仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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とくに山もない。
場面の変化もそんなにない。


EP65.1月の初詣

 元日、ついに新年を迎えたわけだけど僕らは無事とはいいがたい状態だった。

 

「怪我の治りが速いのはいいけど……体を自由に動かせないってストレスたまるよな」

「だねー」

「私としてはなんでそこまで大怪我したのか気になるところなんだが……」

 

 場所は篠ノ之神社。僕たちは元日で忙しいからと手伝いに来ているんだけど……正直けが人は邪魔だったかもしれない。

 

「しかし、束も怪我することがあったんだな」

「それどういう意味かな? っていうかちーちゃんも人のこと言えないでしょ」

「オイオイ……私は怪我をしないようにしているのであって、お前らみたいに怪我をするという概念が無い生き物とは違うんだぞ」

「あとで魔法少女のお仕事回すぞ」

「上等だ、表へ出ろ」

 

 そんな軽口もそこそこに、千冬も自分の持ち場へ戻る。アイツは見回り兼用心棒である。まあ本来は僕もそっちの仕事を手伝う予定だったんだけど見ての通り足は折れているわ体中ボロボロだわでおみくじを売ることになりました。ちなみに束も同様。

 

「ってことで、今日は座りながら売りますね」

「まあそんな感じだよねぇ……何が面白んだか」

「一回はやっていいって言われているし、やってみる?」

「…………じゃあ一回だけ」

 

 僕たちはまあ、いい結果が出たらそれはそれでとばかりに筒状の物体から棒を一本出す。これ、正式名称なんだろう……まあいいか。

 えっと……42番…………不吉な……っていうかこういう番号って外すもんじゃないの?

 束の方はと言うと96番……黒? 苦しい? どっちにしろ不吉である。だから外せって。

 

「うわぁ……」

「で、でもまだおみくじ方があるから……うわぁ」

 

 お互いに凶を引いた。うん、ある意味予想通り。っていうか初めて引いた。

 

「もう一度引き直そう!」

「やめておけ……余計悪くなる予感がする」

「……」

 

 束もその光景がリアルに浮かんだのか伸ばしていた手を下げた。

 一応、詳細な結果を見ておこう。

 

「えっと、待ち人はこず、探し物はやってくる? なんだよやってくるって……恋愛はそのままでいいと。あとは健康…………最悪です」

「束さんは待ち人は、めげずにがんばれってこと? 探し物は気長に待ってください。恋愛は言葉にしてだってさ」

「……」

「目をそらさないでよ……で、健康? 気をつけろって」

「僕より少しいいなぁ……」

「そうでもないよ。人間関係で大失敗するって書いてある」

「きっついな……こうなったら千冬にもひかせてやる。おーい!」

 

 大声で千冬を呼ぶが、用件を言ったらあきれられた。まあわかってはいるけど。

 

「まったく、お前たちは……毎日を真面目に生きている私はいい結果を引けるはずだ」

「そうだっけ?」

「ちーちゃん天然だしなぁ」

「お前らに言われたくないわッ! ……いいだろう。引いてやる」

 

 そうして出てきたのは……58番か。えっと……手元の引き出しからおみくじを取り出して千冬に渡す。すぐさま開かれたそいつに書かれていたのはなんと――――

 

「……平?」

 

 ――――ある意味凶よりレアな平だった。

 

「え!? そんなのあるの!?」

「僕も見るのは初めてだけどね……吉でも凶でもないってやつ」

「待ち人、来るときは来る。探し物、探せば見つかるかもしれない。恋愛……自分から動けばうまくいくかもしれない。健康、毎日気を付ければ大丈夫」

「当たり前のことしか書いてないなぁ……他には?」

 

 捕捉で何か書いてあるかもしれない。ちなみに僕は、命の危機があるって書いてあった。心当たりが多すぎるから気にしてないけど。

 

「……なにも、ない」

「ほとんど白いね……束さんだったら逆に悲しくなるかも」

「つーか微妙過ぎるわ」

「……くやしくなんて、無いんだからなッ」

 

 そんな泣きながら言わんでも……

 

「まあ悪いわけじゃないんだしいいんじゃないか?」

「だがな……面白みがないではないか」

「むしろ面白いよ……もう持ち場に戻っていいぞ」

「少し位は慰めてくれ。その胸板は何のためにあるんだ!?」

「少なくともお前には貸さねぇよ」

「英の胸板を使いたいならこの束さんを倒してからにしてね!」

「束も挑発すんな。ほら一夏君たちも後で来るって言ってたし持ち場に戻んなさい」

「呼んだのはお前の癖に……」

 

 それだけ言うと、おとなしく持ち場に戻っていくがその背中は哀愁に満ちていた。

 新年から色々と不安になるなぁ……モンドグロッソまであと一年と少しなのに大丈夫なのか?

 

「まあそれは追々でいいか。束準備はできたか?」

「一応。嫌だなぁ人が多くなるの……束さん的には目立ちたくないんだけど」

「大丈夫だろ……黒い鬘と巫女服だから普段の印象の欠片もないし」

「それ言ったら英は……」

「言うな」

 

 一応男物なんだけどなぁ……巫女っていうか巫男なのに傍から見ると巫女さん…………やっぱ僕って女顔なのかね……筋肉はついているけど着やせするから女装できてしまう自分が憎い。

 とりあえず今日はがんばろう。

 

 ◇◇◇◇◇

 

「おみくじお願いします……あれ? もしかして先輩方ですか?」

「いらっしゃい真耶ちゃん……あんまり名前出さないでね。バレたら面倒だし、束は人ごみ苦手だから」

「うぼあー……39番」

「あ、ありがとうございます……中吉です」

「いいじゃないか。千冬なんて平だぞ平」

「……どうコメントすればいいのか悩みますね」

 

 一番反応に困るんだよね。僕たちの凶は棚に上げているけど。

 真耶ちゃんが行ったあとはそれなりに静かな時間が過ぎていく。まあ、おみくじでそこまでうるさくはならないか……お守りとかの販売もしているけど、

 

「そういえば篠ノ之神社って神道っていうより土地神の信仰に近いらしいな」

「そうなの?」

「……実家の仕事っていうか何やっているかぐらい知っておこうぜ」

「それ英が言えること?」

「…………すまん」

 

 そうだな。僕が父さんの仕事についてもっと知っていれば、色々と悩むこともなかったよ。うん。

 

「まあ本題はそこじゃなくてさ、色々いわくつきのものがあったりするわけだよ。僕も詳しい話は聞いていないけど……女性が使うのを前提とした刀が奉納されていたりな」

「あーそういえば聞いたことある。でも、それがどうしたの?」

「…………ヘルヘイムの森が各地の神話のモデルって説は覚えているよな」

「うん。説っていうか結構確定的だけど……あれ?」

「気が付いたか……ここにはヘルヘイムの植物が地球環境に適応した亜種が生えている。そこから導き出されるのはなんだろうな」

「……うわぁ…………知りたくなかったよ。自分ちところの神様がヘルヘイム関連だってのは」

「まああくまでも仮説だけど……あの木を見たらな」

 

 篠ノ之神社のご神木であるが、もう果実をつける力というか花をつけなくなっている。それでもヘルヘイム関連の代物だから僕も扱いに困っているのだが。

 一応ご神木だしそっとしておきたいけど……

 

「燃やす?」

「物騒なこと言うなよ……僕も悩んでいるけど、流石にそれはまずいだろ」

「そうだね……そんなことしたら箒ちゃんに嫌われるし」

「あと、お前の母さんと一戦交えることになるな」

「無理無理無理」

 

 本当あの人何者なんだろう……僕ですら時々勝てない気になる。身体能力では勝っていても、なんか逆らう気が失せる。

 

「さて、お客さんもまたやってきたし、お仕事だぞ」

「あーやすみてー」

 

 時間もたってきたからそれなりに客は少なくなってきたけど……

 あ、佐々木先生。旦那さんも一緒すか。

 

「……英君?」

「あらぁ蜂矢君に篠ノ之ちゃん。バイト? って篠ノ之ちゃんは実家だったか」

「あはは、お久しぶりです」

「はいはい、おみくじですねー……旦那さんは18番、先生は……29番。肉か」

「篠ノ之ちゃん、そういうのは思っていても口に出さないモノよ……それにこれは幸せ太りよッ」

「ウゼェ……はい、おみくじ」

「うむ……む、大吉か……幸先いいな」

「あっはっは。大凶って酷くね? しかも恋愛運ないとか。もう叶ったわよ! 去年引かなくてセーフってと所かしら? でも子宝は大丈夫よ!」

「大声で言わないでください……しかし、合わせて平ですね。千冬と同じ」

「ブフッ……織斑ちゃん、素晴らしいネタを引いてくれたわね」

「――聞こえていますよ?」

「おうっ!?」

 

 あ、千冬。しかし頭に青筋とは怖いぞ。

 

「何言いふらしているのだお前は……一夏と箒が来たから連れてきただけだ」

「千冬姉、平って逆にすごいな!」

「ち、千冬さん……一つだけ入れたあれを引いたんですか」

「……そうか、これが平か」

「なんか違くね?」

 

 その後、先生はおみくじを結びに行ってしまった。

 あとはこの二人のおみくじか……

 

「む、29番だ」

「俺は30番!」

「と、隣りの番号だな」

「そうだけど……凄い偶然だな」

 

 ちびっこたちって言うか、箒ちゃんはそんなところにも運命を感じるというか運命だと思っているようだが……運命ってのは残酷なんだ。

 僕と束は絶句している。だって、29番って……箒ちゃんはどんなラインナップか知っていても番号の内わけは知らないのか。いや、毎日変えているとか?

 

「……束、ずるはいけないんだずるは」

「分かっているよ……でも、でもっ」

 

 そして、一夏君には何が渡されたのかわからなかったけど、喜んでいるところからいい結果だったんだろう。それに対して箒ちゃんは……

 

「――――ッ」

「あー向こうに結ぶところあるよ」

「……わかりました」

 

 先生の話だと恋愛の部分最悪らしいからなぁ……

 大凶かぁ……後でお雑煮でも作ってあげようか。

 

「なんだか今年は波乱な感じがするよ」

「嫌なこと言わないでよ……しかし、今日は色々な人来てるな。結構クラスメイトもいたぞ。何人かは気が付いたから手を振ってきた」

「あーそういえばちらほらと……あ、筋肉少女隊がいる」

「なんだそれ」

「うちの学校のボディビル部の女子のこと」

「……そういえばそんなのあったな。なかなかにカオスだなうちの学校」

「束さんが埋もれるくらいの個性が集まっているからねぇ」

「…………否定できないな。さっきはミスコン一位もいたけど、あまり騒ぎにならなかったな」

「そういえばやまやミスコン一位だったね。ちーちゃんが敵を見るような眼で睨んでいたんだよね」

「嫌がっていたくせに魔法少女だったしな……今思い出しても鳥肌が立つぞ」

「あのインパクトはそう簡単にぬぐえないんだよ……」

 

 そこで会話もそこそこに、おみくじくださいという一言が……あ、中沢君。

 

「よっ! クラス内一の美人」

「やめてくれ……気にしているんだから。って言うか人のこと言えないだろ蜂矢」

「あっはっは……やめよう、これ以上は不毛だ」

「……そうだな」

「男ってどうしてこう地雷を踏みあうんだろうね」

「……さぁ?」

「って、そっちは篠ノ之さんか!? 相変わらず仲良いな……ハァ、彼女欲しい」

「千冬とかどうだ? フリーだぞ」

「いや、魔法少女はちょっと……」

 

 …………どうやら佐々木先生の言った千冬行き遅れ説は濃厚になったらしい。

 

「じゃあ真耶ちゃんは?」

「逆に俺じゃあつり合いがなぁ……」

「なるほど、高嶺の花に思われて男っ気がなくなるタイプだったか」

「は?」

「いやこっちの話。じゃああっちの筋肉少女隊は?」

「それこそつり合いがとれねぇって!? 見ろよこの細さ!」

「……確かに僕より細いな」

「いや、それはお前の方が筋肉ついてるだけだろ。どうやったらそんなになるんだ!?」

「それはまあ命をかけた戦いカナ」

「どこの世紀末だ……まあ、また学校でな」

「おーう」

 

 命をかけた戦いってのは冗談じゃないんだけどね。

 しかしそれをバラすつもりなんてないし、一生知ることもないだろう。

 

「さて、あとはどのくらいな……ってまだいるぞー」

「工藤先生だね」

 

 美丈夫と言ってもいい感じの先生。工藤烏龍。中国出身ではないらしいけど、そこらへんどうなんだろうか?

 まあ聞いた生徒はいるらしいけど教えてもらったって話は聞いたことないし、詳しいことは誰も知らないんだろうな。

 

「やあ、二人とも……おみくじを一つお願いするよ」

「はいはい………………58番」

「ふぁっ!?」

「どうしたんだい? ……なるほど、平か。他にも引いた人が?」

「ち、千冬が引きました」

「……どちらかといえば悪いほうの運勢の気もするが……まあいいだろう。ご神木を一目見ておきたいんだけど、行っても大丈夫かい?」

「大丈夫ですけど……直接触るのは遠慮してもらってますよ」

「いや、見るだけでいいんだ」

 

 それだけ言い残すと、工藤先生はご神木の方へ行ったけど……どうしたんだろうか?

 

「なんかいつもと違って、暗い感じだったねー。普段はもっと平坦なのに」

「ああ……まあ気にしても仕方がないか」

 

 その後も、ちらほらと知り合いに声をかけられたけどおおむね問題はなくて良かった。

 ただまぁ……最後にあの人が来るわけだけど。

 

「さあ! 英さんとわたくしの運命を占いましょう!」

「ウボァ」

「す、英? 大丈夫?」

「いや……そうだよ、こんなイベントにこの人が来ないわけがないだろ」

「他の方々の迷惑になると思い、最後のあたりに来たのですが、迷惑だったでしょうか?」

「一応そういうところには気が回るのかよッ!?」

「はいはい、さっさと引いてねー」

「では……わたくしたちの運命を売らなう大事な番号は、99番です!」

「えっと……ハイこれ」

 

 ……なんか禍々しいな。

 

「うふふ、見えますわ。幸せな未来を暗示する大吉の文字、が……が?」

「どうしたんだ固まって……!?」

「え、なに? なんて書いてあったの……うわぁ…………さすがの束さんも同情するよ」

 

 …………超凶ってなんだよ。初めて聞いたぞこんなの。

 

「ななな、何ですかこれはぁあああああ!?」

「そりゃ驚くか……超凶だし」

「――ハッ!? これは英さんに調教してもらえるという暗示なのでは!?」

「たくましいなオイ」

 

 ◇◇◇◇◇

 

 後で聞いた話だと、悪ふざけでお母様がお入れになられたそうです。

 変なお祈りでもしたのか、一か月ほど不運が続くといういわくつきの代物で、月末に怪我が治ってきたのもあり調査報告で神宮寺家に赴いた際、百花さんの長い髪は肩に届くぐらいの長さになっていました。あの百花さんが苦笑いしていたのは衝撃的だった。

 床に焦げた髪の毛らしきものがあったのは気のせいだと思いたい。

 ただ一つ言えるのは、前より束と百花さんの仲が良くなったことだけだった。

 髪は女の命って言いますからね。

 




真に恐ろしいのは篠ノ之母。名前つける気はないんですが、キャラが濃いような……
ちなみに超凶は現実にはないと思いますが、平は存在します。

このペースだと200話行くかもねー
そうなると色々厳しいものがあるねー
頑張って短縮できるところは短縮しているけど……三年編は重要なエピソードと少しの日常回で終らせるかも。
いや重要なエピソードだけでも2年編よりながそうだけど。

アーマードライダーロックシード発売、そして鎧武以外のライダーキックの名称も出てきましたね。いや、名前だけ違うだけなんでしょうけど……
ここの小説は、後々のライダーごとに名称を変えようかと思います。いや、基本的に冠だけしか言ってないですけど。

ついにドライブですね
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