ゲボ吐きそう、もうやだおうちかえるぅ!!!   作:星ざくろ

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 明日はシティーハンターの映画公開日。
 mx4dで観てきます。


【青のすみか】-弐- ②

2017年4月23日

 

 正午前。

 新宿ゴジラ前で待つことしばらく、待ち人が来た。

 

 「幽々さん、出合頭に抱きつくの止めません?」

 

 「がーくんわ~幽々のご主人様なので~」

 

 「変な誤解を招くからその呼び方は止めて?」

 

 何故この様な事になったのか。

 ただ僕は、貧血というか失血気味らしかった彼女の血液を増殖させただけなのに。

 呪物だか呪骸だかとの縛りで自身の血液を供物として捧げ続けているそうだ。

 軽度ながら常失血状態は大変そうだなぁと思い、良かれと思って術式を行使したらこうなった。

 会う度に、こうして密着して血液の増殖をせがんでくるようになってしまった。

 

 事情を知らないよっちんには鬼の形相で睨まれるし散々である。

 

 幽々さんにしな垂れかかられながら目的地に向かって二人連れだって歩く。血液の増殖も忘れない。

 こうして歩いていると、またあのめんどくさい女刑事がひょっこり湧いて出そうだから困る。

 先週のこと。

 ちょうどこんな風に二人で歌舞伎町を歩いているとJK3人を引き連れた女刑事に遭遇。

 例によって話を聞いてほしいとかで、JK諸共僕ら二人も仲良くドナドナされてしまいその道すがらこれまたちびっちゃいJKをテイム。

 スイーツを出しにしてたらしく、お財布の中身が心許ないとかでATMにお金を降ろしに行ったと思ったら更にJKを二人連れてきた。

 気付いたらとんでもない大所帯となっていた。ハーメルンの笛吹きかな?

 しかも、集めに集めたこのJK集団。どうにも身に纏う空気というか雰囲気がカタギではなさげだった。

 呪力の流れから非術師だと分かるが、眼鏡のJKを除けば非術師なりに結構な手練れ揃いだった様に思う。

 電話が掛かってきて女刑事が席を中座した途端、互いに悪態を吐き合っていた。やくざがどうの言ってたし。こわい。

 そういう話はカタギの僕らがいない所でやってくれませんかね?ひょっとして同類とか思われてる?

 繁華街は怖いところという事を僕にわからせる為に、わざわざこいつらを集めてきたんじゃないかと勘繰ってしまった。

 最近〝物騒な事件〟が多いと鏑木さんからも聞き及んでいたが、ひょっとしてこいつらが関わっていたりしてね。

 

 

 「・・・つけられてますね~」

 

 噂をすれば影。

 女刑事でも物騒なJK達でもない。

 背後、数十メートルからよっちんのというか頭の上のアレの気配を強く感じる。

 

 「わるいけど、ちょっと遠回りして撒くしかないか」

 

 歌舞伎町の中をぐるぐると回り、人気のない適当な角で呪力強化した脚力にものを言わせて幽々さんを抱えて猛ダッシュ。

 運よく目的地の路地裏が近かったのでそこに駆け込む。

 

 「撒けたかな?幽々さん、着いたよ」

 

 抱きかかえていた幽々さんを降ろし、僕は店のドアを開く。

 

 「店主(せんせー)、この前話した子連れてきたよぉって・・・」

 

 先月、夏油に紹介されて入った蕎麦屋。

 4月になってから僕はそこによく通い、店主に頼み込んで片手間ではあるが汎用呪術のレクチャーを受けていた。

 店主が言うには、僕は結界術の適性がとても高いとの事。

 たとえば、帳という結界術がある。

 僕はてっきりこの術は術師なら呪文、正しくは『呪詩(じゅし)』と言うらしいそれと、『掌印(しょういん)』だけで簡単に展開出来るものと思っていた。実際、展開してたし。

 しかし、如何にもっとも簡単な結界術とはいえども最低限の結界術への理解は必須なのだとか。

 現に幽々さんは僕のようにはいかなかった。

 その事を先週、村に行った時に夏油に話したら「君は天元様の直弟子だったからね。結界術への適性も当然高い筈さ」とかまたぞろ訳の分からない設定が生えてきてしまったのが最近の悩みの種だ。「彼に指導を受けているのなら、彼女の事も頼んでみたらどうだい?何なら私が指導しに行ってもいいが」という夏油の助言を受けた。

 そんなわけで、せっかくなので店主に二人まとめて面倒を見てもらおうと相談をし現在に至る。

 引き受けてくれたのは常、閑古鳥が鳴いている店なので暇していたというのもあるだろう。

 

 そう、閑古鳥が鳴いている筈のこの店に珍しく客がいたのだ。

 

 「星野か、問題ない。こいつは知っている側だ」

 

 「なんだ、爺さん。あんた弟子なんて取ったのか?」

 

 「そんなんじゃねえさ」

 

 スーツ姿。

 口元に髭を生やした吊り目の男。

 

 僕たちは男の隣のカウンター席に一席空けて座る。

 

 「店主、お客さんなんて珍しいじゃん」

 

 「お前が来る時間帯にいないだけだ」

 

 「へえ・・・そうだ、紹介するよ。こちら内田幽々さん」

 

 「内田幽々です」

 

 「星野から聞いてるよ。よろしく」

 

 幽々さんを紹介しながらちらりと男の方を見る。

 

 「うん?なんだ、坊主。俺が気になるのか?」

 

 「気になると言うか・・・まぁ、はい」

 

 「お前らが関わっても碌な事がないぞ。こいつは仲介人だ。呪詛師のな」

 

 「仲介人?」

 

 「孔時雨(コンシウ)だ。お前たちも術師だろ?金に困ってるなら仕事を斡旋してやるぞ」

 

 男の言葉に目を見開く。

 【孔時雨】。

 彼は『呪術廻戦 懐玉・玉折編』の登場人物。

 『盤星教 時の器の会』と【伏黒甚爾(ふしぐろとうじ)】を繋ぎ合わせた。

 【天内理子(あまないりこ)】の死の遠因とも言うべき男。

 そして、闇堕ち後の夏油に盤星教の後身組織を紹介したのも彼だ。

 

 「そっちの嬢ちゃんはともかく、こいつが金に困る事は当分ねえだろうよ」

 

 「なんだ坊主、お前金持ちなのか?」

 

 「金持ちっつうか、芸能人なんだよそいつ。お前、最近あんま日本にいないから知らんのも無理はないが」

 

 「へえ・・・坊主、名前は?」

 

 孔がスマホ片手に僕の名前を聞いてくる。

 こいつ、本人を前にググるつもりだ・・・

 

 「星野ガーネット。がーぴーのが通りが良いかも」

 

 「ほ~ん、がーぴーね」

 

 スマホをフリックしながら僕の事を調べる孔。

 

 「お、ウィキペディアにまとめられてるのか・・・うん?」

 

 スマホと僕を見比べて、

 

 「・・・坊主、お前歳いくつだ?」

 

 「7歳。6月で8歳かな」

 

 「まじか。最近のガキってこんな発育良くなったのか?」

 

 視線をスマホに戻して記事を流し読みしていく。

 

 「いくら若くても精々、恵と同じくらいかと思ったが・・・」

 

 「恵?」

 

 「あ、いやこっちの話だ。昔世話した事のあるガキがもうすぐ高校とかなんだ。たしか」

 

 「来年入学だったかな?」と首を傾げる。

 

 恵。

 【伏黒恵(ふしぐろめぐみ)】。

 伏黒甚爾の息子。

 呪術界の御三家 禪院家の相伝 『十種影法術(とくさのかげぼうじゅつ)』の使い手。

 今は五条悟が後見を務める中学3年生。

 

 彼の名を聞いて思い出す。

 彼の一つ上の義姉 【伏黒津美紀(ふしぐろつみき)】。

 彼女は高校に進学してすぐ、【羂索(けんじゃく)】にある呪物を埋め込まれ昏睡状態に陥る。

 そして、この出来事が宿儺復活への足掛かりとなってしまう。

 阻止出来るのなら阻止すべきか?

 何も僕が矢面に立つ必要はないのだ。

 羂索と会敵せずとも伏黒姉弟に接触して注意喚起をしてくるだけでいい。

 それで駄目ならもう素直に諦めればいいだけだし。

 善は急げ。

 明日の学校はサボって翔んで埼玉だ。

 案外、もう事後だったりしてね。

 

 「まさか、そっちの嬢ちゃんも小学生?」

 

 「高校生です」

 

 「だよな。焦るぜ」

 

 そう言って孔は僕らに名刺を配る。

 

 「これも何かの縁だ。金が要り様で切羽詰まったら連絡してくると良い。仕事を紹介してやるよ」

 

 名前と電話番号、メールアドレスだけの簡素な名刺。

 名刺を見ながら何かに使う事もあるかとスマホに連絡先を打ち込む。

 空メールを送り、電話をワンコールしてから切る。

 

 「ちゃんとメールと電話届いてる?」

 

 「お、おう。まさかこの場でそっちの連絡先を教えてくれるとは思わなかったぜ。嬢ちゃんも」

 

 幽々さんも僕に倣ってる様子。

 

 「さて、俺はそろそろお暇するわ」

 

 孔が席を立つ。

 

 「爺さん、アンタ腕が立つんだからこんな処で蕎麦屋やってんのは勿体ないぜ。ここの蕎麦はうまいけどな」

 

 「前も言ったろうが。年寄りに無理させんなってな」

 

 「気が変わったら連絡くれよ。んじゃ、またそのうち蕎麦食いにくるぜ」

 

 そう言って今度こそ店を去った。

 

 「・・・まったく。さて、待たせたな。それじゃあ他の客が来るまで―――」

 

 

2017年4月24日

 

 朝。

 学校に行く時よりも幾分か早く家を出る。

 かあさんはここ3日ほど不在。収録現場を渡り歩いている。

 兄姉の送迎はミヤコさんが担当してくれる手筈だ。

 昨日、あれからミヤコさんに今日学校を休む旨と学校への連絡をお願いした。

 当然、お小言を頂戴するわけだが最終的には了承してくれた。

 通勤ラッシュ時の渋谷駅。

 乗り換えのついでに駅のトイレで用を足し、目的のホームへと戻る途中の事だった。

 

 「・・・・ッ!!?」

 

 突然、ホントに一瞬の事だった。

 重圧。

 息をする事を忘れてしまうほどのプレッシャーがこの身を襲う。

 しかし、反射的に振り返る頃にはそれがまるで嘘だったかのように何も感じられなくなった。

 

 「・・・あれはまさか」

 

 振り返った視界の先にピンクの芋ジャージにスカートを穿いた女の子を認める。

 肩にトートバッグを提げ歩いていく。

 今のプレッシャーはまさか彼女?

 いや、ありえない。

 今の彼女からはまるで何も感じない。

 せいぜい、呪力の漏出量がえげつないのと両肩に『めんだこぼっち』と『つちのこぼっち』が乗ってるくらいだ。あっ、『ギタ男』くんが耳から生えてきた。

 流石原作主人公。原作者 はまじあきに人間じゃないと言わしめただけある。

 

 「あれがギターヒーロー。後藤ひとりか・・・っといけない、電車に乗り遅れる」

 

 湘南新宿ラインに乗り、埼玉は浦見を目指す。

 電車に揺られ30分ほどで浦見(うらみ)駅に到着した。

 

 午前中はこの辺りを見て回り、放課後 伏黒姉弟のどちらかと接触して忠告する。

 いや、もし事後の場合は伏黒恵に誤解される可能性もあるのか。

 なんにせよ、慎重に行こう。

 

 「まずは浦見東中学校の場所だけ確認しておくか」

 

 それが済んだら『八十八橋(やそはちばし)』の下見もしておきたい。

 今はまだ特級相手はしんどいが、来年の六月までにはこいつもどうにかしておかなければいけない。

 1年生組の経験を奪う形になってしまうが人死にが出るのを知ってて放置するのは違うしな。

 

 「うん?へぇ・・・ここって競馬場もあるんだな」

 

 駅の案内標識を見るに、近くに競馬場があるらしかった。

 生前、伏黒甚爾もこの辺に住んでたのならこの競馬場にもよく通ってたのかもしれないな。

 まぁ、なにはともあれまずは中学校だ。

 

 

 中学校を目指している道中、辺りを見渡してみても呪霊はあまり見かけない。

 いない事はないが都内、特に新宿や渋谷なんかの繁華街と比べれば雲泥と言っていい。

 やっぱあれって多い方なんだなとしみじみ思う。

 まぁ、伏黒恵が仕事熱心に祓って回ってるのかもしれないが。

 道中のコンビニなんかに屯している不良少年達の方が多いくらいだ。

 僕が言えた義理じゃないけど、お前ら学校はどうした?

 そんなこんな歩いている内に中学に着く。

 『さいたま市立浦見東中学校』。

 外観はありふれた普通の中学校。

 感じられる呪いの気配も極少。

 呪いよりも不良の方が多そうだな。

 場所は知れた。

 放課後、正門前で伏黒恵を出待ちすればいいだろう。

 津美紀の通う高校がどこなのか、僕は知らないので恐らくこれがベストだ。

 

 次は八十八橋。

 中学校からそう遠く離れていない場所に位置する『鯉ノ口峡谷(こいのくちきょうこく) 八十八橋』。

 県内有数の自殺の名所として知られる心霊スポット。

 実際に足を運んで下を覗き込んでみるが何も感じない。

 しかし、たしかにそこに呪霊が存在する事を僕は知っている。

 

 「夜中に下から川を渡るんだったか・・・」

 

 ここにいる呪霊は領域内に閉じこもっているタイプ。

 特定の手順を踏まなければ呪霊のもとにはたどり着けない。

 

 「出来れば夏が終わるまでには対処できるようになっときたいな」

 

 特級呪物『両面宿儺の指』を取り込んだ呪霊。

 特級相当でありながら、宿儺からは虫と評される存在。

 故にファンの間では、この類の呪霊の事を特級虫などと呼称されていた。

 虫如きに後れを取っていては羂索は勿論の事、『自然呪霊』相手にも対処できないだろう。

 

 

 見ておきたい場所の下見も終わったので、僕はいったん浦見駅へと戻ってきた。

 時刻は10時半を少し回ったところ。

 実は浦見に来たら一度行ってみたいお店があったのだ。

 『鰻屋 むさし』

 創業60年の老舗。

 備長炭で丁寧に焼き上げる国産鰻が自慢の2時間待ちも当たり前な名店だ。

 店に赴けば、今日は運よくそれほどの行列は出来ておらず1巡目で店に入れそうだ。

 幸先がいい。

 運がいいなと列に並ぶ。

 楽しみだなぁと期待に胸を弾ませていると、

 

 「あれ?ひょっとしてがーぴーくん?」

 

 後ろから声が掛かる。

 ひょっとしてファンの方かな?

 しょうがないにゃあ、ファンサしたろと後ろを振り向いた先にいる人物を見て目をむく!

 

 「た、高田ちゃん!!?」

 

 あと毒舌で有名な司会者と相方の女子アナ、そしてテレビクルーの皆さん。そして・・・・

 

 「なぁんでこんなところにいるのかなぁ?」

 

 「げえっかぁ・・・関羽じゃなくてアイ!」

 

 「げえってなに!!?私のどこが関羽なの!!!?」

 

 この組み合わせ、僕も見た事のある散歩番組だ。

 二人は今回のゲストか!

 どうやら今日はここ、浦見で収録中のようである。

 こんな事ならかあさんのスケジュールをちゃんとチェックしておけばよかった。 

 ぬかったわ。

 

 

 午前11時。

 鰻屋が開店しお座敷に案内される。

 4人掛けの席。僕の隣にかあさんが、正面には高田ちゃんが座っている。

 司会と女子アナは隣の2人掛けの席を使っている。

 全くの予定外だが、今回の収録に僕も飛び入りでゲスト出演する事になった。

 店員が注文を聞きに来たので白焼きを単品で一つと鰻重、肝吸い、鰻の骨揚げを注文する。

 

 「へえ、がーぴーくんいっぱい食べるんだねぇ。じゃあ私もぉ同じの頼んじゃおうかな?」

 

 「ぐぬぬ、じゃあ私も同じの!」

 

 別に張り合わんでも。

 てか、かあさんご飯大丈夫なの?

 

 「アイ、別に無理しなくても蒲焼単品とかもあるみたいだしそっちにしたら?」

 

 「鰻重じゃなくて蒲焼単品を勧めるんだ?」

 

 司会が僕の言葉に反応する。

 

 「アイの幼少期の闇深エピソードにガラス片混入ご飯というのがありまして、以来ご飯が、特に白米が苦手なんですよ」

 

 「ガラス片混入ご飯!!?」

 

 「そんなわけでうちの食卓は主食パンになりがちなんですよね」

 

 これからそのご飯を食べようって時に、飯屋でする話ではなかったな。

 

 「もう、心配性だなぁガーネットは。私、別にもうご飯も平気になったよ?」

 

 「そうなの?」

 

 「そうだよ」

 

 ホントかなぁ?

 こういう時のかあさんはホント信用ならないしなぁ。

 

 「まぁ、量も量だから食べらんなくなったら僕が残り食べるからちゃんと言ってね?」

 

 「その時は私も手伝うよ。アイちゃん?」

 

 「のぶちゃん・・・」

 

 「のぶちゃんはやめて」

 

 かあさんのその呼び方に高田ちゃんの顔がスンとなる。

 のぶちゃん呼びは嫌なのか、高田ちゃん。

 

 

 先んじて運ばれて来た骨揚げをぼりぼりと食べながら、鰻を待つ。

 かあさんと高田ちゃんは骨揚げとおビールちゃんで優勝していた。ずるい。

 

 「今日、一発目からビール飲んじゃうんだ!?」

 

 司会の2人へのごもっともな突っ込みを尻目に、僕はウーロン茶をちょびちょび飲みながら待つ。

 注文から30分ほどして、続々と注文した品々が席に届いてくる。

 司会と女子アナの2人はシンプルに鰻重を頼んだだけのようである。

 骨揚げのあと、僕らのもとに最初に届いたのは白焼きである。

 二人はビールを飲みほしたようで、配膳してくれた店員に日本酒を追加注文している。

 まずは白焼きの鰻そのものの芳醇な香りを楽しむ。

 見るからにふわっとして柔らかそうだ。

 生姜と一緒に頂くのがこの店の流儀のようである。

 まず、何も付けずに頂く。

 鰻本来の旨味を楽しむ。

 続いて、生姜に醤油を差し生姜醤油で頂く。

 鰻の脂と生姜醤油の相性の良さに驚く。

 箸が進む進む。これに日本酒なんかが合ったら最高だな。

 隣を見れば、二人が日本酒で優勝していた。ずるい。

 

 「ん?どうしたのがーぴーくん。あっ、ひょっとしてこれが飲みたいの?」

 

 高田ちゃんががばりと身を乗り出し、僕の耳元で

 

 「だめだよ?お酒は二十歳になってから。大人になったら一緒に飲もうねぇ」

 

 高田ちゃんの酒気に当てられたのか、顔が真っ赤になるのがわかる。

 

 「あー!のぶちゃんがガーネットの事を誘惑してる!!だめだよ?この子は私のなんだから!」

 

 「だからのぶちゃんはやめろつってんだろが!」

 

 仕上がってるな、流石高田ちゃんだ。

 

 

 白焼きを平らげてそうこうしているうちに、本命の鰻重が到着する。

 添え物にお新香と頼んでおいた肝吸いが付いている。

 重箱の蓋を開けば、鰻重の芳醇な香りが鼻孔を擽る。

 ふわとろっとした鰻と特製ダレ、そして白米のハーモニー。

 やはり日本酒が欲しくなる。

 隣を見れば、やはり二人が優勝していた。つらい。

 肝吸いの肝のコリコリとした食感も楽しむ。

 吸い地もしっかりしていてこちらも美味。

 ハプニングはあったが、来てよかった。

 完食して人心地。

 かあさんも無事完食していた。

 心配は杞憂だったか?

 そんなこんなで外で待っている後続に席を譲るべく、僕らは会計を済ませ退席した。

 

 

 「そういえばがーぴーくんは、私のライブイベントを観に来たいんだよね?」

 

 「えっ」

 

 店を出てすぐ、さてどう退散しようかと思案していたところ高田ちゃんに声を掛けられる。

 

 「6月に武道館でライブイベントがあるんだけどぉ良かったら来る?」

 

 「行きまァす!」

 

 「へぇ、のぶちゃんのライブに行っちゃうんだぁ・・・」

 

 「やべっ」

 

 「ガーネットの最推しは私だと思ってたんだけどなぁ?私の事は捨てて、のぶちゃんのとこに行っちゃうんだぁ?」

 

 「大事な家族を捨てるわけないだろ?別に推し変したわけじゃない。最推しはずっとアイのままだ」

 

 「ガーネット・・・」

 

 「高田ちゃんのライブは正直、興味はある。けど、アイを悲しませてまで行くつもりは」

 

 「それで、ライブイベントには来てくれるんだよね?」

 

 「行きまァす!!」

 

 「・・・・ガーネット?」

 

 「せ、戦略的撤退!!」

 

 僕は踵を返して走り出す!

 

 「こら!ガーネット待ちなさい!!帰ったらひどいんだからね!!!」

 

 「顔パスで入れるようにしとくから絶対来てよねぇ!」

 

 行きまァす!!!

 

 

 さて、この後もかあさん達が浦見を練り歩くのを考えるとだ。

 放課後まで見つからずに時間を潰せる場所はどこだろうか?

 

 「外から来い!来い!お前じゃねぇよ!横の馬だよ!!あっ下がった!」

 「うわ、差せ、差せ、頼む!差してくれ!そうだ!よし!頼む!そうだ、差せ、差せ、差せ!よし、よし!よっしゃ!よっしゃぁああ!相手がちがうぅぅぅぅう!」

 「よーし、差せ!差せ!よし、よし!あ~!そこまでしなくでもぉぉぉお!」

 

 やはり、ここしかないように思う。

 

 『浦見競馬場』。

 浦見競馬場は埼玉県浦見競馬組合が主催する地方競馬場。

 船橋競馬場、大井競馬場、川崎競馬場と共に南関東公営競馬を構成する内の一つなのだとか。

 前世では、馬券をネットで買ってみた事はあっても実際に競馬場に足を運ぶことはなかった。

 人生初めての競馬場だ。

 正門で入場料の100円を支払い中へ入り、入ってすぐの新聞売り場で適当に競馬新聞を一部購入。

 売店エリアで焼き鳥を何本か買ってからスタンドへ。

 時刻は12時半を過ぎたところだ。

 4R目の馬が丁度、発走した。

 実際に競馬場に観に来るとやはり迫力があるなぁ。

 FGOユーザーとして、なんとなく2番人気の〝ベストバニヤン〟という馬を応援していたが結果は4着だった。*1

 うーむ、残念。

 

 

 さて、次は5R。

 どんな馬がいるのかと焼き鳥を頬張りながら新聞を捲る。

 

 「・・・・うん?おいおい、なんつう名前してんだよ」

 

 3枠3番〝プリンセスルビー〟に、5枠5番〝アオアクア〟。

 

 「これは買うしかないな。ついでに〝アイサイティアラ〟ってのも買っておこう」

 

 それぞれの馬の単勝に3,000円、複勝に7,000円ずつ賭ける。*2

 うちの家族と同じ名を冠してるんだ。

 きっといい勝負をしてくれるに違いない。

 いざ、勝負!

 

 

 アイサイティアラが5着、アオアクアが6着、プリンセスルビーに至っては11頭立てで11着だった。

 プリンセスルビーはそもそも11番人気と人気してなかったし仕方がないと言えば仕方がないか。

 しかし、悔しいものは悔しいのである。

 

 「やっぱパドック見て買わなきゃだめだな」

 

 丁度、次のレースの馬がパドックを歩いているところの様なので見に行く。

 どの馬もいいケツしてやがる。

 馬のケツの良し悪しとかよく分かんないけども。

 個人的に気になったのは7枠10番〝ユメキラリ〟。

 なんとなく名前が『ユメヲカケル』っぽいしこれにしようかな。

 複勝1万円で勝負だ。*3

 

 6Rの出走までまだ時間がある。

 買っておいた焼き鳥はもう食べきってしまったので他になにかウマそうな食べ物はないかと売店を見て回る。

クソデカチキンカツが売られていたのでつい買ってしまった。

 カツに掛けられたソースがまたいい味を出している。

 トンカツソースと焼き鳥ソースを混ぜ合わせたかのような味だ。

 

 「うんめぇ、もう一本行っちゃうか!」

 

 チキンカツをもう一本と、焼き鳥を何本か買って間もなく発走なのでスタンドへと戻る。

 しっかし、どれもウマいなぁこの味でこのお値段はお得だわ。

 

 「頼むぞユメキラリ。さっきの負け分取り戻してくれ!」

 

 

 その後の事。

 ユメキラリは無事に2着と好走。

 41,000円の払い戻しがあり、30,000円マイナスから11,000円のプラスに転じる。

 7Rでは1番人気の〝シークレットアリア〟に10,000円を賭けて14,000円に増やした。

 続いて、黄色いカレーを食いながら挑んだ8Rでは『メジロマックイーン』を思わせる名前の〝ユキノマイクイーン〟に複勝30,000円を叩きこむが9着で爆死した。

 爆死分を取り戻すべく、目を皿にして見たパドック。

 9レース目に5枠5番 4番人気の〝キタサンツバキ〟に単勝10,000円、複勝30,000円を賭けて大勝負。

 見事1着を勝ち取り、ここまでの収支はプラス66,000円だ。

 10R目、パドックを見に行き「ああこの馬だ」と何故か確信してしまう。

 5番人気の2枠2番〝オッドアイ〟。

 どこか星野アイを彷彿とさせる名前のこの馬が勝つに違いない!

 オッドアイの単勝に66,000円、今日の勝ち分全つっぱだ!!

 自動券売機で馬券を買い終え、さあ勝負だ!と意気込んだところであれ?今何時だ?と時計を見る。

 

 15時47分。

 

 やっちまった・・・・

 競馬に夢中になりすぎて、気付けばもう放課後じゃないか!!?

 僕は競馬場を飛び出て走り出す!

 走りながら考える。

 果たして伏黒恵は放課後学校に居残るタイプだろうか?

 僕の脳内CPUが弾き出した答えはNOだ。

 決定的なミス。失態だ。

 間に合わぬと分かっていても走るのを止められずにいた。

 大通りから裏道に入り、時間短縮を図る。

 一気に人通りがなくなり、これ幸いと呪力で強化し走力を上げる!

 風の如く走り抜ける僕の進行方向に人影を捉える。

 減速に入ろうとしたところでその人影が、〝髪を後ろで結んだ学生服の少女〟と彼女に片手を向ける〝額に大きな縫い目のある女〟だと理解した瞬間にはむしろ加速して彼女らの間に割って入ってしまっていた。

 

 「え!?」

 

 「・・・・へえ」

 

 おいおいおい、嘘だろ!?

 

 いったい何をやっているんだ僕は!!?

 

 かあさん、アクア、ルビー、ヨヨコ・・・・

 

 わりい、おれ死んだ。

 

 果たして僕は、この死地で麦わらのように笑えているだろうか?

*1
以下、全レースの結果は2017年4月24日の浦和競馬場から引用。

*2
競馬は二十歳になってから。

*3
単勝を賭けないのは先ほどの3万円負けでへたれてるから。




『女刑事』
 本庁のデカ。
 そうとは知らずに殺し屋を集めてしまうというトンチキな特性を持つ。
 かわいい女の子がいっぱいでご機嫌なレズ。

『JK3人組』
 白昼堂々と繁華街で盛り出し、ベロチューとかキメるレズ3人組。
 本拠は横浜のヤクザというかマフィア。繁華街でヤクをばら撒いている都会に巣食うゴミクズ共。眼鏡のJKがリーダー格。

『ちびJK』
 ちび。
 女刑事が集めたJK達の中では最年長。
 文科省の重役かなんかの子飼いの暗殺者。
 ガーネットと幽々の事も女刑事が集めてきたのだから殺し屋とか裏社会の人間だと思っている。身に纏う雰囲気はカタギのそれだけど、佇まいから男の方は相当な手練れだとわかる。グラサン付けてるしたぶん殺し屋に違いない。

『JK2人組』
 あるレストランチェーンを営む実業家に飼われている狂犬2匹。
 実業家の妻子を毒殺した暗殺者を探す暗殺者殺し。
 今は虱潰しに関係ありそうな裏関係とか殺し屋に襲撃を掛けたり拷問したりしてる。

【内田幽々】
 ひっつきむしの術師系ベーシスト。
 一般家庭の生まれなので、感覚で何とかなる部分はそれなりだが、結界術や封印術などの知識は当然、持ち合わせていない。
 ガーネットの紹介で共に蕎麦屋の店主に術師として師事する。
 例の殺伐とした集まりでは我関せずで終始ガーネットの隣でパフェを食べてた。

【大槻ヨヨコ】
 尾行系ギターボーカル。
 最近急接近しているベーシストと自身のファンが歌舞伎町をまるで恋人の様に歩いていく様を見かけて尾行をするも、ラブなホテルがある辺りで見失いそこに入ったのだと誤解。無事、脳が破壊される。

『店主』
 元・呪詛師な蕎麦屋店主。
 ガーネットに拝み倒されて仕方がなく汎用呪術について指導する事に。
 実は深夜帯にはそこそこ繁盛してるお店。

【孔時雨】
 依頼人と呪詛師を繋ぐ仲介人。
 現在は海外での活動が多く、日本にはあまりいない。
 たまに蕎麦屋に来ては飯がてらに、店主の爺さんに呪詛師としての現役復帰を持ち掛ける。

『ピンクの芋ジャージにスカートを穿いた女の子』
 ガーネットに推定、後藤ひとりと思われてる少女。
 たぶん学校指定じゃない芋ジャージを着て登校してる不良。
 それか秀華高校の規定がゆるゆるなだけかもしれない。
 金沢八景から下北沢近くにある秀華高校に片道2時間で通っている。
 終始猫背で今回は後ろ姿のみの登場だが姿勢の悪さから二重あごになってる。
 ある眼鏡JKに姿勢を正した美少女モードを見られて一目惚れされているが、その場で捕獲されなかった事が幸い。普段が普段なので現在に至るまで身元を特定されていない。
 たぶん人間じゃない。
 彼女の怪異性を認識は出来ても、それらを一切重要視できない特性を持つ。この特性からは何人も逃れる事はできない。五条悟や宿儺でさえも。

『高田ちゃん』
 ガーネットが最近気になっているアイドル。
 フルネームは高田延子。
 アイとは同年代くらいを想定。
 のぶちゃんと呼ぶと怒る。
 かねてより、高田ちゃんに対してどこか棘のある態度だったアイのその理由が年末特番でガーネットにバラされて、以降はカブトムシとクワガタを戦わせるくらいのノリでテレビにアイとセットで呼ばれることが多くなる。
 ロケ地で偶然遭遇したガーネットをアイの目の前で6月のライブに招待する。

【星野アイ】
 現在の芸名はアイだが、B小町引退後はアクア共々ガーネットに合わせて、家族で旧姓である星野性を名乗る予定。戸籍上の名は斎藤アイ。
 もともとは三つ子だけが斎藤家と養子縁組を結ぶ手筈だったが、家族なのに自分だけ仲間外れだとごねにごねて自身も斎藤家の養子になる。
 浦見のロケ地で学校をサボったガーネットに遭遇してしまう。
 帰宅後は緊急家族会議を予定している。

【星野我愛熱斗】
 本来の目的を忘れ、競馬に現を抜かしたばかりに重大事故を引き起こしてしまったクソガキ。
 仮に村からオイルマイトが出動しても間に合わない。現実は非情である。
 例の殺伐集会では彼女らに合わせて「雑魚がぞろぞろ」とか吹かしている。
 集まったJK相手に正面からよーいドンなら万に一つも敗北はないが、意識外からの不意打ちによる暗殺の場合は現状、普通に死ぬ可能性がある。
 鰻屋では最推しのアイドルの前で別のアイドルに現を抜かす醜態を晒す。
 高田ちゃんからライブに招待されてテンションアゲアゲ!
 帰宅後に発生するであろう魔女裁判にテンションサゲサゲ。
 浦見競馬場での収支の最終成績はプラス1,359,600円と帯越え。
 後日、ミヤコさんが払い戻しに訪れるかもしれないがそれもこの死地を切り抜けられればの話。
 余談だが、がーぴーが歌舞伎町界隈を遊び場にしているのは時たま週刊誌に掲載されていたくらいには有名な話。自身は酒こそ飲まないが、その遊びっぷりは〝遊び人のリョウちゃん〟と並び称されるほど。お前ホントに酒飲んでないんだよな?24日の競馬についてもひょっとすると週刊誌にすっぱ抜かれるかもしれない。
 当然、苺プロは管理責任を問われるわけだが斎藤社長を含めた苺プロの大人5人に体を掴まれながらもものともせずに彼らを引き摺って歌舞伎町の街を歩くがーぴーの動画がSNSで拡散してからは誰も彼らを攻めなくなった。
 ゲボ事件をきっかけにここ一年程はご無沙汰だったが、4月に入ってからまた遊びを再開した模様。
 苺プロ所属で某掲示板のアンチスレが最も多いのもこのクソガキ。
 しかし、当の本人はエゴサとか一切しないのでほぼほぼノーダメに近い。10代以下の子供達からの人気は絶大。クソガキッズから好かれがち。

七海「虎杖くん、見えますか?これが呪力の残穢です」

  • いや、全然見えない
  • 凝!(範囲指定反転pc勢)
  • オレでなきゃ見逃しちゃうね(メモ帳転写)
  • 本当だ混じってるよウケる(誤字報告)
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