仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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計画が進みだす。そして、ノロシについて。


第10部・合縁奇縁のグラジュエイト
EP83.集まる力


 さて、家が破壊されてからというもの僕はどうしているかと言うと……

 

「ネカフェ難民も楽じゃないな」

「いきなり何を言い出しているんだお前は」

 

 マンション借りてもいいんだけど……周辺に迷惑かけそうだし、一年もしないうちに出ていくってんでなかなかうまくいかないんだよね……

 ってことで、それなりにお金もあるからネカフェなどを渡り歩く毎日です。

 

「あーホームルームたるい」

「蜂矢君、シャキッとしなさい」

「先生、本当に担任になってしまったのですね」

「ええどこかのオカマのせいでね」

 

 結局佐々木先生がそのまま、わがクラスの担任になったのである。

 ところで、束が寝ているんですけどいいんですか?

 

 ◇◇◇◇◇

 

「まったく、いきなりぶっ叩くとかありえないよ」

「そう言うなって……ハァ」

 

 学校からの帰り道、今日は神宮寺の方でノロシロックシードの解析を進めるから向こうで寝泊まりである。束はまだ怪我が治りきっていないから車イス。

 車イスを押しながら、目的地へだべりながら行くわけだが……ミコノスの事件が終わってから、世界各地のインベスはなりを潜めている……嵐の前の静けさなのか、嵐が過ぎ去ったから少し静かになったのか……

 

「エナジーロックシードの補充に、他にもいろいろ山積みだね」

「本当にな……」

 

 ここには色々な施設が存在していて、僕たちはロックシードの研究をしている部署があてがわれている。百花さんは資金集めで忙しいらしく、今日はいないみたいだけど普段はここにいる。

 コンピューターを起動させて、ノロシロックシードとつなげてデータを読み込んでいく。まだ断片的にしかわからないが……単純な性能はエナジーロックシードをはるかに上回っているんだ。しかし、それでは負担も大きくなるのだが……それを克服するためにブラッドオレンジから変化させたと僕は睨んでいる。

 

「やっぱ、僕の血を吸っていたってことだよな」

 

 ブラッドオレンジを使用するたびに体力が持ってかれていたのは……おそらく、血や僕のエネルギーを吸収して成長していたから。ログを調べてもエネルギーの回路が他と異なるのがわかる。

 そして僕に合わせて進化した結果、変色して青色になったんだろう……内部に残されているプログラムからもそれが読み取れる。それに、ロックシードが血液を吸収している前例がないわけではない。ホオズキエナジーロックシードも最初の起動の際、血濡れだったはずなのに何もついていなかったのだ。よくよく思い出してみれば、ブラッドオレンジロックシードも血濡れではなかったし。まあ、ホオズキエナジーは起動の一回だけで後は特に何もなかったんだけど。

 しかし、それにしても……このロックシードである。

 

「カチドキロックシードか……」

 

 ノロシの原型となったロックシード。本来はその姿へと変貌するはずだった。しかし、ロックシードが人の心に反応して変化する性質を持つことは分かっている。だからこそ、あの時みんなの心が流れたことで――ロックシードに大きな変化が起きた。通常以上のパワーも引き出していたみたいだし。

 父さんが何を考えていたのかはわからないけど……父さんの想定を超えたんじゃなかな。

 

「問題は…………鍵の方か」

 

 カチドキと対になる極ロックシード。ノロシ内部にデータが存在していたけど……正直、これを作る気にはなれない。使用者に強大な力を与えるが――その肉体を変質させて、インベス……いや、オーバーロードに近いものに作り変えてしまう。

 ベースがカチドキであるノロシも当然鍵を使うことでさらなる力を解放できるわけだが……うーん…………変質しただけに何が起こるかわからない。

 っていうか……これでも十分な力を持っているとは思うんだけど。

 

「はぁ……一応設計図を引いておくか」

 

 科学と魔法はその到達点は同じと聞いたことがある。科学技術で作られていながら、ロックシードなどはまるで魔法の様な力を持つ。

 その到達点はいったいなんだ? 僕は先に進んでいいのか? 僕が限定的ながらオーバーロードに近い力を発揮していたのは理解している。そろそろ束が僕の体を調べた結果を持ってくるだろうけど……

 まずはこっちを何とかするか……

 

「あはは……ゲネシスコアの修理も長引きそうだなぁ」

 

 ドライバーも一度分解して修理しないと……っていうかバージョンアップするか。強度も上げて、回路も効率のいいパーツを使って……排熱処理とか、基盤のチェックも…………

 そんなこんなで作業を続けていると、束がやってきた。

 

「英ー結果でたよー」

「ありがとう。どれどれ……体重増えたな。なんか、いろいろ数値がおかしいような……レントゲンも骨が真っ白」

「密度がとんでもないことになっているんだって。筋肉も、骨もね。だから体重が見た目以上に増えているし、内部の機能が常人の数倍に上がっているって」

「……遺伝子とかに異常は無し。ロックシードのエネルギーは体内に残留しているが、問題なし…………いや、むしろ僕たちの場合は多少は作られているのか」

 

 おそらく先祖にオーバーロードがいるんだし。先祖返りとかして、その力を色濃く残しているだけってこと。腕輪が反応するかどうかもそこにあるわけで……まあ腕輪が無いと使えないけど。

 電化製品と電源の関係だろうか。オーバーロードはこの二つを兼ね備えているが、僕らは電源だけを持っていて、それを使う機能が無い。その代りに腕輪を使用することで限定的にオーバーロードの力が使える。僕の力が強くなったのは……腕輪の機能を多く引き出せるようになったってところかな。もしくは腕輪自体に何か学習する力があったのか、銀のリンゴにも何かあるのか。出力がジンバーレモン並みに上がっているし……しばらくはエナジーロックシードが無くても大丈夫なくらいにはね。

 

「ふーむ……とりあえず異常はないか」

「でもまあ……今回は無茶ってレベルじゃなかったね」

「……でもまあ、そうするしかなかったし、終わりよければすべてよしってね…………束、怪我はどうだ?」

「しばらくすれば治るって。でもお薬にがい……」

「そりゃそうだろ……でもまあ思ったより元気そうで良かったよ」

「……ねぇ、本当に私のうちに来なくてもいいの?」

「ああ……お前の家族に迷惑かけるわけにもいかないし――箒ちゃんのこともある」

 

 箒ちゃんはあの事件で、記憶に多少の欠落が見られた。束のことを人嫌いの時の印象で見ていたり、僕についてはたまに出稽古に来る人という風に。

 しばらくすれば治るかと思ったのだが……その様子もない。あの時のISが原因か? そう思って束もコアを調べたりしたが特に異常はなかった……柳韻さんたちと相談した結果、保護プログラムでは空気のきれいなところとか色々見て回るし、精神的な問題だからカウセリングを受けるとかして何とかすると言っていたけど……

 

「うーん」

「どうしたの?」

「いや、なんか見落としがあるような……いや、何だろうこの違和感」

 

 箒ちゃんについては、それ以上なにか情報があるわけじゃないんだけど……そうだ、違和感で思い出したけど、ミコノスで見つけたあの壁画。

 とりあえず束に相談してみるか。僕があの場所で見たものについて説明すると、束も渋い顔になって唸る。

 

「黄金の果実って一つだけなんだよね?」

「人工物かと思っていたけど、違うのかな……いや人工物だから複数存在する? だけどそれだと黒い女王が二つ持っている理由には……何だろうなぁ」

 

 前に見つけた石碑の解読も、あっているとは言えないと思うし……

 結局、詳しいことは分からないままだった。

 スレイプニル計画のこともあるし、とりあえずその話は保留にしてデータをまとめていく……僕たちの最終的な目的はヘルヘイムの脅威の無力化、もしくは破壊。

 そのための第一歩として進めているのがスレイプニル計画なんだけど……詳しいことは内輪でしか進めていない。百花さんが政府関係の交渉や資金について担当。ジョニーには情報に関して任せている。その他、パンサーから幾人か候補を選定したり、各地で色々と声をかけている。

 

「さてと……これからが大変だぞ。世界を巻き込んで、色々と動き出す…………次のステージへとね」

 

 そして、時は進む。

 

 ◇◇◇◇◇

 

「じ、自分たちが極秘プロジェクトの参加者ですか!?」

 

 我毛の部下であり、若い男――瀬田晴太はその話に耳を疑った。

 

「ああ……色々吟味した結果、パンサーからは君たち二人が選ばれた」

「こ、光栄でありますが……」

「なんで私たちなんですか」

 

 そう聞くのは、若い女性。こちらもパンサーの隊員――谷川みどりだ。

 少し不機嫌そうに英へとたずねる。

 

「身体能力、状況判断能力共に要求した水準を満たしていたし……何より、インベス相手の実績もある。我毛隊長から聞いているよ、紛争地域に派遣されたときにインベスを結構な数倒しているって」

「いや、ただがむしゃらなだけですよ」

「この程度のこと朝飯前です」

 

 瀬田は弱腰に、対して谷川は何でもないようにふるまう。

 

「っていうか蜂矢さんはまだ子供でしょう……子供にそんなこと言われなきゃいけないんですか?」

「こ、こら谷川!」

「本当のことよ」

「……まあ子供だけどね、これでも君らよりは修羅場くぐっているよ――こいつに見覚えある?」

 

 英が取り出したのは、シルバーロックシードと戦極ドライバー。それを見せたとき、二人の目の色が変わった。

 

「――では、あなたが?」

「ああ……僕が仮面ライダー冠だ。色々とあって隠していたけど……もうそうはいっていられないんだ」

「…………わかりました、話をお受けいたします」

「俺も、異存はありません!」

 

 ◇◇◇◇◇

 

「ジョニー!」

「HEY! 久しぶりだな!!」

 

 英はアメリカに来ていた。ジョニーに頼んだことの結果がうまくいったためである。

 

「その子が――小さすぎない?」

「何よ! これでも18よ!!」

「お、同い年……」

「HAHAHA! 腕は保証するぜ」

「そうか……話はジョニーに聞いたかミシェル?」

「ええ……このミシェル・サザンクロス、スレイプニルに参加するわ」

 

 ミシェル・サザンクロス、優秀なオペレート能力を持ち、チェスや初めてやった将棋で数々の名人を倒し、その筋では有名な人物だ。

 といってもネット上でアバターとしてふらっと現れるだけだからその実態を知るものは少ないが。

 都市伝説を流す時に見たケド……実はコンピューターだとか、たくさんの人物が同じ人物を演じているとかそんな話があった。

 

「計画実行は来年、準備は進めろよ」

「オーケー!」

「ジョニーも頼むな」

「お任せを」

 

 ◇◇◇◇◇

 

「あのー、ちょっといいですか?」

 

 場所は戻り、神宮寺家の所有する研究所。そこで、四人の人物が集まっている。

 

「百花さんは参加する必要あるんでしょうか?」

「あら? ダレが資金繰りしているんでしょうねー」

「……はぁ、わかりましたよ」

「よろしい」

「…………あのー、なんで私もここにいるんですか? フロンちゃんはイイとして」

 

 そう呟いたのは、雷電の専用操縦者笹原かおり。何だかんだで巻き込まれていた彼女は――やはり巻き込まれる。

 

「一人優秀なパイロットが必要なんですよ。事情をある程度知っていて信用できるのは貴女しかいません」

「いや千冬さんとかもいますよね!?」

「千冬はプライベートもあるし、日本代表だぞ? 開催まで一年切ったモンドグロッソに出るんだし……完全にテストパイロットにシフトしている貴女だからこそ誘えるんです」

「うわぁ……選択肢ミスった」

「ってことで、来なさい」

「ハイ……」

 

 そんな風にうなだれる彼女の前に、紅茶が一つ差し出される。小さな少女が配膳をしていた。金髪碧眼だが、割烹着を着ているのがミスマッチと言えばミスマッチだろうか? しかし、そこそこ使い慣れていている。

 

「フロン、元気か?」

「うん……英おにいちゃんも元気そうで何より」

「っていうか、英さん……前々から思っていたんですが、フロンってどこで拾ってきたんですか?」

「あーレヴィインベスがいなくなったからバミューダあたりを調べたときな……さすがに被害が無かったわけじゃないし、いろいろあって身寄りのないこの子を引き取ったんだわ」

「そうです」

「……日本語が堪能ですね」

「すぐ覚えたぞ」

「早過ぎじゃありません!?」

「子供は覚えるの早いわぁ……料理も覚えたし、スレイプニルじゃ食事担当だ」

「いや参加するんですか……」

「他のみんなにそんな暇ないしな。目の届くところに置いておいた方が良いと思って」

「まあ、そうですわね……束さんは知っているんですか?」

「当たり前だろうが……知らなかったら――今頃僕は束に殺されている」

「嫉妬深いですからねぇ……この際、二号さんでもいいですよ?」

「はいカット!」

「あいた!?」

 

 久々のハリセン。ああ、懐かしきこの感覚。

 

 ◇◇◇◇◇

 

「で、話ってなんだよ」

 

 夕日の河原って……ベタなところに呼び出して何を考えているんだか中沢君――中沢信二――は。

 

「なあ……強くなるにはどうしたらいいかな」

「いや、僕にもわかんないってソレ」

「……そうか、じゃあさ――お前ら高校卒業したらどうするんだ?」

「…………あまり、人には言えないかな」

「……たのむ、俺も連れて行ってくれ」

 

 中沢君は、頭を下げて頼み込んできた。それが、どういうことなのかわかっているのだろうか?

 

「危険だし、命の保証はできない……それに、何をするのかもわかっていないんだろ?」

「そうだ、でも……あの事件があって、思うんだ…………俺も、何かをしたい。いや、強くなりたいんだって」

「それはある意味では危険な考えだぞ――」

「――それでもさ、諦められねぇんだよ…………だから、頼む」

「……」

 

 断った方が良いってのは理解している。正直、猫の手も借りたいほどだ。それでも彼を巻き込むのはダメだろと心が言う。

 

「一撃でも、僕に入れて見ろ……そしたら認めてやるよ――」

 

 なんども殴り飛ばす。投げ飛ばす。されど、彼は何度も立ち上がる。なんで強くなりたいのかわからないけど、それでも僕は彼を連れていくわけにはいかなかった。

 

「いい加減ッ諦めたらどうだ!!」

「嫌だ!! 絶対にあきらめないッ!!」

 

 正直、僕は彼のことを見下していたんだろう。

 だから――ボロボロになりながらも、倒れながらでも僕に拳を届かせた彼を認めないわけにはいかなかった。

 

「まったく、無茶するなぁ」

「ははは……だってさ、なんか女の子に負けたって感じじゃ嫌なんだ」

「男女差別じゃね?」

「そうかなぁ……でも、少なくともあの人よりかは強くなりたい」

 

 結局、僕は中沢君、いや信二が猛みたいにならないかと心配だった。だけど、こんな風に笑える彼がそうなるとは思えなかった。

 まあ強くなりたい理由は聞くのは野暮かな。

 

「いいぜ、連れて行ってやるよ……だけど、覚悟しろよ。強くなる以上に苦労するぞ」

「わかってるよ……なんかとんでもないことをするぐらいはな…………たださ、あのバカをぶん殴れるぐらいには強くなれるかな」

「バカって……田中か?」

「ああ……一度、ブッ飛ばさないと気が済まない」

「そうだな……僕に拳を届かせたんだ、楽勝だろ」

 

 こうして、未来へと進むための計画は進みだした。

 今はまだ日常を謳歌しよう……冬が過ぎたとき、僕たちは新たなステージに上る。

 




果たしてスレイプニル計画とは?
そして色々新キャラが続々、再び登場した方々やまさかという人もいます。

後半はダイジェスト風味でお送りしました。
っていうか文字数が予想以上に増えたなぁ……

実は、前々やっていた血濡れロックシードはノロシロックシードのための伏線だったんだけど、長くかかり過ぎだよ。
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