仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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なんとか完成。
書き溜めが尽きたんでいつ更新が止まるかわからない現状です。


EP89.ベヘモット

 中米、海沿いの近くにその化け物はいた。

 巨大な体躯に、大きな鼻。動物園などでよく見かける生き物に似ているが、あの赤い色がひどく不気味である。

 

「今のところ被害はないみたいだけど……とっとと降りるしかないか」

 

 信二が向かった中米は幸い日中である。ならば、ここはこうするべきだ。

 

「ダーイビーング!!」

 

 グラニから飛び降りて、目標地点に蹴り入れた。赤い色の……エレファントインベスはくぐもった鳴き声と共に、倒れる。信二が周りを見渡すと、子供たちがおびえて腰を抜かしていた。

 間に合ってよかったと思うのと同時に、ここは危険だからと――

 

(あれ? 何語で話せばいいんだ!?)

 

 英語、もしくはスペイン語が話せれば案外何とかなる。

 しかし信二はパニックになったためなんていえばいいのかわからない。

 

「――ア!!」

 

 少年の一人が、驚いた様子で指を指している。振り向くと――インベスが立ち上がっていた。まるで、闘牛のように足を動かして、こちらをにらんでいるようだ。

 さすがに、正面から受け止めるわけにはいかないし……かといって、避けると後ろの子供たちがいるんだよなぁと、信二は悩んだ。

 

(マツボックリエナジーとマロン……だめだ、どっちもこの場面では意味がない。飛行能力があるココナッツエナジーのままってのもなぁ…………っていうか、実際にインベスを目の前にすると……こう、嫌な感じがビンビンなんだけど)

 

 数か月前まで完全に一般人だった自分。少しばかり怖気づくのも無理はない。

 だけど……後ろに子供たちがいる。彼らだけでも守らねばと思うと、自然とどうにかするためために頭が働いていく。

 

「そうだよな、うじうじ悩むより、まずは行動!」

 

 弓を引き、相手の懐に飛び込む。長い鼻とその巨体はインベスにとって武器となるが、同時に弱点となる。まず、懐に飛び込む――と見せかけて、信二は高く飛翔した。

 

「あらよっと!」

 

 背中のマントのような部分が、翼となり、宙を舞う。

 信二の読みの通り、長い鼻を使って信二を捕えにかかるインベス。しかし、リーチが一歩及ばなかった。そして、弓を眼球のあたりにめがけて放つ。当然インベスもそれを防御するが……それこそ信二の思った通りの行動。生き物は通常、顔のあたりを攻撃されると咄嗟に防御行動に移す。反射的に行われるため、そこに思考が挟まるわけではない。そして、インベスもそれは同様だ。

 

「――――ゴッ!?」

「おまけだッ!」

 

 滑空からの、縦一文字切り。厚い皮膚に阻まれるが、十分ひるませることはできた。

 どうやら、子供たちは状況を理解できたのか一目散に逃げ出してゆく。地面に降り立った信二は、ふぅと一息ついてインベスを詳しく観察している。

 

「……皮膚は厚い、見た目の割には俊敏そうだし…………それにッ!?」

 

 とっさに高く飛んで砲撃――鼻から放たれた水――をかわす。

 どういう原理かはわからないが、鼻から水を噴射して攻撃できるらしい。

 

「っていうか洒落にならないって!!」

 

 水にかぎらないが、高速で射出されればそれだけで武器となる。

 あまりの速度に着弾した地面から煙が上がっているのを見ると、素直に受け止める気にはなれない。

 

「ああもう! とっとと終わらせてやる!」

 

 信二が束から聞いていた、とあるコンボ技をさっそく試そうと、レバーに手を当てる――が、そううまくはいかなかった。

 地面が盛り上がり、炎が噴き出して信二の体を吹き飛ばしたのだ。

 

「――――アガッ!? こなくそ!!」

 

 空中で翼を広げ、身体を回転させることで受け身を取る。

 自分が絶っていた場所を見ると、どうやら地面に隠れていた奴がいたらしい。

 

「…………目標、捕捉」

「そりゃ、操っている奴が近くにいるよな。ああもう、しっかりしろ俺」

 

 目的は人さらいか、それとも他の理由か……あるいは、足止めか。

 とりあえずふんじばってでも聞き出そうと思うが――何を考えたのか、地面にもぐっていた人物は手に持っていたロックシードを……エレファントインベスに食べさせた。

 

「――は」

「アディオス」

 

 それだけ言い残すと、謎の人物は地面に何かをたたきつけ――まばゆい閃光がほとばしり、その場から消え去っていた。残されたのは、その姿を変質させていくインベスのみである。

 四足歩行から二足歩行へ、より大きく、凶暴に。

 

「こりゃぁ、足止めの方向で間違いないかなぁ……油断し過ぎた」

 

 反省は後にして、まずはこいつをどうにかしないと……信二の現状の手札は、ココナッツエナジー以外通用しなさそうではある。

 それに、皮膚の硬さから考えてもなぁと思うが……ふと、いいアイデアが思い浮かんだ。まずは、下準備から。

 

【ロックオン!】

 

 ロックシードをソニックアローにセットして、なるべく皮膚の柔らかそうな箇所を探す。スピードも強化されているため、突進だけでも命取りとなるが――信二は、全て軽やかにかわす。

 翼が存在することで、三次元的な動きが可能となっているため、普通なら行えない回避行動を使えるためだ。斜めに飛び、身体を回転させながら相手の後ろに回り込む芸当を見せる。そして、狙いは定まった。幸いインベスの手足は短く、そこを防御しにくいというのが見て取れる。

 

「ハッ!!」

「――ゴガアア!?」

 

 一つ、二つと背中に矢を放つ。インベスは狂ったように吠えるが、猪突猛進に突進を行うのみ、再び軽やかにかわして、三つ目、四つ目の矢を打ち込む。

 鼻から水を出す能力は健在なのか、もはやビームと言った方が良いような砲撃が襲い掛かるが、かわすだけでなく、風圧を利用して体を回転させてインベスの知覚外――空高くに上がり、最後の矢を打ち込んだ。

 

「――ガ!?」

 

 再びロックシードをドライバーに装填し、ハンドルを二回押し込む。

 右足に充填されていくエネルギーは、ライダーシステムの基本にして、強力なキックを放つ技。信二は、自分のそれにこう名付けた。

 

「ロンドツイスター!」

 

 体を回転させながら、矢を放った場所――等間隔に撃たれ、五角形を表していた――に寸分たがわず命中する。

 体の回転に巻き込まれ矢が引き抜かれ信二の後方へ下がる。激突してなお回転を続け……矢が再び戻って来て回転に巻き込まれながら足先まで運ばれる。そして、着弾する。

 

「――オグガッ!?」

「ドッセーイ!!」

 

 着弾したときの衝撃で、さらに加速したキックがインベスを貫いた。

 断末魔とともにインベスは爆発し、その姿を消すのだった。

 

「……ふぅ、とりあえず終わりかなぁ…………反応はなんかある?」

『大丈夫、ですが念のためしばらく待機してください。あとでグラニをそちらに向かわせます』

「はいよー……まあはじめてにしては上出来、かなぁ?」

 

 後の話であるが、太陽を背にし降り立った彼のことを見た少年たちは、彼をこう呼んだ――仮面ライダーシャイン、と。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 ――信二がインベスと戦っているのと同時刻の出来事――

 

 北極海上空、ここまで来ると時刻がわからないんだよなぁ……

 地上には確かに、巨大なインベスがいるわけだ。

 

「でっかいなぁ……何なんだアレ」

 

 見た目的には、ドラゴンっぽいが……皮膚は青か? なんだか銀色の光沢があるけど。

 水上ならコイツだろと、空に飛び出してアームズを換装する。

 

【ブルーベリーアームズ! 豪快ビッグウェーブ!】

 

 水面に降り立ち、インベスとの距離を一定に保って移動して観察観察。本当にドラゴンっぽい見た目だが…………水場にいるし、バハムートインベスと呼ぶことにしよう。

 とりあえずデータ収集をしておきたいが……あまり時間をかけてもいかんな。

 

「とりあえず、様子見で――オグガァアアア!?」

 

 いきなり、横からものすごい強さで弾き飛ばされた。ダンプカーの一撃でも食らったかと思ったが、その正体は至極簡単。奴の尻尾だ。

 ものすごい長さで、鞭のように使ったんだろうけど……その威力がヤバい。

 二転、三転と体が水上をはねる。これは……あばらの一つも覚悟した方がいいだろうか。

 

「って、やばっ!?」

 

 バハムートインベスの口には、炎があふれている――っていうか、北極でそんなの使うなぁあああああああ!?

 とっさに水中にもぐるが……油断し過ぎではないだろうか。グリフォノイドとの一戦もすぐに終わったし、強力な敵との戦いを久しく経験していなかったためか、水中に潜ったところで意味がないことに気づいたのはそのすぐ後だった。

 

「――――!?」

 

 水が、赤く光り、爆発していく。

 あたりの氷も爆発していく。その爆発で僕の体は空高く、吹き飛ばされてしまうのだった。

 

「…………あ」

 

 一瞬で蒸発した氷と水に、僕の体は吹き飛ばされた。幸いだったのが、水に対しては高い耐性があるブルーベリーアームズだったことか? それでも、大分ボロボロではあるが。

 前々から思っていたが、僕は大きなダメージを受けるとスイッチが切り替わるのか、こうして自分を冷静にとらえるようになる。体は、動く。思考回路はまだ平気。

 

「うぐぅ!?」

 

 体の内部は、かなり痛い。頑丈な体だから、内臓破裂とかはないと思うけど……ブルーベリーアームズで衝撃をどこまで殺せたのか、正直そっちは自信がない。

 ……やっぱり、これを使わないとダメかな。

 

【ノロシ!】

 

 使用後の口の中の酸っぱささえなければなぁとは思うものの、出し惜しみして勝てそうにないぐらい強力なインベスである。

 というかさすがにこれ以上氷が溶けるのもマズイ。さっさと倒さないと偉い人に何言われるか……

 

【ノロシアームズ! 反撃開始! アンコール! アンコール!!】

 

 ズシリと、重い感覚を感じながらもこれならいけると思った。そう思ったから一歩を踏み出したのだが……それがいけなかった。

 ズボリと、重い感覚を感じながらも足元をみる。うん、埋まっているね。

 

「――ふぁっ!?」

 

 あまりの重量に、足場にしていた氷にめり込んだらしい。あれ? 抜けない……あれ?

 

「ノ――――――――!?」

「ガアアアアア!!」

「待って、チャージ技は待って!!」

 

 しかし、言っても聞いてもらえない。だって、相手はインベスだから。

 どうする? どうすればこの窮地を脱せられる? ハーモニクスカノンで極太ビームを打ち合う? 被害がバカにならないし後始末が大変だから却下。ブースターで飛ぶのはどうだ? いや、相手の攻撃をかわしきれない……あれ? 詰んだ?

 

「待て待て待て待て! まだ手はあるはずだ。他に、他に!!」

 

 どのロックシードを装填すれば助かる? ハーモニクスカノンは他のロックシードを装填することで弾丸を変えることができるが、どれがどんな弾になるかまだ解析しきれていないのだ。

 元のロックシードと同じかと思えば、マツボックリみたいに全然違う弾丸になる場合もあるし……元と同じ効果だと賭けるにしても、この状況で使えそうなのは――あ。

 

「ええい、ままよ!」

 

 僕が取り出したのは、ノーマルアームズでもよく使っていたのと同時に、フレッシュな思い出のあるロックシードだった。

 

【パイン! ナチュラルチャージ!】

 

「頼むから成功してくれ!!」

 

 インベスのチャージが完了する、その数秒前だっただろう。ハーモニクスカノンから放たれたのは――僕の予想通り、パイナップル型の鉄球。鎖が付いたそれは、バハムートインベスの顔をふさいで、チャージされたブレスを逆流させた。

 

「よし! 成功!!」

 

 パインアイアンと同様の効果で安心した。しかし、予想以上に硬いインベスはまだ活動を停止していない……ならば、今度はこっちだ。

 

【ブルーベリー! ナチュラルチャージ!】

 

「しっかり味わえよ!」

 

 放たれた砲撃は、冷気の塊だった。着弾と同時にあたりに弾けて周囲を凍らせる。

 自分の攻撃でボロボロになっていたインベスは……氷に封じ込められ、その動きを停止させ…………砕け散った。

 

「……すげぇ、爆発させることなく消えていった」

 

 凍らせて砕く、そういう効果の弾丸だったのか。

 しかし、おかげで被害の修復も一応出来た。

 

「……通信状況は…………悪いな」

 

 ブースターで電波が届く場所まで移動しておこう。道中、シロクマっぽい生き物を見たことがラッキーと思ったけど……体の痛みと引き換えってのに割は合うのか。

 なんとか通信状況が良い場所までたどり着き、シルバーアームズに戻す。ああうん、酸っぱい……

 

「きこえる?」

『大丈夫ですよ。ちゃんと通信できています。そちらは終わりましたか?』

「ああ……何とかね。レヴィインベスよりヤバそうなのがいた」

『それはまた、対策を考えないといけませんね……中沢さんも片付いたそうですよ』

「それは良かった…………被害は?」

『ありません』

「本当良かった……こっちはひやひやしたけど、一応大丈夫」

『あとで報告書書いてくださいね』

「へーい……束は?」

『まだ連絡は来ていませんが……少々マズイことになっているかもしれませんね』

「……助けに行きたいけど、うかつに動くのもなぁ…………体へのダメージもでかいし…………でも、行かないといけないよな」

 

 とりあえず、スレイプニルの方で北極付近を監視して貰って、僕はグラニで束の下へ向かう。

 すぐに通信で、オーバーロード出現の知らせを聞いた――

 

「――クソッ!!」

 

 無事でいてくれよ、束。

 




油断しやすい男たち。

そして、その頃の束さんは……次回に続く。
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