力は拮抗――することはできず、受け流して攻撃を流すので精いっぱいだった。
『ほう、これを受け流すか』
「どうせ分身体の癖に、前より強くなってやがるッ」
『そこまでわかっていながら、わざわざ戦うのか?』
「知るかバカッ!!」
ただ、徒労に終わろうにもこいつを倒さないと――わざわざ僕の前に出てきたというよりは、他に意味があるように思える。
『いいのか? 戻らなくても……』
「――ッ」
嫌な予感が増した。だけど、今から戻ってどうにかなるのか? それよりもこいつを野放しにした方が後々キツイことになりそうだ。
そして、猛が奪った宝石……それとさっきの球。もしも、あれがこいつらの目的なら?
マルス自体、僕に戻ってほしいような言動だし……
「さっきの球を媒介に、分身を作った。ってことは、あれがお前の欲しいもの――力の源ってところか?」
『――ッ!!』
「図星、かよッ!!」
ソニックアローと剣がぶつかりあう。そして、マルスの気迫が増した――なら、前に倒した分身の分は力がそがれているとみていいか?
『そうだ――貴様のせいで完全な復活は無理だ。だからこそ、許すわけにはイカナイ!!』
「勝手なこと言うな!! 何が目的か知らないけど……どうせろくなことじゃない。だから、ここでぶっ倒す!!」
『ならば…………我が力、取り戻すため。お前には死んでもらう!!』
「消えるのは、お前だぁあああああああああ!!」
何度も火花が散る。力では負けているし、勝てるかわからないけど……勝つしかない!
ジンバーレモンじゃ分が悪いし……スピードで勝ってもジンバーチェリーじゃ決定打に欠ける。こいつの防御力を突破できそうなのは――
【ジンバーメロン! ハハーッ!】
「ゼリャアア!!」
『――ッ!! 想定以上の、パワーだと!?』
押し、こむ!!
下に振り下ろし、つばぜり合いをしていた剣を地面に埋め込ませる。そして、横殴りに振り回す。
『ガッ!?』
「――――!!」
盾で受け止められたなら、それすらも貫通させろ! ブレードを二回たたいて、エネルギーをソニックアローに送り込む。
【シルバーオーレ! ジンバーメロンオーレ!】
緑色の光が広間を照らす。騎士の盾はその衝撃を受け止めきれずに、火花を激しく散らせている。
行ける。そう思った……でも、そうは簡単にいかない。
『ナメルナァ!!』
「――アガッ!?」
――蹴り!? 足払いのように放たれた蹴りが、僕の体を吹き飛ばす。防御力も強化されたこのアームズでも伝わる衝撃――ッ!? さらに、とびかかられて、盾で僕の体は殴り飛ばされる。
『ハァアアアア!!』
剣を取り、盾の中にしまうマルス。その光景を見たとき、言いようのない嫌な予感が駆け巡る。咄嗟にメロンエナジーロックシードをソニックアローに取り付け、弓を引く。その際にブレードも一度叩く。
【ゴールデンスパーキング!】
【シルバースカッシュ! メロンエナジー!】
盾から放出される熱線、そして弓から放たれた矢、その二つがぶつかり合い――弾けた。
「――ッ!?」
『ゼリャアアア!!』
まだ、突っ込んでくる!? だけど――負けるわけにはいかないんだ。だから、だから!!
「う、おおおおおおおおおおお!!」
『――ハアッ!!』
剣が首筋を捕える――その瞬間だった。一瞬で知覚外のスピードで加速して相手の首筋にソニックアローを叩きつける。だけど、炎の爆発が僕を吹き飛ばした。
「――ッ!?」
『今のは、良かったぞ……だが、甘い!!』
矢を放ってすぐにジンバーチェリーに取り換えていたのだが――一歩届かない。いや、届かせるんだ。
そう自分に言い聞かせて、ソニックアローに取り付けたままのメロンエナジーロックシードにパンチを入れる。
【メロンエナジー!! ――ガギッ!】
そして、ソニックアローをブーメランのように投げつける!!
マルスはとっさにそれを盾で防御したが――それこそ狙いだよ!!
爆発するメロンエナジーロックシード。正直、束には謝っても足りないとは思うけど――ここはこれしかない。だから、飛び込む!!
「はあああああああああああああああ!!」
【シルバースカッシュ! ジンバーチェリースカッシュ!】
体を高速回転させて、遠心力によりキックの威力を増大させる。それをマルスへと叩き込む。マルスは一瞬で防御の判断をとったが――その盾はもう、終わりだ!!
先ほどの爆発でひびが入った個所に蹴りが入る。それにより盾は崩れ去り、マルスは弾き飛ばされる。
『――な、なに!?』
「まだ、マダアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
チェリーエナジーロックシードを無双セイバーに取り付ケ、マルスに向かッテ加速スル。頭に入るノイズがひどい。でも、それヲ超えろ。受け入れろ。
決定的なラインさえ越えなければいい。だから、もっと前に、前に!
【シルバースカッシュ! イチジュウヒャク! チェリーエナジー!】
体を回転させて、再び遠心力を加えていく。そして、その刃が届く――前に、マルスが剣で防御する。でも、それを押し通せ。負けるわけにはイカナイ。失敗するわけにはイカナイ。
ノイズが、頭に浮かんだ顔を押しつぶそうとするが――そんなの、僕が許さない。
だから、そのノイズを飲み込んでしまえ!!
『な、なんだこのパワーは!?』
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
そして――――――――黄金の剣は、へし折れた。
『お、おの、おのれ、オノレ、オノレェ!!』
「――まだ、だ――――もっと先へ!!」
限界を超えたからか、チェリーエナジーロックシードがショートしてしまう。
レモンエナジーを再び取り付け、ジンバーレモンに変身する。武器を展開する暇はない。なら、この拳を叩き込め!!
されど、一歩届かない。聞こえるスカッシュの声。そして、下から蹴り上げられた僕。
「――え」
『甘いと、言ったはずだ!!』
ドシャリと、どこか遠いところから聞こえるような音。そして、身体に走る激痛。
「が、ああああああああ!?」
『いいだろう、この程度のダメージは大目に見よう――貴様は危険だ。だから、ここで倒す』
く、くそっ……どうする? 素の能力に差がある。幸い武器は破壊できたけど――キックでも食らえば終わる。地力の差がここまでデカいなんて――さっきまでは、こちらのロックシードを犠牲にするやり方だったkら何とか食らいつけただけ。でも、それも打ち止めか?
……頭に浮かぶのは、僕が死んだ後の光景。束は泣くだろうな……いや、世界滅ぼすかも。そんなの嫌だなぁ…………それに、他にも泣く奴いるのかな――そう思うと、ちょっと無茶してでもアイツを倒さなきゃって思えた。まだ、立ち上がれた。目の前に迫る光の筋。これは――キックか。だけど、まだ届いていない。だから、振り払うように、前に飛び込むように、その技をかわす。
『――なんだと!?』
「そうだ、死ねない。死ぬわけにはいかない。だから、僕は――!!」
二度と使うつもりはなかった。それでもこれを持ってきていたのは、僕がこいつに生かされたからなんだろう。死にかける原因になりそうなのに、なんだかんだで僕はこれのおかげで生きている。
最初は、マルスとの戦いで。その次は、忘れもしない花村さんの時。その後も色々とあった。
【ホオズキエナジー!】
ちょっとどころじゃない無茶だけど、これしかないのもまた事実。いわば、僕の第六感が叫んでいる。マルスに武器のない今なら、こいつで押し切れると!
【ホオズキエナジー!! レモンエナジー!! ――!!】
音声は、そこでノイズが走るようになった。無理させてごめん。だけど、今は僕に力を貸してくれ。
ジンバーレモン・カオス。二種類のジンバーラングがその力の異質さを伝える。武器は展開できないが、今はそれも関係ない。
「あああああああああ!!」
『――――グッ!? な、なんだこの力は!? いくらエナジーロックシードを掛け合わせたところで、ここまでのパワーは出ないハズなのに!?』
「――それが、お前の限界だ!! 組織のボスって言ったってお前には何もない! 殴りあっていればわかるんだよッ!」
お互いの拳は、その体を捕え続ける。されど、押されるのはマルスのみ。
ステゴロで戦えば、素のスペックの高さが影響するのに、安定して高い力を出すマルスより、不安定で体に痛みが走り続けている冠の方が勝っている。それはなぜか?
「――お前には、何もない! 一人で完結していて、周りを利用しているだけのお前には絶対にわからないだろうなッ!!」
『――知ったような口をッ!!』
「だから、なぐり合えばわかるつってんだろ!!」
『――ガッ!?』
頭突き。言葉にすると簡単だが、これが結構な威力を誇る。そして、マルスはよろけて――大きな隙が出来た。
――なんとなく、そんな気はしていた。心が、震え上がるほどにロックシードはその力を増していく。
【ホオズキエナジースカッシュ! レモンスカッシュ!】
人の心に影響されて、その力を増減させるのだ。そこにどういう理屈とかがあるのかわからないけど……その事実だけわかればいい。
ただ、自分の心をこの一撃に込めるだけなんだから。
「はあああああああああああああああああああああ!!」
『オ――――オオオオオオオオオオオオオ!?』
◇◇◇◇◇
いつの間にか、変身は解けていて……体中が痛い。でも、立ち止まっている暇はないよな……
再びブルーベリーアームズを発動させて、ミコノスに戻らないと……
「嫌な予感が、止まらない」
マルスの言葉が正しいなら、あっちにも何かしでかしているかもしれない。
束たちが危ない――そう思って僕はその歩みを進める。
ふと、天井を見上げる。そこに描かれていたのは――――
「――え」
黒い女王? でも、なんで黄金の果実を『二つ』もっているんだ!?
「…………いや、いまは考える暇は無い」
水に飛び込んで、急いでミコノスまで泳いでいく。ボード形態の方が速いけど――姿勢制御するだけの気力がない。この状態で戦っても勝てるかどうか……しかも、ホオズキとレモンのエネルギーが切れていたから…………使えるエナジーロックシードはピーチだけ。あとは、シルバーが使用できる。スイカも一応持ってきているけど……
「とにかく急がないと」
体が重い、でも嫌な予感が僕を突き動かす。
とにかく、一言謝らないと……
そうしてたどり着いた海岸。あれから、どれだけ時間がたっただろうか? 変身を解除してホテルに向かうけど……騒がしさはない。
「――思い過ごしなら、良いけど」
とくに何かあった様子もないけど……無事を確認しないと。
部屋には誰もいないし……いや、まだクラス行動時間か。
「とにかく、みんなを探して――」
「蜂矢君? 探したんだよ、いままで何やっていたんだい?」
「――た、田中君」
よかった……田中君は無事そうだったし、探してくれていたのか。
「まったく、突然いなくなるからびっくりしたよ……ほら、向こうで先生が待っているよ」
「う、うん」
そう言われて田中君に先導されて進む。なんだ……マルスがこっちに危害を加えたんじゃないかって心配だったんだけど、そんなことないみたいで安心した――――ただ、なにか違和感が付きまとう。
……先生ってのが工藤先生だというのはいいとして、なんだろう? この言いようのない感覚。
向かっているのは人気の少ない場所――遺跡巡りなら、人はもう少し多そうだけど……いや、まて。なんで田中君が僕を探すんだ? 佐々木先生はうちのクラスについてきていたから、案内役は変われるし、ホテルに残っていてもよさそうなのに……
それに生徒が僕を探すとしたら、仲のいい連中。それこそ束か千冬、男子なら同室の4人だぞ? 田中君とはそこまで接点は――ふと、嫌な予感が一気に増した。
「――――お前、誰だ」
「嫌だなぁ……田中太郎、君のクラスメイトじゃないか」
「それは分かっている。お前が何者か聞いているんだ」
「――あちゃぁ……失敗したか。本当、勘が鋭いんだね。まあ今まで隠し通せただけでも、上出来ってね」
それだけ言うと、彼は走り出していく。その先の広場には――いた。クラスメイトと先生、全員、そこに。
そして――一人を除いて、全員が座っている。その周りにはインベス!?
「これは、一体!?」
「――さあご紹介しましょう! 私はただのクラスメイトにあらず! その正体は――!!」
田中が腰に巻いているのは見知ったベルト、戦極ドライバー。そして、その手に握られているのは――ドングリロックシード!?
「亡国機業エージェント、シャドウ! またの名を仮面ライダーグリドン!」
「――嘘、だろ?」
「――――――残念だが、そうではないよ」
「……せ、先生?」
唯一、座っていなかった人物――工藤烏龍先生がインベスに囲まれておらず、仮面ライダーの隣に立つ。
「――――あなたも、ですか」
「ああ、そうだ……そして、私はデンジャー…………またの名前を仮面ライダーブラーボよ。よろしくね、ボウヤ」
変身し、口調が女性みたいになる。でも声はそのままで、酷く嫌な印象を与える。
そういえば……千冬が前になんか言っていたような……あれってマジだったのか。
端々にそれっぽい言動があったけど……
「っていうか、いつから……」
「最初から、かしらね?」
「君らが入学したこともそうだけど、うちの学校は色々と有名人を排出するからね。今のうちにツバつける意味もあって潜入したんだけど、君がいたからうかつなことができなくてね」
「さあ、一方的な殺戮を始めましょう?」
――――みんなは人質に取られて、僕は生身のまま……状況は最悪だな。
ついに正体を明かしたブラーボとグリドン。わかってた人はいたかな?
一応、ヒントは少しづつ出していました。
実は千冬さんの眼力は本物だった。
まあ分かり難いようにギャグパートに伏線はっていたんですけど。