魔のオムライスから一夜明けて、本日は射撃戦――を見に行くことはかなわなかった。
厄介なことに、またもや例のテロリストがやって来てしまったのだ。正直言って帰りたいんだが……そうも言っていられず、すぐに対応できるのが僕らだけといくことで(束は千冬が出ないならしょうがないとついて来てくれた)目的地に向かったんだが……ねえ束…………帰っていい? 母さんがオーバーロード能力を使っていたことをヒントに思いついたことがあるから試したいことがあるんだけど。
「ここまで来てそんなこと言わないでよ」
「だけどさ……アイツらだし放っておいてもいいんじゃないの?」
「束さんも正直そう思うよ。あそこまでくだらない存在なんて知らないし……でも仕方がないでしょ」
「……はぁ」
僕たちはどっと疲れながら――例のテロリストを見る。
『さぁ! 我ら空色ピンクボムの正しさを証明するために! モンドグロッソの会場に乗り込むぞ!!』
『『『『『オオー!!』』』』』
なんで無駄に数いるんだよ……しかもなんでわざわざそっちに行こうとするかなぁ!? おかげで君らのこと捕まえなくちゃいけなくなったじゃないか!! できればもう関わりたくないのに……
空色なのかピンクなのかはっきりしてほしいよ……
「英、殲滅戦でいいよね」
「うん。遠距離からぶち抜く方向で」
ドライバーをセットして、とりあえず遠距離特化のロックシードをセットする。
まあ、もうどうでもいいんですけどね。あのバカどもだし。
【ブドウアームズ! 龍砲ハッハッハ!】
【リキッド! トマトエナジーアームズ!】
ついでに無双セイバーをもって両手で銃を構える。二丁拳銃のような構えの僕と、ガトリングをぶっ放す状態の束。音に気が付いたテロリスト共だったが――もう遅い。
「おらおらおらおら!!」
「はーっはっはっは!! 踊れ踊れ!!」
「敵襲!? 総員退避――うぼら!?」
「た、隊長!? おのれ隊長のかた――みょれ!?」
威力は加減しているから死なないと思うが、なんか撃たれた奴はのたうち回るだけですぐに立ち上がってくる……無駄にタフだなオイ。
まあ数分もすれば全員倒れるかなぁなんて考えていたのだが…………隊長と呼ばれていた男が懐に手を入れて何かを取り出した――ってあれは!?
「ロックシード!?」
「おのれ……お前ら、許さんぞぉぉぉぉ!!」
遠目にはわからないが……ランクは高そうなロックシードだった。クラックがいつものように開き――中からコウモリインベスが飛び出したが、いつもと色が違う?
「いけぇ!!」
「それ!」
「いーひっひっひ!」
部下たちも次々にロックシードを使って――とんでもない数のコウモリインベスが空を覆い尽くした。最低でも100体はいるな……ってどうすればいいんだよ!? いや、落ち着け。これぐらいどうってことはない。
「束! 作戦変更。一気にケリつける!!」
「オーケー!」
お互い取り出すのは、最強のアームズ。正直僕はこれ使うのためらっているんだけど……まあ仕方がない。
【ノロシアームズ! 反撃開始! アンコール! アンコール!!】
【リキッド! パンプキンエナジーアームズ!】
重装甲の武者と、魔女が再び出現する。
束はプロテアも使用して箒型のロックビークルにまたがり、空へと飛び上がる。僕の場合は背中のブースターがあるから良いんだが……ちょっと加速が速すぎるかもしれない。
ちなみに束の乗っているプロテアブルームはIS由来の技術を使っているため、かなり自由に空を飛べるとか。
「英! 束さんは右半分を吹っ飛ばすから左半分お願い!!」
「分かった。なら久しぶりにこいつの出番かな?」
ロックガジェット。その一号機ストレイチアガジェット……まあ結局他のガジェットを作らなかったけどね。武器に装填することで追加機能が発生するんだけど、結局今まで使わなかった――こういう、殲滅戦向きだからこそ、ちょっと使い勝手が悪いわけだが。ソニックアローならそうでもないんだが……まあ百聞は一見に如かず!
「たのむよ!」
クルクルと飛び回り、ハーモニクスカノンのスロットに装填される。僕もブレードを動かし、エネルギーをチャージする。
【ノロシオーレ!】
【ストレイチアチャージ!】
砲身にエネルギーが充填されてゆく。弦をかき鳴らして、いざ!!
「発射!!」
【――――ッ!!】
甲高い、トリの鳴き声のような音があたりに鳴り響く。そして、銃口から放たれたのは――炎の鳥。翼をはためかせて、インベスたちを次々に食らってゆく。
ロックガジェットにはAIがつんである。ドライバーとのリンクによって、放ったエネルギーをコントロールできるようになったのだが……まだコントロールに難はあるし、未完成なので広域殲滅ぐらいにしか使えていない。
「束の方は――大丈夫そうだな」
箒にまたがり、杖を持って――杖にはトマトエナジーを装填済み――を振りかぶった。そして放たれたのは、炎の塊。インベスを次々に巻き込んで、最後には爆発した。
「うふふ、全部燃やし尽くしちゃった」
「あんまり怖いこと言わないでよ……これで、全部――いや、まだだ!!」
「え――キャッ!?」
「束!?」
色の違うコウモリインベスが一体、まだ生きていた。すぐさま束にとびかかって、彼女の体が地面に向かって堕ちてゆく。マズイ、単独飛行の出来ない束じゃこの高さ、結構厳しいぞ!?
とっさにブースターをさらに開放して束を受け止める――まあいわゆるお姫様抱っこで。
「――あ、危なかったぁ」
「…………アイツ、他のインベスより硬いみたいだな」
「だね……って、早ッ!?」
一気に後方へ、そのインベスは飛びさった。そして、そこにいるのは――テロリスト!?
「くそっ!? 一匹残して後は全滅か!?」
「た、隊長! コイツ、ロックシードを食べてやす!」
「なんだと!?」
色の違うコウモリインベスは次々に、テロリストたちを襲い――ロックシードを食べてゆく。体は肥大化し、触手の様な、ツタの様なものが体から飛び出していく。そして、近くの栄養は全てむさぼりつくすというかのようにテロリストたちも巻き込まれてゆく。
「嫌だ――助け!?」
「う、うわああああああ!?」
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ」
「なんだこれは、こんな――話が違うぞファント――――」
血が飛び散り、肉が吹き飛び、後に残されたのはインベスだった一本の木の様な、繭の様な物体。
「――――う」
「束、気をしっかり持て」
「でも……いくらなんでもあれは」
「…………ああ、わかってる」
たとえテロリストだとしても、助けられたかもしれない。一瞬、何が起こったのかわからなかった、その一瞬さえなければ。その凄惨な光景は僕らにとって直視しがたい。
みているだけで、吐き気はする――今、多くの人が命をなくしたということに気分が重くなる。
「でも――来るぞ!!」
「うん!」
束は再び箒にまたがり、僕も構える――インベスはその姿を、再び変えた。
巨大な翼、強靭な脚、顔は食虫植物の様な形へ――フレスベルクインベス――油断は禁物、なんて言っている場合でもないか!?
一気にトップスピードに加速したインベスの攻撃をかわすこともできず、僕は空中に吹き飛ばされてしまう。
「英!?」
「大丈夫!! 束は地上から頼む!」
「う、うん!!」
束はちゃんと地面に降りれたみたいだな……なら、援護を任せて僕は――叩き斬る!!
無双セイバーとハーモニクスカノンを接続し、大剣モードへ。
「はぁあああ!!」
「GYAAAAA!!」
ガキンッ! と嫌な音と共に攻撃がはじかれた。っていうか、どんだけ硬いんだコイツ!?
翼の風圧もすさまじく、身体が飛ばされてゆく布のように空を舞ってしまう。
「あがっ!?」
「GAAAAA!! ――GYA!?」
身動きが取れないところに、一飲みにされそうになったが間一髪、束が地上から光球でけん制してくれた。どうやらペアーエナジーをセットしたらしいな……確かに、通常のインベスなら効果はあったな……いや、オーバーロード以外には効果があるに訂正した方が良いらしい。インベスの体からは煙が上がっている。
「よし!」
「GAGA!!」
「ほらほら! 焼き鳥にしてやるよ!!」
「GAAAAAAAAAA!!」
口から、紫色の煙が放たれるが――ブースターを吹かせて一気に飛び上がり、背中の筒を攻撃に切り替えて射出!!
「はぁ!!」
紫色の煙を燃やし尽くす!! どうせ毒なんだろうけど、そううまくはいかないってね!
逆上したのかインベスは一気に突撃してくるが――それも遅いよ!!
【ノロシスカッシュ!】
体を回転させて、一気にブースターを点火。そして蹴り入れる!! 想像以上に硬いため、これでもトドメはさせないだろうが……下には束がいる!
蹴り入れられたインベスは下へと落ちていき、下からさらに上へと吹き飛ばされる。
【パンプキンスカッシュ!】
ちゃんと、束はうちあげてくれたか――なら、僕もトドメの一撃を!!
【イチジュウヒャクセンマンオクチョウ! ナユタ!】
大剣モードにしてあるところに、ロックシードを装填。そして刀身に集まってゆく極大のエネルギー。落下速度にブースターを追加して、今――必殺の一撃を!
「うおおおおおおおおおおおおお!!」
「GA――A」
真っ二つになったインベスは、そのまま空中で爆散した。
これにて、任務完了――
「――――うぐはぅ!?」
「す、英!?」
「ててて……なんか力が入らない――酸っぱいおなか痛い!」
「えっと、大丈夫?」
変身が解除されてしまい、僕はその場をのたうち回る。
束も変身を解除して、僕を掴むが……やばいやばい、おなか痛い。
「口の中の酸っぱさが体中で暴れている! もうなんだかとっても厳しいです!」
「そういえばスカッシュとチャージ使っているからね……おなかも痛いし、いつものフィードバックがキツイんでしょ」
「……口直ししたい」
「まったく、心配させないでよ」
「スマン……それにしても、あのテロリストって馬鹿だけど、ここまで無茶する集団じゃなかっただろ」
「なんか嫌な予感がするね」
「ああ……いったい何が起こっているんだか」
その後、報告書とか、楯無さんに調査依頼したりとかで、今日はもう日が暮れ始めた。一夏君たちは千冬が出ないから今日はテレビで観戦してたらしいし、僕たちもちょっと気楽だった。
まああんなことがあったわけだが……で、僕は切り札の最終調整と、新しいプログラムの完成を急いでいる。
「まったく、こんな事ならもっと早くに気づくべきだった。そうだよ、僕も母さんと同じように腕輪の力をつかえているなら固有の能力があっても不思議じゃない。それに、片鱗は今まで見ていただろうが――よし、ゲネシスコアを一からまた作ったのが幸いしたな。おかげで、プログラムもしっかり組みこめた」
「英ーあんまり遅いと夕飯抜きに……だめだ聞いちゃいねぇ」
「なんか束さんそっくりですね」
「……私、傍から見るとあんな風になるんだ」
よーし! もうすぐ完成だぞー!!
◇◇◇◇◇
その頃、世界各地では異変が起こっていた。
「た、助けて――アガァ!?」
「嫌ぁああああ!?」
様々なマフィア、テロリスト、その他表に出てこれない者たちの手に渡っていたロックシードから呼び出されたインベスが持ち主に反逆したのだ。
「嘘だろ、こんなことが――!?」
「亡霊がぁあああああああ!!」
亡国機業によって配布されたロックシード。それは、決して持ち主を助けるものではない。
彼らの計画は一つ、進んだのだった。
繭の様な謎の物体が世界の各地に出現し、巨大な怪鳥が生まれる。
その日、大量に生まれたフレスベルクインベスは数分後跡形もなく消え去った。その行方を目撃したものはいない。すべて、インベスの栄養となったのだから。
「……これからが始まりだぞ、英――仮面ライダーよ」
「わっちの計画もなかなかよのう」
「だがここまでする必要はあるのか?」
「なーに、未来への布石です。今はまだ発芽していませんが、これから先への投資なんだよ」
「そうか……まあいい、俺はこれから行くところがある」
「あら? 仕事?」
「ああ……欠片が見つかったからな。取りに行ってくる」
「分かった。それじゃあこっちも準備しておくよ」
「いや、それはいい。今回はちょっと手こずるだろうから、一か月はかかる」
「それはまた……変なところに欠片があるみたいだね」
「ああ――だから、まだ再戦の時ではないさ」
そう言って、その男――須郷猛は自分の任務に赴く。
そしてその様子を目撃する者も一人。
「スコールには怒られたし、どこかで挽回したいなとは思ったが――いいこと聞いたぜ。今なら、アイツの邪魔は入らない」
オータムはプラントから何かを持ち出し、日本へ向かった。
その行動が、どんな意味を持つのかも知らずに。当然、スコールが気づいているとも知らずに。
元々襲撃をかける予定だったから良かったものの、無茶されたら困ると、別働隊の編成をとりあえず始めるのだった。
「まったく、あの子にもこまったものね」
亡国は今、動き出した。
下に飛ばして、上に飛ばして、また下へのコンボ技。
そして、ちょいブラックが再び入り始めました。
次回ついに100話。
まさか一発でビスマル子が出るとは…………