仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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さすがに、主人公も孤軍奮闘はしない。


EP08.目覚め始めた絶望

 世間はインフィニット・ストラトス、略称ISについて持ちきりだった。今のところ、どういうわけだか女性にしか動かせていないパワードスーツ、というふれこみのものが一機で世界征服をも可能にしてしまった超兵器。そんなのが世間の認識だ。おそらく、この先もその認識は変わらないだろう。

 篠ノ之は本当にこれで良かったと思っているのだろうか? 天才の考えることは分からないが、僕はこれで良かったなんて思ってほしくなかった。

 しかしこれで世間の話題はISに向いている。もうすぐ夏休み、怪物が最初に現れたときは新しいUMAだとかいう話も出始めていたから、調査しに行くと変身しているところを見られるリスクが上がりっぱなしでひやひやしていた。めぼしい手掛かりもないし、この休みで遠出できるから色々見て回れる……出来ればギアナ高地に行って、研究所を確かめたかったところなのだが……

 

「旅費とかパスポートとか保護者とか色々となぁ……」

 

 いや、パスポートは去年とったのがあったからまだ大丈夫か。となると問題は旅費と保護者と手続きとか色々……ヤバいな。一人じゃどうしても限界がある。

 結局のところ、誰か事情を知っている人とかの協力がいるわけなんだよなー。

 

 

 

 で、そのまま進展もなく一週間が過ぎた。新しいロックシードとしてマツボックリは手に入ったけど、使いどころはあるのだろうか? 一応、シルバーよりは素早いんだけど。

 それよりも問題なのは、クラスというか学校の空気。ギスギスし過ぎている。まあ篠ノ之がやったことがことだけに、学校どころか政府レベルで持て余しているのだ。ISの有用性は実証された。各国もISの研究開発を始めるだろう……ただ、どうやらISのコアというのは篠ノ之にしか作れないらしいのだ。完全なるブラックボックス。誰にも解析できない。どうやら篠ノ之は僕の予想以上にやらかしたらしい。

 

「で、君はまた僕に相談するわけね、織斑クン」

「なんでクンづけなんだ……なにか、嫌なことでもあったのか?」

「んー、進展のなさとなんだか厄介ごとの臭いがするから」

 

 このタイミングで織斑の相談。間違いなく奴についてだろう。場所はいつものファーストフード店。そろそろ店員に顔を覚えられてずる休みに使えなくなってきた。いや、もう好き好んで休まないけど。

 

「すまない、だが……束を説得できるのはお前しかいないんだ」

「なに? なんか問題でも?」

「……アイツをせめて高校に進学するように説得してくれ」

「いや無理だろ」

「な、なぜだ!?」

「面接は政府の方で免除してくれるかもしれないけどさ、色々と刺激しないように。でもあいつの国語の点数みたことあるだろ?」

「――あ」

「どんな天才にも弱点ってのは存在する。アイツは文章力は学年でワーストなんだよ」

 

 ぶっちゃけ赤点。他の点数が良すぎるから困るけど(数学で無駄に長い新しい公式で解いておいて満点とか出すぐらいには困らせる)。

 篠ノ之をその気にさせるには……どうすればいいかねぇ

 

「なんとかならないのか?」

「…………アイツたしか負けず嫌いだったよな?」

「ああ、そうだが」

「じゃあ簡単だ。今から手紙書くから渡しておいてくれ。アイツならこれで文系も猛勉強するよ主義に反してでも」

「そ、そんなにすんなりといくのか?」

「いくよ。案外アイツもわかりやすい生き物ってことだ。少なくとも同じ言語で会話できる人間って以上はね」

 

 言葉の通じない怪物ほど厄介なものもない。それに比べたら可愛いよ。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

「で、この手紙か……ハハハ、傑作だよ。この束さんに向かってこんな、こんな屈辱的なものを」

「おい束? 大丈夫か……なんか顔が怖いぞ」

「平気だよちーちゃん。あの舐め腐った青色に目にもの見せてやる。全教科満点で合格してやるよあの眼だけ外国人がッ」

「人種差別はいけないと言ったはずだが……それにしても、まさかここまで効果があるとは」

 

 ――拝啓 篠ノ之束様。天才だと常日頃から言われているあなた様につきましては将来、おバカタレントの道を歩むことと存じます。たとえ数学で難解な公式を生み出しても、科学で新しい理論を実証したとしても、あなたが国語と家庭科と音楽と英語と社会とその他さまざまな教科で赤点をとった事実は覆らないのです。いやぁ、世間でもてはやされている美少女博士が実は赤点女王だと知られたら大変でございますね。きっと史上最低点で高校入試に落ちることでしょう。今から勉強しておけば織斑千冬嬢と一緒に学校に行けたのにと悔しがること間違いなし。それでは 敬具――

 

「さすがにこれはやり過ぎだと、思うのだが……」

 

 束もやる気になったし、別にいいかとおもう千冬であった。きっと、被害は蜂矢に行くだろうから。

 こうして、ISコアの製作の傍ら篠ノ之束は生まれて初めての猛勉強をするのであった。だが、これが原因により彼女が世界の異変に気が付かなかったのだ。それは吉と出るのか、凶と出るのか誰にも分らない。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 さすがにやりすぎたかなぁなんて考えながら、家まで帰ると家の前に見知らぬスーツの女性がいた。

 不審者? とも思うがどこかで見たような気もする。

 

「えっと、うちに何かご用ですか?」

「……蜂矢英様ですね。お迎えに上がりました」

「いや、いきなり言われても……あれ、もしかして」

 

 そこで少し、思い出した。たしか、前に父さんに見せてもらった研究チームの写真だったはずだ。この女の人が映っていた記憶がある。白衣ばかりの集団に一人スーツを着ていたから目立っていて、なんとなく覚えていたんだ。

 

「父さんの研究チームの人、ですよね?」

「正確には、バックアップチームの一人です。事故のあった日、私は海外にいたため無事でした」

「……それで、バックアップチームの人が今更なんの用でここに?」

「ギアナ高地の研究施設跡地、そこへ私と共に行っていただきたいのです」

「…………はい?」

「それと、申し遅れました。九頭竜(くずりゅう)花蓮(かれん)と申します」

 

 何だかわからないけど、これでギアナ高地までいけるしラッキーと思っていいのだろうか?

 あやしいような、そうじゃないような……他にいい案もあるわけじゃないし、調べ物も順調じゃないのでとりあえず話に乗ることにしよう。

 もともと夏休みは国内でも調べられることは調べようと旅の準備はしていたので、キャリーバックはすぐに用意できたのだが……問題はこれである。

 

「九頭竜さんは、これは知っているの?」

「戦極ドライバー。はい、私も初期型の量産機を一つ」

 

 そう言って見せてくれたのは、ブレードのないタイプのドライバーだった。というか、こんなのあったんだ。

 

「これは研究チームが一人一つ持っていた、果実が促す異常な食欲を防止するとともに、ロックシードへの変換機能のみを持ったドライバーです。あなたの持つ、アームズの機能はありません」

「……なんで、僕のにはその機能が?」

「私の方も、すべてを知っているわけではありません、今日ようやくこれたのは、今まで事故の原因や経緯、知っていることを政府やスポンサーに説明していたためです。ですが白騎士事件で事情が変わりました。詳しくは、飛行機の中で話しましょう。時間がない。時間を有効に活用しないと、間に合いません」

「間に合わない?」

「はい……現在、唯一アームズ機能を持ったドライバーを持った、あなたにしかできないことなのです」

 

 なんだか、話がとんとん拍子過ぎて逆に怖いんだけど、行くしか、無いんだよなぁ……

 

 ◇◇◇◇◇

 

 そのあとはロックシードを専用のトランクに入れて、空港へ向かった。チケットもすでに手配済み、ビザとかの手続きもどういうわけか終了していた……今まで取り調べとかあったせいで連絡はなかったが、一応僕の保護者は九頭竜さんになっているらしい。父さんに何かがあったら、親せきの戦極博士が引き取るって話もあったそうなのだが、海外を飛び回っていて、連絡自体は一番とりやすかったのが彼女だったために彼女が保護者を受け継ぐ話になっていたそうだ。もっとも、戦極博士が保護者を引き継ぐ話になっても、結局結果は同じなんだろうが……なんというか、そういう話はしろよ父さん。

 

「それで、もう空の上なんですけど話してくれますよね? エコノミーって聞いていたより硬いし」

 

 ギアナ高地って南米なんだぞ。今回の航路はアメリカ行って乗り継いでブラジルまで行ってーって感じ。乗り継ぎの時間を入れると一日以上はかかることも。

 さすがに時間が多い。時間を無駄にしないなら今話すべきだろう色々と。

 

「そうですね、まずどこから話せばいいか……そうですね、事故の詳細は分かりませんが、推測は立てられます」

「推測?」

「ええ……金のリンゴロックシード、その暴走です」

「――金のリンゴ」

「あなたの持つ銀のリンゴロックシードと同様、すべてのロックシードの雛形となったロックシード。いわばオリジン。すべてのロックシードを凌駕する性能を誇っています」

「って、そもそもロックシードってなんなんですか? そこから調べていたんですけど」

「……ヘルヘイムの森。あなたはすでにクラックは?」

「見てますけど……」

「その森には危険な果実がなる植物が生えています。しかし、同様の植物……いえ亜種がこの地球の各地にも生えているのです」

「亜種……って、ヘルヘイムの森がクラックの向こう側ってのは分かりますけど、なんだか地球じゃないような言い方ですね?」

「正確には違うらしいのですが、あそこは地球の並行世界のようなものだそうです。本来はお互いが接触することのない、地球と同じ次元に存在する裏の世界、とでもいえばいいのでしょうか……クラックを開くことで行き来が可能な、もう一つの地球。それがあの森なのです」

「なんだか、話がややこしくなってきたけど、まだ大丈夫」

 

 ゲームでもよくある話、とか言い出す僕は残念な子なのだろうか?

 

「亜種の話に戻ります。私たちは、というよりゲインクロイム家はそんな亜種の木を代々守る家系だったそうです」

「ゲインクロイムが?」

「はい。ただ、木が朽ちたときに人里に下りて、あとは子孫が代々伝承や腕輪を受け継いでいたらしいのですが」

「……この、腕輪か」

「その腕輪にはもしも果実が暴走を起こした時に止めるための力があったと聞きます。伝承ですし、信じてはいなかったのですが、蜂矢博士が作ったレプリカが果実の食欲を抑えることに成功したことで、何かの力があることを知ったのです」

「……じゃあ、ドライバーのオリジナルというか原点ってこの腕輪なのか」

「はい。そもそも私たちが果実にかかわるようになったのは、ギアナ高地で見つかったアレが原因なのです」

「アレ?」

「……黄金の果実。単体でも国ひとつのエネルギーをまかなえるほどの超物質。朽ちていると思っていた木に一つ、ぶら下がっていた……そもそも、一族の伝承が気になった彼は自ら確かめに行って、そしてあの木と果実を見つけた。少しずつ、研究チームも集まって……次代のエネルギーとして開発が始まったのが、ロックシードなのです」

「まあ、地球の資源だっていつかは枯れるわけだし、新しいエネルギーの研究をしている人って結構いるけどさ」

「エネルギーだけなら、最低ランクのヒマワリロックシードだけで十分でした。ですが、いつからでしょうか。ロックシードをさまざまなことに応用できるのではと考え、そして初期型から改良を加えていった結果。いまのロックシードが生まれたのです。そもそも、ロックシードはヘルヘイムの果実をドライバー内のデータベースと照合し、ロックシードへ変換させています。そのため、ドライバーのバージョンごとでロックシードも微妙に違ってきます。私のドライバーは最初期のものですので、ヒマワリロックシードと同様、エネルギー補給程度にしか使えないものしか作れません。それが研究チームの手で……いえ、ほとんどあなたの父と戦極博士によって新たに生み出されたものを、その最終的に開発されたドライバーをもってすれば作れます」

「なんだか話が飛び飛びだけど……要は、エネルギー問題を解決するために作ったけど、欲が出ていろいろ手を出した結果……暴走したってこと?」

「ええ……私も、色々思い悩んでいました。なぜこうなったのか、あの時止めるべきだったのでは……そんなある日、白騎士事件ですでに過去のものとなっている事件を取り扱うのは打ち切られて、私も表に出てこれました」

 

 ある意味、篠ノ之のおかげか……思わぬところでつながったなぁ……情けは人の為ならずってやつかね?

 

「そして、日本に来る途中であなたがドライバーを使用したと思しき情報を手に入れたのです。仮面ライダー冠、でしたっけ?」

「あの都市伝説かぁ……恥ずかしいんだけどなぁ」

 

 知ったときはビビった。どこからともなく現れて、怪物を倒して去る謎のヒーローとか書かれていて顔が熱かった。もっと悪い印象でささやかれているかと……

 

「そして、あの怪物……インベスがクラックから現れていることも」

「インベスって……あの怪物そんな名前なの?」

「ええ、そして、これから向かう先、ギアナ高地……秘密にしていた第二研究所こそが私たちの向かう先です」

「第二、研究所?」

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 英たちがギアナ高地へ向かうのと同じころ、ヘルヘイムの森、とある場所で。なにかが目覚めようとしていた。その姿は、石のような質感だが、所々金の輝きを持っているようにも見える。

 右手には剣を、左手には盾を。その姿はまるで騎士……

 

『……』

 

 それはまだ目覚めていない。だが、少しずつ、少しづつ……何かが、目覚めようとしていた。

 




ここにきて事情を知る人……すべてではないですけど、登場。
いつまでもインベスの呼称を使わないわけにはいかないですからねぇ

そろそろ、あのロックシードの出番カナ
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