モンドグロッソの開催に際して、どのような競技を行うかという問題があった。
ISの性能は兵器として運用できるが本来は宇宙開発のために製造されている。インベスのこともあったし、普通に使用するにはあれだし、副産物と言うか他の技術も軒並み上がっているから手放すには惜しすぎる。ならどうすればいいかと言うことで――競技用パワードスーツに一応落ち着いたわけだ。
「で、結局競技とか手探りでやらなきゃいけないわけで、いくつか演習はしたんだけど……パワーバランスとか色々とねぇ…………あんまり無茶なことすると危険だし」
「へぇ」
まあ第一回はそこまで大きな規模でやるつもりじゃないんだけどね。あくまで試験的な側面もあるんだ。
だから格闘部門、レース部門、射撃部門、総合部門をやることになった。
「英さん、総合ってなんですか?」
「総合は総合だよ。全員参加のバトルロイヤル」
「それ会場大丈夫なんですか?」
「……ぶっちゃけ、千冬が全員を一撃でのしてくれることに期待している」
「オイ!?」
鈴ちゃん、世の中には不可能なこともあるんだよ。
そんなこんなで、モンドグロッソについての解説をしているわけだけど……わかったかな?
「まあ……っていうか、アイツらは何してんのよ」
「料理のライバルみたいなもんだからなぁ……一夏君とフロンは」
なんだか夕日をバックになぐり合っているイメージが浮かぶ。っていうか、小学生のくせになんでここまでの腕に……教えたの僕だけどさぁ。
千冬は会場内のホテルに泊まっているが、僕らは開会式が終わった後織斑家に帰ってきた。で、本人いないけど千冬激励パーティーが始まったわけである。うん、本人のいるときにやれよって感じだが……というか未成年なのに酒盛りするなよかつての同級生たちよ!
「いいじゃないですカー」
「アリア……お前なぁ」
「はっはっは! そうだぞ蜂矢君! 君も飲みたまえ!」
「委員長!? お前は止める側だろうが!?」
って言うかどうしてこうなった!?
「それは私が呼んだからよぉ――あべし!?」
「お前か佐々木ィ!!」
「あ、相変わらず辛辣なツッコミね……安心しなさい、千冬ちゃんには写メで激励会の様子を教えておいてあげたから」
「この外道!!」
「だって、ダーリンが会場警備でずっとあっちに行っているから寂しいんだもん!!」
「だもんってあんた……もうピー歳だろ」
「……こんな大人にはならないようにしよう」
鈴ちゃんが、妙に達観した感じでつぶやいているのが印象に残った……そりゃこんな光景を見たらそう思うよなぁ…………
「あ、蜂矢君これ渡しておくね」
「藤咲か? なんだよ――なんだろうどっかで見たことあるな」
「招待状」
「……結婚式の招待状?」
「うん」
ああ、そういえば貴女、委員長と付き合っていましたね……っていうか学生結婚かよ。
「違う、デキ婚」
「オイ」
「むしろ仕込んだ」
「やめてーそういう黒い話やめてー」
「既成事実に勝るものはない」
「……そっか、既成事実か」
「鈴ちゃん!? やめようよこの子を参考にするのは!?」
「うぇーい? でも子供出来なくても有効な手だぜい?」
「束ぇぇぇ!? お前まで何言ってんだよ!?」
「はっはっは! 今更だろうがぁ!! って言うか英だって前はあお――「そおい!!」――あぶし!?」
「やっぱ酒はろくなことにならないな……」
飲んでも呑まれるなだよ。
「よし! 完成だ!!」
「こっちも」
「そこの二人はいい加減作るのやめろよ!! っていうかすでにおつまみにシフト!?」
「なんかそんな感じかなって。はい、マグロの唐揚げ」
「こっちは焼き鳥」
「……もう何も言うまい」
「私も料理頑張らなきゃ……」
鈴ちゃん、こいつらのは日課というか仕事だから。フロンに任せている僕が言うことじゃないけど。
「よーし! 千冬ちゃんのお部屋にお邪魔しちゃうぞー!」
「宮野……お前は」
「あっはっは――――酔いが醒めた」
部屋をのぞいた瞬間、一段とギャルっぽくなった彼女は落ち着きを持ったヤマトナデシコになってしまう。まあ、あの部屋を見たらなぁ……散らかりまくりで、姿鏡のところにその存在感を発揮させまくっている魔法少女の衣装があればな。
「千冬の自作らしいぞ。家事苦手なのに、アレ作るために裁縫を覚えたそうだ」
「……なんでこうなったんだろうね」
「じゃあアレはやっぱり織斑さんだったんだ」
「飯島、なんか知っているのか?」
「あうん……夏とか冬のお祭りって言うか、なんていうか」
「ああコ○ケか」
「コミ○ね」
「それでさ……なんか織斑さんに似ている魔法少女が」
「あそこにも出没しているのか」
「みんな酔いが醒めちゃったわねぇ……」
むしろ冷めただろ。ほらみんな目が見開いているぞ。
「文化祭は凄かったですよね」
「そうよねぇ」
「会場が一気に静かになったんだよなぁ」
「ほらほら、ちびっこたち証拠写真よ」
「俺も見たんだけどなぁ……千冬姉の将来が心配になった」
「……これは、すごい」
「ち、千冬さんのイメージが……」
一部は結構耐性できているんだ……
でもまあ、それはみんななんとなくわかっていたかと思うけど。
「いやそうじゃなくてさ……」
「飯島?」
「……男と男がくんずほぐれつする漫画を描いていたんだ」
「――!?」
まて、なんかそういう話を聞いたことがあるような――なんだろう、思い出してはいけないという声が聞こえる。
「ああ、これですね」
「一夏君!?」
「……俺だけが被害にあうのも辛いですし――安心してください。ここにいる男全員が被害者です」
「「「「「安心できるかぁあああああ!?」」」」」
あ、あのお腐れ様がぁああああああああ!!
◇◇◇◇◇
遅くなるといけないから鈴ちゃんを家――中華料理屋だった。今度来よう――に送り届けて再び織斑家に戻る前に、家があった場所による。
「……すっかりなんもなくなったなぁ」
瓦礫とかの撤去も終わって、空き地になっている。いや、権利とかは僕が持っているんだけど……家を建てるつもりもないしなぁ……どうしようか。
いつか、全てが終わったらここに帰ってくるのか……それとも別の場所に行くのか。
「…………終わった後考えるべきなのか、今考えておいて――目標に頑張るべきか。まあどっちにしても――負けるわけにはいかないな」
モンドグロッソ期間中は、ISがたくさん集まってくる。亡国機業だってISコアに限りはあるし、グリフォノイドみたいな使い方はそうそうできない。一つでも多くコアが欲しいはずだし、束も作り方は公開していないから他の人が作れるとは思えない。なら、奴らは絶対にモンドグロッソ期間中にやってくる。
対インベス対策はしているけど……オーバーロード相手に効果があるかわからないし、結局僕と束は期間中はずっと地上にいることになった。
「明日は確か……レース部門か」
織斑家は狙われる可能性があるからと、みんなが一夏君を見てくれているのは助かったけど……ハメ外し過ぎじゃないかなぁ……
そういえば、百花さんは神宮寺の仕事があるから明日来るって言っていたな……右手の腕輪で百花さんの端末をコール。一回目で出てくるあたり、流石と言えばいいのか?
『どうしましたのですか!? 英さんから連絡をくださるとは!』
「テンション高いデスネ……いや、ちょっとお願いがありまして。明日、僕の工房から例のものを持ってきてほしいんです」
『……完成しているんですか?』
「反動制御の問題があるんですけど、ノロシアームズならそれもクリアできます。他のアームズでも高い火力を持った装備が欲しかったから作ったんですけど……ちょっと必要な予感がしまして」
『分かりました。英さんの勘はよく当たりますからねぇ……ところで束さんは?』
「クラスメイト達と騒いでいます。モンドグロッソ期間中は海外の人も多いですし、飲食店とか居酒屋とかにぎわっていますんで、同じような光景に映っているでしょうね」
『それは良かった。一夏君を狙う不届きものがいないとも限りませんし』
「杞憂で済めばいいんですけどね」
その後、いくつかの確認事項を済ませて通話を切る――直前であった。
『英さん、一つ良いですか?』
「どうしました?」
『マルスについてです』
「…………」
『束さんはこういう方面には鈍いですからね……代わりに私が聞こうと思いまして』
「そうですね……アイツは鈍いですから」
『……マルスの正体は…………戦極博士なんでしょう?』
「ええ、おそらくは」
驚いた。僕から聞いただけの情報でそこまで察していたのか。
というより、僕は一言も言っていないんだけど……なんで気が付いたんだろう。
『断片的な情報でも、そこまでは推察できますよ。確証はありませんけど……ただ、わたくしあの人と一度会ったことがあるんです』
「本当ですか?」
『ええ……お父様に連れられて、御挨拶をした程度ですが…………世界征服とか考えるような人には見えませんし、その時の研究も義手とか、補助器具のことだったと思います』
「……そこら辺は僕にはよくわかりません。あったこともありませんし、あくまで推測の域を出ません」
まあ単独でドライバーの製造技術を持っている人間なんて本人しかいないだろうけど。
僕と束も戦極ドライバーの方はよくわからない部分がある。ゲネシスドライバーだって父さんの残してくれたデータを使ってようやくだった。今も量産は無理そうだし。
そんな状況で、アイツらは戦極ドライバーの量産を成功させた。それはすなわち――開発者が生きている証拠にならないか?
「何が原因なのかとか、色々気になることあるんですけど……それもまあ、調べていけばわかるかなって」
『……英さんは、オーバーロード相手なら戦えました。インベス相手も。なら、マルス相手ならば?』
「? 何が言いたいんですか?」
『英さんは人間相手に戦えますか?』
――ああ、そういうことか。
「今更ですよ……インベスだって元は人間なんです。覚悟してなきゃ戦えないですよ」
ヘキジャインベス外道体の時に、そんな覚悟は完了させた。
じゃなきゃ戦ってこれなかったよ。
『……そうですか。ですが、あまり無茶はなさらないでくださいね』
「わかってますよ。それじゃあ、また明日」
『ええ、また明日』
歩きながら通話していたからか、いつの間にかいつもの海にやってきていた。
ふと、海の方を見ると――
「!?」
ありえない。なんであの人がここにいるんだ!? だって、だって――――
「あらぁ? 久しぶりねぇ英ー」
「か、母さん!?」
――死んだはずの母さんが、そこにいた。
「なんで母さんがここに!? っていうか夢!?」
「夢じゃないわよー。まあ信じられなくても当然かぁ」
ありえない。幻覚能力のオーバーロードがいるのか? それとも他の何か? 毒キノコでも食べたとか?
色々な可能性を考えていると――いきなりフライパンを叩きつけられた。
「オグアッ!?」
「まったくもう。お墓参りぐらい来なさいよーお母さん寂しいんだからね! プンプン!」
「そうだった……こういう人だった」
いきなり突拍子もないことをするんだよな……体弱いくせに。って、そうだよ。なんで立っているんだよ!?
「そりゃ死んじゃったからよー。ほら、足もない」
「…………うわぁああああああ!?」
え、それじゃあ……お化け?
「――さて、束が心配しているから帰らないと」
「まてい!」
「やめて! こういうホラーなの苦手何だよ!!」
「前にも出てきたでしょうが! ほら、兄さんの分身との戦いの時に」
「うわぁああ!? やっぱあれそういうことだったの!?」
「お父さんと花蓮ちゃんも心配しているんだからね」
「なんだか聞いちゃいけないことが山ほどあるんですけどどういうこと!?」
「うふふーお母さんに不可能はないのよー。ああ、束ちゃんだっけ? かわいい子ねー」
「やめてください、これ以上僕のキャパをオーバーするようなことはやめてくれ!!」
蜂矢・G・アリサ。体は弱くとも、その天然っぷりに周囲を巻き込んで色々と無茶をやらかす人である。あと、怒るとものすごく怖い。
「っていうか今日が何の日か忘れちゃったの?」
「今日って――あ」
「そうよー私の命日」
時計を見ると、いつの間にか日付が変わっていた。そうだ、今日は母さんの命日だった。
「まあ、私自身は完全に死んだわけじゃなかったんだけどね」
「え」
どういうことですか!? っていうかさっきから受け止めきれないんだけど!? 会うのはもっと先にするとか覚悟を決めたのに!?
「腕輪よ腕輪」
「……これ?」
「ええ、何だっけ? オーバーロード? まあその力の一部を腕輪を媒介にして使えるのは知っているわよね」
「なんとなく……でもどういうことだよ」
「まあオーバーロードってのは固有能力があるのよ。私の場合は魂の保存かなぁ。あくまで人間だし、条件がそろったときにしかこっちに来れないんだけどね。お盆とか命日とか、そういう日に憑依できる肉体に宿れるの」
「じゃあ何に憑依したんだよ……」
「砂になった花蓮ちゃんの体ー」
「――――ほんまにどうリアクションしたらええねん」
「いやぁ、海水と混ざっていたから良い感じに構成できたのよこれがー」
「そういう衝撃なことをあっさり言わないでください」
「だから今日一日は好き勝手出来るわ!」
「やめろよ!?」
「だってせっかく自分で歩けるのよ!? 動けるのよ!? 色々やりたいことたくさんあるのに、英があっちこっち行くおかげで出てこれなかったのよ!?」
「知るかよ!? っていうか色々な思い出がぶっ壊されたわ!?」
ああもう、どう収拾つければいいんだよ!?
まさかの母帰還。しかもシリアスさんをぶち殺して。
何かの形で出したいなとは思っていたんですが、どうしてこうなった。
英は涙の再会すら許されない。
詳しい命日を語ってはいませんが、5月が彼女の命日。前に千冬さんがそれらしきことを言っていますね。話数が一桁の時ぐらいに。
たぶん次回は阿鼻叫喚。大丈夫か、コレ。