放出されたノロシロックシードのエネルギーが粉々に砕けた英の足の骨をコーティング、圧縮することで彼の足を再生させた。さらに、全身にいきわたったエネルギーがその肉体の密度を上げ、一段上の能力を獲得させた。それが、彼が再び立ち上がった理由である。
一歩。また一歩。英は前に歩む。その度に猛の心中に言い知れぬ不安がよぎる。アイツは危険だ。今すぐ倒さなければいけない――それが自分の感情に由来するものなのか、はたまたヘルヘイムの力がそう叫んでいるのかは判別がつかなかったが。
「――――レヴィ!!」
だから、彼は怪物を呼んだ。それが、自分の信念から外れていることだとは分かっていた。先ほどまではあくまで、自分の力で彼を倒そうとしていた。だが、何かがその信念すらも覆してしまった。そして、その行動が決定的な間違いであることにも気が付かずに。
「そうか……それがお前の選択なら、僕はお前を軽蔑する」
英は銃――ハーモニクスカノンを構えて、レヴィインベスへと向ける。側面に存在するボリュームのツマミのような物をひねり、同じく側面に存在していた弦をかき鳴らした。
【フラットチャージ!】
ギターの様な音が鳴り響き、重心にエネルギーが集まっていく。それは、オーバーロードである猛の目から見ても異常なほどに高められているのがわかる。それでいて、英は――人のままだ。
「なんだよ、それ――」
「言っただろ――それが僕とお前の違いなんだ、猛」
そして放たれた光弾は寸分たがわず、レヴィインベスの顔へと命中し――その巨体を沈める。
「!?」
「硬いし、気絶した程度だろうけど……これで、心置きなくお前と戦える」
「……ふざけるなよ、なんだよそれ…………血反吐はいて強くなったと思ったら、またお前は――だから、俺はお前を許せねぇんだ!! 沈めぇえええええええええ!!」
重力攻撃。シンプルだが、強力な攻撃。されど、英はその歩みを止めない。一歩、また一歩と近づいてくる。
逃げないと。逃げないと――死ぬ。
「――ッ!? ふざけるなよ!! 俺は強くなったんだッ! こんな甘いやつに負けるわけがないんだぁああああああああああああ!!」
「そうか――なら、僕の、僕たちの全てでお前を倒す!!」
ぶつかり合う拳。明らかに、巨大で強力な一撃であるはずの猛の拳は英の拳とぶつかり合って、押される。
「ぐ、おおおおおおおおおお!!」
ひじから重力エネルギーを放出し、加速する。押されていた状況が逆に押し返す。
いける。勝てる。このまま押し切ってやる。そう、彼は考えただろう――だが、もう彼に勝ち目はない。
「――ッ!」
英の背中の筒から、炎が噴き出す。その力で体が加速していく。お互いに力を増したというのなら、再び猛が押されるのも道理。
そして猛は殴り飛ばされてしまう。
「――――アガア!?」
【シャープジャージ!】
今度はツマミを逆にひねる。再びかき鳴らすことでエネルギーを充填させ――銃口は猛に向けられた。
悪あがきだった。猛はその身をひねらせて、逃げ出そうとする――そんなものに意味はないのに。
「ガッ!? ダッ!? アガッ!?」
連射。たくさんの弾が彼の体にぶつかり、弾ける。
息も絶え絶えになり、ただ英をにらみつけることしかできない――いや、にらまれているのは自分だった。
兜の形状も変化したことでより威圧的に、正面から向き合えばその気迫が自分を襲う。
「――畜生……なんでだよ、お前と俺と何が違うって言うんだッ!?」
「そんなの、自分で考えやがれバカ野郎」
ロックシードを取り外し、ハーモニクスカノンに取り付ける。武器こそ違えど、それがどんな意味を持つのか猛にわからないハズもない。
ロックシードのエネルギーを武器に直接装填することで強力な一撃を放つつもりなのだ。
「――――アハハ、ハハハ!!」
気が狂った。そうとしか言えないだろう。彼はその空間圧縮能力によって――英の後ろの一般人たちを殺そうとした。いや、人質に使えればいいと思った。
――これで、英に甘えは消えるとも知らずに。
「――ッ?!」
「生憎だけど、背中のこいつ――鬼ヶ島はブースターとしてだけじゃなくて、武器としても使用できる……その砲撃は、ヘルヘイムの力ならお前の空間圧縮エネルギーすら砕く」
いつの間にか上を向いていた筒から放たれた光弾が、猛の最後のあがきを消し去った。
そして再び、背中の筒をブースターとして使用する。
「あ、ああ……」
「ゼロ距離、発射!!」
ツマミはデフォルトの位置に戻され、ノロシロックシードが装填されている。
【ナチュラル! ノロシチャージ!】
放たれるのは光り輝く巨大な砲弾。そして、その砲弾と共に猛は吹き飛ばされた――まだ生きていることから、手加減されたのかと思ってしまうが、すでに英からはそんな甘さは消えている。
ブースターを吹かせて、空高く飛び上がっていく。その光景を、猛はびしょ濡れのまま眺めている――そう、彼はレヴィインベスの上にいたのだ。
「――――」
言葉は出なかった。ただ、空に輝く蒼い光がすべてを照らしていた。
「さあ、幕引きだ!!」
【ノロシスカッシュ!】
蒼い光と共に、空高く飛んだ英は降下する。ブースターを逆向きにして、その推進力を加えた必殺の――無頼キック。否、無天キックが放たれた。
時間にして一瞬。その一瞬がとてつもなく長く感じられて――されど、その時は迫ってきていた。
「――――嫌だ、俺は、俺はぁああああああああああああああああああああああああああ!?」
直後に、爆発が起こった。
◇◇◇◇◇
爆発のせいであたりが見えなかったけど……ホバリングでなんとか地面に着地できた。レヴィインベスもまとめて倒せたのは幸いだったかな……ちょっとやり過ぎたかもしれないけど。
そして霧が晴れてあたりの様子が見えるようになってくる……レヴィインベスは跡形もなくなっており、あたりには何もいない。
「……ふぅ」
「――英!」
僕を呼ぶ声――束が、千冬の肩を借りてやってきた。なにか、言おうと思ったけどうまく言葉にできなくて、口が開かない。
それは束も同じなのかもじもじしている……
「……えっと、お疲れ様」
「束も……ありがとうな」
ようやく言えたのは、そんな言葉だけ。でも、それでもいいのかもしれない。
「まったくお前らは……それで、説明を――――!?」
それに気が付いたのは、千冬が血相を変えて海を見たからだ。僕と束も、その方向を見ると――え?
「――――たけ、る?」
海面に、須郷猛がたっていた。で、でも確かに最後の一撃で止めを――その時、猛に似た圧力をいくつも感じた。
炎のような体を持つ、女性的なシルエット。ドレスのような格好は、場違いでありながら……様になっている。
その隣にいるのは蜘蛛のような下半身を持つ者。こちらも、女性的だが――ひどく下品な印象を受ける。まるで、獰猛な獣。
もう一人はよくわからないがマントを着ているかのようだ……
「――――オーバーロード」
自然と、その単語が出てきた。
炎の女性が前に出てきて、じっとこちらを見つめて、言葉を放つ。
「こちらのボウヤがお世話になったわね……仮面ライダー冠。会いたかったわぁ……でも、今日のところはごめんなさいね。まだ、その時じゃないのよ。この子も今倒されると面倒だし」
「……お前ら、一体なにが目的なんだ。人の体まで捨てて、何がしたいんだよ」
「うふふ……世界征服、なんてベタかしらね…………まあ素直にしゃべるつもりもないのだけど、莫大な力を持つ者が世界を支配するのは当然のことじゃなくて?」
「狂ってる……ああ、わかってたさ。お前らがまともじゃないなんてこと」
「そう――アンバー!」
女性は、マントの怪人に向かって叫ぶ。そして、そいつが何かを呟いたと思ったら――彼らの姿が霞のように消え去って行った……いったい、アイツらはなんなんだ?
「――はー」
息を大きく吐く。すでに、周囲に変な圧力はない。もう、変身も解除していいかな。
「……結局、お前は――おぐっ!?」
「ヘーイ! ヒーローに色々聞くってのは野暮ってもんですよ千冬!」
「だ、だがな……」
「少なくとも、それは千冬が後で親友として聞くべきデース! いまは帰りマショウ!」
……ありがとう、菊池さん。
「ノンノン。アリア、デース!」
「ふふ、ありがとうな。アリア」
さていつまでも変身し続けているってのもキツイし、ロックシードを外して変身を解除する――そして、予想外の事態が僕の身を襲った。
「――――ッ!?」
「す、英!?」
「どうしたのだ!?」
「まさか、これは何かを代償にしたパワーアップ的なあれですか!?」
「なんで目を輝かせているんだ!?」
違う。そんなものじゃない。これは――これは!?
「く」
「く?」
「口の中が酸っぺぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」
◇◇◇◇◇
ホテルに帰り、口の中をすすぐ。みんな今回のことは何もなかったかのようにふるまってくれて――正直、助かった。
言わなくても目撃談とかで大体何していたのかってわかっているんだろうけど……一人、鈍感娘がいるわけで。
「それで……説明してくれるんだろうな?」
「あはは、しないとダメかな?」
「ダメだろ」
ホテルの屋上で、千冬に尋問されています。正直、まだ口の中が酸っぱいから勘弁してほしい……
「っていうかなんで口の中が酸っぱいの?」
「たぶん、ノロシロックシードの副作用? いや他のロックシードも一応甘い感じが口に残っていたような気はするけど……なんかこれだけおかしいな」
「話をそらすな……それで、お前はいつからそうなのだ?」
「……そうだな、千冬には話した方が良いか」
親友に黙っているのもあれだしね。
かいつまんで話すと、初めて変身したのは中学二年の時。
「林間学校の少し前かな……ちょうど、そのころにインベスが出始めていたし」
「あの時か……何か、言葉に重みが出てきていたとは思ったが…………」
「まあそん時は誰も知らなかったはずだよ。で、転機っていうか覚悟が出来たのは――」
そこからは思い出すように、語っていった。ギアナ高地での戦い。佐々木先生にばれたこと。ISはヘルヘイムの力に弱いことが分かったり、他にもいろいろ……そして、花村さんのこと。
「……束、そこからお前が関わるようになったということだな?」
「うん」
「まあそこからは本当色々変わったよ。一人じゃないってのは本当、色々変わるんだ……須郷が再び現れたのはそこかな」
「再び? どこにアイツの話が出てきた」
「ち、ちーちゃん……いや忘れていても仕方がないけどさ、ちーちゃんも前にあったことあるよ」
「え?」
「ほら、二人を賭けて決闘だとかほざいたバカ」
「…………?」
「ダメだ、本気で忘れている……ほら不良の先輩で入学式の次の日の帰り道だよ」
「――ああ!」
「ようやく思い出したんだ……」
「まあ本筋じゃないし、いいか……でまあ、アイツとは長く因縁が続くことに」
「そんなくだらない理由からはじまった因縁なのか?」
「うん……だから、すごいと思っていたんだけどな…………そんなくだらないことでも、頑張れるんだから」
それだけに許せなかった。
「で、暮桜とかインベス対策とかで政府関連のつながりができたから色々と動いていたって感じかな……いつの間にか蜂矢博士とか呼ばれているんだぞ、僕。おかげで、嫌な腹の探り合いとか色々覚えたぞ」
「……お前、男版束になっていないか?」
「むしろ影響されたのは僕だったのか」
「ええ!? なんかそれひどくない!?」
いいじゃないか別に……あ、アレもあったな。
「一夏君は知っているから。僕が仮面ライダーってこと」
「ちょっとまて……なぜだ?」
「いや一夏君たちと釣りにいったことがあるじゃん? そん時に一夏君がインベスを釣っちゃって」
「――――今すぐ帰ろう。一夏を危険な目に合わせられなッ!!」
「いやいやいやいや!? 落ち着け!!」
「ええい、こんな国にいられるかッ! 私は帰るぞ!!」
「ちーちゃんそのセリフはダメェ!!」
結局、説得には大変な苦労をいたしました……ハァ、使える。
「どうする? どうすれば一夏を守れる……」
「過保護すぎるだろ……っていうか、どうせ無理だろ。千冬が何を隠しているのか知らないけど、絶対に一夏君は向き合わないといけない日が来るよ」
「――――」
「ちーちゃん、私たちにもそれぐらいはわかるよ……だからさ、いっくんのこと信じてあげようよ」
「分かっている……だが、まだ一夏は…………」
「うん、だからさ……今はまだ千冬が守ればいいんじゃないかな。一夏君も男の子だ。いつかは自分から、向き合う時が来るよ」
「……そうだな」
ふと、空を見上げる……そろそろ一番星が上がるころだなぁ…………あ、楯無さんに連絡しておかないと。
ちょっとどころではなく、かなり怒られたけどそん時はそれしか手がなかったんです。だから事後処理お願いします……あとで色々言われるなこれ。
その後、みんなで食べた夕食は久々に食べたって気がした。ただ、海場なのに、海の幸が少なかったのは…………レヴィインベスって見た目キモイんだよね。ようは、そういうこと。
千冬さんにもついにしゃべりました。
ようやくここまで来れたな……
そして英がなんか敵キャラっぽい感じのアレになってしもうた。
ハーモニクスカノンの見た目は青色の火縄大橙DJ銃ですが、スクラッチではなくギターの様な弦がついています。剥いた後の皮的なイメージ。もしくは、横から見た輪切り。ちなみに弦は赤黒い。
背中の筒は、デジモンクロスウォーズのタクティモン的なイメージ。アレは三つでしたが、こちらは二つ。
飛行ユニットとしても使える優れもの。武器としても使用可能で、単体でブドウ龍砲の必殺技並みの威力は出せます。
そしてキックは空高く飛び上がり、ブースターで一気に加速してぶち抜く。
ちなみに、今回は使いませんでしたが他にも色々ギミックがあります。カチドキ亜種なので、当然アレとかアレもありますしね。でも、旗は無い!