仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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亡国機業、今回の目的を語ります。

あと昨夜裏話も更新しておきました。


EP92.ストレンジャー

 三か所に分断されてもなお、英たちにとって亡国機業の目的は分からないままだった。同時刻、一体何が起きていたのか――それを追うとしよう。

 中国の山奥、そこに須郷猛がやってきていたのだ。それだけならば陽動は必要ないだろう。だが、それを必要としたのにはわけがある。

 

「まったく、首領様も人使いが荒いな」

『そういうなよ。わっちもちゃんとオペレートしてあげるからさ』

「へいへい」

 

 たしかに山奥過ぎて、オペレートなしには目的地にたどり着けなそうではある。

 今回の仕事は雑用もいいところであるし、正直陽動の方に参加してあの男に今度こそとも思うのだが、今はまだその時ではないと自分に言い聞かせて猛は仕事をこなす。

 人を捨てた身ではあるが、流石に疲れも溜まるし腹も減る。いったい何時間歩かせるんだと小一時間問い詰めたいところだが、オペレーターをしているミランダに何を言ってもはぐらかされるんだろうと、無駄な労力を使わないことにした。

 

「まだつかないのか?」

『いや、そろそろだと思うよ。オーバーロードの反応を微弱だが感知した』

「――そうか」

 

 それは僥倖。案外、楽しめそうな仕事かもしれない。

 徐々に道が開けてきて、道場の様なものが見え始めた。周囲には、ヘルヘイム植物の亜種らしきものもいくつか栽培されている。と、観察をしていた時だった。なにかキラリと光るものが飛来し、猛を狙う。

 

「――ッ!?」

 

 とっさに飛び上ってかわすが、それは――ただの釣針だった。糸をつけた、本当に普通の釣針。グルグルと自分が立っていた場所を囲み、縛ろうとするが……当然、不発である。

 

「ジャジャジャ、意味が無いようじゃのう」

「…………日本語?」

「うんにゃ、あんさんがそういう風に聞こえているだけじゃ。のう、若き同朋」

 

 老人。まるで仙人みたいな風貌の男が建物の中から出てくる。

 瞳は老いを感じさせないほど鋭く、外見の年の割にはしっかりとした動きで歩んでくる。

 猛は知らないことだったが、オーバーロードになった時点で人の制約を外れており、言語という枠組み自体が無いのだ。バベルの塔が崩され、人は異なる言語を使うようになったという言い伝えがある。しかしそれは人にのみ課せられたもの。オーバーロードとなった彼らにそんなものは関係が無い。

 

「……あんたが、最古から生き残っているオーバーロードの一人か」

「どうやら、時代は動いたようじゃのう……あのバカ夫婦は何をしておるのか」

 

 やれやれと肩をすくめて溜息を吐くが、彼に隙は無い。一気に殺してしまおうと考えていた猛は、相手の実力に慄く。話では、戦闘能力が低いとも聞いていたのだが……そんなことはないらしい。

 

「碧の民ってやつは、戦闘能力が低いんじゃないのか?」

「……力量を見ることの出来る、おぬしも相当な使い手じゃろうが――これでも4、5000年は生きておるからのう…………コツコツと研鑽を重ねれば、このぐらい当たり前じゃろうて」

 

 猛の受けた任務は、この老人――碧の民の生き残りを連れていく、もしくは殺すことである。

 首領にとっても危険な情報を持っているらしく――それを知ることができれば寝首を掻くことが可能かもしれない――素直にその任務を受けるのが猛しかいなかった為、彼はここにやってきた。

 亡国機業の内部でも、首領になり変わろうとするものは多い。そもそも、首領――マルス自体が前のトップを殺して乗っ取っている。前トップの部下たちも鞍替えしたように見せかけて、裏切ろうとしているものも多く、派閥も色々とある。

 その中で、猛はオーバーロードにして貰った恩義を首領に感じていることもあり、寝首を掻くつもりは全くない。そもそも組織のトップに興味もないのだが。

 自身が強くなるため、いい経験になるかと思ったこの任務……どうやら一筋縄ではいかないらしい。

 

「しかしまぁ、どうやら原罪は復活してしもうたようじゃのう……」

「マルスのことか?」

「呼び名など、多すぎてわしも覚えとらんよ……若いのに、人を捨てて…………後悔しとらんのか?」

「弱い自分に未練などない」

 

 そういうと、猛はその姿を変貌させていく。黒き鎧はさらに鋭くなっており、両腕の拳はより固く、しなやかに。体からは炎のようなオーラが立ち上っている。

 

「――黒……女王の眷属」

「女王? マルスは男だぜ」

「……そうではない、ヘルヘイムの実を食した生き物は三パターンの姿のいずれかに変貌する。紅、蒼、碧……されどさらに進化した存在は五パターン存在する。先の三色に追加して、白と黒。どちらも強力な力を有しておるが……白は人を率いし者、黒は女王の眷属と呼ばれる……かつて、黒き女王のしもべであった者たちは皆黒い色の姿をしていた」

「ごちゃごちゃうるせぇなぁ……そんなことどうでもいいし、マルスのオッサンは金ぴかだし、結局のところ――強くなれるならどうでもいい。あんたが、何か重要な情報を知っているのは分かったが、それをアイツらに知られるのはまずいんだよ」

「……金、なるほどそういうわけか…………せめてあのバカ夫婦の意思を継ぐ者が生き残っておればいいのじゃが……仕方がない、女王の眷属相手ならば本気を出さねばいかぬて」

「ぬかせっ!!」

 

 一瞬の間ののちに、二人の拳は激突した。老人はその姿を人から怪物へと変化させる。碧の体に、細身の肉体、されど、力は互角以上。

 

「うぐっ!?」

「伊達に長生きはしておらぬ!!」

「ハァアアア!!」

 

 猛もただではやられない。倒れる寸前に手を地面について反動で起き上がる。

 そのまま拳を老人めがけて叩き込むが――手のひらを拳に当てて、流れる水のようにひらりとかわしてしまう。

 

「なに!?」

「日本にあるじゃろう? 合気というやつがのう!」

「くそっ!!」

 

 左手に炎を集め、剣のような形にして老人を切り裂く――ように見えたが、いつの間にか老人は猛の頭上に立っていた。

 

「こなくそっ!?」

「ほっほっほ、若い若い。あまり時間もかけておられんだ……」

「……爺さん、名前は?」

「ノア。おぬしは何という?」

「須郷猛」

 

 名乗りを上げ、お互いに必殺の構えをとる。猛が剛の戦い方をするならば、ノアは柔の戦い方をする。相手の技量が上過ぎて、自身の能力だけでは勝てないことぐらいは猛にも理解できている。だが、自分にはまだ奥の手がある。

 

「いくぞ!!」

「フンッ!」

 

 拳とそれをつかみ、利用してくる腕。二つがぶつかり合うが――猛は一つのロックシードを使った。

 

「オラァアアア!!」

「なん、じゃと!?」

 

 青色の薔薇。巨大なハンマー、ブルーローズブレイカーがノアに迫っていた。

 とっさに力を受け流し、かわそうとするが――重力制御により自由に動けない。

 

「うぐぅ!? しまった、固有能力!?」

「そうだ! 長寿のオーバーロード!! お前の能力は長寿だってこも調べがついている!!」

「ぐぬぅ!? 体が、動かん」

 

 地面に押しつぶされ、ハンマーを抑えるだけでも精一杯。

 それでも耐えているのは長い年月の研鑽故か。

 

「俺らとくれば命は助かるかもしれねぇ……どうするよ、爺さん」

「そんなことするぐらいなら、死んだ方がましじゃて……どうせロクなことにならんのじゃろうしのう」

「そうか……なら――」

 

 猛は新たに一つ、ロックシードを取り出し、ブルーローズブレイカーに装填する。

 それは、亡国機業が作り上げた凶悪なロックシード。

 

【ザクロチャージ!】

 

 エナジーロックシードに匹敵する力を持ち、殺傷能力に特化した代物。

 英は撃退していたが、本来は敵対する者の肉体を破壊するための力なのだ。

 他のロックシードはインベスを撃退したり、身体能力を高めたりするために生み出されたものだが――このロックシードは人間を殺すために作られたものである。設計思想からして異なるそれはオーバーロードの力により増幅されたパワーを解き放つ。

 

「――死ね!!」

 

 赤い光が、最古のオーバーロードをただの肉片に変えた。

 真実を知るものが一人、この世を去ったのである。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 建物の中に何か資料が無いか探し、見つけたものはとりあえずミランダと連絡を取ってどうするか決めた。

 すぐには帰る気にはなれず、猛は空を見上げている……星が輝いていて、何故かわからないが嫌になった。

 

「ああ、胸糞悪い」

『どうしたんだい? センチメンタルな気分に浸りたい年頃なのか?』

「そんなんじゃない。ただ、いい目標になっただろうにと思ってな」

『確かに、彼は強かったみたいだねぇ……同じ碧の色でもアンバーとは大違いだ。もっとも、彼女も篠ノ之束との戦いで大分変質しちゃったけどね』

「陽動の方はどうだ?」

『成功。ただ、秘蔵のバハムートインベスがやられちゃったけどね。他にも、エレファントインベスもダメだったし、トルーパーじゃ勝てないみたいだし。これは課題がおおいなぁ……ドライバー、増やさないといけないかな』

「そっちはお前らの領分だ……俺には関係ないさ」

『だろうけどね。どうだい? 休暇申請して里帰りでもする?』

「今更、帰るところなんてないさ……」

 

 そういえば、自分を産んだ親はどうしているのだろうか……父親は女をとっかえひっかえした大馬鹿野郎。母親もネグレクト上等なダメ親だった。

 しかし、思い返せば自分と英が最初に出会ったときの言動は父親のそれに似ていて――ああ、嫌になる。

 

「……くそっ」

 

 返り血を浴びた体も洗いたいが……どこかで水浴びでもするかと、周囲を探索――ふと、血濡れになったはずのザクロロックシードを見る。

 何もついておらず、きれいなままだ……ああ、そういうことか。

 オーバーロードというヘルヘイムの力を持った血だからこそ、ロックシードの中に浸透した。ならば、ここにはあのノアというオーバーロードの血が吸収されているわけだ。

 そういえば、何も食べていなかった……おいしそうに見えるこの果実、食べない理由がない。

 

「いただきます」

 

 バリボリと、嫌な音があたりに響く。

 バキバキと、身体が音を立てて変形していく。

 皮膚は鎧のように。目は紅く光り、角が生えていく。

 

「ははは、そうだ――もっとだ、もっと強くなるんだ!!」

 

 少年だった男はこうして、さらなる深みへとはまっていく。

 ただの嫉妬から始まった挑戦は、いくつもの挫折と敗北を重ねて進化した。

 

「ははは、ははははははははははははははははは!!」

 

 そうして得た初めての勝利。直接のぶつかり合いではなかったが、英たちを自分たちの思惑通りに行動させ、目的を達した。

 ちっぽけだが、確かな勝利――今、小さな悪魔が目覚めた。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 場所は軌道上、スレイプニル。英たちは地球をモニターするも特に大きな変化を見つけることはできなかった。

 

「くそっ! 結局わからずじまいかよ……ハァ」

「あまり気にしても仕方がないよ。特にニュースとかも流れていないってことは、被害が出る目的じゃないみたいだし」

「それが問題なんだよ。何が目的だったのか、わからないからこそ――恐ろしいんだ」

 

 その一言はクルーたちに浸透した。

 奴らが何をしたのかわからない。だからこそ、恐ろしい。

 その不安感こそ一番の強敵だった。

 

「仕方がない。いったん打ち切って――モンドグロッソの対策を練ることにしよう。なんかあってからじゃ遅いからな」

「国連やIS委員会からも警備の依頼きていますよ」

「そうなんだよねぇ……誰が行くかが問題なわけだが…………交代制にするか?」

「そうだねー」

「フロンちゃんも生で見たいって言っていましたよ」

「俺はイイっすわ」

「HAHAHA! お留守番は任せてください!」

「瀬田、ジョニー最初から行く気ないのかよお前らは」

 

 とりあえずローテーション組んでおこう。

 一か月ほどしかたっていないが……なんだか懐かしい顔ぶれにまた会えるのは楽しみである。

 




新キャラ、そしてすぐに退場。

ノア爺さん結構書きやすいキャラだったんですが、この人? 強すぎるわ。
オーバーロードの能力はひたすら長寿ってだけで上級インベスより身体能力に劣りますが、補うどころじゃない技術をお持ちです。

作中で言ったように、敗北を重ねて強くなっていく猛と科学の力をもった武器によって敗北しましたが。

そろそろモンドグロッソだぜ。その前になんか小話はさむかも。
というよりフロンのことを語った方が良いかなぁなんて……


1-5明石ッ
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