんぞ!」

「――チッ」

 

 それにザクロアームズも体にかなりの負担をかけるようだ……さっきからどんどん動きが鈍くなっている。

 前回あった時から一年近い時間があったんだし、使いこなせるように特訓でもしていたのだろうか……それでも、僕らだって何もしていないわけじゃない!

 

「束!」

「うん!」

 

 積み重ねた時間は言葉を必要としない。ただタイミングを叫ぶだけでお互いの行動がわかる。

 後ろに下がった僕と入れ替わるように束は剣を振り上げていた。

 

「――アガッ!? こ、この!」

「ざーんねーん!」

「オラァッ!」

 

 再び入れ替わり、僕の拳がザクロの鎧に叩き込まれる。

 それでも猛は前に進み、斧を振り下ろそうとするが――

 

「だから、残念って言ってるでしょ!」

「――なんだとッ!?」

 

 束が再び前に飛び出して、斧を切り裂いていた。いや、自分も無事では済まなかったのかエネルギーのぶつかり合いで剣が粉々になっていた。手もうまく動いていないようだが……

 だけど、今は目の前の敵を倒さないといけない!

 

「行くぞッ!」

「オッケー!」

 

【ホオズキエナジー! 【ペアーエナジー!】 レモンエナジー!】

【【スカッシュ!!】】

 

 その技は何度も放った。

 その技は何度も見てきた。

 その動きは今更間違えようもない。

 その動きは今更忘れたりしない。

 後はただ、合わせるだけだから!

 

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」」

 

 全アームズ共通の技、無頼キック。それをただ二人で同時に放つだけだ。

 

「――――――ッ」

 

 須郷猛はとっさに防御した。だが、そのキックはまるで共鳴するかのように威力を増していく。ありえない。いくらエナジーロックシードと言えどそこまでの威力を誇るはずがない。

 スパーキングを発動して防御にその力を回すが――押される。いや、押され続ける。

 

(バカなッ!? スペック上はエナジーロックシード相手にも負けることはないはずなのに、死ぬ気で鍛え上げてきたのに……なぜ、なぜなんだ!?)

 

 頭の中で考えをまとめようしているが、終わりの時はやってくる。

 ザクロの鎧にひびが入り始め、砕けていく。

 もうここまでなのか、そう猛があきらめかけたその時だった。

 

(――――あ)

 

 光が瞬いた。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 終わってみるとあっけなかったが……エネルギーの奔流に飲まれて須郷猛がどうなったのかは分からなかった。彼がいた痕跡は全くない。跡形もなく消え去っていて、彼は消滅したのか、それとも……

 

「……それにしてもボロボロだなぁ」

「そうだねぇ……いてて」

「まったく束も無茶し過ぎだよ」

「それはお互いさまさー」

「……アハハ、そうだな」

「うふふ」

 

 ニヤニヤと笑ってしまう。お互い、体中ボロボロだし、束は腕折れているわ、僕なんて体中の骨がヤバい。っていうか、肋骨は確実に俺ているな……足も折れたなこれ。

 

「あーあ……こりゃ勝ちとは言えないか」

「えー仮面ライダーアリスの初陣だよー」

「なんだよアリスって……いやそれっぽいけど」

「でしょー」

 

 まったく……だけど、今日の出来事を胸に刻もう。

 明日から頑張れる。それだけで十分なんだから。

 それが今年最後の戦いの話だった…………お互いボロボロだからしばらく静養だけど。

 




ってことで束さん初変身の巻。
そして英も大怪我しちゃったけど大丈夫かこれ。

本文中にも語ったけど、アリスの見た目は束さんの一人アリスまんま。そこに鎧とか追加した形。
マスク部分はデュークとキバーラを足して二で割った感じかな。
あと、ペアーエナジーアームズの兜はウサミミモチーフ。いつもの格好に慣れていて英は一切突っ込まなかったけど。
スペック的にはマリカより数値が少し低いぐらい。それでも通常アームズよりかは強いですけど。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。