女の子二人の前でかっこつけたがばっかりに、片手片足を失ったクソガキは裏梅の熱いハグによって胴を真っ二つにされてしまった!
切り離された上半身が背に庇っていた瀕死の重傷の少女たちを下敷きにしてなけなしのHPを削ってしまう。
このまま三人仲良くお陀仏しそうなところに羂索がさらに追い打ち!!
クソガキの顔に中年女渾身の踏み下ろしが炸裂!!!
そこからなんやかんやで浦見競馬場周辺の市街地が壊滅!!?いったい何が!!!?
夏油―――!!!!はやくきてくれ―――っ!!!!
2017年4月24日 19時28分
苺プロダクション 談話室
ガチャリと閉じられていた扉が開き、談話室にいたみんなの視線がそこに集まる。
「ただいまぁってどうしたのみんな?」
「やぁっと着いたぁ!」
「あれ?珍しい、どうしたの?アクア君とルビーちゃんもみんな揃い踏みで」
入ってきたのは、島開拓に勤しんでいる『びーこま!』の3人だ。
「お、ニュース。埼玉なんかすごい事になってるらしいね」
3人の視線がテレビに向く。
「テロかな?核爆弾でも爆発したみたいになってるけど?それともガス爆発の凄い版とか?うわ、あれ鉄骨!?ドロドロじゃん・・・」
「ホントだ、こわいねぇ。あれ?そういえば、うちのぴーちゃんいないの?いるならせっかくだから晩御飯一緒に行こうと思ったんだけど」
「あっ・・・ガーネットは・・・・」
ミヤコさんが言い淀む。
「どうしたの?みんな暗いよ?」
「なんかあったの?」
「ん?」
「ガーネットのやつ、今日浦見に行ってたみたいでな連絡が取れてねぇんだ」
壱護さんのその言葉に3人が目を見開く。
「え」
「あっそういう・・・・それでか」
渡辺は戸惑い、高峯はこの今の談話室の重い空気に得心したような言葉を、しかしニノは―――
「ふぅん、そうなんだ。じゃあ、晩御飯は3人で行く?」
まるでガーネットの安否不明なんてどうでもいいといった風な態度で、そんな事を言ってのける。
「なにそれ・・・」
「ちょっニノ!」
ふつりと怒りを滲ませるアイ、両者の間に入ってニノを窘めようとして声を荒げる高峯。
当然の怒りだ。
俺も今の言葉を聞いて頭に血が上ってきているのが分かる。
ルビーも顔を真っ赤にしてニノの事を睨み付けている。
「ニノはさ、ガーネットの事が心配じゃないんだ!?なんでそんな風に言えるの!!?」
「ちょっアイも落ち着いて!」
ニノに掴みかかろうとするアイの事を押し留める高峯と、その横であわあわしている渡辺。
「なんでって・・・あぁ、そういう意味ね」
激昂するアイの事を何か妙なものを見る目で見たかと思えば、急に得心いったかのような顔をして冷めた顔になるニノ。
「〝血の繋がった親子〟なのにそんな事も分からないんだ?なんか幻滅しちゃうなぁ」
「え」
「な!?」
「は!!?」
「「ええ!!!?」」
アイ、ミヤコさん、社長、そして俺たちからも驚きの声が漏れる。
「あ、やっぱそうなんだ」
「まぁ、そうだよねぇ」
「お前ら・・・・知ってたのか!?」
苦虫を嚙み潰したような顔をして壱護さんが3人に問いかける。
「そりゃあね、こんだけ長くあの子と一緒にいたら流石に気付くよ」
「ぴーちゃんって、アイとの関係を話す時さ。姉だとか具体的な明言は避けるもんね」
「だよね、たぶんいつかバレた時の事を考えての事だろうけど。逆にみんながなんでバレないって思ってるのかが不思議」
3人はなんて事はない様にそう言う。
「てか、ニノ!いくら何でも言い方ってもんがあるでしょうが!」
「そうだよ、いくらなんでもアレはちょっとどうかと思う」
二人にそんな風に咎められ、まるで心外だと言わんばかりに口を開く。
「ええ!?でも、二人も分かるでしょ?私が言いたい事!!」
「いや、それはまぁ・・・」
「分かんなくはないけど・・・」
「お前らさっきからいったい何の話をしてるんだよ!?」
俺たちの疑問を代弁するかのように壱護さんが3人に問いかける。
「あ~、なんて言えば良いんだろ?」
「言葉にするのは難しいよね」
「え?そんなの簡単じゃん。私たち3人が血よりも深い絆でぴーちゃんと結ばれてるってだけの話だよ」
「いや、まるで分んねえんだが?」
「えーっと、つまり―――」
――――ジッ
2017年4月5日 16時12分
新宿 『富久コンフォートタワー』最上階
「これで終わりです。ルリグでアタック」
「そ、そんな・・・この私が負けるなんて・・・・ッ!!」
有栖ちゃんの勝ち。
負けた『クソニート』はまるで信じられないとばかりに顔を引き攣らせ瞠目している。
いや、お前ここでの付き合いでしかカード触らない僕にすら負けるクソザコじゃん。
当然、有栖ちゃんにも毎度のようにボロ負けしててよくそんな言葉が出るものだ。
そこまで無様を晒しても折れずに立ち向かう姿勢は評価するけども。
「あらあら、『白窓の部屋』の主ともあろうお人がなんとも無様な負け方ね」
「あの部屋は去年に水嶋さんが今度こそ消滅させてもう無いし主もなにもないんじゃないかな?」
「あらまぁ、そしたらこいつはもう何にもないただのクソッタレなクソニートって事よね?幸」
「留未ちゃん、あんまり言うと可哀そうだよ」
バトルを観戦していた『クソッタレ』の留未ちゃんと『ハナタレ』さっちゃんが『クソニート』繭の負けっぷりをこき下ろす。
その言葉に怒り狂った繭が、留未ちゃん目掛けてぐるぐるパンチで殴りかかるが、当の留未ちゃんに足で頭を押さえられ一発も当たらない。
今だ!そこで足払いだ!とか思ったりもしたが当然口には出さない。
さっちゃんは二人の横で苦笑いを浮かべるばかり、有栖ちゃんは素知らぬ顔でティーカップに口を付けている。
夕飯の下ごしらえをしながらそんな様子を眺めていて改めてふと思ったことを口に出す。
「ところでさぁ、君らもしかしなくとも太った?」
ぴしりと場の空気が凍り付く。
「フフッ」
一拍遅れて有栖ちゃんの口から笑いが漏れる。
ギロリと三対の視線に射抜かれるがすまし顔だ。
「あんまり運動できない有栖ちゃんですら体系維持出来ているのにお前らときたら・・・・」
有栖ちゃんに向きかけたヘイトをこちらに戻す。
これから3年、有栖ちゃんは全寮制の高校で過ごす。
校則が厳しいらしく、卒業するまでは連絡が取れなくなるらしい。
しばらく会えなくなるのに喧嘩別れさせるわけにもいかない。
「普段からサングラスなんて掛けてるから遂に目が悪くなってしまったのね」
「女の子はね、成長するにつれて多少丸くなるものなんだよ。これは自然な事なんだ」
「そうよ!失礼な事言わないで!!」
3人から抗議の声が噴出する。
「まぁさ、百歩譲ってそっちの二人はまだちょいぽちゃで済むかもだけどお前はそうじゃないからな?繭」
まんまると太った繭をじろりと睨む。
「なんで私だけなの!?おかしいよね!!?」
「前にも言ったじゃん?ちゃんと自己管理出来るようになれって」
引きこもってばかりだと気が滅入るからたまには外に出ろだとか、運動しろとまでは言わないから毎日散歩くらいはしておけだとか。
「お前普段の買い物すら二人任せで引き篭もってるだろ。ちょいぽちゃどころかぽっちゃり通り越してデブの領域に踏み込みつつあるぞ」
「うぅッ」
「たしか新宿の駅前にスポーツクラブがあったよね?大手の―――」
「シルバーマンジムの事ですか?」
有栖ちゃんの返しに「そう!それそれ!」と返事をする。
「けど、あそこってたぶん本格的なところだよ?プロアスリートだとか総合格闘技の選手が通ってるって聞くし」
話しの流れが読めたらしいさっちゃんが苦言らしき事を言う。
「なんちゃってファッションジムよかよっぽどいいだろ。ここの2階にも設備があるにはあるけど、せっかくだし金は出すからお前ら三人そこの会員になってパソトレ受けてきたらいいじゃん」
「嫌よ!なんで私がそんなむさ苦しい場所に行かなきゃいけないのよ!?」
「言っとくけど今のお前も大概むさ苦しいからな?」
「マッチョになんてなりたくない!!」
「安心しろ、お前ら三人が少々努力したくらいじゃマッチョのマの字にすら届かないから」
マッチョなめんな!クソニート!!
「ジム代出してくれるってんなら私に否やはないけど、そいつの身分証とかどうするつもりなのよ?」
「あっ・・・」
妙に余裕綽々だった留未ちゃんに指摘され自身の見落としに気付く。
そうだわ、繭のやつ戸籍ねぇじゃん。
身分証なんてあるわけがない。
二人と違って
「とっとりあえず身分証の方はこっちで何とかできないか考えとくよ」
夏油とかそういう伝手知らねえかなぁ?
後の祭りだけど〝去年の一件〟に関われてたら高専が何とかしてくれたかもなぁとか益体もない事を考える。
「そう、ジム通いは当分見送りみたいよ?良かったわね、豚ちゃん」
「豚ッ!?」
「私たち二人は残念な事にここの住人じゃないから、フィットネスルームは利用できない。可哀そうだけど―――」
「一人寂しく運動に励む事ね、豚ちゃん?」
「身分証の件が解決するまでお前ら三人このマンションの階段毎日2往復な」
僕の言葉に繭は勿論、豚ちゃんを虐めて楽しんでいた留未ちゃんとそれを見て苦笑いを浮かべていたさっちゃんの顔が引き攣る。
大丈夫、55階をたった2往復だ。
走るも歩くも好きにすればいい。
何なら下りはエレベーターを使ってもいい。
僕ってばやっさしい!よっ!フェミニスト!*1
てか案外ダイエットならジム通いしなくてもこれで十分な気もするよね!
――――ジジッ
2016年12月24日 18時52分
Republik Österreich Wien
「papa…?」
「―――そうでちゅよぉパパでちゅよぉ~♡」
かずき君のその言葉に僕はついそんな風に返してしまった。
かわいいでちゅねぇ♡
「フンッ!」
「グヘェッ!?フベッ!!」
ソファに添えられていたクッションで思い切り打たれた。二度も。
「誰がパパだ誰が!」
「いや、つい・・・けどなにも打つことなくない?ママはこわいでちゅねぇ♡」
「papa!」
「いやぁ、ははは」
あれ?これホントに僕の事パパと認知してしまったかも?
「――――」
怒りに歪めていた顔からサーッと表情が抜け落ちて奥に引っ込んでいったと思ったら牛刀片手に戻って来t!?
「ちょっ、待て待て僕が悪かったよ姉弟子落ち着いて頼むからそれは元あった場所に戻して」
膝の上にいたかずき君をソファに置いて僕は姉弟子を取り押さえに掛かる!
素人の振り回す刃物とかまじこわい!!
泉美ちゃん早くシャワーから出て来て!師匠早く帰ってきてぇ!!
――――ジジジッ
2016年11月24日 16時28分
岩津町 星野我愛熱斗別邸
ちゃぷんと水の跳ねる音が浴室に響く。
「あ~、いい湯だわぁ」
「生き返るぅ」
「凍えた体にあったかいが染みわたるぅ」
初雪が降りしきる東京の街。
そんな街中を今日一日は歩き通しだった事もあり、その体はすっかりと冷え込んでいた。
高峯が手を頭の上で組んで大きく伸びをする。
「しっかし、相変わらずここのお風呂は大きいよねぇ。私らみんなで入っても手狭に感じないってんだから」
「もとはこの子の先生の持ち家だったんだっけ?」
「言ってたね。やっぱりその先生もお風呂好きだったのかなぁ?」
「おーい、返事しろよぴーちゃん」
「なに恥ずかしがってんのさ」
「えい」
渡辺が胸元で手を組み水鉄砲を飛ばして―――
「ぶへっ!・・・なにすんのさ」
「返事しないそっちが悪いじゃん」
「いっちょ前に照れちゃって。マセガキ」
「まだ7歳でしょ?何がそんなに恥ずかしいんだろうね?」
「これが初めてってわけでもあるまいに。早熟坊やには私らの裸は刺激が強すぎたか」
「もしかして勃っちゃった?」
「勃たねぇ、ガキだから」
こいつなんちゅう事を聞いてくるんだ。
セクハラだぞ!新野冬子!!
「意味はわかるんだ、マセガキ」
「まぁ、流石にまだでしょ」
「普通は中学とか入ってからじゃない?あ、でも体格的に考えるとそうでもないのかな?」
「早い子だと小学校の3、4年でって話も聞くよ?」
「えっまじ!?」
「そっかー、この子もそうだけど今の子ってやっぱ発育が良いんだろうね」
「勃つ様になったら教えてね」
「ああね、そしたら今まで通り一緒に入るわけにもいかないしね」
「そだね。何か間違いがあってもいけないし、お互い気まずい思いしちゃうだろうしね」
ニノの更なるセクハラ発言に同調する二人。
まぁ、その意見には同意である。
なし崩し的に、今の今までこうやって一緒に入る事があったわけだが、僕としてはなにかの拍子に勃っちゃわないか気が気でないのだ。
逆に見慣れ過ぎて、勃つものも勃たないような気もするのだが。
「言い分は全然分かるんだけど、僕ってば態々みんなに初勃起だとか精通報告しなきゃいけないの?普通に恥ずいんだけど」
「あはは、そしたら赤飯炊いたげるよ」
「そんな初潮じゃないんだから」
「初潮も分かるんだ。ホント耳年増だよね」
「年増がなんか言ってる」
「なんだとこら!」
「私らはまだぴちぴちのお姉さんだから!!」
「てか耳年増って男の子には使わない言葉じゃなかった?年増がそもそも女性を指す言葉だし」
「えっまじ!?」
「そういえばそうだわ」
「・・・・・・・・」
「ニノ?」
そんなやり取りを二人としている最中、じっと僕の事を見つめるニノに気付き声を掛ける。
「ううん、なんでもないの。なんでも」
――――ジジジジッ
2016年9月1日 11時12分
都立亀水高等学校 正門前
「あのメガネ君が例の彼?」
「はい、あの人が颯太さんです」
「よし、みんな準備は良い?」
「任せて」
「いつでも」
「まさかウチらでハイエースする日が来るとはね」
ちょうど島から帰って来てた3人の協力を取り付けられたのは渡りに船だった。
「ハイエースだなんて人聞きが悪い。ただちょっと逮捕連行するだけだよ。ミヤコさん、車をメガネ君の横に付けて」
「ちょっと待って、ハイエースするだなんて聞いてないんですけど」
「いや、だからハイエースじゃないって言ってるじゃん。僕らの服装見てよ」
自作ながらなかなかの出来だと思うんだポリス服。
「これはあくまでわからせ企画の一環!撮影です!ボツになるかもだけどメガネの彼にも事前に話を通していた事に〝後で〟します!」
「ホント、警察沙汰は困るんですけど!」
「大丈夫だって、僕を信じて」
「―――ほんっと、頼むわよ!?」
「任せてよ!と、いうわけだからせっちゃん。手筈通りカメラは任せるね」
「は、はい!」
「ところでさ、今更だけどなんで私だけ囚人服なの?」
と、最近びーこまの準レギュラーとして加入した芽依がそんな疑問を口にする。
「3人の分はもともと作り置きしてたやつだし、流石に急に決まった企画だったから僕とせっちゃんの分しか作れなかったんだよね」
「その子のポリス服を私に着せればよかったじゃん」
「いや、一人出オチ要因が居てもいいかなって」
僕のその答えにチベットスナギツネみたいな顔をする芽依なのであった。
車はス~ッと進みメガネの彼の横、少し前でピタリと止まる。
ガッとドアをスライドして僕ら6人はぞろぞろと降りて彼の行く手を遮る。
「御用だ!」
「御用だ!」
「御用だ!」
「御用だ!」
「わからせ警察だ!水篠颯太だな?」
「え?ちょ何ですかあなたたちは!?」
「なんだろあれ?」
「ミニスカポリス?」
「一人囚人服じゃん」
「わからせってもしかして」
「どうも~!びーこまのわからせ企画収録中でぇす!」
「やっぱりそうだ」
「うわほんとだびーこまだ!」
「あれ?がーぴー背ぇ伸びてる?」
「絡まれてるのあれ水篠か?」
「女の腐ったような奴めぇ、逮捕してやるぅ!」
メガネの片手に手錠を掛け、後ろに素早く回り込みもう片方の腕も捻って同じように掛ける。
「ちょっ、痛っ」
「カメラマン!ちゃんと撮れてる?」
「はい!」
「ぅえ!?なんで―――」
びーこまのみんなと同じミニスカポリス服のカメラマンを見て絶句するメガネ。
「被疑者確保ぉ!撤収!!」
「御用だ!」
「御用だ!」
「御用だ!」
「御用だ!」
メガネの彼を車に押しこみ僕らも素早く乗り込んでその場を後にする。
「動画公開までこの事はどうかご内密にいぃぃぃいぃいいい!!!」
ちゃんと守ってくれるかどうかは怪しいがそんなお願いの言葉を残して・・・
――――ジジジジジッ
2016年3月31日 05時47分
横浜 新山下埠頭 『横浜ベイホール』駐車場
年度末。
別れの季節。
小学校入学を間近に控えたこの日、僕は『びーこま!』のレギュラーメンバーとしての一先ずは最後の仕事となるアクション映画のクライマックスシーンを撮影すべくこの倉庫街にこんな朝っぱらから足を運んでいた。
横浜の随所でこのひと月、五反田監督の指揮のもと行われてきたロケも残すところあと一つ。何事もなければ今日が最後だ。
その舞台となるのがこの『横浜ベイホール』―――ではなく、その隣にある旧『ベイサイドヨコハマ』である。
去年の7月に閉館したイベントホール跡だ。
「よう、はえーじゃねえかお二人さん」
そう言って駐車場に止められたワーゲンバスから降りてきた五反田監督が僕とニノに話しかけてくる。
「監督の方こそ早いね」
「私たちは撮影前にロケ地見て回ろうかなって」
バンド活動を始めて間もない頃に、ここ『ベイサイドヨコハマ』でもライブをやった事がある。
ニノ単独でも何度かお世話になった事がある箱だ。
今回の撮影で色々と内装が壊される予定になっているのでその前に見て回ろうとこうしてやってきたのだ。
「そういやあ残りの二人はどうしたんだ?一緒じゃねえのか?」
「高峯と渡辺は―――」
「中華街で食べた料理に中ったっぽくてホテルのトイレに籠ってる」
「おいおい!あいつらメインキャストだぞ!?」
「もう籠ってないよ、薬飲んで寝てるだけ」
僕のボケにニノが訂正を入れる。
「二人ともプロだしなんとかするでしょ。たまたま隣の部屋に泊まってた医者にも診てもらって薬も処方してもらったし」
都合のいい事に、隣の部屋に宿泊していた〝英はじめ〟という医師がご厚意で診療してくれたので無事快方に向かっている。
あの感じなら多少遅れてもちゃんと現場には来れそうだ。
「なんにせよちゃんと来れるなら別にいい。もう30分くらいで撮影スタッフも集まってくる。見て回りたいなら今のうちに見てくると良い」
俺はそれまで車で寝てるからと背を向ける五反田監督。
僕は大きく伸びをして深呼吸をする。
朝のひんやりとした空気が美味しく感じられる。
ふと上の方から何かの視線を感じてそちらに目を向ける。
「ん?」
坊主頭の男がライフルのようなものを抱えてこちらを見下ろしている。
????
「なぁ監督、今日のロケに狙撃手役なんていたっけ?」
「あん?そんな配役はいないぞ?ちゃんと台本読んだか?」
振り向いた五反田監督がそう返す。
「だよね。じゃああれは―――」
監督が僕の視線を追う様にそちらに目線を向けるのと、坊主頭の男が銃口をこちらに向けるのはほぼ同時だった。
僕はニノを押し倒すようにして車の影に飛び込んだ!
「監督!無事!?」
「ああ!そっちは!?」
監督も運よく車の影に飛び込めたようだ。
「こっちも大丈bッ!?」
「Pちゃん!!?」
痛ッ・・・銃弾が車を貫通したのか!
幸い肩を掠めただけだ。行動に支障はない!
「おい!どうした!?」
「大丈夫!ちょっと肩を掠めただけ!弾が車を貫けてくるから気を付けて!」
「エンジンブロックを遮蔽物にしろ!多少はマシなはずだ!」
「了解!」
とはいえ、下手に動けば丸見えになる。
ばかすか撃ちやがって!
このままじゃジリ貧だ。
誰だよあのマルコメ君!?
何でロケ現場にスナイパーがいるんだよ!
まさかカミキヒカルの刺客か!!?
「Pちゃん・・・」
僕が覆いかぶさるようにして地面に押し倒したままのニノが話しかけてくる。
その顔は平静を装おうとしているが不安の色を隠せていない。
「大丈夫、僕が絶対死なせないから。だからそんな不安そうな顔はしなくてもいい」
問題はマルコメ君との距離だ。
相手はビルの屋上に陣取っている。
単純な距離の問題だけではない。
遠距離に攻撃のできる武器、なにか投擲できる物はないかとあたりを見渡す。
そこでふと目に付いたのはパーキングブロックだ。
「ニノ!ここで身を丸めてじっとしてて!!」
コの字型の金具で地面に打ち付けられている二つのそれを這いよって呪力と術式で強化した膂力で斜めに引き抜く!
ばこりとブロック周囲のアスファルトが捲れ上がる。
「Pちゃん、それでどうするつもり!?」
「スナイパー目掛けてぶん投げる」
「届くわけないよ!危ないよ、ここでじっとしていよう?」
行かせまいと跳び縋ってくるニノ。
「そうだ!馬鹿な真似は止めろ!110番に通報した!!もうじき警察が助けにやってくる!!!」
五反田監督にも話が聞こえてたらしい。
「今僕らが生き残っているのは運がいいからだ!警察が到着するまで弾が当たらない保証は?」
よしんば到着したとしても、お巡りさんの拳銃で応戦できる保証はどこにもない。
僕は何とでもなるが、二人はそうはいかないのだ。
「ニノ、僕を信じて」
「けど・・・」
「言ったろ?絶対死なせないって。勿論僕も死なない。頑丈なの知ってるだろ?」
「おい!早まるな!どうしてもってなら俺が―――」
「監督よりも僕の方が動けるでしょ?良いから隠れてて!」
監督が変な気起こす前に急がなきゃ・・・
「ニノ、僕が今までこういう大事な場面で約束破った事あった?」
「なかったけど・・・」
「なら今回も大丈夫!必ずニノのもとに戻るから」
破砕音が響く中で僕はニノを安心させようと一度強く抱きしめると両手にブロックを携えて飛び出す!
車の影から飛び出した僕目掛けて正確無比な銃弾が3発飛来する!
それを寸でのところで身を捩るように躱して、マルコメ君目掛けてブロックの一つを呪力で強化した肉体で以て投擲!
僕が投げるのとほぼ同時に放たれた銃弾は僕の投げたブロックに軌道を逸らされて僕の頬を掠める。
ばこんっ!というここからでも聞こえる轟音と共にマルコメ君は僕らからは見えない屋上の奥へと吹っ飛んでいった。
ナイスコントロール!
いつか北原のあんちゃんと河川敷でやったキャッチボールの成果が出たな!
なんにしても今のうちにここから離れたほうがいいかもしれない。
手応えとしては最低でも行動不能に追い込めたとは思うが、万が一がある。
異常にタフで逆襲に動き出す可能性も考えなきゃいけない。
「ニノ!監督!とりあえず無力化できたとは思うけど念のために急いでこの場を離れよう!」
小走りで二人のもとに駆けだそうとした矢先―――
ブロロロ!とエンジンの始動音が響く。
音の先に目を向ければ駐車場の奥から自動拳銃を手に持ったフルフェイスが跨るスポーツバイクがこちらに向かって走り出した。
「新手か!?」
フルフェイスが拳銃を向けるのと僕が残るブロックを振りかぶるのはほぼ同時の事だった。
――――ジジジジジジッ
2015年6月2日 16時30分
JR新宿駅南口 『LUMINE1』前
「大槻ちゃんじゃん、何してんの?こんなとこで」
7階のレストランフロアで、ビーフシチューの掛かったハンブルグステーキを堪能してルミネを出た先で、何やら紙の束を抱えた顔見知りのバンド少女 大槻ヨヨコに出くわした。
声を掛けるとびくりと跳び上がり、こちらを見て「なんだあんたか」とホッとしたような顔をする。
「てっきり廣井姐さんかと思ってびっくりしたじゃない」
「ああね。あの人と僕、声質似通ってるもんね」
ついこの間、『SICKHACK』の打ち上げにお呼ばれした時にもそんな話になって〝どっちがきくりちゃんでしょうか?〟ゲームで盛り上がったばかりだ。
他が間違える中、岩下さんだけピタリと言い当てていたっけな。
「それで何してんの?その紙の束なんかのチラシ?ビラ配りのバイトとか?」
「あっちょっ!?」
大槻ちゃんの手元から紙を一枚かっぱらい内容を検める。
「・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・なんか言ってよ」
「・・・90年代のホームページかな?」
紙はなんて事はない。
大槻ちゃんのバンドのライブ告知のチラシだった。
慣れないパソコンを操作して作ったのが窺い知れる。
無意味に文字が虹色だったり、図形描画で作ったと思われる不格好なギターやドラムの絵は何か凝ったものを造ろうとした爪跡なのだろう。
「うぐぅっ」
「まぁ、けど告知したい情報はちゃんと纏まってるしいいんじゃないの?」
吉田店長の審査をついに突破したとは聞いてたけど、初ライブが決まったようだ。
てか、6月10日って僕の誕生日じゃん(笑)
「それでビラ配りは順調?」
「まっまだよ!いっ今から配るの!!」
今から配るらしい。
「僕はてっきり、直前になって怖気づいて尻込みしてるパターンかとばかり」
「あんたまさか、最初からずっと見てたの!!?」
「うわ、まじで当たってるやつじゃん」
墓穴掘って百面相しながら唸っている大槻ちゃんを余所に改めてチラシを眺める。
ライブ告知のビラ配りで思い出されるのはやはり、ぼっちちゃんのアレである。
ノルマのチケットを捌くべく、チラシを自作してなんやかんやあってきくりちゃんに出会うアレである。
察するに、友達のいなさそうな大槻ちゃんもチケットノルマに困り、ビラを配って客を呼び込もうとしているのだろう。
「あっそうだ」
閃いてしまった。
ちょうど大槻ちゃんもギターを背負っている事だしあの手がそのまま使えるんじゃないか?
そうと決まれば道路の使用許可を取らなきゃか。
あれって当日ギリギリとかで通るんだろうか?
いや、待て?確か斎藤社長が新宿署の署長さんと飲み仲間とか言ってたのを聞いた覚えがあるぞ?
僕は懐からスマホを取り出して電話を掛ける。
「―――あ、もしもし社長?ちょ~っと頼み事があるんだけど」
社長にはだいぶ渋られたが、今度埋め合わせは必ずすることを条件にダメもとで今から連絡を取ってくれることになった。
社長との電話を済ませて続けざまに次の電話を掛ける。
「ちょっと、アンタさっきから何を・・・」
「何ってそりゃあ―――あ、もしもし泉美ちゃん?今ちょっと時間ある?新宿のルミネ前まで僕のキーボードとか演奏機材を持って来て欲しいんだけど。うん。あと、ギターアンプとかもお願いできる?そう、ちょっと友達と・・・うん、使用許可は社長が取ってくれる手筈だから大丈夫」
「ねえ!待って!あんた何をするつもりで―――」
僕の胸倉掴んで言い募る大槻ちゃんを手で制止して、
「うん、じゃあお願いね。は~い―――何って、今から僕と大槻ちゃんとでライブをするんだよ」
「は―――――!?」
――――ジジジジジジジッ
2015年4月11日 10時48分
羽田空港 国内線ターミナル 保安検査場前
「うおぉぉおおん!ペチぃぃぃい!!さびしぃぃよぉおお!!!」
「クゥゥゥン、クゥゥゥウン!」
クレート越しにペチとの別れを惜しむ。
「うおぉぉおん!ペチ、お前も寂しがってくれるのか!」
「クゥゥウウン!ワンワン!!」
「だよな!やっぱり一条さんちのペットは辞めてうちの子になりたいよな!?」
「ダメに決まってるでしょ!!?」
「あはは」
「まさかうちの家族よりガーネット君に懐いちゃうとはね」
僕とペチの間を引き裂こうと力いっぱい引っ張る蛍ちゃんの後ろで一条夫妻が苦笑いをしている。
「こら、ガーネット!一条さんに迷惑だろ」
「ほら、離しなさい!」
「そ、そうだよ!寂しいのはみんな一緒なんだから、ね?」
アクアとルビー、杏奈ちゃんがそう言って蛍ちゃんの加勢に入り僕をクレートから引っぺがそうとする。
「ぐぬぬ」
「そうだよ!」
「さびしいのはみんないっしょなんだから!」
「わがまま言わない!」
蛍ちゃんの仲良しグループの子達にもそんな事を言われてしまう。
くそ、僕に味方はいないのか!?
周りの大人は微笑ましいものを見るような笑みを浮かべるだけだ。
「ここにルリ子ちゃんがいればきっと僕の味方に・・・・いや、ならないか」
渋々クレートから手を放す。
「ごめんよペチ、僕は無力だ」
「クゥゥウウン」
「ルリ子ちゃんも来れたらよかったんだけどね」
うちのかあさん同様にスケジュールが埋まってしまってて今日は来れなかったのだ。
逆にアクアのスケジュールが空いていたのは奇跡だ。
さすが売れっ子の天才子役。
有馬かなに目の上のたん瘤と言わしめるだけの事はある。
ただ、ルリ子ちゃんの場合子役で居られる時間はそう残されてはいないのかもしれないけど。
目の前でペチのクレートに抱きついて睨んでくる蛍ちゃんにしろ、この状況におろおろしてる杏奈ちゃんにしろ、最近の子は発育が良すぎるんだよなぁ。
いやまあ、僕も言えた義理じゃないんだけども。
「ははは、そんなにペチと離れたくないならいっその事うちの子になっちゃうか?」
「パパ!!?」
燿司さん*2がそんな事を言い出す。
「あらあら、いいんじゃない?」
「ママまで!!?」
由子さん*3がそれに乗っかる。
二人の目を見れば分かるが単に僕と蛍ちゃんを揶揄っているだけで本気で言っているわけじゃない。
仮にもし本気だったとしても僕もそこまで血迷ったりはしていないのだ。
だから―――
「どこにも行きゃしないからアクアとルビーはその手を放そうか?」
がっしりと僕の腰に抱きついて離れない二人にそう諭す。
「ミヤコさんまでなんで肩に手を置いて抑えにかかってんのさ」
周りのみんなが苦笑いだったりジト目で見てくる。
僕ってそんなに信用ない!?
「蛍ちゃんもそんな涙目で僕の事睨むの止めよう?僕もそこまで非常識じゃないから」
がるるると威嚇を止めない蛍ちゃんを尻目に杏奈ちゃんを見て、
「ペチに会えない悲しみはワン太郎に癒してもらうよ」
「あげないよ!?」
間髪入れずにそう返してくる杏奈ちゃん。
「盗らないよ!!?」
とかやってる間に手荷物預かりの締め切り時間が迫ってきたのでそこでペチと涙の別れを交わした。
「しっかし岡山*4かぁ、フライトは1時間半だっけ?」
「そう、そこからバスに乗って電車に乗って、途中でお昼を食べたり寄り道もするだろうから向こうに着くころには夕方前かな?」
「今までみたいに気軽には会えなくなるね」
「そうだね」
実を言うと蛍ちゃんと遊んだ回数はそう多くない。
この2年でルリ子ちゃん共々両手足の指で足りるほどだ。
先ほどアクアのスケジュールが空いていたのが奇跡と言ったが僕に限ってはそうではない。
結構急に決まった一条一家の引っ越しだった事もあり、リスケで方々に迷惑をかけてこの場にいる。
ルリ子ちゃんもリスケしようと頑張ったようだが、どうしても外せない収録があって泣く泣くこの場にいない。
今日来れなかった分、近日中に向こうまで会いに行ってくるとか言ってたが、荷物の整理終わってないうちとかだと迷惑にならないか?
「向こうに着いたらお手紙書くね」
「うん、こっちも返事書くよ。そうでなくてもゲームで通信プレイとかも出来るしね。田舎って言ってもネット環境くらいはあるんでしょ?」
「うん!」
「がーぴーばっかずるい!」
「わたしたちもお手紙書くから!」
「はなれていてもずっと友達だよ!」
「みんな!」
わんわんと泣き出す仲良し4人組。
観てるこっちの涙腺も緩むというものだ。
「あっそうだ」
そこではたと蛍ちゃん達に言ってなかった事を思い出す。
「そういえば言いそびれてたけど僕らも夏に引っ越すんだ」
「え!?」
「えぇぇぇえ!!?」
「がーくんもいなくなっちゃうの!?」
「まぁ引っ越すと言っても同じ目黒区内だけどね。まだ本決まりじゃないけど中目黒の方」
「よかったー、それくらいなら全然遊んだりできるね。パパ、がーくんとゲームするのいつも楽しみにしてるから」
佳正さん*5とは『アタファミ』とかもっぱら対戦ゲーでよく遊ぶ仲だ。
「そういうわけだから、引っ越したら暑中見舞いがてら手紙書くよ。蛍ちゃん」
「うん!!」
この1年ですっかり背を抜かされてしまったが、こうして見ると当然ながら、まだまだ子供なんだなと実感する。
一条一家が引っ越すという岡山の片田舎に思いを馳せる。
呪術廻戦の中で悪し様に語られる田舎へのイメージ。
ミミナナの村にしろ、釘崎野薔薇の村にしろ碌な例がない。
もちろん、日本の津々浦々すべての田舎がそうだとは思わない。
けれど、沙織ちゃんのようにならないかと少し心配ではある。
今にして思うと、ルリ子ちゃんが引っ越し先に押しかけようとしたのにもそういう意図があったのかもしれない。
今年一年の予定はそれなりにみっしりと埋まっている。
ちょっと都内で遊ぶくらいの時間は取れても、岡山までとなると流石に泊りがけになる。
横紙破りをした手前、当分はそんな事は許されないだろう。
お中元は何を送ろうか?
いや、少し気が早いかな。
今年は無理でもいずれは蛍ちゃんちに訪ねてみようと思う。
抜かされた背丈を抜き返す頃にはきっと――――
――――ジジジジジジジジッ
2015年3月11日 15時02分
宮城県仙台市 『東北大学病院』
「まったく、大袈裟なんだよなぁ。ちょっと車に撥ねられたり頭に植木鉢が落ちてきたくらいで」
「いや、普通はちょっとじゃ済まないからね?」
「ちゃんと受け身は取ったんだけどなぁ」
「ふつうに吹っ飛んでたし植木鉢ももろに食らってたけど!?」
仙台グルメ食べ歩きロケの途中、急に猛スピードで歩道に突っ込んできた軽四に僕は撥ね飛ばされた。
食べ物に夢中になっていたせいで一瞬、反応が遅れびーこまのみんなを咄嗟に押し飛ばすのが精一杯だった。
なんとか呪力による強化が間に合い、打撲程度で済んだのだが吹っ飛んだ先でたまたま落ちてきた植木鉢に不意を打たれて無様に昏倒してしまったのだ。恥ずかしい。
気付けば救急車の中であれよあれよと検査入院が決まってしまった。
事故を起こした車の運転手は随分とお年を召したご老人の様で、どうにもブレーキとアクセルを踏み間違えたようである。
撥ね飛ばされたのが僕でよかったね。
他の奴だったら死んでたかもだし。
「けど、こんなピンピンしてんのにわざわざ検査入院とかする必要あるかなぁ?」
「頭打ってんだから万が一があるかもでしょ?わたしらの事、安心させてよ」
「そうだよ!Pちゃん、死んだかと思ったんだよ!?」
「大丈夫だってわかるまで、大人しくしててよ」
「ぐぬぬ、わかったよぉ」
ちくしょう、これ予備日に空けてた日程全部潰れるやつだ。
ロケでハピナ商店街には行けたけど、他も見て回りたかったんだけどなぁ・・・
宛がわれていた病室でメンバーのみんなとそんな話をしていると看護師さんがやってきた。
「星野さん、今からMRI撮りますので検査室まで移動しましょうか。どうぞ、こちらの車椅子にお掛け下さい」
「いや、車椅子とか別に大丈夫ですよ。普通に歩けますしね」
そう言ってベッドから立ち上がり病室を出る。
それに少し慌てて出てきた看護師に先導されながら検査室に向けて歩み出したのだが、進行方向・・・ちょうど少し先のナースステーションの辺りで物珍しいものを見た。
車椅子の女性とそれを介助するメイド服の女性だ。
女性の二人は向かいに立つ男性と何がしかを話している。
そこに彼女らが扉の前で屯する病室から壮年の男女が出てくる。
「どうも……事前に話しておいた下調べは一通り終わりました。予定通り今から少しの間、華穂と二人きりにさせてください」
「そう……がんばってね重明くん」
「はい……正直あまりに、現実味がなさ過ぎて上手く確信は持てませんが……精一杯頑張ってみます」
「……フン……」
「貴方、下に行ってお茶でも飲みましょうか」
「……ああ、そうだな……」
二言三言、男と何か喋ったかと思うと壮年の二人はその場を離れていく。
「という事で、ちょっと行ってくるね」
「わかりました、頑張ってください」
「ありがと……じゃあ桔梗ちゃん、また後で」
「はい、重明さん……また後で」
そう言って男は病室の中に入っていく。
すれ違いざま、男の入っていく病室の中をなんとなしに盗み見るとそこには綺麗な金髪ブロンドの女性が眠っているのが見えた。
毛染めだとああはならない。外人さんか・・・もしかしてハーフとかかな?
そんな事を考えながら15歩ほど歩いたところで僕の意識は唐突に朦朧とし出す。
「うぇ、やべ―――」
「ちょ星野さん!?」
やっぱ頭打ったのがまずかったのか!?
唐突に襲い来る強烈な睡魔にも似た症状に僕の意識は途切れ―――
「……ぶっちゃけ理由はよく分からないけど……俺の考え通り……上手くあの世界に入り込めた……って事でいいのかな?」
「……ここをどんな風に考えたの?私にも教えてよ……重明さん」
「……うん?」
「どうも~」
「……俺がこの不思議空間を、どんな風に思ってたかって事か?」
「うんうん」
「そうだな……って!……そもそも……お前、誰だよ?」
「……コホン……では改めまして……名乗らせていただきます。私の名前は撫子……藤木藤子の娘の撫子……よろしくね」
「俺は萩原重明……よろしく」
「僕は星野我愛熱斗。それでなんで僕はこの車に乗せられているの?」
「……え?」
「……は?」
「・・・・ん?」
「「うわぁぁあ!?誰だおまえぇぇえ!!?」」
「こっちが聞きたいんだが!!?」
―――気が付けば、見知らぬ車の後部座席に座らされていたのだった。
――――ジジジジジジジジジッ
2014年3月28日 19時27分
République française Ville de Paris
プラザ・アテネを出て、夜のモンテーニュ通りをバナナを食べながら泉美ちゃんと練り歩く。
「泉美ちゃんがいてホント助かったよ。英語はともかく、ドイツ語もフランス語もからっきしだから」
「いいのよ、あんな良いホテルに泊まれたり私も色々と役得だったしね」
あの『フランツ・デュプレ・オーケストラ』とうちの姉弟子のピアノコンチェルトを聴きに〝シャンゼリゼ劇場〟に向かう途上。
日本ではそこそこ知られているが、ここパリにおいて姉弟子は無名もいいところの日本人ピアニストだ。
いかにあの師匠の娘なんて肩書きがあっても芸術の本場、音楽の世界においては何の意味も成さない。
姉弟子の1年前の日本公演。
あれはあれで凄まじかったが、あの日のポテンシャルが発揮できたとしてもパリ市民を唸らせられるかは未知数だ。
何よりソロとコンチェルトではまた、求められる事も違ってくるだろう。
日本の大手家電メーカーが冠スポンサーに付いた事により、この公演の黒字はすでに確定している。
だが、コンチェルトそのものの出来次第では姉弟子の欧州における評価を決定づける事になり、ピアニストとしては終わりかねない。
ウィーンで師匠のお見舞いをしてからここパリに降り立ったのが二日前の事。
師匠は白血病を患っている。
見舞いに行った際は、心配させまいと気丈に振舞ってみせていたがどうにもあまり芳しくはなさそうだ。
エマさんが言うにはつい先日まで面会謝絶の状態が続いていたのだと言う。
そんな大事な事、もっと早くに教えてほしかった。
去年の秋頃同様に、それとなく術式で正のエネルギーを増幅したり、上手くできているかいまいち分からないが血中の赤血球や血小板、白血球を増殖させてきたが所詮対処療法でしかない。
反転術式が使えれば、問題の骨髄を呪力なりで破壊して反転術式で治せるんだろうけど・・・・
師匠がどうこうなってしまう前に反転術式を習得しなきゃだが、今のところさっぱりだ。
ひゅーっとやってひょいってなんだよ。
やっぱり、センスないんだろうか?僕。
そんな可能性が脳裏を過るのを振り払う。
あの五条悟であっても反転術式を習得したのは高専に入ってから―――もっと言うと死に瀕してからだ。
とか言うと僕の反転術式習得も10年以上は後になるし、そのうえで死にかけるのが前提になりそうで嫌だが・・・・
2018年の10月までに間に合うだろうか?
いや、師匠の事を考えるとあまり悠長にはしていられない。
見舞いの時、師匠に〝もしも〟の事があった時は姉弟子の事をくれぐれもと頼むと去年同様に念を押されたが〝もしも〟なんて無いに越した事はないのだ。
絶対死なせてなるものかよ。
エマさんから聞いた限りでは、対処療法なりに一時期持ち直していたらしいし定期的にウィーンまで通うのも手だな。
姉弟子や生まれてまだ間もないかずき君の事も心配だし、半年に一回とかでも顔見せついでに―――
《そうね、〝アリ〟か〝ナシ〟かで言えば〝アリ〟だと思うわ》
「―――ッ」
唐突にそんな言葉を僕の耳が捉える。
《音楽の力って偉大よね。今日のピアノコンチェルトを聞いて冬馬曜子は奮起して持ち直す事になるけれどだからって白血病が治るわけではないわ。ウィーンまでの旅費もあなたならそこまでの苦でもないでしょう?》
師匠が奮起って姉弟子が良い演奏をするって事か?
それとも、ひどい出来でまだ死んでられないって事?
《それは聴いてみてからのお楽しみじゃないかしら?答えはすぐそこにあるのだから》
それはまあそうかもな。
それで?今度は何をさせたいんだよ?『魔女』。
《女の子に向かって魔女呼ばわりだなんて失礼しちゃうわ》
自分でそう名乗ったんだろうが!
この何処の誰とも知れないナニカと一方的な交流を持つようになってからまだ一年にも満たないが、こちらの事を凡そ全て把握されてる手前無碍にも出来ない厄介な存在だ。
《そんな事はどうでもいいの。時間があまりないから一度で聞き分けてほしいのだけど、今食べているバナナを急いで食べ切って私の合図に合わせてバナナの皮を車道にポイ捨てしてほしいの》
は?
何を言っているんだ?こいつは・・・・
花の都でポイ捨てとか、日本人の品位を疑われるわ。
そうでなくても泉美ちゃんに見咎められて説教コースだ。
《ちょうど彼女に見咎められないタイミングだから安心して》
いや、そういう話じゃなくて―――
《このままじゃあなたの家族が最低でも大怪我する事になるけどそれでも?》
「あ!?」
「ん?どうしかたの?」
「―――あ、いやなんでもないんだ。ちょっと噎せただけ」
「・・・そう?気を付けなさいね」
そう言って背中を少し擦ってくれてからまた前で先導をして歩き出す。
あまりの事にうっかり声が出てしまっていた。
バナナの残りを急いで口に放り込む。
大怪我ってどういう事だよ!!?
《このままだとあなたの家族も、私の大事な人も危険なの。だから、今ッ!!!》
唐突過ぎる合図にビクッとしながらバナナの皮を車道に放り投げる!
《よし!落下地点も申し分ないわ!!》
咄嗟に泉美ちゃんの方を見るが気づいていないようだ。
それで?これにいったい何の意味があるんだ?
《それは、公演終わりに劇場を出て来てからのお楽しみよ♪けれど、一つ言える事はこれが一番確実性が高くて最短ルートだったという事よ》
――――ジジジジジジジジジッ
2011年3月11日 14時43分
皇居外苑
かあさんのスマホに表示されている時刻を横から覗き見る。
忌まわしい記憶。
起きるとするならもう間もなくだ。
「どうしたの?ガーネット、難しい顔して」
「ううん、何でもないよ。かあさん」
丁度よくこのタイミングで休みの取れたかあさん。
僕の提案で兄や姉、かあさん、そして今日も今日とて僕らの世話係を押し付けられているミヤコさんとでピクニックに来ていた。
『東日本大震災』。
三陸沖を震源とする巨大地震とそれに付随する大津波。
ここ東京も大きく揺れたのを憶えている。
あの日、震源から遠く離れた兵庫に住む婆ちゃんも揺れで転び、腰の骨を折る大怪我をした。
その被害は東北だけに止まらず、大小あれど日本全土に及んだ。
―――僕のできる範疇でやれる事は全てやったつもりだ。
かあさんのスマホやミヤコさんのノートパソコンを借りて、3か月前から2ちゃんねるの掲示板をジャンル問わずに荒らし行為をするかのように地震を予言するような投稿を繰り返したり、ツイッターをはじめとしたSNSで作った捨て垢で僕の知り得る限りの、憶えている限りの情報を書き綴り発信したりしてきた。
たまたま名前を覚えていた津波で多くの犠牲を出したあの小学校にもこの一週間、非通知設定で電話を掛けて今日地震が起きる事、津波が来るから裏山に逃げるようにと何度も忠告をした。
正直、ただのイタズラだと捉えられるんじゃないかとは思っている。
もっと他に出来る事が、やりようがあったんじゃないかと思わずにはいられない。
こっちじゃ起きないんじゃないか?
起こらなければいいと心の底からそう思う。
起きもしない事に右往左往したのだと笑い話になればいいのに。
かあさんの持つスマホが14時45分を表示している。
僕に出来る人事は尽くしたのだと、そう思い込む。
ダメ押しにここに来る前に人形町近くの小網神社で祈願もしてきた。
あとは天命を待つだけだ。
背を反るようにして空を仰ぐ。
この後、起きるであろう事が嘘であるかのような快晴だ。
そのまま上から後ろに上体を倒していく時に視界がおかしなものを捉えた。
「なんだあれ?」
北東の空に紐のような赤黒い何かが見えた。
「どうしたんだ?ガーネット」
「いや、あれ・・・」
空にかすかに見えるそれを指さす。
「ん?あれってなんだよ?」
アクアに見えていない?
って事はもしかして呪霊?
龍かなんかなのか?
「あっ」
それが唐突に傾き、遂には見えなくなる。
「なんだったんだあれ?」
その直後、大地が強く揺れた。
――――ザ――――ッ――――プツンッ
微睡みの淵にあった意識が覚醒する。
薄暗い広間をステージのライトが照らしている。
首だけ動かして辺りを見渡せばその場所に見覚えがあった。
「ここは・・・・新宿フォルト?」
「おっ、目が覚めたのか」
その声の聞こえた先には―――
「しっかし奇縁だな。夢か現か。この年になっても世の中分からないもんだよ。こういう事もあるのか」
紋付き袴を着た偉丈夫といった風体のどこか既視感のある老翁が突っ立ってこちらを眺めていた。
「あんた誰だよ?」
「―――そうさなぁ、儂の事は〝翁〟とでも呼んどくれ。そういうお前さんの名は?」
翁の問いに答えるかほんの一瞬迷うが、
「我愛熱斗。星野我愛熱斗だ」
「なるほど、いい名前だ」
「で、翁とやら。僕はなんで新宿フォルトにいるんだ?僕はついさっきまで―――」
「新宿フォルト?なんだそれは?」
「何ってこのライブハウスの名前だよ」
「ライブハウスゥ?お前にはここがライブハウスに見えてんのか?」
「は?」
この爺さん、何を言って―――
「儂にはアースポートの―――軌道エレベーターのターミナルの中に見えてるんだがな」
「アースポート?軌道エレベーターってなんの話だ!?」
「要は儂とお前さんとで見えてる景色が違うって話だよ」
どういう事だよ・・・
そもそも軌道エレベーターなんてまだ実用化されてねえだろうが!
辺りをよく見渡そうとして起き上がろうと体に力を入れるが―――
「あれ?」
「あれ?ってお前、そんな体で起き上がれるわけねえだろうよ」
僕の鳩尾から下には何もない事に気付く。
ただ凍結した断絶部分があるばかりだ。
そうだった。
そういやあそうだったなぁ・・・・
―――って事はだ。
「僕は死んだのか」
8つ目の誕生日を迎える事はなく僕は死んだらしい。
かあさん、先立つ不孝をお許しください。
アクア、ルビー、ミヤコさん、社長もごめん。
僕はどうやらここまでらしい。
ニノ、高峯、渡辺もあんな大見え切ったのに〝約束〟守ってやれなかったよ。
けど、もう一つの方はあともう一息だから・・・
お前らならやれるって信じてる。
ヨヨコは―――あいつは別にいいか。
僕が心配する事は何にもない。
あいつならきっとどこにだって羽ばたける。
風邪ひくなよ!歯は毎日磨け!おわり!
唯一の懸念点は呪術周りだけど、僕の知り得る原作知識を綴ったノートを銀行の貸金庫の中に残している。
ルビーには前提知識を話しているし、きっとみんながうまく活用してくれるだろう。
繭は・・・・うん、それもきっとみんなが何とかしてくれるはず!
あのデブ、目鼻立ちは整ってるんだからモデルなりなんなり痩せさえすればやっていけるだろう。
社長なら僕が匿っていた事も踏まえて悪いようにはしないはずだ。
そう!きっと!たぶん!
まあ、生きてりゃそのうちいい事あるさ!
後顧の憂いは特にないな!
みんな僕を今まで愛してくれてありがとう!
「感傷に浸ってるところ悪いが、儂もお前さんもまだ死んでないと思うぞ?」
今際の際なのはたしかだが。と、屈んで僕の鳩尾部分に触れる翁。
「え?」
「なるほどな、氷使いの梅干し女にやられたのか」
梅干し女ってお前・・・
「裏梅の事を知ってるのか?」
「裏梅?・・・・そういえばそんな名前だったか」
まさか平安の術師とかか?
いやだが、呪物なんて喰った覚えは・・・・羂索に喰わされた?
「お前さん、反転術式は?」
「使えない。たぶん、そっちの才能はないんだと思う」
高専時代の五条と同じ死の淵。
この期に及んで習得できないのなら僕にはきっと才能がないのだ。
「そう悲観する事もない。反転術式なんてコツさえ掴めば誰でも使える」
そのコツを掴むまでが苦労するんだがな。と翁は続ける。
「お前は運がいい。幸いな事にここには儂がいる」
「あんた、使えるのか?」
「応ともよ。だが、実際に使うのはお前さんだ。似通った呪力にこれまた同一の術式。儂がお手本ってやつを見せてやろうじゃねえの」
「僕が使うって・・・けど、呪力は腹で練るものだろう?僕にこの欠損を補うだけの反転エネルギーを生み出すだけの呪力は―――」
「お前馬鹿かよ」
そういって僕の額に手を当てる翁。
「いいか、よく聞け?お前さんの術式は涙の一滴を大海原にも、火の粉ひとつを太陽にもできる術式だ」
僕の頭の中でひとりでに起動した術式が呪力を生み出し始める!
「間違いなく最強に並びうる破格の性能だ。術式反転がミソッカスなのは玉に瑕だがな」
「僕の術式反転ってミソッカスなの!?」
「まあ、だがそれも順転である程度は補える。話を戻そう」
増殖された僕の呪力が頭の中で奇妙な挙動を始める。
「呪力は腹だが反転術式は頭で回すもんだ。この感覚をよく覚えとけ」
溢れる負のエネルギーが次々と正のエネルギーへと置き換わっていく!
「四肢の欠損くらいならこれで終いだが、最後の仕上げだ。この正のエネルギーを術式で増幅!」
鳩尾の氷が融解し、見る見るうちに失われた肉体が修復していく!
「ん?やっぱお前さんと儂は相性がいいらしい。もののついでだ。もう一仕事手伝ってやるよ」
「何を―――」
唐突に意識が朦朧と―――
「そう云やあ一つ聞きそびれてたな。お前さん、最強の呪術師は誰だと思う?」
誰ってそんなの―――
「五条悟」
に決まって――――
「そうか、五条・・・・やっぱ五兆じゃねえのか。よかったな」
翁のその一言を最後に、僕の意識は暗転した。
2017年4月24日 16時03分
「一息に踏みつぶすつもりだったんだけど、頑丈だね」
それともこの肉体が思っていた以上に貧弱なのかな?と嘆息して羂索は足元の男の頭目掛けて今度こそ踏みつぶすべく足を持ち上げる。
「それじゃあ今度こそ、さようn―――」
踏み下ろさんとしたまさにその時だった。
顔の潰れた男の、その体から尋常ならざる呪力が吹き上がる!
咄嗟に飛び退き羂索は即座に戦闘態勢を調えるべく水筒からあらん限りの呪蜂を解き放つ。
目の前であり得ざる事が今まさに起きている。
呪力は腹で練るものだ。
その器官を失った男に呪力を練れよう筈もない。
その筈だった。
反転術式は頭で回すものだ。
だが、それは呪力あってのもの。
呪力を練る為に必要な器官を失った男には最早選べぬ選択だ。
その筈だった。
それでも長年の経験から、万が一億が一を考慮して念には念を入れてその頭を踏み砕かんとした。
だが、男の頭が異常に頑丈であったのか、或いは自身の肉体が自分で思っている以上に貧弱であったのか。
結果として、一度で踏み砕くこと叶わず。
そして、二度目の機会は逸してしまったのだと羂索は悟る。
星の息吹とでも言うべき生命の躍動!
純然たる正のエネルギーが天高くまで立ち昇る。
「よぉ、久しぶり」
「・・・・・・マジか」
男の身体は即座に修復され、それだけに止まらず近くに倒れる女ふたりの欠損も呪毒による損耗も一切合切が修復される!
男を基点にアスファルトの切れ目や周辺の家屋の庭から新芽が芽吹き瞬く間に草木へと成長していく!!
「大マジ、元気ピンピンだよ」
「そこは死んどけよ、人として」
「そりゃあこっちのセリフなんだがな?怪人メロンパン」
反転術式の行使を終えて、男は身体の調子を確かめるように簡単なストレッチを始める。
「対象を増大、増幅させる類の術式か!」
エネルギー保存則を完全に無視した、この千年で初めて見る類の術式に羂索は驚きとある種の興奮を隠せない。
「応、流石年の功だ。いい線いってるよ。それで?こんだけ時間やれば十分回復はできたんだろう?梅干し女」
男の視線の先には血まみれの、しかし体に損傷らしきものは既に存在しない白に赤の映える女 裏梅が今まさに呪力を滾らせ―――
「氷凝呪法 霜凪」
男はただ、倒れ伏す少女たちの前に立ち尽くすばかりで防御の姿勢すら取らなかった。
「莫迦な!?」
男も、その後ろの少女たちも無傷!
「そうか!反転術式で裏梅の霜凪を中和したのか!!」
その規格外の出力を誇る反転術式に戦慄する羂索と裏梅。
男から放たれる威圧感。これは最早―――
「ありえない。これでは宿儺よりも―――」
「莫迦な事を言うな!」
羂索の言葉をかき消すように裏梅が言葉を被せる。
「そっちの手番は終わりか?では次は儂の番と行こうか」
男はちょうど真横に立つ一時停止の道路標識を引き抜き呪力を通して宛ら槍のように構える。
――――コオオオオ
男は大きく息を吸い―――
「星の呼吸 壱の型」
流星一閃
目にも留まらぬ速さで裏梅の腹を切り裂いた。
「ゲホッゲホッ!」
〝お前さん、さては常中どころか呼吸法の訓練すらろくにやってねえな!?〟
〝呼吸法ってなんだよ!?まさか全集中の呼吸!!?使えるわけねえだろそんなもん!!!〟
〝まさか継星先生に会えてねえのか!?いや、こっちじゃあ普通に継国なのか?〟
〝ワケワカンナイヨ!!〟
翁が何を言いたいのか分からないよ!
まさか鬼滅もクロスしてるって事!?
現代に潜む鬼がいるとか言わないよね!?ねえ!!?
〝まあいい。感覚はちゃんと共有できてるんだろう?もう体で覚えろ〟
意識を取り戻した途端、体から弾き出されたかと思えば翁が僕の身体を使っている。
僕は宛ら背後霊だ。
翁が言う様に身体の感覚はある程度共有されているようではあるが、鈍いというかなんというかズレてるような感じがする。
彼の感覚がその通りに共有されているわけではなさそうだ。
「真っ二つにしたつもりだったんだが、ちと浅かったか」
見れば裏梅の身体は背骨が辛うじて繋がっており、両断には至っていない。
「その呼吸、まさか継国兄弟の―――」
こちらを見て瞠目する羂索。
「ああ、お前は知ってるんだったな。500年前だかに邪魔されたんだって?」
「まさかこんな所で彼らの系譜に巡り合うとは思わなかったよ」
「だろうな。お前のことだから懇切丁寧に彼らの血脈を根絶やしにしたんだろうよ」
「君、さっきから嫌に私の事に詳しいね。どこかで会ったことあったかな?」
「単にお前が分かりやすすぎるだけだろ」
「そうかな?出会い方が違えばひょっとして友達になれたりしたかもね」
「思ってもいない事を言うなよ。気色の悪い」
「ひどいなぁ、傷ついてしまうよ」
「減らず口はその辺でいいだろ。おい、もっかい先手は譲ってやるよ梅干し女」
見れば腹を押さえてはいるが見た限り傷が癒えた裏梅が立ち上がっている。
「どこまでも虚仮に・・・・その侮り、後悔するがいい」
裏梅は素早く掌印を結び―――
「領域展開!」
雪魄冰死
展開される絶死の氷室!
裏梅の背後の氷で象られた梅の木を基点に広がる永久凍土!!
本能で理解する。
この領域の寒波は魂すらも凍てつかせる!!
これ丸裸の僕即死するやつや!!!
「なんつうか、チープだな」
そう言ってトリガーらしい所作を何も見せずに簡易領域を展開する翁。
「何がチープだ?その簡易領域で凌げると思っているのか?一息にその余裕ごと引き剝がしてくれる!!」
猛る裏梅を前に冷めた表情で翁は続ける。
「せめて時を凍てつかせて止めるだとか。そのくらいの事はやってみせてほしかったぜ。こんなものかよ、呪いの王の近侍ってのはよ」
「貴様ァ!!!」
「もう見るべきものも無さそうだし終わりでいいな?」
そう一言断り、簡易領域の範囲を拡張させて一息に押し切ってみせた。
「な―――」
〝うそん〟
〝どうよ〟
意地の悪い顔で茫然自失の裏梅を見つめる翁。
「そこまでだよ」
「あん?」
「さ、冴羽さん・・・」
「くっ・・・・」
〝真依ちゃん!津美紀ちゃん!!〟
見れば裏梅の後ろ、羂索が二人を人質にしてこちらを油断なく見つめていた。
〝冴羽さん?〟
〝冴羽 獠って咄嗟に名乗った僕の偽名だよ〟
〝お前さん、それは・・・いや、言うまい・・・・〟
〝なにを?〟
〝なんでもない〟
「痛み分けと行こうじゃないか。彼女達にこれ以上の手出しをしない代わりに、私たちの事を見逃してもらおう」
「おいおい、そんな人質が通用すると思っているのか?」
〝おい!翁!!〟
〝心配しなくても何とかしてやるから黙って見てろ〟
「君が何故胴を真っ二つにされたのかもう忘れたのかい?それとも、先ほどの彼とは別人格。誰かの受肉体なのかな君は?」
「どうだろうな?」
そうして意味深に笑うと展開中の簡易領域を一気に広範囲へと押し広げる!
その直後、無数の情報が頭の中を駆け巡るッ!!!
〝なんだこれは!!!?〟
〝ああ、感覚共有してるんだったな。情報の取捨選択を覚えればそうでもないんだが、まあ堪えろ〟
これは簡易領域の中にいる建造物の、人の、動植物の、虫に至るまでの詳細な情報の数々!!!
頭が割れそうだ!
誰とも知れない人間のほくろの位置だの、犬猫の胃の中の内容物だのが無作為に脳を駆け巡っていく!!
〝似通ってるっつっても初めて使う、それも未熟な体だ。悪いが建造物だのは諦めよう。保険金とかなんか降りるだろ〟
〝あんた、何を―――〟
直後、翁の足元から簡易領域の外殻近くまで扇状に何らかの結界が空に大きく口を広げる形で展開されていく。
〝何ってそうさなぁ、さしずめ火遊びってところか〟
「羂索、お前さんはさっき儂の術式の事を対象を増大増幅させる術式だとか言ってたな」
〝一つ小技を伝授してやろう。儂にとってはジャブみたいなもんだが、こっちでならそこそこ使えるだろうよ〟
「では、たとえば吐息。これの熱を、息の出力、範囲を大幅に増大増幅すればどうなると思う?」
「待―――」
阿耆尼
それはただの吐息だった。
ただそれだけのそよ風にも劣る微風。
ただそれだけの夏の暑さにも劣る微熱。
しかし、翁がそれに術式を行使したなら話は変わる。
一面の赤。
燃え盛る火の海。
否、この一瞬で既に目に映る全てを焼き尽くしつつある滅失の熱波だ。
「加減しただけあって、大した威力にならなんだな。名前負けもいいところだ。さしずめ〝威吹〟といったところか」
〝おま、おまお前!何が加減しただ馬鹿!真依ちゃんも津美紀ちゃんも!それどころか何百人何千人虐殺したと思って!!〟
〝いや、よく見ろよ。小娘二人も街の皆さんも犬猫、鳥や鼠に至るまで無事だよ〟
よく見ればヒト型の何かが二つ蹲っている。
〝そっちの二人は羂索を包まないように体表面に沿う様に結界を展開したんだ。他はほれ、あれとか〟
翁が指さす先に球状の直径2mほどの結界がある。
「しかし、驚いたな。跡形も残さないつもりだったんだが」
そう言って見つめるのは火の海に立ち尽くす人だった何か。
「―――ッ」
いや、まさか―――
「術式が焼き切れていた筈なんだがな?反転術式で無理やり直したか、それとも何か縛りを結んで回復を早めたか」
体表面はもちろん目視できる限りの筋肉も炭化しており、辛うじて人としての原形を保っているそれはつい先ほどまでの美麗な姿の面影をただの一つも残していない。
〝てか、焼き切れた術式って反転術式で直せるの!?〟
〝ん?ああ、脳にある術式回路を呪力で破壊してそこを反転術式で一気に治すんだ〟
〝えぇ・・・〟
なにそれ、ドン引きだよ・・・・
「自身の身体を全呪力を注いで氷で覆い、辛うじて生を繋いでみせたか・・・」
何はともあれ、裏梅は寸でのところで未だに生きていたッ!
「流石、呪物になってまで生にしがみつく様な奴だ。生き穢さに掛けては天下一品だな。それにお前も」
そう言って空に顔を向ける翁。
彼の見つめる先に目を向ければ―――
〝嘘だろ!?あれを逃げ延びたってのか!!?〟
空高くに浮かぶ羂索!
手傷こそ負いながらも裏梅と見比べればあり得ないほどの傷の少なさだ。
〝加減が過ぎたな。結界強度、身体の勝手の違いを加味して熱波の多くを上に逃がす形にしたのが裏目に出た。虫を盾にして空高く舞い上がって逃げ延びたようだ〟
「使いたくなかったんじゃないのか?その術式は」
翁の問いに羂索は答えない。
ただ空から見下ろすばかりだ。
「フン、まあいい。取り敢えず―――」
頞儞羅
またしても吐息を増殖させてしかし、今回は大した熱を帯びない暴風を火の海目掛けて放つ!
暴風に晒された火は瞬く間に消し飛ばされていく!!
〝結界で囲ってるから延焼する危険性は無いに等しいが、念のためにな〟
〝翁!〟
「さて、二人とももうちっとそこでじっとしといてくれ」
津美紀ちゃん達を覆う体表を沿う形の結界が解いたかと思えば、改めて球状の結界で覆い直す。
〝さて、そこの梅干し女は始末したも同然。残るは図が高いメロンパン一人だ〟
〝あ、降りてきた〟
空高くに滞空していた羂索が下に降りてくる。
〝ちっ、あのまま滞空しててくれりゃあもう一発調整入れた阿耆尼で片付けたんだがな〟
「やってくれたね。手持ちの呪蜂が全損してしまったよ」
そう言って頭を抱える仕草をする羂索。
翁を前にして軽口を叩けるだけの余裕があるようだ。
「どうせ廃棄予定の術式だろうが。大して痛くもあるまいに」
「・・・・ホントに詳しいね。やっぱり以前にもどこかであった事があるのかな?」
「さあな?自分の胸に聞いてみな」
「心当たりがないから困っているんだけどね?さて、裏梅―――」
軽口をたたきながらしれっと裏梅の傍まで歩み寄っていた羂索。
「その炭化した身体はもうだめだ。君の枯渇寸前の呪力では反転術式で治せないし、私もそんな余裕はない」
「――――ッ」
「ここで死ぬも、生を繋ぐも君次第だ。どうやるのかは君に見せた事があっただろう?」
〝羂索のやつ、さっきから何を言って―――〟
〝まさか―――〟
次の瞬間、微弱な呪力が右手の人差し指に集まったかと思えば突如裏梅の身体が罅割れ崩壊してしまった。
羂索はその残骸からひとかけら摘まみ上げる。
「うん、どうやら成功したようだね」
羂索の手には黒々と炭化した、けれど爪だけが異様に白い指が一本握られている。
「ホントに生き穢いなぁお前ら」
「失礼な。君も受肉体なら似たようなものだろう?」
「生憎と、お前らカス共とは違うんだわ」
「さて、骨折り損のくたびれ儲けと相成ったわけだ。私はもう帰って不貞寝するから、君達もさっさと帰るといい」
「いや、お前ここから見逃してもらえると本気で思ってるのか?」
「君達こそ、あまり時間は掛けていられないと思うけど?いくら何でも暴れ過ぎたね」
「何を―――」
「これだけ破壊の限りを尽くしたんだ。高専が、呪術総監部が黙っている筈もないさ」
〝あ〟
「私がせっかく帳を降ろしたのに君が消し飛ばしてしまったからね。近郊の非術師達も先ほどの天に立ち昇る劫火が見えていただろうさ」
やばい・・・・
「残穢もびっしりと染みついている。さっさと姿を晦まさないと追手の呪術師に捕捉されてしまうんじゃないかい?君が往年の宿儺の様にこれから振舞っていこうと言うのなら私としてはそれはそれで都合がいいわけだけど。平安の世の再来というわけだ」
どうしよう・・・僕ってば呪詛師確定!?
〝どうしよう翁!僕、このままじゃ呪詛師に・・・・ッ〟
〝お、おう・・・なんかスマンナ〟
〝翁!!?〟
「呪術師に捕捉されるか。そりゃあ違いない・・・・けどな、それがお前らを見逃す理由になるのか?」
「―――ッ」
「幕引きだ」
そう言って翁は素早く3つの掌印を結ぶ。
「領域展開 両儀伽藍――
〝え?〟
〝――――〟
何も起きない。
展開されるはずの領域はその発動を目前に呪力を霧散させて不発に終わる・・・・
「ちょ、翁?」
あれ?
気付けば僕の意識は身体に戻っていた。
〝悪いな、どうやら時間切れみてえだ。お迎えが来ちまったよ〟
え?・・・・いや、待て待つんだ待ちなさい!
〝残るは消耗したメロンパン一人、勝利は目前だ。あとはお前さんが倒せ〟
いや、だから!
〝お前さんなら勝てる〟
待って!頼むから!!
〝ああ、蛍。随分と永く待たせちまったなぁ。ようやくお前の許に逝けるよ〟
翁!
翁行くな!!
これだけ好き放題しておいて!!!
僕に丸投げにして置いて行くなアアアア!!
「―――ッ」
突如襲い来る違和感。
なんだこれは?
体の感覚が鈍い。
よろけて倒れる。
力が上手く入らない!
これはまさか!?先ほどまでのズレが残ったままなのか!!?
「どうやら何かイレギュラーがあったようだね?」
「―――か、帰って不貞寝するんじゃなかったのか?」
「そのつもりだったけど、今の無防備な君を見逃す理由にはならないよね」
そう言って羂索は両の手を胸元に持っていき、まるで手の甲側で合掌するかのような素振りを見せ―――
翁の消失に合わせるようにして
しかし、この不調のせいなのか。
それとも羂索の領域と押し合うには元から足りていなかったのか。
何にせよ1秒と持たずに見る見るうちに剝がされていく。
あと刹那の内にこの超重力に飲み込まれてしまうのだと確信する。
そんな絶望の淵でふと思う。
そういえば結局―――
「蛍ちゃんの引っ越し先に一度も遊びに行けなかったなぁ」
『ニノ、高峯、渡辺』
3勇者。
島から一時帰宅してきたら事務所の中がお通夜状態だった。
こいつらはこいつらで、何故かクソガキがクソ/ガキになったのとほぼ同時刻に「Pちゃんの霊圧が・・・消えた・・・?」みたいな反応してから半狂乱状態になった後だったりする。たぶん生霊とか飛ばしてるんじゃないですかね?
事務所現着時点では欠片もクソガキの無事を疑っておらず、ニノに至ってはこの感覚が分からないアイ相手にマウントを取る始末。
クソガキとアイの真の関係には勘付いていたが、遂に今日言質を取るに至る。
出会った頃はまだそこそこ幼い見た目だった事もあってか、トレーニング後に時短も兼ねて一緒にお風呂に入ったりしていたのが常態化。今日に至るまで一緒にお風呂に入ったりする関係がずるずると継続してしまっている。色々と逞しく育ったクソガキ相手にプチセクハラ行為を働いているかもしれない。言うほどプチか?
去年の映画撮影では最終日の3月末日の事件が影響して撮影が4月にずれ込んでいる。
高峯と渡辺は腹を壊していたのでそれはそれでちょうど良かったのかもしれない。
それはそれとして、いくら体調不良で切羽詰まってても二人はちゃんと書類を読んでからサインした方が良かったね?
『有栖ちゃん』
フルネームは坂柳有栖。
2017年の春から父が理事長を務める日本政府肝入りな全寮制の名門高校『高度育成高等学校』に進学した。
以前にも記述したが、我愛熱斗とは主治医が同じで待合室で交流を持つようになったのが出会い。
ボードゲームなどで遊ぶことが多かったが、2014年に待合室に置かれていた雑誌で今の流行りと紹介されていたカードゲームに興味を持ち、我愛熱斗と遊ぶにいいかと親に頼んでストラクチャーデッキを二つ買ってもらう。
まさか、そのデッキの中に紛れ込んでいたカードが喋り出すとはこの時は夢にも思っていなかった。
カードゲーム『WIXOSS -ウィクロス-』の腕は〝セレクター〟と呼ばれる存在の中では最強格と言っても過言ではない。
しかし、後述の項目のある理由から2014年の夢幻少女を巡る少女たちの戦いにはほとんど関与していない。
2016年の記憶を賭けた戦いに続く〝白窓の部屋〟の主を選ぶ戦いにおいては我愛熱斗と前任の少女の二人を蚊帳の外にして、後述の二人の少女を駆り事態を収束させるべく戦場に赴いている。
呪霊や呪術師の存在を我愛熱斗から明かされている非術師の内の一人。詰められて吐かされたとも言う。
進学先の高校について我愛熱斗達からは、謳い文句が胡散臭いだとか賭ケグルイの百花王学園みたいな学校だったりしてとか冗談交じりに言われていたが進学後、割とマジで似たような性質を持つ学校で驚いている。
『クソッタレ』
本名は五十嵐留未。
クソガキの〝やらかし〟のおかげで無事に元の身体に戻れた少女の一人。
夢幻少女にまつわる戦いにおいては〝セレクター〟として、あるいは喋るカード〝ルリグ〟として悪逆の限りを尽くしたクソッタレ女。〝ルリグ〟としての名はウリス。
我愛熱斗との出会いは成り代わったあるモデルの少女の身体で赤信号の横断歩道に飛び出そうとしたのを腕尽くで引き留められたのがきっかけ。
現在は後述する従妹の少女と再会できたおかげか、あるいはクソガキをはじめとした交友関係が彼女の心にいい影響を与えているのかその心も体も幾許か丸くなっている。繭の家で度々手料理を振舞うクソガキに胃袋を掴まれてついつい食べ過ぎてしまうのがいけなかったのかもしれない。
2016年の戦いにおいては坂柳有栖の〝ルリグ〟として戦いに身を投じた。
呪霊や呪術師の存在を我愛熱斗から明かされている非術師の内の一人。
『ハナタレ』
本名は戸賀崎幸。
元の身体は成り代わった〝ルリグ〟が自殺に及んだが為に脳死状態の植物人間だったが、クソガキの〝やらかし〟のおかげで無事に元の身体に戻り目覚める事が出来た少女。
坂柳有栖の〝ルリグ〟として彼女の買い与えられたデッキの内に紛れ込んでいたのが出会いのきっかけ。
まどマギなどを履修済みだったクソガキにセレクターバトルの裏側をメタ読みされた事に起因して、有栖に鬼のように詰められたりその時の反応から推理されたりして凡その真実を暴かれた。〝ルリグ〟としての名はハナレ。
〝セレクター〟の有栖がハナレを持っているのは危険かもしれないとの判断からその身柄はクソガキが預かっていた。
ハナレの身の上を聞き出したクソガキからは、「そんな名前付けてるからいつまで経っても会えないんじゃねえの?今日からお前はハナタレだ!」とか言われて以降は元の身体にに戻るまでハナタレ呼ばわりされていた。
2014年の事件の終盤では、クソガキと共に後述の少女の生家に道中で巡り合った少年少女と共に踏み入った。
そこでの紆余曲折を経て元の身体に戻り、無事に従姉の留未ちゃんと再会できた。
2016年の戦いにおいては坂柳有栖の〝ルリグ〟として戦いに身を投じた。
呪霊や呪術師の存在を我愛熱斗から明かされている非術師の内の一人。
『クソニート』
かつての〝白窓の部屋〟の主。
〝特級過呪怨霊 繭〟とでも呼ぶべき存在だったが、今は力の全て失ったどこにでもいる非力な少女というか豚まんじゅう。
〝ルリグ〟となった自身の分身の少女と彼女と絆を育む〝セレクター〟の少女の二人に敗れた夢幻少女にまつわる事件の黒幕。
セレクターバトルにおけるゲームマスターにしてクソ運営。キュゥべえの方が先払いする分まだマシとか詰られている。
自分には無い自由を外の世界で謳歌する少女たちがそれぞれの願いを賭けて争い、混乱し、絶望する様子を眺めて楽しんでいた。
生前から呪術の素養があったのか、死後に獲得したのかは不明。
隠密性に優れた夢幻、精神の世界にて特殊な領域を展開し少女たちを戦いに誘った。
セレクターバトルのバトルフィールドが展開されても、それは現実に展開されているわけではないので近くに呪術師や窓がいたとしても知覚はできない。〝ルリグ〟カードに直接触れ続ける事でカードとの間にパスを繋ぎ、初めてその呪力や現象を知覚する事が出来る。
故に、2014年の事件について呪術高専や総監部は2016年まで一切把握していなかった。
敗北後、本来の正史においては成仏していくがクソガキの〝やらかし〟に巻き込まれる形で夢幻少女となった少女の願いの適応対象にされてしまい病没しているが故に既に存在しない体を莫大な呪力にものを言わせて肉体を再構築する形で受肉してしまう。
鬼籍に入っていて戸籍が存在しないので社会的透明人間。
特殊な条件下とはいえ、ほぼ完璧な死者蘇生を成功させた稀有な例の一つ。
現在はクソガキが元々は投資物件用に購入していたマンションの一室を貸し与えられ金銭的援助を受けながら引き篭もり生活を送っている。
2016年の事件においては、白窓の部屋とのパスが完全に切れていたのをこれ幸いと一貫して蚊帳の外に置かれていた。
今まで溜まり場として自分の部屋に集まっていた友人3人が急に寄り付かなくなり、数日間、辛抱強く強がっていたが「みんなに嫌われた!」とクソガキに泣きつく。が、その頃には事件は解決して再び友人3人は彼女の部屋に寄り集まるようになる。
2017年春、進学先に旅立った友人の一人と入れ替わるように少女の生存を知った色々と因縁のある少女たちと再会する事になる。
『師匠と姉弟子とかずき君』
冬馬曜子と冬馬かずさの母娘とかずさの息子のかずき君。
世界的ピアニストの曜子とその娘であり日本ではそこそこの知名度を誇るかずさ。
以前、≒異譜≒において記述した通り、『不倶戴天の君へ』のifルートを歩んでいる。
本来ならば身籠る事のなかったかずさが子供を授かってしまったルート。
世間も相手の男もこの事実を知らないが、かずさのかつての親友であり彼の恋人はこの事実を〝あの日の電話〟でかずさ自身から聞かされている。正史とは幾らかの経緯に違いがあり、かずさからではなくかつての親友から電話を掛けている。
相手の男とその恋人のアレコレの時間軸は据え置き、かずさの方は妊娠出産分いくつかのタイムスケジュールにズレがあったりする。
男の窮状を知って大慌てで身重の自分の代わりに日本にいる弟弟子に頭を下げて様子を見に行かせようとするがどういうわけか男と既に知人になっていて困惑する。世間って狭いよね。
色々あったが、パリでの公演を大成功に収めて今や母娘共々世界的ピアニストとして名を馳せている。
クソガキが息子のかずきにパパ呼ばわりされていて、つい頭に血が上り台所に牛刀を取りに行くが部屋に戻る頃にはすっかり正気に戻っている。
すごい勢いで飛び掛かってきたクソガキにびっくりしてうっかり振り回してしまう。「あぶない!?」「急に飛び掛かってくるからだろ!!?」
なお、この時の認知がかずき君の中でそのまま定着してしまいこの誤解が解けるのはそれから随分と後の事になる。
冬馬曜子の病状もクソガキが定期的に通っている事もあってか現在は小康状態にあり、白血病とは思えぬ獅子奮迅の活躍を見せている。岩津町の豪邸を売りに出すが全然買い手がつかず、「僕が買い取ろうか?」という弟子の申し出に放り出すようにして日本を去ってしまった時のお詫びも兼ねてこの規模の邸宅としては捨て値同然で譲っている。
『せっちゃんとメガネ君』
本名は島崎由那と水篠颯太。
島崎由那はシマザキセツナ名義で活動する人気絵師。
そこから取ってクソガキには〝せっちゃん〟と呼ばれている。
トレス疑惑でネットでバッシングを受け、親交のあった颯太さんからも妬み嫉みから距離を置かれそれを苦に遂には線路に身を投げて自殺に及ぶが、〝ある者〟の助言を受けてたまたまその場に居合わせたクソガキが寸でのところで間に合い未遂に終わる。
クソガキにボロクソに叱られ、結局接触事故にはなったのでクソガキと一緒に色んな大人に二人揃ってボロクソに叱られたりした。
賠償金の類は「直接ぶつかったのは僕だから」と、クソガキが支払った。
その後、〝クソガキの力添え〟あってネットのアレコレは紆余曲折の大騒動の上で一応の沈静化を迎える。
行き過ぎた誹謗中傷に対して飛び交う開示請求、騒動を扇動していた幾人かのワナビ絵師の過去絵からトレスと思われる絵を掘り起こし晒し上げる事で結果として筆を折らせるなどの大騒動に発展する。クソガキが味方した事で日本中のクソガキッズが感化されシマザキセツナ側に付いた事が大きい。クソガキアンチの2ch連合が集結して挑みかかったりもしたが普通にボロ負けした。
沈静化というか屍山血河が築かれてバッシングしてた連中が死に絶えるか逃げるかしただけとも言える。
出会いから凡そ1週間のうちに趨勢が決し、ネット上の問題がだいたい処理され新学期始業式当日に並行して準備されていた作戦が実行に移される。
そんなこんなで無事ハイエースされたメガネ君は不幸にも監禁され逃げ道の一切を潰されて、島崎さんと膝を突き合わせて話すしかなくなる。
最終的には心の内を全て吐露。なんやかんやで無事に仲直りした。
『五反田泰志と新野冬子』
朝早くにロケ現場に行ったらヤバい奴に鉢合わせてクソガキ共々ひどい目を見た人達。
監督のワーゲンバスは穴だらけ、中の機材も大破し大損害を被る。
クソガキに庇われたニノは怪我らしい怪我は何もしていないが、自分を庇ってクソガキが負傷した事は気にしている。
この事件が原因で撮影は延期、4月にずれ込んだ。
夏の終わりに公開された低予算アクション映画は無事ヒットし、損害をしっかり補填できた監督なのであった。
なお、余談だがこの映画のヴィラン役にはあの超日本プロレスの関林ジュンが起用されている。
【英はじめ】
たまたまクソガキ達が泊まるホテルの隣の部屋に宿泊していた医師。
親切にもロハで腹痛に苦しむ高峯と渡辺の二人を診療してくれた。
どさくさに紛れて二人に献体同意書にサインさせている。
ある理由からクソガキ達と同じパシフィコ横浜構内のホテルに宿泊していた。
『マルコメ君とフルフェイスライダー』
日本進出を狙う世界的犯罪組織の尖兵たち。
旧ベイサイドヨコハマにある女性を拉致監禁し、ビジネスの邪魔をする刑事二人を誘き寄せ始末しようと企んでいたがまさか映画のロケ地になっているとは思いも寄らなかった。
クソガキに見咎められて止むを得ず銃撃、排除しようとするが強肩のクソガキにコンクリートの塊を投げつけられて敢え無く敗北。
二人とも大怪我を負ったがギリギリ死なずに済んだ。
程なくして現れたサングラスが似合うダンディーでセクシーな刑事二人に逮捕される。
実はクソガキと同じホテルに宿泊していた。
【大槻ヨヨコ】
まだよっちんとか呼ばれる前の出会って間もない『SIDEROS』の鬼リーダー2015年の姿。
クソガキとは顔見知りとかその程度の間柄。
この頃のクソガキはまだ声変わり前で、尊敬する廣井姐さんと声質が似通っていたので後ろから声を掛けられてビクッとした。
遂に新宿FOLTの吉田店長の審査を突破して初ライブが決まる。が、凡そ全ての新参バンドマンを苦しめるチケットノルマとの戦いが待ち受けていた。チケット買ってくれそうな親しい友達とかはいないので、止むを得ずルミネ前でビラ配りして集客を図ろうとするも及び腰だったところをクソガキに声を掛けられる。
クソガキの思い付きに巻き込まれて即席2ピースバンドで路上ライブをさせられる。
チケットは無事に全部捌けた。
『蛍ちゃん』
フルネームで一条蛍。
星野一家が2012年の事件後に引っ越した先の同じフロアの部屋に住むご近所さんだった。
2015年の春に岡山の片田舎に引っ越して以降、直接は会っていないが季節の挨拶状のやり取りやネットを通しての親交は一応続けられている。
もともとは一条家に飼われているコーギー犬をクソガキが構い懐かれたのが付き合いの始まり。
散歩を同道して話すようになり、芸術周りの話が割と合う事から美術館やクラシックのコンサートなどに一緒に出掛ける仲になった。
次項の少女ともそういった場で遭遇し仲を深めていくようになる。
2017年春に中学1年生になった。
クソガキは履修済みの筈だが彼女とほたるんが全く結びついていない。
れんちょんに挨拶でもされれば流石に点と点が繋がるんじゃないかな?
『ルリ子ちゃん』
フルネームで黒柳ルリ子。
天才子役として名を馳せていて、あの有馬かなをして目の上のたん瘤と言わしめる実力者。ちなみに目の下のたん瘤として羽賀あやのなどがいる。
その年齢にしては一部分の成長が著しく2017年時点では子役としての旬は既に過ぎ去り、演技派の大女優として活動する傍らである高校の演劇部の顧問を務めているが現在は休職してヨーロッパで修業をしている。小学4年生に相当するが学校には通わずに勉強は家庭教師で済ませているらしい。
アクアや有馬かなとの共演経験もあり、クソガキとはそういう縁でもともと知り合いだった。
母親に連れられて行く美術館やコンサートホールでクソガキや蛍ちゃんと遭遇するようになり時間の合う時に一緒に見て回ったり観劇したりするようになる。
蛍ちゃんの引っ越しの見送りはどうしても都合がつかずに泣く泣く断念。
後日、引っ越し先に押しかけた。
『杏奈ちゃん』
フルネームで山田杏奈。
星野一家が2012年の事件後に引っ越した先の同じフロアの部屋に住むご近所さんだった。
蛍ちゃんが通っていた小学校の一つ上の先輩。小4の時にスク水で学校に登校していくのを見せてクソガキや蛍ちゃんをドン引きさせた。当時から身長が高く同学年の子供たちに比べて頭一つ以上抜けていた。
蛍ちゃんと犬の散歩中に同じく犬の散歩をしている杏奈ちゃんに遭遇したのが親交のきっかけ。
たまに一緒に遊ぶこともあったが前述の二人ほどの親密度はない。
どちらかというと、彼女の父親との方が親交があり『びーこま!』の料理対決の折にはフランス料理のシェフでもある彼にこっそり料理の指導を受けていた。プライベートではゲームで対戦して遊ぶ仲。
2017年春に中学2年生に進級。秋野杏奈名義で雑誌モデルをしている。
『ペチ』
クソガキと超親友なコーギー犬。
蛍ちゃん一家の引っ越しで離れ離れになる。
必ず会いに行くというクソガキの言葉を信じて待っているが待てど暮らせど現れずでひょっとして裏切られた?とか思っている。
クソガキはネットを介してカメラ越しにペチの顔を見たいと言っているが蛍ちゃんはこの機会に二人の仲をリセットしようと目論んでいるので実現せず。ペチの写真だけクソガキに送っている。
『わん太郎』
ペチと義兄弟の契りを交わしているコーギー犬。
少し鬱陶しく思いながらも、ペチロスのクソガキに寛大な心で寄り添った。
『泉美ちゃん』
旧姓は赤沢泉美。
苺プロの事務員だったが、2017年の3月末で寿退社していて4月現在は名字が変わっている。
苺プロの事務関係を一挙に引き受ける女傑だった。
語学も堪能でクソガキの私的な海外出張にも同行していた。
『重明くんと撫子ちゃん』
クソガキが病院で急に昏倒して気が付いたら乗せられていた車の運転手とその助手席に座ってた二人。
眠り姫と化した金髪ブロンドの恋人を目覚めさせるために現実世界にはもう存在しない洋館がある不思議空間に再び足を踏み入れようとする重明くんとそんな彼を洋館まで導こうとする故人の撫子ちゃん。厳密には故人本人ではないというのが本人の談。
これから滅茶苦茶シリアスしに行くところだったのに、クソガキが紛れ込んだせいでシリアルになってしまう被害者たち。
クソガキの〝やらかし〟の一つ。これもすべて繭って奴が悪いんだ!(責任転嫁)
こいつらの原作はR18作品なので、調べる際は自己責任でお願いします。
【星野我愛熱斗】
顔面グシャリされてから走馬灯見ていたクソガキ。
走馬灯は記述したもの以外もしっかりと見ていて、今までの人生を遡ってこの世界で生を受けるまでが駆け巡っている。
走馬灯で登場したひょっとすると読者諸兄も見覚えがあるかもしれない人物達だが、クソガキがそもそも未履修だったり、履修済みでも忘れていたり、うろ覚えのにわか過ぎて点と点が繋がらずにピンと来なかったりと相変わらずのガバ具合。
願いだの記憶を賭けた闇のゲームとかは、クソガキにとっては諸に呪いが関与した事件だったのでクロスの一つとは気づいていない。呪術廻戦パッチが当てられた弊害でもある。
2014年の事件ではハナレのルリグカードに触れた段階で奥深くに隠された呪力を感じ取っている。ぱっと見、ただのカードだが触れる事で意思疎通が可能になった。
感じ取った呪力もあってか警戒し、メタ読みで隠された真実を言い当てる。
その後、本来の持ち主である有栖ちゃんと協議してハナレの身柄を預かる事に。
この協議の際に口を滑らせた事で呪術周りの話をゲロさせられた。
ロケの合間の新宿で街歩き中にセレクターの少女と同道する少年の二人に角でぶつかる。セレクターである点と、何か急いでいる二人が気になり後を追うとそこが繭の生家だった。
建物の中から微かに感じるハナレに初めて触れた時にも感じた呪力と同じ気配、二人に合流して自分も同道する旨を伝えて建物内に踏み入る。建物内、繭の部屋で呪いを炙り出す為に帳を降ろす事で〝白窓の部屋〟を可視化した。
繭敗北後に勝利者の少女が願いを叶えようとするが、完全に叶えるには出力が足りない事を明らかに取りこぼされている二人を見て察したクソガキが当時の最大出力で増幅した。呪力にものを言わせる形で願望器としての出力を強化、これにより一部対象外だった少女達は生きて現世に戻り、勢い余ってギリ成仏が完了してなかった繭まで肉体を得て受肉してしまう始末。そしてこの時に部屋にこびりついた少女たちの憎悪の残滓まで増幅してしまっていたり、捻出した呪力の残穢というか残り分や2015年の3月まで部屋とのパスがか細くではあるが繋がったままでこっそり部屋がクソガキの術式を悪用したりして、後に続く記憶を賭けた、延いては〝白窓の部屋〟の主を選ぶ戦いで悪さをする事になった。これが〝やらかし〟と表現する理由。受肉後、着の身着のままで放り出された繭を偶然発見保護する羽目になる。
2016年の事件では、呪術周りの話をする際に腐ったミカンの話や高専のブラック具合を例に出して、何もなければ関わりたくない組織みたいな話を流れでしてしまっていた事もあり、気を利かせた有栖ちゃん達によって蚊帳の外にされていた。
この時に、秤金次と星綺羅羅がガッツリと出張って来ていた事を後々知り、顔を繋ぐチャンスだったのではという後悔とノベル版だかソシャゲ版の事件とかだったのかな?とか思っている。(星綺羅羅がルリグになって秤とラブロマンス!?へぇ・・・あの二人が恋人になったのってそういう経緯だったのか・・・・)
2011年のアレについても全くの未履修なので呪霊か何かだと思っている。前前前世までは履修しているが天気も戸締りも見ていない。
走馬灯が駆け巡った後、目覚めたらそこは新宿フォルトだった・・・?(困惑)
そこで謎の老人に命を助けられたり、身体を乗っ取られて放火テロの罪を押っ被されたりする。
泣き別れした鳩尾から下をピッコロさんの如く新しく生やしたので無双したりシリアスしたりしているけど終始フルチン状態。
体を乗っ取った老人が戦場を圧倒するが、時間切れで退場し窮地に立たされる。
今際の際でそう言えば引っ越した友人に会いに行けてない事を思い出し、ぽろっと呟いた言葉が末期の言葉になりそうな瀬戸際。
『翁』
突如として湧いて出た謎のクソつよじじい。
新宿フォルトっぽい謎空間で出会ったが、この爺さんには全く別の場所に見えていた。早い話がそれぞれの空港。
クソガキと呪力の質が大変似通っており、術式に至っては完全に同一。
何の因果か、出会うはずのない二人が巡り合った。
その正体は並行世界で生きた星野我愛熱斗その人である。
クソガキとほぼ同じ条件で転生したが、呪術廻戦要素にクソデカパッチが当てられていて地獄を見た。
生と死の狭間で反復横跳びを繰り返して覚醒に覚醒を重ねまくり、遂にはクソデカ世界に適応してしまった異常者。
クソガキほどの余裕は当然持てず親兄姉、社長とミヤコさんのみを身内として区切り、それ以外の一切を切り捨てた。
クソデカ廻戦パッチが幅を利かせ過ぎていてほとんどのクロス先が息をしていない中で当然のように適応した上で輪廻を巡り記憶を引き継いで再誕した縁壱の転生体 継星縁に全集中の呼吸を学び、星の呼吸という彼にとっての最適な型を導き出されてこれを体得。
人外魔境クソデカ決戦においては戦場を自身の領域で覆う事で地球への被害を抑える役割を担っていた。この時に展開された領域内の空間の広さは太陽系に匹敵。
五兆からただ一人自由裁量で億面宿儺との戦いに割って入る事を許されていたが、一人で戦いたいという彼自身の望みを尊重して静観の道を選んだ。五兆の勝利を欠片も疑っていなかったのもある。
五兆敗北後のレイド戦移行後では、アタッカー兼バッファー兼回復役兼タンク等幅広い役どころで戦線を維持。
ラストアタックこそユグドラシル悠仁に譲ったがMVPは間違いなく彼である。
戦後、荒廃した世界の立て直しに術式の行使で大いに貢献した。
五兆悟亡き後に名実ともに現代最強の術師になる。
そして全人類の呪力からの脱却を見届けた人類最後の呪術師でもある。
寿命の延長を止め老衰。
今際の際に見た一時の夢。
自分よりも恵まれた境遇の未熟で愚鈍な若き日の自身に巡り合う。
これも何かの縁かと助力を買って出る。
慣れない未熟な体である事も含め、術式主体の戦闘では出力、精密さという点で大味になり過ぎる事を考慮し初めは呼吸剣術で対処する気でいたが、常中どころか碌に呼吸の訓練をしていない事が発覚。呼吸剣術での戦闘の続行は流石に困難と判断。浅く全集中の呼吸は続けながらも、戦闘方法の変更を余儀なくされる。
裏梅の領域展開を簡易領域で押し切る事で破り術式を封じる。
この世界の自分と知らない仲ではなさそうな少女二人が人質に取られた事で人命を優先。周辺地域への物的被害が出る事をコストと割り切り、今後の事も考えて万が一にもメロンパンを逃さない様に周辺地域の生命体を術式防護の結界で囲って保護、阿耆尼による広域殲滅で焼き払った。まだまだローンの残った家とか思い入れのある家とかあるんですよ!?
そこまでやったのに色々と勝手が違ったり慣れない手加減をして、裏梅を瀕死にまで追い込むも呪物化され、メロンパンも呪蜂を全損、手傷こそ負うも生存を許してしまう。
最後は領域展開『両儀伽藍之洞』によってまとめて滅殺しようとするもまさかの時間切れ。
この世界の自分に後の事を押し付けて退去。
享年369歳。
一族に看取られて永眠。軌道エレベーターの事故で死別した最愛の妻 蛍の許へ旅立つ。
『真依ちゃんと津美紀ちゃん』
瀕死の重傷だったが、クソガキの上半身から溢れ出る膨大な反転エネルギーで毒デバフや部位欠損諸々が全快した二人。
クソガキin翁が裏梅相手に舐めプしている間に羂索に人質に取られるが、浦見市街地を生贄にして無事拘束を解かれる。
人質にされながら、二人してチラチラとクソガキの股下のコッペパンを盗み見ていたのはナイショの話。
ところで筆者は書いている時は特に気にしていなかったのだが、この雑記を書くに当たり読み返していてふと思った。体表面に服は含まれますか?
【裏梅】
翁に襤褸雑巾にされた宿儺の近侍。
ピッコロ大魔王が天井の世界にスーパーサイヤ人が湧いて出たようなもの。
とはいえ、実際は未熟な体デバフでサイヤ人編のベジータくらいの戦力差。
サイヤ人特有の舐めプが幸いして辛うじて生存。再呪物化して死を免れる。
待てど暮らせど本誌の裏梅が領域展開しないので雪魄冰死という名で仮置き。
本誌で領域展開したらこの辺りは手直しするかも?
【羂索】
クソガキが思いのほか石頭で一発では潰せずに復活を許してしまったメロンパン。
全盛期の宿儺以上のオーラに内心ビビっている。
この千年の記憶を掘り返してみてもクソガキの内に潜むナニカの正体には辿り着けなかった。そらそうよ。
呪蜂は全損し、伏せ札の術式は切らされ、頼れる仲間の裏梅は瀕死にされてモンスターボールに戻され、自身もここで死ぬかもしれないと割と覚悟していた。
クソガキサイドのトラブルを唯一の勝機と見て領域展開を使用。ここでの決殺を狙う。
天元に反重力機構の術式も閉じない領域も見せる結果となり、戦術的にこの場の勝ちは拾えても戦略的には大敗。
それでもクソガキを獄門疆を含める全ての手札を切ってでも、ここで封殺すべき相手だと認識しているが、翁が退去した今となっては将来性を無視すると過大評価もいいところ。
『軍服の姫君』
余の盟友を、ただ一人救い上げてくれたあなたへの恩義を、私は決して忘れない。
『魔女』
あなたが救った一つの命が、あなたの窮地をきっと救うわ。
七海「虎杖くん、見えますか?これが呪力の残穢です」
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いや、全然見えない
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凝!(範囲指定反転pc勢)
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オレでなきゃ見逃しちゃうね(メモ帳転写)
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本当だ混じってるよウケる(誤字報告)