今回主人公の出番めっちゃ少ないです。
陽射しがキツイ。私は今、サハラ砂漠に来ていた。
「あっつーい……」
「ですわねー」
しかも隣にいるのは英じゃなくてこの女だし……ハァ。
「百花とおよびくださいな束さん」
「嫌だーっていうか見境なさすぎー」
「まあつれない……しかし、何故英さんは来てくださらなかったのですか?」
「英は日光ダメだからね……今はアメリカ。ロックシードの取引潰していくうちに、卸業者みたいなところを見つけてそこを徹底的に潰すって言ってたよ」
「ああワイルドな英さんも素敵ですわ」
「っていうかいい加減諦めてよ」
「いいえ、一生諦めません。っていうかセットならなおよしですわ」
「もうその変態性には目を瞑るから静かにしてよ……そろそろ到着だよ」
「分かっております……こちらも、特殊パッケージを装着した第二世代IS試作一号機『紫電』準備完了です」
「対インベスプログラムは?」
「問題ありません。対インベス用パッケージ『イサハヤ』も問題なく稼働しています」
私たちはサハラで確認されたとあるインベスを倒すためにやってきていた。
野良だというのは調査で分かっていたから、大型インベス相手にISがどこまで戦えるのかというテストもかねてやってきているんだけど……なんでこのお嬢様と一緒なのか。
「っていうか適正あるなら自分で出場しろよ」
「それは貴女も同じでしょうに」
「……いや、開発者が出場しちゃダメだろ」
「あらわかりましたか……まあ、わたくしの場合はハイパーセンサーのみ適合できていないという欠点がありますから」
「あー……まあ、今の用途じゃあまり意味はないわけだけどね」
「作業用にしてはオーバースペックな代物を作ったのは貴女ですわよ」
「……反省はしている。まあ、こっからは無駄口も叩けないけど、一言あるなら聞くよ?」
「では、英さんの大きさはいかほど――「ハイ終了!」――イケずですわ」
「普通そんなこと聞く!? 失敗したら死ぬかもしれないのに!?」
「だからですわ! 知ることができなかったら死んでも死にきれな――まさか、言わないから絶対に生きて帰れよと言う心遣い!?」
「――やっぱ言えばよかった」
いっそのこと死んではくれないだろうか……それはそれでめんどいし、死なせないけどさぁ……ハァ。
英からハリセン借りてくれば良かっただろうか? いや、それはそれでこの女は喜ぶだけだ。
「とりあえず、ここからは本気でいくよ」
私としても、改良がうまくいったか確認したいんだよね……
【ペアーエナジー!】
ゲネシスドライバー、起動。
腰に巻き付けて体とのリンクを開始……ここまでは問題ない。ロックシードを制御できているかどうかが問題なわけだけど……この前は運が良かっただけで、失敗すれば体へのダメージがヤバそうなんだよね……
「変身」
【ソーダ! ペアーエナジーアームズ!】
空中に浮いた梨が装着され、体に展開する。
エネルギーが体を循環し、身体を強化していく。
「……ふぅ、問題なく起動している…………ちょっと体が重いからまだ改良しないといけないけど」
「それが新しいドライバーですか……資料では拝見しましたが、量産はできるのですか?」
「うーん……無理だね。体への負担が大きいから、束さんとか元々のスペックが高い人しか使えない。量産まであと何年かかることやら」
「貴女がそこまで言うとは……よほどのことなのでしょうね」
「正直、ここまで速く試作機が出来たこと自体、ビックリしているんだよ……まあ量産するならスペックは落とすかな……そこは今後の研究次第だね」
「ですわね~」
軽口もそこそこに、目的地へと進む。そろそろ、問題のインベスが出現したというポイントにたどり着く。
観光客も多いから早々に倒してくれって言われているけど正直めんどいなぁ……
「見えましたわ。証言通り……巨大なカバの様な姿です」
「ヒポポタマスインベスだっけか……まあカバだね。でかいけど弱いんじゃないの? カバだし」
大きさは、タンクローリーぐらい。規格外のデカさじゃないし何とかなるかなーって思っていたんだけど、隣りのお嬢様は難しい顔をしていた。
「……カバって実はかなり獰猛ですわよ。縄張りに入った相手には容赦しないとか。アフリカの野生動物による死者ってカバが最も多いらしいですし」
「…………マジで?」
「まあ、死者の方は本当か知りませんが……獰猛なのは本当です。甘く見ると、マジで死にますわよ。カバの顎ってとんでもない強さですし、遠距離から狙った方が良いのでは?」
「あー……じゃあこっちに変えるか」
一応、持ってきておいてよかったよ。コレ。
【ソーダ! レモンエナジーアームズ! ファイトパワー! ファイトパワー! ファイファイファイファイファファファファファイッ!】
長ッ!? 他のアームズより長ッ!? いや、レモンエナジーアームズは元々あったデータを基に作ったから音声は存在するとは思っていたけど、だからってこれは長すぎるだろ!?
「……まあわたくしは人の趣味にも寛大ですわよ。その、チャーミングポイント的な感じですし」
「これ束さんがつけた音声じゃないからね!?」
それだけは弁明しないといけない。乙女のプライド的に。
むしろそういう趣味なのは、今頃アメリカでアメコミ的な活躍をしている私の彼氏です!
「そ、そうですか……」
「ううーあとでオミットしてやる」
少しだけ嘆いて気持ちを切り替えよう。
正直面倒だけど、あのインベスをとっとと倒すか。
「準備は?」
「完璧ですわよ……貴女こそしくじらないでくださいな」
「分かっているよ……行くよ!」
砂漠の上だろうと、問題なく走れる。脚力が強化されたこともあるが、エネルギーフィールドを貼ることで悪路でも問題なく走れる。
上を見ると、紫電は問題なく起動している……紫色の機体に、両肩のあたりに設けられた特殊エネルギー砲。それが対インベス兵装の一つ。イサハヤとは複数の対インベス兵装からなるパッケージで、今までのインベスのデータを用いてそれぞれに有効な武器を積んでいる。初見のインベス相手でも対処できるようにするのが大変だったんだけど。
「わたくしは上空から射撃します。束さんは下からお願いしますわ!」
「言われなくてもわかってる!」
ソニックアローを構えて、狙いをつける。マスクにカーソルが現れてアシストしてくれるけど……まだ荒いか…………むしろ、視覚アシストがないのに狙いをつけられる英がおかしいのか。束さんもある程度はいけるけど……激しく動いているのに命中させるのってやっぱり馬鹿げているよね!
「ハッ!」
『行きます!!』
通信音声に切り替わったか……私の矢と、紫電の砲撃はヒットして爆風が巻き上がった。そして、ソレと同時にあふれ出たのは――獣の雄たけび。
「ウグウウウウ!?」
『あ、あら? ブースターが……? おかしいですわね、いまブースターが切れたかと思ったのですが』
「――気を付けて、たぶん電子機器に誤作動を起こすタイプだ。いくら専用の防御プログラムを入れているからってインベス相手にISじゃ不利なのは変らないんだよ……後方から射撃。近づいたら危険」
『分かりました。ですが、見たところ効果は薄いようですわよ』
ヒポポタマスインベスは大きなダメージを受けた様子はなく、全然元気だった。むしろ、怒っているのか今にも暴れだしそう……仕方がない。私が近づいて倒すしかないか。
いや、まだ様子見だ。下手に近づいた方がリスクが大きい……
「アイツを中心に陣取りながら、回転。狙撃で徐々に削り取って様子見するよ」
『了解……いきますわよ』
「ゴー!」
紫電は左回り、私は右回りで狙撃していく。索敵能力は低いのか、私たちのどちらに攻撃すればいいのか悩んでいるようだ……これなら、少しづつ削れば――だけど、そうはうまくいかない。ヒポポタマスインベスは体を揺らしたかと思うと、次の瞬間紫電めがけて茶色い川を吐き出した。
「ガアアアアアアアアア!!」
『アガッ!? ――砂がッ!』
「大丈夫!?」
『え、ええ……どうやら砂を口から吐き出して攻撃したようですわね――射程も広いですし、絶対防御は発動しないし』
「命にかかわらないダメージならカットできないんだよ! それよりシールドエネルギーは?」
『まだ余裕はありますけど、正直センサー系がバグってますね……あの砂、見た目以上に厄介です』
それは分かった。遠くからの狙撃じゃ対処しきれない。だからと言って、近接で倒しきれるか……いや、倒しきらないといけない。何のためにドライバーを使ったんだ。一人だと無茶するバカのためだろ。
自分でもわかっている。女の子らしくないのは。それでも束さんはあの人に可愛いと思われたい。頼れると思われたい。そう、思えたから――だから可愛さも強さもどっちもとってやる。
【ソーダ! ペアーエナジーアームズ!】
ペアーエナジーアームズは脚力を特に強化している。ヒット&アウェイを取るためにそのようになったんだけど……今この状況で、一つだけ策を思いついた。
あいつの武器は砂。おそらく、周りの砂をとりこんで発射している。実質弾は無限。だけど、それが落とし穴だ。
「爆弾、ある?」
『ええ山ほどね……大丈夫ですわよ。貴女はちゃんと隙を作りなさい。最後は決めてあげますわ』
「残念、最後は束さんが決めるよ。どうせお前じゃ止めを刺せないって」
『あら? そういわれると本気で倒してしまいたくなりますわね!』
お互い、何を考えているのかわかっている。だから、余計な相談はいらない。
私は前に、百花は上に飛び上り、奴の隙を作る。
「狙撃しっかりしろよッ」
「――アガッ!?」
『分かっていますわ! むしろ貴女こそ怪我したりしたら怒りますわよ!』
「誰に――【ペアーエナジースパーキング!】――モノを言っているのかなッ!」
剣を後ろに投げ捨てて、足にエネルギーを集める。そして、左足を軸に右足を上に振り上げる。そのまま下に降り下げて円を描き、口を開こうとしていたヒポポタマスインベスの下あごへ蹴り上げる!
「ハアアアアアアア!!」
円月を描くように放たれたキックは、計算以上の威力を叩き出してインベスを吹き飛ばす。
その際に、すぐさま私は後ろに下がって剣を回収して備える。
「今!」
『もう撃ち込みました!』
上等。ヒポポタマスインベスはこちらを向いて、体を揺らしている。砂を取り込んでいる……まあ、その砂には不純物が混ざっているけどね。
「――ッ!?」
大爆発。口から濛々と煙を噴き上げてヒポポタマスインベスはふらつき始めた。やっぱ、頑丈だなぁ……さっきやったのは簡単で、砂を取り込むときに爆弾を混入させて爆発させただけに過ぎない。
しかし、その威力は見ての通り。
『ああもう! しぶといですわ!』
「大丈夫、後は止め指すだけだから!」
前に走り出し、剣を構える。そう、ここまで弱ったのならあとは一撃だけだった。
ハンドルを握り、一回押し出す。
【ペアーエナジースカッシュ!】
剣に集まるエネルギー。剣が輝きを増して、インパクトの瞬間一際大きく輝く。
「はあああああああああああああああ!!」
そして、砂を操るインベスはまるで砂になったかのように消え去った。
◇◇◇◇◇
「一応、ISでもやりようによってはインベスも対処できるわけか」
「ですわねー」
「うん、それはいいよ。でもさ、なんで私とお前が一緒のお風呂に入っているんだよ!」
「たまには裸の付き合いもいいじゃないですか。っていうか砂も落としたいですし」
「それは束さんも同感だよ! でもなんで一緒に入る必要があるの!?」
「――良い身体してますね」
「イーヤー!!」
「冗談ですわよ」
「冗談に聞こえないんだよ」
油断すると、なんか本当にえらいことになりそうで怖いよ……
というか会うたびに変態度が増していくような…………
「ああ、英さんもいればよかったですのにー」
「それには同感だけどね……今頃何してんだろ」
「電話してみたらどうですか? IS使えば通話できますでしょう?」
「一応できるけどさ……腕輪型にしておいて良かったね。便利だし……えっと、英ー聞こえるかーい?」
『――あ、束? ごめん今無理! なんか巨大重機が合体変形して巨大ロボになっているから今手が離せない!!』
それだけ言うと、英の通話は切れてしまった。っていうか巨大ロボって何?
「……アチラも大変なようですわねー」
「いやいやいやいや!? なんかカオスなことになっているっぽいよ!?」
「英さんですし、今更巨大ロボごときに負けるとは思えませんが?」
「…………たしかに、今のはどっちかって言うと喜んでいるときの声だったような……」
「男の子の夢ですからね。巨大ロボ」
「あー好きそうだな……そっか、合体変形って言っていたし、英の好みに直撃したのか。なら仕方がない。ゆっくり体の疲れをいやそう」
「ですわねー美女二人の入浴シーンより巨大ロボを取る方ですからねー」
「そうだねーせっかく写メってやろうかと思ったのにねー」
「「アハハハハ」」
ってことで女の人は怒らせると怖いスペシャルでした。
そして書き溜めが尽きました。
頑張って溜める予定ですが、できなかった場合しばらく更新は休み休みになります。
次回、そのころアメリカでは……