仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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作中で一年経過するのにかなりの時間を使ってしまった。
再び時期はクリスマス。


EP85.この思いを胸に抱いて

 高校卒業と言うのは一つの大きな節目であり、それまでに培った人間関係が一旦リセットされるようなものだ。高校を卒業すると、出会う機会と言うのが少なくなるからだと僕は思う。

 だからこそ忘れないために、また出会うためにこうして人ってのは集まるのかな。

 

「クリスマス会、始めるぞぉおおおおおおおお!!」

 

 そんな風に、いつもは真面目な委員長が暴走する程度には。

 事の始まりはいたって簡単。ホームルームの最中、だれかたポツリと「今年のクリスマスどうする?」という一言からだった。せっかくだし、全員で集まろうということになり、どこかいい場所がないかと探していくうちに、菊池さんが場所を提供してくれて――家族に、パーティー関連の仕事の人がいるらしい――そこで宴会の様な感じでクリスマス会を開くことになった。資金は主に僕と束がみんなに迷惑をかけたからと負担しているんだけど……なんだかんだでみんなも出していた。おかげで、結構豪華な食事である。

 そしてあれよあれよという間に今日がやってきたわけだ。

 

「しっかし、なんだかんだでみんなすごい伝手あるんだよな」

「そうだねぇ……ウマッ!? このチキンすごいよッ!?」

「束、少しは見た目に気をつかえよ」

 

 今更恥じらいを持つのもバカらしいって? いや持てよ。

 

「でも千冬もいるのにはびっくりしたな。忙しいんじゃなかったか?」

「年末年始は何かと忙しいしな。何とか時間をひねり出せたよ」

「そっか……」

「なあ束、英……何だかつらそうだが、どうかしたのか?」

「――――しばらくしたらわかるよ」

「……ごめん、ちーちゃん」

「いや言いたくないならいいんだ。だが、今日ぐらいは忘れて笑え。今まで頑張っていたんだろう。そのぐらいのわがままは許されるさ」

「そっかな……そうだよな」

「うん、じゃあもう一個チキンを」

「束は少し自重しろ」

 

 とまあ、そのまま適当に食べているとすっかりおなじみの顔ぶれが現れる。

 信二は筋肉痛なのか歩きにくそうだが……修学旅行で同じ部屋だった奴らがそこにいた。

 

「信二は……まあ筋肉痛になるか。委員長、さっきは凄いシャウトだったな」

「まあ今日ぐらいはね」

「だな……中島、そのスーツはどうした」

「聞くな……と言いたいが、どうせ薄々わかってんだろ」

「ああうん」

 

 マザコンだしなぁ……母親に着ていけって言われたな。

 そして飯島……お前は何というか、その……

 

「うん、その髪型似合っていないぞ」

「だよなぁ」

「ですよねぇ」

「っていうか、それどうやってセットしたんだ」

「え!? いや、ばっちり決まっているよね!?」

「――」

「まって、無言で離れないで!!」

 

 えっと、その……カカロットな髪形をリアルにやるのはどうかと思うんだ。

 とまあそんな風に駄弁っていると色々なことを思い出す。入学式したばかりは、僕自身の世界ってのも案外狭かった。一人で戦って、一人で突き進んで。それを変えたのは、花村さんなんだろう。あの笑って逝った少女。そして束と共に歩みだして、百花さんたちと出会い、戦い、多くのつながりが生まれた。楯無さんを通して政府とのコネクションを手に入れて、多くのことができるようになった。

 世界中を回っていたり、色々な物を見た。そんな中で、彼らはいつのまにか僕の日常の中に入っていた。いや、それが当たり前なのかな。でも、手に入れがたいものでもある。だから守りたいんだ……

 いつの間にか、背中には背負いきれないほどたくさんのものができていた。でも、それは嫌じゃない。隣には一緒に背負ってくれる、背負いたいと思う人がいる。背中から支えてくれる人がいる。声をかけてくれる、押し上げてくれる、そんな人たちがいる。そして――僕の前には引っ張ってくれる人たちがいた。だから、迷わないし、諦めない。

 

「……HEY! ヒーローが難しい顔するもんじゃないネ!」

「そんなことはないと思うんだけど……っていうか菊池さんテンション高いね」

「ノンノン! アリアデース!」

「……アリア、何度も言うけどヒーローって呼ぶのやめてよ」

「ソーリー。でも、事実デース」

「そうなんだろうけど……でもまあ、大丈夫だよ。嫌なこと考えていたわけじゃないから」

「そうですかー。ならよし! 私はこれから束に色々聞いちゃいマス!」

「あんまり困らせないでな。人付き合い苦手なのには変わりないから」

「分かってマース!」

 

 そういうと、慌ただしくかけて行って――束にハグした。おお慌てている慌てている。まあ大丈夫だろう。

 そして、何か食べようと思っていたら――変態が現れた。

 

「誰が変態だ!?」

「こんな時にまでスク水白衣のお前だ篝火!!」

「……いや、これがトレードマークだし」

「捨てろよそんなもん……」

「ええぇ」

「……はぁ」

「まあいいや」

 

 よくないってば。

 

「お前に話があるんだけどさ……貸しにしておいたことの話だ」

「ああ、ミコノスの……で、なんかあるのか?」

「うーん……いや、お前らなんかたくらんでいるだろ」

「それで?」

「ああ……まあ忙しそうだし、しばらく貸しにしておいてやるから――必ず返せよ」

「……わかった」

 

 それだけ言うと、彼女は別のテーブルに向かっていく……気を使わせたかな?

 適当に飲み物を飲んで、ポテトをつまんでいると――今度は女性陣がやってくる。

 

「宮野さんに、白樺さんと藤咲さん……どうしたんだ?」

「うふふ……いいわよねぇ、アンタは彼女がいて。っていうか、宮野も藤咲も彼氏いるし……独り身は私だけか?」

「向こうの剣道少女も一人身だぞ」

「織斑さーん! 一緒に慰め合いましょー!!」

「いきなりなんだ白樺!? っていうか誰が一人身か!!」

「違うの?」

「…………」

 

 ……あ、殴った。

 

「噂話ばかりするからねぇ……」

「宮野はギャルギャルしいわりに、空気読めないけど」

「ちょ藤咲ちゃん!?」

「事実」

「あんまり喧嘩すんなよ」

「あ、そうそう。あんたに一つ聞きたいことがあったんだ」

「なんだ?」

「ぶっちゃけ、どっちから告白したの?」

「――――」

 

 そういえば、ちゃんと告白したことってあったっけ? いや、好きだぞって言ったことはあるな。

 でも束に言われたことは――態度で示すことが多いから気にしてなかった。

 

「あーそういうわかりやすいのは無かったな。好きとは言ったことあるけど」

「あら? もうちょっとラブラブなちょめちょめかと」

「……なんだよちょめちょめって」

「なら、私が太一さんとのちょめちょめを」

「やめい」

「さっき聞いたし、藤咲ちゃんのは生々しいのよ」

 

 っていうか、それ回り巡って委員長にダメージ行くよな。

 

「大丈夫、すでに両家公認」

「「オイ」」

 

 話が生々しくなるまえに、僕はその場を離脱した。好き好んで友達のそういう話を聞きたくはないわけで。宮野さんは僕がそこまで言わないってわかっているからそういう冗談を言ったみたいだけど。

 適当に色々食べているけど……確かにうまい。伝手だあったり、自分で用意したり、みんな多芸だったり色々とコネがある人が多いんだよな……

 ふと思い出すのは亡国機業の潜入目的…………なるほど、人材的に優秀ってことか。

 

「まあ、もう意味はないわけで」

 

 あいつらの目的の一つ、というか目をつけていた人物が割れた以上下手に手を出すと楯無さんたちのお仕事がフル稼働しちゃう。

 そうなると困るのは向こうだし。

 

「……この光景を、守れたんだよな」

「どうしたの英?」

「なあ束……この光景、どう思う」

「うーん……暖かいね」

「そうだな……」

 

 その後、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。でも、その思い出はいつまでも残るだろう。この、胸の中にね。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 それから数週間が過ぎた。正月、篠ノ之神社の手伝いも終わり、それから荷物の整理を手伝って――それがひと段落した後のことだ。

 

「柳韻さん、お時間を取らせてすいません」

「いやいいんだ……それで束と英君、大事な話があるということだが?」

「お父さん……重要人物保護プログラムのこと、本当にごめんなさい」

「それはもう話が付いたはずだが……」

「それで、もう一つ大事な話があります」

「……この写真、これが何だかわかりますか?」

「これは……SFと言いたくなるが、まさか?」

「そのまさかです」

 

 柳韻さんも絶句しているけど、無理はないなぁ……だって、こんなぶっ飛んだもの作っちゃったんだし。

 

「公表はしていないけど、世界各国の承認は得ました。関係機関との協力を取り付けて、色々と取引したりしましたけど……」

「……今度のことと何か関係があるのか?」

「束がISを作ったことが保護プログラムの発端ってのは分かりますよね」

「ああ」

「ですけど、考えても見てください――数年、何もなかったでしょう?」

「たしかにそうだが……普通、そういうものじゃないのか」

「違うの……インベスがいたことで、ISは絶対的じゃなくなったし本来の使い方に近づいた。その影響でここ数年は平気だったってだけなんだ」

 

 ISは本来、宇宙開発用のために作られた。パワードスーツとは少々異なるものなのだ。だがその力が兵器としての道を歩ませようとした。いや、白騎士事件のこともあるし、束がそちらに引き込んでしまったことには変わりないわけだ。だけど、皮肉にもインベスがその道を正してしまった。

 それにより絶対ではなくなったISは当初の道に少しだけだが修正された。そして、対インベスに追われることでISの進化というか成長は遅くなった。それが、保護プログラムが使われるまでに猶予が生まれた理由である。

 

「そして対IS技術も生まれていったことで、バランスは修正されました。数年は不安定な時期が続くでしょうが……計画が成功して、インベスの問題が片付けば――10年後にはバランスが戻ります」

「IS学園も設立されるし、箒ちゃんだけなら先にここに戻ってこれるって話だよ。箒ちゃんが高校を卒業するまでには、たぶん二人も戻ってこれる」

 

 色々と政府と話をつけたのだが、ISの絶対性が薄れていくと予想されるため、篠ノ之家は数年でここに戻れる計算だ。だが、それも僕らが決着をつけたらの話。

 だからこそ……勝たなければいけない。

 

「安心してとは言わない。だけど――私を、私のことを信じてほしいんだ」

 

 束がその言葉を出すのに、一体何を考えていたのかはわからない。でも、その心中に色々なものがあったのは分かる。

 親とうまくいかなかった。自分の頭脳は止まることが無かった。狭い世界で生きてきた。

 それが――親と向き合い、その言葉を出すにまで成長した。

 

「――何を言っているんだ。親が、子供を信じないわけないだろ」

「…………ありがとう」

 

 ただ、ここにいるのは親子だった。僕はもう失ったけど――束はまだそこにある。だから、彼女にこの絆を失ってほしくなかった。それも、もう心配する必要はないかな。いや、必ずここにみんなで帰ってくるために僕たちは勝つんだ。

 

「それじゃあ……またね」

「ああ、またな」

 

 その後は言葉も少なく、荷物を運ぶだけだった。箒ちゃんは下手に刺激するとマズイと言うことであまり会話していないけど……束は一言言わなくていいのだろうか?

 トラックが出発してしまうというのに、束は僕の手を握ったまま……立ち尽くしている。箒ちゃんに見つからないように、建物の陰に隠れた僕の隣で。

 

「なあ、束……」

「ごめん――今日ぐらいは、泣いてもいいよね」

「ああ……」

 

 それだけ言うと、束は僕の胸に抱き着いてきた。

 分かれってのは辛いものだ。たとえ、また会うことができると言っても……それはとても辛い。

 空は朝焼けが見えるけど……すぐに曇って雨が降ってきた。

 

「本当、嫌になる」

 

 黙って束の頭をなで続ける……まだやることはあるし、立ち止まっている暇は無いけど――――今日ぐらいはいいよな。

 どのくらいたったかはわからないけど、その後、神社の管理とかで引き継がなきゃいけないから束の親戚と顔を合わせ、色々と頼んでおいた。雪子さんっていうらしいけど、きさくで良い人でよかったな。

 束が普通に対応するのには驚いていたけど……でもまあ、束の様子をみて安心したみたいだ。

 

「それじゃあ、後のことは任せてね」

「おねがいします……剣道場の方はいつものオジサンにまかせてあるので」

「ああ警察のあの人ね。わかったわ。たまには顔見せてね」

「ええ……ありがとう、おばさん」

「――ふふ、変わったわね」

「色々、あったから」

 

 それだけ言い残して僕らは当面の宿である神宮寺の研究所へと行く。

 なんだかんだで徹夜も多かったから、ここに寝泊まりしていたけど……すっかり慣れちゃったな。

 資料の整理や荷造りをしていると久々にあの人がやってきた。なんだか疲れているけど大丈夫なのだろうか……

 

「うばぁ……英さん、お久しぶりです」

「うん、百花さん――ひどい顔だけど、大丈夫?」

「あらいやだ、はずかしいですわ――なのでお嫁にもらってください」

「無理」

「あはんッ!? これですわ、この感じが一番!! ってことで充電完了です! 仕事に行ってきます!!」

「あまり無茶しないでよー」

「はいですわああああああ!!」

 

 そのまま走り去っていくわけだが……マジで罵倒されに来ただけ? っていうか、罵倒ですらないけど。

 相変わらず濃いな。

 

「ハァ」

「どうしたのー?」

「ああフロンか。何でもない……フロン、背伸びたか?」

「前にはかった時より、5センチアップ」

 

 誇らしげに胸を張るフロン……まあ一夏君より小さいし、ほほえましいだけか。

 とりあえず頭をなでてやると嬉しそうに微笑んでくれる。

 

「あ、束おねえちゃん呼んでたよ」

「そうか……となると、あれかな」

「あれ?」

「ああ……スレイプニルが完成したんだと思う」

 

 ついに、計画実行の時がやってくるんだな……

 卒業式までもう残り少ない――次のステージが幕を開けるまで、あとわずか。

 




次回、卒業式。
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