普通で何もない日々というのは案外とても早く過ぎ去ってしまうものだ。なんだかんだで、定住せずにいる生活にも慣れてしまって、計画も順調に進んでいる。
書類をまとめて、溶接、部品の製作、溶接、起動テスト、書類の整理、お役所に出て取引、資金繰り、溶接、ロックシードの製作、物資確保、溶接、信二の特訓、溶接、溶接、エトセトラ……
本当休む暇がない――そんな中、今年もあのイベントがやってきたのだった。
疲れている中、僕らはこのイベントには参加したくはなかった。なかったのだが、そうも言っていられない。さあ、体育祭の開幕である。
◇◇◇◇◇
「だるい、日差しがキツイ」
「そういうな……ほら見ろ、束が頑張っているではないか――パン食い競争で」
千冬と共に、次の競技の準備を進めている中……束がぶっちぎりで一位になっている光景が見える……しかし、やっているのはパン食い競争。
……誇らしげな顔しているけど…………締まらないな。
「では、次は私の競技だな……ゆくぞ」
「そうは言うけど君も出るのは――借り物競争だぞ」
「バカな!?」
なんで知らないんだよ……
ちなみに、ぶっちぎりでくじをひいていた千冬だが、そのあとすぐに絶望の表情に変わった。いったい、何を引いたんだ?
その後、きょろきょろとあたりを見回して――篝火さんを捕まえた。いや、なんか鬼気迫る表情だったから逃げ出しているけど。
『まってくれ! 借り物競争にお前が必要なんだ!!』
『いったい何が書いてあったんだよ!!』
『スク水だ!! お前なら持っているだろ!!』
『流石に体育祭には持ってきていないわァ!!』
ええぇ……
その後、千冬は結局ビリになった……どんな番狂わせだよ。
その次は僕が参加する種目だったわけだけど…………障害物競走か。
配管工もびっくりのスーパープレイをしようとしたんだけど……勢い余って障害物を破壊したため、ビリになりました。
その後で、真耶ちゃんが徒競走に出ていたけど――足は思った以上に速かったが、その何というか、ある意味凶器なアレで男たちが歓声を上げていた。え、僕? ――――見た瞬間に束に目をつぶされていた。
その後、適当に種目があったのち、昼飯の時間……一夏君が来れないということを知って、絶望した千冬を止めるのに苦労して、なんも食べれなかった。
なんだかんだで、勝てはしたのだが……なんだか疲労が一気に増しただけなきがする。
◇◇◇◇◇
さらに時間は進んで、文化祭――ああ、またあの悲劇が生まれるのか。
「えー、今年の文化祭ですが……何やるか」
「去年は喫茶店が多かったし、今年は違うものが良いかなぁ」
「映画とかは?」
「今からじゃ無理だろ」
「お化け屋敷!!」
「物言いが入ったから無理」
「演劇!」
「だから今からじゃ無理だって」
「やっぱまた喫茶店が無難なんじゃない」
「だよなぁ……」
「いや、ここは脱出ゲームを」
「カジノの方がもうかる」
「それは禁止」
結局意見はまとまらずに、アレコレとみんなが好き勝手言い始めた。ちなみに、まとめるべき委員長は――ダメだ、藤咲さんにサブリミナル効果で何か吹き込まれかかっている。
と、そんな時だった――我らが女傑、織斑千冬が鶴の一声を放った。
「みんな、私にいい考えがある」
ゆっくりと浸透していく、よくとおる声――それは僕らの意識を一つにまとめ上げるだろう。
この混沌とした状況を一つに。
「――魔法少女喫茶というのはどうだ?」
「「「「「却下」」」」」
「なぜだ!?」
一つにまとまった。まとまったが、アイデアが通るとは限らないのである。っていうか私にいい考えがあるって時点で嫌な予感しかしていなかったわ。
結局、佐々木先生の「普通で良いだろ普通で」の案が通って、喫茶店になりました。まあ普通すぎるのもあれと言うことで全員コスプレのコスプレ喫茶になったけど。
そんなこんなで文化祭当日。
「うーん、お客さんもまばらだねぇ」
「そうだけどなぁ……」
束と共に店番中。他にも何人かいるけど……なんというか、地味に無気力である。
そして、特に何も起こらず、交代の時間がやってきた――その際、恐ろしいつぶやきが聞こえた……ミスコンに、千冬がまた出ているって。
「――束、どうする?」
「どうするって行くしかないでしょ――箒ちゃんも行っているだろうし、いっくんもいるよ」
「ああ……それに今年は楯無さんが一家で来ているらしい。被害が出る前に止めるぞ」
かつてないほどの全速力で、体育館に作られたステージまで向かう――時は既に遅かったが。
壇上では、スポットライトと共に彼女が威風堂々とした姿で現れた。去年よりもフリルは多く、手にはキラキラとしたステッキを持ち、頭には猫耳をはやして、尻尾まで完備――なぜか動いている。そして、瞳には星の輝きがってカラコン!? 頬は紅く染まるメイクをしっかりとして、爪はネイルアートまでしている……
――――アレは、誰だ!?
「キャピーン! みんな元気ー? 魔法少女プリティー☆ちーちゃん! ここに、見参♪」
世界が制止する音が聞こえた。
圧倒的なナニカよくわからない暴力。精神に与えられるダメージはデカい。っていうかアイツ懲りていなかったのかっていうか去年よりも進化してるっていうか、もうなんだか疲れたよ――束、寝てもいいよね。
「まって英! 束さんを一人にしないで! あんなちーちゃん一人じゃどうにもできない!!」
「二人でも無理だわッ!! っていうかなんであんなになるまで放っておいたんだ!? 責任者でてこいッ!」
いまだに壇上では星を振りまいているんだぞ、あのおバカ様! しかし、突如としてボディビル部の女子たちが千冬を脇に抱えて壇上から引きずりおろした。なんか歌わせろとか聞こえるけど……気にしてはいけない。
その後、去年も見た顔ぶれが現れたり、再び裸Yシャツの篝火さんが出てきたりと、なんだかツッコミしきれなくなってきた……そして、トリを務めるのは、去年一位になった彼女。
「え、えっと…………あは」
体操服にブルマという出で立ちで現れた山田真耶であった。
その時、会場のボルテージは最高潮に達した。その歓声に驚いて小動物的な反応を示す真耶ちゃんにさらに盛り上がる会場。そしてさらに、というサイクルで彼女はミスコン二年連続一位を獲得するのだった。
もはやわけがわからない。
◇◇◇◇◇
「えー、文化祭の打ち上げと言うことで、まあそこそこ儲かりましたし、乾杯!」
「「「「「乾杯!!」」」」」
なんだかんだで、コスプレ喫茶はそこそこ評判が良かった。おかげで打ち上げができる程度にはお金が集まったのである。
そんなこんなで打ち上げとなったが……千冬が真っ白に燃え尽きている。
「……どうしたの、ちーちゃん」
「一夏がな、おびえるんだ」
「あー……そりゃ魔法少女の悪夢を見せられたらなぁ」
「私に落ち度はあったのか!?」
「いや落ち度しかねぇよ」
っていうかよく落ち度がないと思えるなこのおバカ様は。
ほら、みんなも引いているじゃないか、なあ信二よ。
「え、そう?」
「――――おバカ様その2!!」
「おぶわっ!?」
あの魔法少女をみて落ち度と思わないなんておかしいんや!! とりあえずハリセン百叩き!
束が必死に止めるが、どうした!?
「なんか暴走しているよどうしたの!?」
「あ、ごめーん間違えてお酒もってきちゃった(棒読み)」
「お前か佐々木ィ!!」
「うがぁああああああああああああああああああ!!」
「しっかりしてよ英!!」
「なぜだ一夏ぁああああああああああッ」
「ちーちゃんもウザい! ウザいよ!!」
――よし、自重を捨てよう。
ひょいと持ち上げられる束、いわゆるお姫様抱っこの形で。
「――――え」
「みんな、アディオス!」
「うええええええ!?」
◇◇◇◇◇
「いや本当すいませんでした」
「――正座」
「いや、だからごめんなさい」
「正座」
「……はい」
その後、昔の拷問をされました……石を抱かせるのはやめましょう…………
なんでお仕置きされたかについては……言わないでおこう。酔うと人って馬鹿なことするんだねェ……
そんな一幕が朝の公園で行われていました。
ちなみに、その頃織斑家では。
「一夏、お姉ちゃんが悪かった……だから、ほら怖がらなくてもいいんだぞ」
「ごめん、魔法少女はちょっと……あと、千冬姉の部屋を掃除したら出てきた、このいかがわしい本についてなんだけど」
「――ッ!?」
「なんで、俺に似ているんだ?」
「…………冬の、収入源だ」
「千冬姉のバカああああああああああああああ」
「い、一夏ぁあああああああああああああああああああ!?」
結局、姉弟の仲を修復するのに千冬はかなりの苦労を強いられた。
そして一夏は走ってきたのはいいけど……商店街付近までやってきている。
「ちょっと走り過ぎたかなぁ……最近、箒も様子おかしいし、なんかなぁ……稽古に行こうかな――うん?」
そんな時に彼が見つけたのは、工事中の建物。飲食店が新しく入るみたいだが――その前を、アジア系だが日本人とは微妙に異なる一家がたっているのを見た。
父と、母と、その間には娘だろうか……同じ年頃の少女がいた。髪を左右に結ったいわゆるツインテールだ。
「……」
珍しいけど、特に気にする光景じゃないかと思いそのまま立ち去る。
そして歩き出したのと同時に、少女が一夏の方を向く。
記憶に残らないだろう。だが、それが彼らのファーストコンタクトだった。
次に一夏が向ったのは、商店街の中のたい焼き屋。持っていたお小遣いで一つ購入。ホクホクで気にいっているが……食べすぎるとご飯が食べれなくなるから、一つで我慢。
「……うーん、どうしよっかなぁ」
なんとなく、海辺の方まで歩いていく。目標とする兄のような人が、仮面ライダーだと知った場所。最近、姉も知ったらしいけど……自分の方が速く知ったのは一夏にとって、なんだかうれしかった。
だけども……その心にあるのは、小さな炎。
怪物が現れたとき、自分は怖かった。次にあんなことがあったら自分は誰かを守るために戦えるのか、立てるのか? そんなことを子供ながらに考える。
彼――蜂矢英に相談したことがある。強くなるためにはどうすればいいのか、姉を、友達を、大切な人を守るためにはどうしたらいいのか。
「……考えるのをやめるな、か」
一夏は頭が良いというわけではない。その戦闘センスは場数を踏んだ英ですら目を見張るものがある。だが、まだ原石。
だからこそ、間違った成長をしないように周りが考えてあげなければいけない――それと同じく、自分自身で道を切り開かなければ意味がない。
「とりあえず、ランニングは続けよう」
そのまま、走り出す。町の中には色々な人たちがいる。自分に親はいないけど、大切な姉がいる。まあ、時々暴走するのが玉に瑕だけど。そして、目標となる人たちがいる。大切な友達がいる。
それらすべては、彼の力となり、支えとなる。
今はまだ原石。少年の目覚めはまだ先の話だ。
◇◇◇◇◇
「ふう、ゲネシスコアの修理おわった」
「こっちもエナジーロックシードの製作終了したよ。あと、新作だぜ」
「どれどれ――ってマツボックリやないか!!」
計画準備の合間に、進めていたからか!? 手抜きすぎやしませんか束さん。
そんなことを言いあいながら手に取ってみる。なんていうか、大丈夫なのかこれ。
「十分な力です! っていうかエナジーロックシードの安定供給ができないか考えた結果なんだよね……少なくともAランクのロックシードと同等だよ」
「そっか……そうだよな、ドライバーの量産が無理でもロックシードなら何となるんだし、なるべく負担が少なくて強いのが必要か」
各種装備には、ロックシードの装填スロットを設けてあるから、強力なロックシードほど高い効果がある。最近はシールド類も配備できているし……モンドグロッソの会場も完成間近だし。
ただ、きな臭い動きがあるんだよなぁ……
「あとは、こっちもどうにかしないとなぁ」
「何やっているの……って、サクラハリケーン?」
「ああ……一つ問題が発生した」
「問題?」
「ノロシアームズで使うとどうなるのかって、試したんだけどな? 回路がショートした」
「えええええ!?」
「いやぁ、オーバーヒートするとは思わなかったわぁ……どうしようか」
「どうしようかってどうするんだよッ」
「そうなんだよなぁ……ハァ」
いっそのこと、改造するか。余っているサクラロックシードを取り出してバラして、最初のサクラハリケーンに組み込んで改造していく。ダンデカノンなどのデータも入力して使いやすいようにカスタムしていこっかなぁ……クラック突入を自在にできるようにして、あとホバリングとかもできるように――
「目が輝いているね……魔改造し過ぎな気もするけど」
束がなんか言っている気がしたけど、僕には聞こえなかった。
描写が飛び飛びですが、もう日常は過ぎ去るのみなのです。
高校編の終わりまで、残り数話。